裁判官 ☆ データベース - 長野地松本支判H31.3.25 業務上過失致死被告事件
入所者がおやつ詰まらせ死亡、介助の准看護師に有罪判決

 2013年12月、長野県安曇野市の特別養護老人ホームで、女性入所者(当時85)がおやつをのどに詰まらせ、1カ月後に死亡したとされる事件があった。長野地裁松本支部(野沢晃一裁判長)は25日、食事の介助中に女性に十分な注意を払わなかったなどとして、業務上過失致死の罪に問われた長野県松本市の准看護師山口けさえ被告(58)に、求刑通り罰金20万円の有罪判決を言い渡した。
 起訴状などによると、山口被告は同年12月12日午後、同ホームの食堂で女性におやつのドーナツを配った。検察側は女性には口に食べ物を詰め込む癖があったのに、被告は他の利用者に気を取られ、女性への十分な注意を怠ったほか、窒息などに備えておやつがゼリーに変更されていたのに、その確認も怠ったなどと主張した。
 一方、被告側は女性は脳梗塞で死亡したと考えるのが最も合理的で、ドーナツによる窒息が原因で死亡したとの検察側の主張を否定。その上で女性の食べ物を飲み込む力には問題がなく、食事の様子を注視しないといけない状況ではなかった▽ゼリーへの変更は女性が食べ物を吐いてしまうことが理由で窒息対策ではなく、確認の義務はなかった、などとして無罪を求めていた。
 食事介助中の出来事を罪に問うことは介護現場での萎縮を招くとして、裁判は介護関係者の強い関心を呼んだ。無罪を求める約44万5500筆の署名が裁判所に提出された。弁護団も結成され、公判はこの日の判決も含めて23回に及んだ。(佐藤靖)
(2019年3月25日13時49分 朝日新聞)

介助中事故 准看護師に有罪 安曇野の特養女性死亡 地裁松本支部判決

 安曇野市の特別養護老人ホーム「あずみの里」で2013年12月、入居者の女性=当時(85)=がおやつのドーナツを食べた後に死亡した事故で、注意義務を怠ったとして業務上過失致死罪に問われた松本市の准看護師山口けさえ被告(58)の判決公判は25日、地裁松本支部であり、野沢晃一裁判長は求刑通り罰金20万円の有罪判決を言い渡した。
 介護施設での食事中の事故について職員の刑事責任が問われた裁判は異例で、全国の福祉、医療関係者の注目を集めてきた。県内の介護、医療関係者でつくる支援団体は無罪判決を求める署名約44万5千筆を同支部に提出。刑事訴追は介護現場を担う職員の萎縮につながりかねない―として、全国で勉強会を開くなどしてきた。職員の注意義務を厳しく求めた司法判断と言え、介護現場に大きな影響を与える可能性がある。
 起訴状などによると、被告は13年12月12日午後3時20分ごろ、女性にドーナツを提供して窒息させ、翌年1月16日、心肺停止による低酸素脳症で死亡させたとしている。検察側は、女性は食物を口に詰め込む癖があり、被告には窒息などの事故を防止するためにおやつはゼリー状の形態で提供し、動静を注視する義務があったのに怠った―などと指摘していた。
 弁護側は女性に摂食・嚥下(えんげ)障害はなく、被告が動静を注視しなければならない状況ではなかった―と主張。おやつの形態を看護職員がチェックする態勢になっておらず、ドーナツの状態などから窒息ではなく脳梗塞や心疾患などで死亡した可能性があるとして無罪を訴えていた。
 この日、開廷前に地裁松本支部で行われた傍聴券21枚の抽選には福祉関係者ら302人が列をつくった。
(3月25日 信濃毎日新聞)

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