裁判官 ☆ データベース - 「夫婦は……分かち合うもの」 妻殺害の法廷で裁判長が語った異例の「夫婦論」
「夫婦は……分かち合うもの」 妻殺害の法廷で裁判長が語った異例の「夫婦論」

 茨城県取手市の民家敷地で昨年7月、弥谷麻衣子さん(当時30)の遺体が見つかった事件。千葉地裁は6月12日、殺人罪などに問われた夫で元銀行員の鷹仁被告(37)に懲役15年(求刑懲役17年)、殺人幇助罪などに問われた義母の恵美被告(64)に求刑を上回る懲役7年(求刑懲役6年)を言い渡した。
 求刑超え判決は珍しいが、珍しいのはそれだけではなかった。岡部豪裁判長は、判決後に被告を諭す「説諭」を約4分間も行ったのだ。
 社会部記者が解説する。
 「説諭はある種、裁判長や裁判官の思いを表すオリジナルのメッセージ。しなくてもいいのですが、あえてする際には強く個性が出るところです。特に岡部裁判長は、説諭に味があるとして、傍聴マニアらから一目置かれる存在です」
 岡部裁判長は東大卒。1991年に東京地裁からキャリアをスタートさせ、18年4月から千葉地裁部総括判事に就任。最もインパクトを残したのは13年の福岡地裁で、家庭内暴力をしていた男が、元妻をかくまった元妻の友人を殺害した事件の判決だ。
 「懲役24年の判決を言い渡した後、『遺族は死刑を求めた。私たちも死んでほしいと思っている』と被告を見据えて説諭し、『生物的な意味ではなく、人格的な意味で』と付け加えた。賛否が巻き起こりましたが、人間味を感じさせるものでした」(同前)
 「夫婦は1人で背負いきれないものを分かち合うもの……」
 さて今回の説諭。まず、「(鷹仁が麻衣子さんを)本当に殺すという認識はなかった」と無罪を主張していた恵美に対し、「犯行を止める機会と能力のあった唯一の人物だったのに、その能力を鷹仁被告の背中を押すことに使ってしまった。今なお自分を正当化し、自分に嘘をついている」と、ズバッと直言した。
 「妻の暴力で精神的に追い詰められていた」と主張した鷹仁に対しては「苦しかった気持ちは理解できるが、一番苦しかったのは麻衣子さんではないか。あなたに攻撃的になったのは愛していたあなたへのSOSだったのではないか」として、夫婦論を語り出した。
 「夫婦は1人で背負いきれないものを分かち合うもの。麻衣子さんとの最初の出会いから最後まで楽しい記憶を思い出してください」
 2人は返事こそしなかったが、鷹仁は胸に響いたのか、時折頷いて聞いていたという。
(2019/06/23 「週刊文春」編集部)