裁判官 ☆ データベース - 東京高判H31.4.10 国家賠償請求控訴事件
受刑者の信書禁止で国敗訴=同性愛の養子縁組「有効」−東京高裁

 刑務所で同性愛関係となり養子縁組した相手と手紙のやりとりを禁じられたとして、元受刑者らが国に慰謝料などを求めた訴訟の控訴審判決が10日、東京高裁であった。垣内正裁判長(白石哲裁判長代読)は訴えを退けた一審東京地裁判決を取り消し、国に計6万円の支払いを命じた。
 原告は50代男性と、提訴後に死亡した40代男性の両親。刑事収容施設法では、必要に応じ受刑者の手紙のやりとりは禁じられるが、親族は除外される。
 一審は、禁止を免れる目的の養子縁組とする国の主張を認めたが、垣内裁判長は「同性愛者でも相続や同居生活などが目的の場合、縁組意思は認められる」と指摘。「2人が助け合って共に生活しようという意思を持って行われた養子縁組で有効」と判断した。
 判決によると、2人は2014年に府中刑務所で知り合い、約6カ月にわたり交流。50代男性が甲府刑務所に移送された後の15年に養子縁組したが、同刑務所長が手紙を出すことを認めなかった。
(2019年04月10日22時32分 時事ドットコム)

天国のパートナーに「勝ったよ」 同性愛の受刑者カップル、手紙出せない処分は「違法」

 刑務所で同性愛関係となり、養子縁組をした受刑者同士の手紙のやり取りを認めないのは違法だとして、男性らが国に慰謝料などを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁(垣内正裁判長)は4月10日、養子縁組は有効だと示したうえで、刑務所の処分を違法とし、男性らの請求を認めた。原告代理人によると、同性愛者間の養子縁組を認めた裁判例は初めて。
 1審の東京地裁(林俊之裁判長)は2017年7月、男性らの請求を棄却していた。1審判決が出る前に急病で亡くなった原告の1人(Aさん)のかわりをAさんの両親が受け継いだ。
 この日、もう1人の原告男性は東京・霞が関の司法記者クラブで会見し、「(Aさんに)勝ったよと伝えたい。生きてこのときを迎えさせたかった」と涙ぐんだ。
 ●「ともに助け合い、支え合っていこう」果たされなかった約束
 代理人の海渡雄一弁護士らの説明によると、男性とAさんは2014年、刑務所の特別改善指導教育でグループワークを受ける中で親密になった。「(出所後は)ともに助け合い、支え合っていこう」と誓って、2015年5月に養子縁組を結んだという。
 社会に出てからAさんと支え合うーー。その約束は果たされることはなく、手紙のやり取りも許されなかった。
 Aさんが亡くなった後、男性は寝食もままならなくなってしまったという。そんな中、ある刑務官が「俺たちの体制が間違っていたんだな」と漏らしたそうだ。
 「刑務官の中には『人』として見てくれた職員もいました。旧監獄法から現在の法(刑事収容施設法)に切り替わってから、刑務所の待遇はよくなったと言われがちです。しかし、変わったのはうわべだけで中身はまったく変わっていません」と男性は語った。
 ●同性愛関係にある人同士でも養子縁組は「有効」
 男性とAさんが同性愛関係にあることがわかってから、男性はAさんとは別の刑務所に移送された。2人は手紙のやり取りをしながら支え合おうと話していたが、2015年6月、男性がAさんに信書の発信を申し出ると刑務所が禁止した。
 受刑者とその親族との信書のやりとりは禁止できないと法律で規定されている(刑事収容施設法128条)。2人は養子縁組をしていたのに、なぜ「親族」にあたらないのか。
 1審は、この養子縁組が、本当に養親と養子の設定を欲したものではなく、刑務所収容中のやりとりの手段を確保するためだけのものだとして、無効と判断した。
 しかし、控訴審で、東京高裁の垣内裁判長は、同性愛関係を続ける目的で、同居して生活したり、精神的に支え合ったりするなどの場合は養子縁組が認められると判断した。
 ●「差別・偏見のない国になってほしい」
 今回の判決の意義は、受刑者の権利という側面だけではなく、裁判所が同性愛関係にある人同士の養子縁組を有効だと判断した点にもある。
 海渡弁護士によると、同性愛者間の養子縁組を認めた裁判例はこれまでないという。「すべてのLGBTの人たちにもこういう形で家族関係を築くことができたということを示すことができた画期的な判決です」(海渡弁護士)。
 男性は「今回の判決をきっかけに、幸せな社会生活を送れるような差別・偏見のない国になってほしいと願っています」と訴えた。
(2019年4月10日 18時25分 弁護士ドットコム)