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元妻宅に拳銃と実弾保管、暴力団幹部に逆転実刑 名古屋高裁

 配下の組員に指示して自分の元妻宅に拳銃と実弾を預け、保管したとして銃刀法違反(加重所持)の罪に問われた指定暴力団任侠山口組傘下組織の幹部、百瀬雅樹被告(42)=長野県松本市=の控訴審で、名古屋高裁(山口裕之裁判長)は21日、無罪とした一審名古屋地裁判決を破棄し、懲役7年の実刑判決を言い渡した。
 組員(40)=同罪などで公判中=への指示の有無などが争われたが、山口裁判長は「無断で幹部の近親者宅に拳銃を預けたという組員の供述は不自然で信用できない」と指摘し、「被告が組員に指示して元妻宅に持参させたとみるのが自然で合理的だ」と判断した。
 判決によると、百瀬被告は平成29年6月に松本市内の元妻宅で拳銃1丁と実弾10発を所持した。
 捜査関係者によると、当時の百瀬被告の所属は指定暴力団神戸山口組系だった。
(2018.8.21 11:46 産経WEST)

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平成30(う)132  銃砲刀剣類所持等取締法違反
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役7年に処する。
原審における未決勾留日数中130日をその刑に算入する。
理由
1控訴趣意は控訴趣意書(検察官作成)のとおりであり,答弁は答弁書,最終
意見メモ(弁護人作成)のとおり。論旨は事実誤認(原判決は共謀を認めず無罪。
共謀をいう。)の主張である。
2公訴事実は「被告人は,甲と共謀の上,法定の除外事由がないのに,平成2
9年6月14日,長野県松本市ab丁目c番d号乙方において,回転弾倉式けん銃
1丁をこれに適合する実包10発と共に保管して所持した。」というのである。
3⑴関係証拠によれば次の事実が明らかに認められる。々辰亙神29年(以
下年省略)5月30日(午後9時36分過ぎ)頃乙方を訪れて公訴事実記載の回転
弾倉式けん銃1丁及び適合実包10発(本件けん銃等)を預けた。■況遑隠監
(本件当日)乙方の捜索(本件捜索)が行われ,乙方にあった黒色バッグ内から本
件けん銃等が発見された。9辰亘楫鐐楮の実施を知るや乙方に駆け付け,本件当
日午前8時頃乙方前路上で警察官丙に「あれは俺のだ。」「暗証番号も知っている。
間違いないだろう。」などと言った。と鏐霓佑亘楫鐐楮の実施を知るや同日午前
8時10分ないし15分過ぎ頃乙方に駆け付け,玄関前で立ち塞がる捜査員2名や
丙警察官に対し,(涙目で今にも泣き出しそうな表情をして)「あれは俺のだ。乙は
関係ねえ。そこをどけ。俺を逮捕すればいいだろう。」などと言い,乙方に向かっ
て大声で「あれは俺のだと言え。」などと言い,乙方から姿を見せた乙の母親に
「母ちゃん,すまねえ。」などと言った。ゲ気脇影午前8時30分頃本件けん銃
等所持の現行犯人として逮捕された。θ鏐霓佑錬況遑隠稿本件けん銃等所持の被
疑事実で通常逮捕された。Ч辰脇鰻遑横案自ら警察に出頭し本件けん銃等所持の
被疑事実で通常逮捕された。
⑵ア前記3⑴,里箸り甲は本件けん銃等を持参して被告人の元妻たる乙方に
預けた。被告人は暴力団組織である丁組の若頭,甲は被告人の舎弟,乙は被告人の
元妻であり,被告人は乙と離婚後も乙方で子供と遊んだり食事をしたりして交流し
ていた。乙供述によれば,被告人は従前より自身の荷物を甲に持参させて乙方に預
けることが度々あり,その際甲は乙に被告人の荷物であることを必ずしも明示的に
告げておらず,本件けん銃等も誰の物かを明示的に告げなかったものの,乙はこれ
を被告人の荷物と認識したこと明らかである(乙が殊更被告人に不利益な虚偽の供
述をする理由はなく,被告人や甲の供述とも概ね整合しており信用性に疑念はな
い。)。
イかかる被告人,甲,乙の関係,従前の経緯,甲が乙方に本件けん銃等を預け
た状況,乙の認識等に鑑みれば,本件けん銃等は被告人が甲に指示して乙方に持参
させたものとみるのが自然かつ合理的である。
甲は「第三者から本件けん銃等を取得したものの保管場所に困り,一時的な保管
場所として被告人に無断でこれを乙方に預けた。」旨いうけれども,暴力団組織に
所属する者が組織の幹部や兄貴分に無断でその近親者方に自分の私物たる禁制品の
けん銃等(もしその所在が警察に見付かれば当該近親者,幹部や兄貴分が身柄拘束
を含む厳しい捜査の対象となること必至のもの)を預けるなど言語道断であり,も
し発覚すれば苛烈な制裁を受けること必至の重大な不義理であって,甲が自ら所有
するけん銃等を被告人に断りなく乙方に預けるなど到底考えられない(弁護人はか
つて甲が被告人らに不義理をしていたことをいう[組の資金の管理を任されながら
それを使い込んだという。]けれども何ら裏付けがなく,仮にそのような事実があ
ったとして本件とは全く次元の異なるものであって,甲があえて乙方を選んで前記
供述にいうような挙に出るなど考え難い。)。甲供述は不自然不合理というほかなく
信用できない。
ウ関係証拠によれば,被告人は乙逮捕後自ら甲の元交際相手と連絡をとって2
人の食事会を設定し,甲は被告人逮捕を知りながら同食事会に参加して翌日まで警
察に出頭しなかったこと明らかである(被告人も自認)。仮に甲が独断で本件けん
銃等を乙方に預けたのであれば,甲は自ら所属する暴力団組織の幹部かつ兄貴分た
る被告人に大変な不義理をし,それにより被告人の元妻逮捕という重大な事態を招
いたこととなるから,被告人としてはすぐさま甲に警察への出頭を命じて乙の早期
釈放を働き掛けるとともに,甲に重い制裁を加えてしかるべきであるのに,実際に
は甲のために便宜を図るという温情ある態度をとっている。他方,甲としては自ら
の重大な不義理によって被告人の元妻,被告人が順次無実の罪で逮捕されるという
重大事態に直面したのであるから,直ちに出頭して両名の身の潔白を訴え出てしか
るべきであるのにそのような行動をとっていない。両名の事後の行動からみても甲
が独断で本件けん銃等を乙方に預けたとみる余地はない。
⑶ア更には(前記3⑴い里箸り)被告人自身,本件捜索の際乙方で「あれは
俺のだ。乙は関係ねえ。俺を逮捕すればいいだろう。」などと言った(「本件発言」。
本件けん銃等の所有者たることの自認。不利益供述)。
イ任意性を疑わせる事情一切ない。経緯状況(前記3⑴い里箸り本件捜索の
実施を知るや乙方に駆け付け,今にも泣き出しそうな目で警察官に訴え出た。)に
照らしても,本件発言は真実を吐露したものとみるほかない。
ウ被告人は「本件捜索により乙方から甲が預けた本件けん銃等が見付かった旨
を聞き,乙の逮捕を免れさせる目的であえて自らに嫌疑を向けさせるべく自らが責
任を負う覚悟で本件発言をした。」旨をいうけれども,暴力団組織の若頭たる被告
人が本件に何ら関与していないにもかかわらず,自分に対する不義理によって元妻
を重大事件に巻き込んだ舎弟分の罪を自ら引き受けることなど到底考えられない。
被告人の弁解は不自然不合理というほかなく信用できない。
⑷以上のとおりであるから被告人が甲に指示して本件けん銃等を乙方に持参さ
せこれを同所で保管して所持した事実(甲との共謀)は優に認定できる。
4⑴原判決は共謀認定には合理的な疑いが残るというけれども,多くの論理則
経験則違反を犯しており,到底是認できない(証拠状況,判断は前記3⑴から⑶ま
でのとおりであり破棄を免れない。)。
⑵原判決はA(前記3⑴,遼楫錣韻鷭禿預け事実[更には同△遼楫錣韻鷭
等発見事実],同⑵アの関係者の関係等),B(本件発言),C(前記3⑵ウの本件
後の状況)について本判決と概ね同様の事実(検察官主張事実)が認定できるとし
たが,結局前記4⑴のとおりいう。
⑶ア前記4⑵Aについて。「暴力団組織に所属する者が,その暴力団幹部や兄
貴分として慕っている人物及びその妻らに重大犯罪の嫌疑を及ぼしてしまうような
行為をしないなどという経験則があるとはいえない。」というけれども,ここで問
題とされるべきはかかる一般的抽象的な経験則の有無ではなく,本件具体の事実関
係(前記AのみならずC事実関係もあるのである。)の下で(前記3⑵イ第1段落
で「自然かつ合理的」と説示した事態の反対事態たる)同第2段落の甲供述にいう
事態が考えられるかである(考えられないこと同第2段落,同ウのとおり)。原判
決は経験則の捉え方自体に論理則経験則違反がある。乙は甲にとって被告人の指示
がなければ接触できない間柄でない,甲も暴力団員だから単独でけん銃を扱えると
もいうけれども,かかる指摘は意味を成さない。原判決は暴力団組織に所属する者
の厳格な上下関係,被告人,甲,乙の具体的関係や従前の経緯,本件委託物の性
質・内容(禁制品たるけん銃等),弁護人のいう従前の不義理との違い,更には被
告人と甲の事後の行動を踏まえて事実を適切に分析,評価していない点で論理則経
験則違反がある。
イ本件発言について。同発言に係る被告人の弁解(前記3⑶ウ)があり得ると
するけれども,かかる判断が不自然不合理たること前記3⑶ウ説示のとおり。原判
決は被告人の弁解が暴力団組織の上位者(たる被告人)が自らに対する不義理によ
り元妻逮捕という重大事態を招いた下位者(たる甲)の罪を被るという考え難いも
のであることを看過した点で論理則経験則違反がある。
ウ前記4⑵Cについて。被告人の行動は本件けん銃等所持罪で今後長期間の身
柄拘束や服役が見込まれる甲に対する兄貴分としての心遣いをしたものと,甲の行
動は被告人の好意を無にしないためのものとそれぞれみる余地があるというけれど
も,いかにも苦しい不自然な判断というほかはない。かかる原判決の判断はそれが
甲の被告人に対する重大な不義理を前提としても成り立ち得るものかの検討を看過
した点で論理則経験則違反がある。
エ前記4⑵AからCまでの事実が相俟って共謀が認定できるのに,原判決は各
事実の推認力を他の事実から切り離して評価し,それ自体では推認力を持たないと
して共謀の基礎事実から除外した点にも論理則経験則違反がある。
5論旨は理由がある(刑訴法397条1項,382条,400条ただし書適
用)。
6自判
(罪となるべき事実)
被告人は,甲と共謀の上,法定の除外事由がないのに,平成29年6月14日,
長野県松本市ab丁目c番d号乙方で,回転弾倉式けん銃1丁をこれに適合する実
包10発と共に保管して所持した。
(累犯前科)
1事実
平成24年3月27日長野地方裁判所松本支部宣告
傷害罪で懲役2年6月
平成26年7月27日刑執行終了
2証拠
前科調書(乙3)
(法令の適用)
1罰条刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項,1項,3条
1項
2累犯加重刑法56条1項,57条(同法14条2項の制限内)
3未決勾留日数(原審)の算入刑法21条
(量刑の理由)
けん銃加重所持である。
共犯者と共謀の上元妻方で回転弾倉式けん銃1丁を適合実包10発と共に保管し
て所持した。誠に危険悪質な犯行である。(暴力団の幹部たる)被告人が(舎弟分
たる)共犯者に指示して(情を知らない)元妻方に持参させたもので,被告人が首
謀者である。不合理な弁解に終始して共謀を否認しており反省の態度はみられない。
平成9年以降恐喝,道交法違反,覚せい剤取締法違反,傷害,職業安定法違反,公
務執行妨害,器物損壊,監禁罪による前科が7犯(うち服役前科5犯)ある。最近
のそれをみると平成18年4月公務執行妨害,器物損壊罪で懲役1年8月,平成2
1年10月傷害,監禁罪で懲役1年8月,平成24年3月傷害罪で懲役2年6月
(累犯前科)に処せられたのに,最終刑執行終了後2年11か月を経ずして本件に
及んだ。規範意識の鈍麻顕著である。刑責は重い。主文の刑相当。
(検察官溝口貴之出席)
平成30年8月21日
名古屋高等裁判所刑事第1部
裁判長裁判官 山口裕之
裁判官 大村陽一
裁判官 山田順子

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