報道等をもとに日本の裁判官の情報を収集、掲載しています。

小6息子刺殺、父親の控訴棄却 受験勉強指導

 名古屋市北区のマンションで平成28年8月、受験勉強を指導していた小学6年の長男=当時(12)=を刺殺したとして殺人罪に問われた佐竹憲吾被告(51)の控訴審判決で、名古屋高裁(堀内満裁判長)は27日、懲役13年とした一審名古屋地裁判決を支持し、控訴を棄却した。弁護側は上告する方針。
 殺意を認定した7月の一審判決を不服として弁護側が控訴。傷などの状況から意図せず刃物が刺さった可能性があるほか、勉強させるため刃物で脅した行為には、被告の自閉スペクトラム症の影響があったと訴えた。
 一審の裁判員裁判判決によると、佐竹被告は28年8月21日、自宅マンションで長男、崚太君の胸を包丁で刺し、失血死させた。
(2019.11.27 15:51 産経新聞)

中学受験巡り小6長男刺殺、父親に二審も懲役13年

 2016年8月、名古屋市北区のマンションで、中学受験の勉強を巡って小学6年の長男を刺殺したとして、殺人罪に問われた父親の佐竹憲吾被告(51)の控訴審判決が27日、名古屋高裁であった。堀内満裁判長は、懲役13年とした一審・名古屋地裁の裁判員裁判判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。
 弁護側は控訴審で「包丁が偶然刺さった可能性がある」と殺意を否定し、傷害致死にとどまると主張。堀内裁判長は判決理由で、傷の深さが9センチあったことや、佐竹被告が事件後に「息子を刺した」と供述していたことなどから退けた。
 堀内裁判長は懲役13年とした一審の量刑判断についても、「実父による殺害の重大さを考えると妥当だ」と述べた。
 控訴審判決によると、佐竹被告は16年8月21日、自宅マンションで長男の崚太さん(当時12)の胸を包丁で刺して殺害した。
(2019/11/27 17:30 日経新聞)

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令和1(う)293  殺人被告事件
令和元年11月27日  名古屋高等裁判所  棄却
主文
本件控訴を棄却する。
当審での未決勾留日数中70日を原判決の刑に算入する。
理由
本件控訴の趣意は,弁護人連名作成の控訴趣意書及び控訴趣意書訂正・補充書記
載のとおりである。論旨は,事実誤認及び量刑不当の主張である(理由不備,訴訟
手続の法令違反も主張しているが,その実質は事実誤認の主張に帰する)。
第1事実誤認の主張について
1原判決が認定した事実の要旨は,被告人が,当時12歳の長男の胸部を包丁
で殺意をもって1回突き刺して殺害した,というものである。所論は,被告人
は,被害者を包丁で突き刺しておらず,殺意もなかったから,これらの事実を
認めた原判決には事実誤認があるという。
2原判決は,要旨以下のとおり説示して,判示事実を認定した。
傷の状況とそこから認定できる事実
被害者の胸部右側には,被告人が犯行直前に手に持っていた鋭利な包丁(以
下「本件包丁」)によって生じた刺し傷があり,傷の深さ約9僂如け心房前
壁を突き抜いていた。傷口及び傷の内部の形状は,乱れがなく整っていた。
被害者の遺体を解剖したA医師は,胸骨右縁が約0.9兩擇蟾まれており,
凶器を刺したときに強い力が加わっていたと考えられる旨供述しているが,
その内容は合理的である。切り込まれているのは胸骨ではなく肋軟骨である
とするB医師の供述は,説明内容の前提の正確性や判断の合理性に疑問があ
る。
以上によれば,本件包丁は,動いていない状態の被害者の胸部に,胸骨を
切り込むほどの強い力で,約9僂凌爾気泙念豕い忙匹憩れられたと認めら
れる。
犯行に至る経緯
被告人は,被害者に中学受験のための勉強を教えるにあたり被害者が反抗
的な態度を見せたときに,これまでも,カッターナイフを向けたり,ペティ
ナイフを見せ,あるいは机や教科書に刃を立てたり,さらに,本件包丁を示
すなどして怖がらせていた。
犯行の前日,勉強態度について説教した際には,本件包丁を被害者の体に
当て,足に浅い切り傷を負わせた。
犯行当日の状況について被告人は以下のように述べる。被害者の態度に苛
立ち,包丁で床を叩いて被害者を近くに呼び寄せ説教した。さらに念押しし
ようと,被害者の背中に左腕を回してその左肩辺りをつかみ,右手に持った
包丁を被害者の目の前にかざしたところ,被害者が泣き出したので,苛立ち
を募らせ,左手で口を塞いだ。その後,被害者に呼ばれて近付くと,被害者
の胸に穴が開いていた。被害者に本件包丁が刺さったことの記憶はない。
犯行後の言動
被告人は,被害者を搬送した病院で,准看護師や警察官に自分が刺したな
どと発言した。
検討
以上のことからすると,被告人が気付かないうちに本件包丁が偶然被害者
に刺さった可能性や,被害者が自分で胸部を刺した可能性は考え難く,これ
に犯行に至る経緯や犯行後の被告人の言動も併せ考えると,被告人は,被害
者の態度に激高し,本件包丁を被害者の胸部に突き刺したと推認される。
自己の行為の危険性を認識できなかった事情は見当たらないから,殺意も
認められる。
3当裁判所の判断
傷の位置,形状,深さから,被告人の意図しなかった結果によるものであ
る可能性や,被害者の意思による結果の可能性を否定し,犯行前,被告人が
被害者の態度に苛立ちを募らせていたという経緯や犯行後に自分が刺したと
周囲に述べたことを踏まえ,被告人が被害者の胸部を突き刺したこと,それ
が殺意によるものであったことを認めた原判決の判断過程は,論理則・経験
則等に照らし正当である。原判決に事実の誤認はない。
所論の検討
ア所論は,切り込まれたのは肋軟骨であるのに,切り込まれたのはより硬
い胸骨であるとし,胸骨を切り込むほどの強い力で刺したことを殺害行為
の存在及び殺意の有無を推認するための間接事実の一つとした原判決を論
難する。この点,原審では切り込まれたのが胸骨か肋軟骨かについて医師
二名による証人尋問が行われているところ,切り込まれた場所が胸骨か肋
軟骨かの違いは,そこに加えられた力の大きさの違いを推し測る事情とは
なり得るものの,その余の諸事情から,刺したのは被告人であり殺意も優
に認められる本件事案においては,有意性のある争点とはいい難い。所論
は採用の限りでない。
イ所論は,被害者の血の飛沫状況,本件包丁が落ちていた場所,リビング
のカーペットのずれなどに照らすと,被告人と被害者が激しく動き,当初
の位置から窓の方へ移動し,揉み合う形になり,その際,被害者が前方に
倒れ込んで本件包丁が刺さった可能性があるという。
しかし,犯行現場の写真を見ても,カーペットのずれはわずかで,揉み
合いを推定するのは困難である。血の飛沫状況については,刺された被害
者がその後動いて付着した可能性も考えられる。本件包丁が落ちていた場
所も含め,結局,所論がいう可能性はいずれも抽象的な可能性に過ぎない
といわざるを得ない。所論は理由がない。
ウその他所論は種々主張するが,いずれも理由がない。
事実誤認の論旨は理由がない。
第2量刑不当の主張について
1原判決は,保護者である被告人が当時12歳の長男を刺殺した結果は重大で
あること,受験指導の名の下,暴力的な言動からやがては包丁を体に当てるな
ど,独善的な行為をエスカレートさせ,何ら落ち度のない被害者に苛立ちを募
らせた末に激高して犯行に及んだという動機・経緯は身勝手で厳しい非難に値
すること,積極的に死の結果を望んだわけでなく,突発的犯行ではあるものの,
犯行態様は危険であることなどからすると,子に対する殺人の事案としては非
常に重い事案であるとし,犯行直後に被害者を病院へ運び込んだこと,さした
る前科がないこと,後悔の弁を述べていること等も考慮し,懲役13年の刑が
相当であるとした。
原判決は,実父による子の殺害という事案の重大性,動機・経緯の身勝手さ,
犯行態様の危険性を正当に評価しており,同種事案の中での位置づけを含め,
その量刑判断は妥当である。
2所論の検討
ア所論は,被告人が刃物を使って被害者を指導していたのは,被告人には特
定不能の広汎性発達障害があり,そのため被害者の立場に立って心情を理解
し,刃物を使う以外の指導法を考える柔軟な思考力が欠如していたためであ
るという。しかし,被告人に精神障害はないとする原判決の判断は専門家の
知見を踏まえた合理的なものであって正当である。所論は前提を異にするも
ので失当である。
イ所論は,本件包丁を強い力で突き刺したとは認定できないのに,危険な犯
行態様とした原判決は不当であるというが,人体の枢要部である胸部に9
もの深さで鋭利な包丁を突き刺す行為それ自体が危険であることは明らかで
ある。所論は採用できない。
3量刑不当の論旨に理由はない。
第3結論
よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却し,当審での未決勾留日数の
算入について刑法21条を適用する。
令和元年11月28日
名古屋高等裁判所刑事第1部
裁判長裁判官 堀内満
裁判官 山田順子
裁判官 大久保優子

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