報道等をもとに日本の裁判官の情報を収集、掲載しています。

22歳男に無期懲役、名古屋女性強殺で地裁判決

 2017年、名古屋市西区のパート従業員の女性が殺害され、仮想通貨「ビットコイン」をだまし取られた事件で、強盗殺人や電子計算機使用詐欺などの罪に問われた無職、西田市也被告(22)の裁判員裁判の判決が6日、名古屋地裁であった。斎藤千恵裁判長は「人命を著しく軽視した犯行で強い非難に値する」として求刑通り無期懲役を言い渡した。
 判決理由で斎藤裁判長は「計画性の高い犯行を主導しており、結果も重大だ。反省も見られず、被告に酌むべき事情はない」と指摘した。
 公判では事件当時、西田被告に刑事責任能力があったかが争われた。弁護側は「心神喪失状態で行動をコントロールできなかった」と無罪を主張したが、斎藤裁判長は責任能力を認定。「財産を奪う目的で状況に応じて一貫して合理的に行動しており、精神障害での通院歴もない」と述べた。
 判決によると、西田被告は17年6月、野田みゆきさん(当時53)から現金約5万円などを奪い、首を絞めて殺害。滋賀県多賀町の山中に遺棄した。同7月には、野田さんのビットコイン用の口座に不正アクセスし、コインを自身の口座に移してだまし取った。
 共謀したとして起訴された無職の少年(19)は、強盗殺人罪などで懲役18年が確定している。
(2019/2/6 11:30 日経新聞)

愛知・女性遺棄 ビットコイン殺人 「利欲的で計画性高い」 無期判決 名古屋地裁

 名古屋市西区のパート従業員、野田みゆきさん(当時53歳)が殺害され、仮想通貨ビットコインを不正に引き出された事件の裁判員裁判で、名古屋地裁(斎藤千恵裁判長)は6日、無職の西田市也被告(22)に強盗殺人、死体遺棄、電子計算機使用詐欺の罪で求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。事件を主導したと認定し「利欲的で計画性が高く、凶悪な犯行」と指摘した。
 判決は、共謀した元アルバイトの少年(19)=強盗殺人、死体遺棄の罪で懲役18年確定=から思いとどまるよう懇願されても断念しなかったとして「人命軽視の態度が甚だしい」と批判した。その上で「被害者の苦痛や恐怖は計り知れず、遺族が厳重処罰を求めるのは当然」と述べた。
 弁護側は、事件当時は解離性障害で心神喪失状態だったとして無罪を主張した。判決は「殺害して財産を奪う目的に向け、一貫して合理的に行動している」と完全責任能力を認めた。
 西田被告は公判の被告人質問で「ゲームの敵役を倒し、報酬を得られるような感じだった」と述べたが、判決は「ゲームに例えたにすぎず、動機や善悪の理解の異常性をうかがわせるものではない」と判断した。
 判決によると、西田被告は少年と共謀して2017年6月18日、滋賀県多賀町周辺で野田さんから現金約5万円やタブレット端末などを奪い、首を絞めるなどして殺害し、同20日に遺体を入れたキャリーバッグを多賀町の山中に埋めた。さらに西田被告は同年7月3日と5日、野田さんの専用口座からビットコイン約35万円分を自身の口座に移した。【野村阿悠子】
(2019年2月7日 毎日新聞)

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平成29年(わ)第1647号,第2179号強盗殺人,死体遺棄,電子計算機使用詐欺被告事件
判決
主文
被告人を無期懲役に処する。
未決勾留日数中420日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
第1被告人は,Aと共謀の上,
1B(当時53歳)を殺害して同人から金品を強取しようと考え,平成29年6月1
8日午後6時56分頃から同日午後7時22分頃までの間に,滋賀県犬上郡a町内又
はその周辺において,同人に対し,同人を自動車のトランクに無理矢理入れるなどの
暴行を加えてその反抗を抑圧し,その頃,同町内又はその周辺において,その所有又
は管理する現金約5万円,商品券11枚(額面合計1万1000円),スマートフォ
ン,タブレット端末及びノート等42点(時価合計約6万8178円相当)を強取し
た上,同日午後7時40分頃から同日午後8時頃までの間に,同町大字b字cd番e
付近f川河川敷又はその周辺において,同人に対し,殺意をもって,地面に仰向けに
倒した同人の胸部に馬乗りになってその頸部を両手で絞め,その頸部にUSBケーブ
ルを巻き付けて絞めるなどし,よって,その頃,同所において,同人を頸部及び胸部
圧迫による呼吸障害等により死亡させて殺害し
2同日午後10時53分頃から同日午後11時1分頃までの間に,同町大字b字gh
番iの別荘において,同別荘建物脇にキャリーバッグに入れた前記Bの死体を置いて
隠匿し,さらに,同月20日午前10時5分頃から同日午前11時41分頃までの間
に,同別荘敷地内において,油圧ショベルを用いて地面に穴を掘って,前記状態の同
死体を土中に埋め,もって死体を遺棄し
第2被告人は,不正に入手した,インターネット上で流通するビットコイン等の仮想通
貨の交換業を営むC株式会社が運営する取引システムに設けられた前記B名義のユー
ザー口座に係るパスワード等の情報を用いて,財産上不法の利益を得ようと考え,
1同年7月3日午前零時35分頃,岐阜県大垣市j町k番地lmの当時の被告人方に
おいて,自己のスマートフォンを操作して,インターネットを経由し,前記C株式会
社が仮想通貨の送信等の事務処理に使用する電子計算機であるサーバコンピュータに
対し,前記B名義のユーザー口座のパスワード等を用いて,同口座内のビットコイン
0.46BTCを前記取引システムに設けられた被告人が管理する被告人名義のユー
ザー口座に送信する旨の虚偽の情報を与え,同サーバコンピュータに記録された同口
座の残高を0.46BTC増加させて,財産権の得喪及び変更に係る不実の電磁的記
録を作り,よって,ビットコイン0.46BTC相当の財産上不法の利益を得
2同月5日午後10時4分頃,前記当時の被告人方において,自己のスマートフォン
を操作して,インターネットを経由し,前記サーバコンピュータに対し,前記B名義
のユーザー口座のパスワード等を用いて,同口座内のビットコイン0.79BTCを
前記被告人名義のユーザー口座に送信する旨の虚偽の情報を与え,同サーバコンピュ
ータに記録された同口座の残高を0.79BTC増加させて,財産権の得喪及び変更
に係る不実の電磁的記録を作り,よって,ビットコイン0.79BTC相当の財産上
不法の利益を得
たものである。
(弁護人の主張に対する判断)
1争点
弁護人は,被告人は本件犯行当時,解離性障害により責任能力がなかった合理的疑い
があるから無罪である旨主張する。当裁判所は,被告人には完全責任能力があり有罪で
あると認めたので,その理由について説明する。
2前提事実
次の事実は当事者間に争いがなく,証拠によって優に認められる。
⑴被告人は,知人を介して知り合った被害者B(以下「被害者」という。)から,同
人が携わっていた仮想通貨ビットコイン関連のネットワークビジネスの誘いを受ける
などしていたが,平成29年6月上旬以降,インターネットで「死体埋める」など
と検索するとともに,被害者に連絡し,同月12日に会う約束を取り付けた。一方で,
被告人は,親しい友人であるAに対し,「殺したい女性がいる。2000万円くらい
ビットコインを持っている。勧誘がしつこくてむかつく。」などという話をした上で,
殺害への協力を求め,同月12日に実行する予定になったが,当日,Aがおじけづい
て仕事を口実に被告人に断りの連絡を入れたことから,被告人は被害者との面会約束
を取り消した。
⑵被告人は,同月18日,被害者に会い,車内で気付かれないように被害者に催涙ス
プレーをかけて目を見えなくした上で,事情を知らせないままAを呼び出し,被害者
に気付かれないように乗車させ,AとLINEのメッセージで人気のない場所につい
てやり取りした。被告人は,病院に着いたふりをして被害者を下車させ,Aとともに
被害者を車のトランクに押し込んだ後,走行中の車内で被害者のバッグ等を物色した。
そして,殺害現場で,被告人が車のトランクから出てきた被害者を倒し,Aに「やれ。」
などと言い,Aが被害者に馬乗りになって両手で首を絞めるなどして被害者を殺害し
た(USBケーブルで首を絞めた点については,被告人がAと一緒に行ったのか,A
一人で行ったのか争いがある。)。被告人は,被害者と会う前に買ったクラフトテー
プを被害者の顔が見えないように巻き付け,Aとともに結束バンドで被害者の手足を
拘束し,あらかじめ用意したキャリーバッグに被害者を入れて親族が管理する別荘に
運んだ。その後,被告人は油圧ショベルを手配し,同月20日,被害者の遺体が入っ
たキャリーバッグを同別荘敷地内の土中に埋めた。
⑶被告人は,被害者のバッグ内の現金及び商品券の売却代金をAと分けたほか,同年
7月3日以降2回にわたり,同バッグ内のノートに記載されたパスワード等を用いて
被害者名義口座のビットコインを自己名義口座に移し,これらを換金した。なお,被
告人は,被害者が1BTC程度は持っていると思っていたほか,被害者がビットコイ
ンの取引に必要なパスワード等をノートに記載していることを知っていた。
3検討
前記2の事実によれば,被告人が,被害者が持つビットコイン等の財産を奪うという
利欲的目的で被害者の殺害を企て,Aを犯行に引き込み,被害者を呼び出し,状況に応
じた行動をとって被害者の所持金品を奪うとともに被害者を殺害し,あらかじめ用意し
たキャリーバッグに遺体を入れ,事前にインターネットで調べた情報に基づき,犯行発
覚を避けるべく重機を使って遺体を埋め,被害者の所持品から入手したパスワード等を
用いて,かねて計画のとおり被害者のビットコインを自分のものにしたことが明らかで
ある。このように,本件は利欲的動機に基づく計画的な犯行で,被告人が,被害者を殺
害してビットコイン等の財産を奪うという目的達成に向けて,一貫して合理的に行動し
ていることからすると,被告人の責任能力に問題はなく,完全責任能力があったものと
認められる。
4弁護人の主張について
これに対し,弁護人は,被告人には解離性障害の疑いがあり,犯行動機が理解できず,
行為の善悪の判断が異常であり,犯行時の人格が普段の人格とは異質であるから,責任
能力がなかった合理的疑いがある旨主張する。
この点につき,司法ソーシャルワークを専門とする大学教授である証人D(以下「D」
という。)は,心理検査の結果等から解離性障害の疑いがある旨供述する。しかしなが
ら,被告人には精神障害による入通院歴はなく,生育歴に解離性障害を疑わせるような
エピソードも見当たらず,被告人に本件犯行時の記憶の欠落はなく,Aの供述において
も本件犯行時の被告人に普段と異なる様子はなかったことなどからすると,Dの見解に
は疑問があり,たやすく信用することはできない。また,D自身,事件当時の被告人の
心理状態は不明であり,解離性障害の疑いが犯行にどのように影響したのかについては
述べることができないというのであるから,仮に心理検査の時点で解離性障害の疑いが
あったとしても,本件犯行との結び付きを欠いており,責任能力に疑いを生ずるものと
はいえない。
また,弁護人は,被告人の犯行動機の一つに利欲目的があったことは認めた上で,被
告人が,―藺侈未里箸から被害者に殺意を抱いた,被害者は魔物であり,倒すのは
正しいことで,取得したビットコインはその報酬であるなどと述べている点をとらえて,
犯行動機が理解不能で,行為の善悪の理解が異常である旨主張する。かかる被告人の動
機に関する供述の真偽は置くとしても,前記,砲弔い討蓮と鏗下圓ら誘いを受けたネ
ットワークビジネスに関して周囲から詐欺の可能性を示唆されたことや,被害者に対す
る被告人のいら立ちないし嫌悪感の反映とみることができる。前記△砲弔い討蓮と鏐
人の説明によれば,自分が主人公で,仲間であるAと協力して,敵である被害者を倒し
て報酬を手に入れるというもので,本件犯行をゲームに例えているにすぎず,結局のと
ころ,いずれも犯行動機の異常性や,行為の善悪の理解の異常をうかがわせるものでな
いことは明らかである。
なお,弁護人は,犯行時の人格の異質性を主張するが,A並びに被告人の雇用主及び
友人らの供述に照らして,人格の異質性はうかがわれない。
したがって,弁護人の主張は採用できず,他に責任能力を疑わせるような事情も見当
たらない。
5結論
以上のとおり,被告人につき,本件犯行当時,責任能力がなかったり,著しく低下し
ていたりした疑いはなく,完全責任能力があったものと認められる。
(量刑の理由)
本件は,被害者の保有するビットコイン等の財産を手に入れるため,Aと共謀の上,被
害者を車のトランクに押し込み,金品を奪った上で,被害者を殺害し,犯行発覚を免れる
ためその死体を土中に埋めた後,被害者から奪ったノートに記載されたパスワード等を利
用して,被告人が単独で,被害者名義の口座から被告人名義の口座にビットコインを移し
て財産上不法の利益を得たという,強盗殺人,死体遺棄,電子計算機使用詐欺の事案であ
り,利欲的で計画性の高い凶悪な犯行である。
被告人は,死体の処理方法等をインターネットで検索し,Aを犯行に引き込み,死体を
入れるためのキャリーバッグを用意した上で被害者を呼び出し,催涙スプレーを用いるな
どして被害者を車のトランクに押し込み,所持金品を奪ってパスワード等を入手し,Aに
指示して殺害行為の大半を実行させた上,重機を借りて土中深くに死体を埋めるなどして
おり,本件犯行を自ら計画し,主導したものであり,まさに本件の主犯である(なお,信
用できるAの供述によれば,被告人自身もAと一緒にUSBケーブルで被害者の首を絞め
たことが認められる。)。当初の犯行予定日に,おじけづいたAが仕事を口実に犯行への
参加を渋り犯行をやめるよう懇願したにもかかわらず,被告人は犯行を断念することなく,
数日後に被害者を呼び出した上,事情を告げぬままAを呼び出して本件犯行に至っており,
犯意は強固で人命軽視の態度が甚だしく,強い非難に値する。
強度の暴行により命を奪われた被害者の苦痛や恐怖,絶望感は計り知れず,結果は重大
であり,遺族が被告人に対する厳重処罰を求めるのも当然である。被告人は,本件犯行の
うちUSBケーブルの点を除く事実関係についてはほぼ認めているが,反省が深まってい
るとはいえず,被告人が若年であることを踏まえても,刑を定めるに当たって酌むべき事
情は乏しいと言わざるを得ない。
以上の事情に基づき,被害者1名の強盗殺人の事案の量刑傾向も踏まえると,被告人を,
主文のとおり,無期懲役刑に処するのが相当である。
(求刑無期懲役)
平成31年2月7日
名古屋地方裁判所刑事第2部
裁判長裁判官 齋藤千恵
裁判官 近藤和久
裁判官 鈴木真理子

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