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イラン人退去取り消し 逆転判決 家族に配慮

 家族が日本にいるのに強制退去とした名古屋入国管理局の処分は違法として、名古屋市港区のイラン人男性(34)が国に処分の取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決が28日、名古屋高裁であった。藤山雅行裁判長は男性の訴えを認め、請求を棄却した1審・名古屋地裁判決を取り消し、強制退去処分の取り消しなどを命じた。
 判決によると、男性は2010年、他人名義のパスポートで不法入国。名古屋市内で知り合ったブラジル人女性と14年に結婚し、長女を含めた家族3人で市内に住んでいた。15年3月、名古屋入管に出頭し、妻らとの同居を理由として在留を希望したが、同年8月に強制退去処分を受けた。
 藤山裁判長は「強制退去させれば日本で生活の基盤を持ち、日本で暮らすことを希望する家族と離れて暮らすことになり、家族に重大な不利益を及ぼす」と指摘。その上で「家族の不利益を軽視し、男性に不利な情状のみを重視した処分は裁量権を逸脱している」と述べた。
 名古屋入管は「判決内容を精査し、適切に対応したい」とコメントした。
(2017年09月29日 読売新聞)

平成29年9月28日判決言渡名古屋高等裁判所
平成28年(行コ)第94号退去強制令書発付処分等取消請求控訴事件
(原審・名古屋地方裁判所平成27年(行ウ)第131号)
主文
1原判決を取り消す。
2名古屋入国管理局長が平成27年8月27日付けで控訴人に対し
てした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく控訴人の異議
の申出には理由がないとの裁決を取り消す。
3名古屋入国管理局主任審査官が平成27年8月31日付けで控訴
人に対してした退去強制令書発付処分を取り消す。
4訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴人
主文同旨
2被控訴人
(1)本件控訴を棄却する。
(2)控訴費用は控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1本件は,イラン・イスラム共和国(以下「イラン」という。)国籍を
有する外国人男性である控訴人が,名古屋入国管理局(以下「名古屋入
管」という。)入国審査官から,出入国管理及び難民認定法(以下「入
管法」という。)24条1号(不法入国)に該当する旨の認定を受けた
後,名古屋入管特別審理官から,上記認定に誤りがない旨の判定を受け
たため,入管法49条1項に基づき,法務大臣に対して異議の申出をし
たところ,法務大臣から権限の委任を受けた名古屋入国管理局長(以下
「名古屋入管局長」という。)から,平成27年8月27日付けで控訴
人の異議の申出には理由がない旨の裁決(以下「本件裁決」という。)
を受け,引き続き,名古屋入管主任審査官から,同月31日付けで退去
強制令書発付処分(以下「本件処分」という。)を受けたため,本件裁
決及び本件処分の取消しを求めた事案である。
原判決は,控訴人の請求をいずれも棄却したため,控訴人が控訴した。
2前提事実,争点及び当事者の主張は,次項に当審における当事者の追
加主張を加えるほか,原判決「事実及び理由」の「第2事案の概要」
の2及び3に記載のとおりであるから,これを引用する。
3当審における当事者の追加主張
(控訴人)
控訴人の妻Aは,平成29年3月●日に控訴人との子であるB(以下
「B」という。)を出産した。本件裁決は,このように控訴人とAとの
婚姻関係が安定し,成熟したものと認める事情が生ずる見込みが高かっ
たにもかかわらず,その判断に必要な十分な調査期間を置かず,判断を
誤ったものである。
(被控訴人)
AがBを妊娠,出産したのは本件裁決後の事情である。
第3当裁判所の判断
1控訴人の退去強制事由該当性等について
前提事実によれば,控訴人は,入管法24条1号(不法入国)の退去
強制事由に該当する外国人であることが認められる。
2認定事実
前提事実,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認
められる。
(1)控訴人の本国における生活状況等
ア控訴人は,昭和58年6月●日,イランのテヘランにおいて,イ
ラン人の両親の間に,4人兄妹の第1子として出生し,イランの高
校及び専門学校を卒業した(乙9・3〜4頁,乙15・1頁)。
イ控訴人は,卒業後,イランの軍隊に入隊したが,兵役途中で逃げ
出し,タクシー運転手や友人・知人の依頼でパソコンの修理をして
稼動していた(甲13・1頁,乙9・4頁)。
ウ控訴人は,イラン国内で育ったため,母国語であるペルシャ語の
会話及び読み書きについて不自由はない。そのほかに,簡単な日常
会話程度のポルトガル語及び日本語を話すことができる。地名など
の簡単な日本語は読むことができるが,それ以外は平仮名・片仮名
も含めて読み書きできない(乙9・1〜2頁,乙15・2頁)。
(2)控訴人の本邦入国及び在留状況等
ア控訴人は,平成22年8月19日,他人である「C(1981年
9月●日生)」名義の旅券を行使し,東京入国管理局成田空港支局
入国審査官から,在留資格を「短期滞在」,在留期間を「15日」
とする上陸許可を受け,本邦に不法入国した(乙4)。
イ控訴人は,本邦で就労しながら生活する目的で不法入国したもの
であり,平成22年9月頃から平成23年6月頃まで名古屋市H区
所在のイラン料理店で稼動し,月額約12万円の報酬を受けてい
た。また,同年7月頃から同年10月頃まで,同市I区所在の自動
車修理店で稼動し,月額約8万円の報酬を得ていた(乙10・2
頁,5頁)
ウ控訴人は,父親から本邦に渡航するための費用の援助を受けたほ
か,上記自動車修理店を退職後,就業先が見つからなかったため,
父親から送金してもらった金銭を生活費等に充てていた(乙9・8
頁,乙10・5頁)。
エ控訴人は,平成23年10月頃,名古屋市H区所在のディスコで
Aと知り合い,同年12月頃から当時同人が居住していた名古屋市
内のアパートにおいて同居を始めた。以後,控訴人は,家事全般を
行い,家賃などの生活費は,マッサージ等の仕事をしていたAに負
担してもらっていた(甲12・2頁,乙10・5〜8頁,乙11・
8頁)。
オ前記のとおり,控訴人は,平成27年3月18日,自ら名古屋入
管に出頭して不法入国の事実を申告した(乙6)。そこで,名古屋
入管は,同年5月22日,控訴人らの生活状況を確認するため現地
調査を実施したところ,控訴人が申告した居住地においてA及びD
と同居していることが確認された(乙8)。
カその後,前記のとおり,控訴人は,平成27年8月5日,名古屋
入管収容場に収容され(乙1),同月27日付けで本件裁決を(乙
20),同月31日付けで本件処分を受けたが(乙2),同年12
月15日,仮放免された(乙22)。
(3)控訴人とAの婚姻に至る経過等
アAは,昭和58年12月●日,ブラジルにおいて,日本人男性で
あるE(以下「E」という。)とブラジル人女性との間の二女とし
て出生した。ブラジルで生育し,高校中退後の平成14年頃,在留
資格「日本人の配偶者等」,在留期間を「3年」として初めて本邦
に入国した。その後,一旦はブラジルに帰国し,ブラジル人男性で
あるFとの間に,長女D及び二女Gをもうけた(乙11・4〜5
頁,弁論の全趣旨)。
イAは,平成16年7月頃,再度,前記アと同様の在留資格及び在
留期間により本邦に入国した。入国後,Fと婚姻し,同人及び子ら
と共に本邦で生活していた。
しかし,AとFは,喧嘩が絶えず,別居するに至り,FがGを連
れてブラジルに帰国したため,事実上の離婚状態となった。Aは,
Fの帰国後,引き続き本邦においてDを養育してきた(乙11・5
〜6頁)
ウ前記のとおり,控訴人とAは,平成23年12月頃から同居する
ようになった。Aは,同居後,控訴人が不法入国し,ビザがないこ
とを打ち明けられたが,控訴人のために何とかしてあげたいと思う
ようになり,同居を続けた。そして,同居後6か月から1年ほど経
過した頃,控訴人の人柄やA自身及びDに対する接し方を見て,結
婚したいと思うようになった(乙11・8〜9頁)。
エAは,前夫であるFとの間に2人の子がいたことから,容易には
離婚に踏み切れなかったが,控訴人との生活を考え,Fと離婚した
いと考えるに至った。もっとも,同人が直ちに離婚に応じなかった
ため,ブラジル在住の弁護士にFとの離婚手続を依頼し,平成25
年8月5日,ようやくFとの離婚が成立した(乙11・9頁)。
オAは,平成26年3月頃,控訴人との子を妊娠したが,同年5月
17日,推定妊娠10週で流産した(甲6,甲18・1頁,A証人
15頁)。
カ控訴人とAは,平成26年10月22日,名古屋市J区長に対
し,婚姻届を提出した(乙5)。
キ控訴人及びAは,平成28年6月30日,在名古屋ブラジル総領
事館にも婚姻の届出を行い,これにより,Aの氏名は,Aとなった
(甲10,甲11・2頁)。
クAは,平成28年8月頃,控訴人との子であるBを妊娠し(甲1
4),平成29年3月●日,無事出産した(甲15〜17)。
(4)現在の控訴人ら家族及び親族の状況
ア現在,控訴人は,A,D及びBとともに名古屋市内のアパートで
生活し,主として家事を行っている。仮放免中である控訴人に収入
がないため,Aが指圧やリラックスマッサージ,ネイルケアの店舗
で勤務し,空いている時間に自宅でマッサージの仕事をすることに
より家族全体の生活費を賄うとともに,Aの父E存命中は,同人か
らDの学費として月2万円の援助を受けていた(甲11・1〜2
頁,A証人16頁)。
ただし,Aは,Bを出産した以降,一時的に仕事をやめて,現
在,控訴人の親族から援助を受けるなどして家族4人の生活費を賄
っている(A証人11頁)。
イDは,5歳のときに本邦に入国した後,日本の小学校,中学校を
卒業し,平成29年4月から愛知県立の高校に在学している。同人
は,「定住者」の在留資格により在留し(甲17),日本語は日本
人と同様に読み書きも可能で,将来は本邦の大学に入学することを
希望している(A証人2頁,10頁,16頁)。
ウ家族の会話は,日本語及びポルトガル語である。控訴人,A及び
Dは,今後も本邦で一緒に生活していくことを希望している(甲1
8・2頁,乙15・2頁,A証人7頁,10頁)。
エ控訴人の本国であるイランのテヘランには,控訴人の両親及び3
人の妹が居住している。控訴人の父は年金を受給し,家族を扶養し
ている(乙9・3頁,乙15・5頁)。
オ一方,Aの本国であるブラジルには,Aの母と姉が一緒に暮らし
ている。また,前夫との二女であるGは,前夫の下で生活している
(乙11・4〜5頁)。
なお,Aの父Eは,平成21年にブラジルから本邦に帰国して出
生地である千葉県内に居住し,控訴人らと交流を持つとともに,控
訴人らの日本での生活を支援してきたが(甲12参照),平成29
年5月に急死した(甲18・2頁,A証人1頁)。
3本件裁決の違法性について
(1)本件裁決当時の控訴人とAの関係についての評価
ア前記認定事実2(2)エ及び(3)カ記載のとおり,控訴人とAは,平
成23年10月頃知り合い,同年12月頃から同居するようにな
り,平成26年10月22日に婚姻したというのであるから,本件
裁決当時,その同居期間は約3年8か月,婚姻成立から本件裁決ま
での期間は約10か月であって,いずれも著しく長いとはいえない
ものの,2人の婚姻関係が安定かつ成熟したものかを確認するには
十分な期間が経過していたといえる。
そして,その後も控訴人とAは,婚姻生活を継続し,2人で力を
合わせてDを監護養育してきたものと認められ,その結果,2人の
子であるBをもうけ,今後も本邦において一家4人で生活していく
ことを強く望んでいる。かかる本件裁決以降の経過からみても,本
件裁決時における控訴人とAとの婚姻関係は,既に十分に安定かつ
成熟していたと評価し得るから,このことは本件裁決に当たり十分
斟酌されるべき事柄であったということができる。
イこれに対して被控訴人は,当初,Aが,控訴人と知り合った時期
は平成24年9月頃のことで,同居を開始したのは同年10月下旬
頃と供述しており(乙11・7〜8頁),その供述の信用性は高い
から,これを前提とすると,控訴人とAが知り合って本件裁決まで
の期間は約3年弱,同居を開始してから本件裁決までの期間は約2
年10か月,婚姻から本件裁決までの期間は10か月にすぎないな
どと主張し,控訴人とAの関係は安定かつ成熟したものとは到底い
えないと主張する。
しかし,Aは,その後,入管での取調べの際は年数を誤解してい
たと述べており(甲11・2頁),名古屋市J区長宛に提出した婚
姻届にも同居の時期を「平成23年10月」と記載していること
(乙5)に照らしても,同居の時期は控訴人が供述するとおり平成
23年12月頃と認めるのが相当である。
そして,前記認定事実2(3)ウ及びエのとおり,Aは,控訴人と
同居後6か月から1年ほど経過した頃,結婚を考えるようになった
が,前夫が離婚に反対したため,ブラジル在住の弁護士に依頼せざ
るを得ず,正式に離婚が成立するまでに時間を要したことが認めら
れるから,控訴人とAの婚姻成立までにある程度時間を要したこと
はやむを得なかったというべきである。
その上,前記認定事実2(3)オのとおり,Aは,平成26年3月
頃,控訴人との子を妊娠したが,同年5月17日に流産したことが
認められるから,本件裁決当時,2人が家族を増やそうと努力を重
ねていたことは想像に難くなく,Bを授かったのは本件裁決後の事
情であるものの,近い将来,子を授かり得る関係であったことは十
分に予測し得たということができる。そうすると,婚姻から本件裁
決までの期間が約10か月であったとの一事をもって,2人の関係
が安定かつ成熟したものであったことを否定することはできない。
よって,被控訴人の上記主張は採用できない。
(2)本件処分による控訴人ら家族の不利益についての評価
アAは,その父親が日本人であるから,法制度を知悉していれば,
日本国籍を取得し得た者であって,永年にわたって本邦に居住し,
今後も引き続き居住を希望している以上,その希望を尊重すべきも
のと考えられる。しかるに,控訴人がイランへ強制的に帰国させら
れることになれば,Aはもとより,本邦においてすでに生活の基盤
を有し,かつ,本邦で暮らすことを希望しているDや本邦で生まれ
たBとも離れて暮らすことになり,控訴人ら家族が離散することに
なりかねない。そのような事態は,控訴人ら家族に重大な不利益を
及ぼし,著しく人道に反する結果となる。
他方で,Aらが控訴人とともにイランで暮らすことは,A及びD
には言葉の問題がある上,2人の子を養育しながら,新たに生計を
立てて安定した暮らしができるか否かが懸念される。
これらの点も本件裁決に当たり十分に斟酌されるべき事柄であっ
たということができる。
イこれに対して,被控訴人は,Aがイラン大使館からパスポートの
発給を受けており,娘を控訴人の母に見せてあげたいという気持ち
があるなどと証言したこと(A証人10頁)などから,イランへの
渡航を想定していることがうかがわれ,控訴人をイランに送還する
ことに特段の支障は認められないし,また,Aと控訴人との会話に
は時々ポルトガル語が交じることなどから,控訴人がイランに送還
された後,家族全員でブラジルで生活していくことも十分に可能で
ある旨主張する。
しかし,里帰りや義理の親に子を会わせる目的で一時的にイラン
に帰国することと,2人の子を監護養育しながら生活していくこと
とは質的に大きく異なるから,控訴人ら家族がイランで生活してい
くことに特段の支障がないと直ちにいうことはできない。また,控
訴人がイランに送還された後,ブラジルで生計を立てて生活するこ
とは,居住経験がなく,かつ,言葉の問題もある控訴人にとっては
もちろん,その影響を直接受けるAら家族にとっても生活に大きな
支障を伴うことが予想される。
しかも,より豊かな生活を求めて外国で居住し続けたいと願うの
は人として自然な感情であるから,Aが婚姻前に控訴人の不法入国
の事実を知っていたとの一事をもって,長期にわたり父の母国でも
ある本邦で生活し,かつ,定着しているAの意向や生活の利益を全
く無視することはできない。また,幼少の頃から本邦で生活し,本
邦の高校に在学中のDについても同様であり,本邦の大学に入学し
て勉学に励みたいとの同人の希望を一切無視することは適切とはい
えない。よって,被控訴人の上記主張は採用できない。
(3)不法残留等の消極事由についての評価
被控訴人は,控訴人の入国・在留状況は在留特別許可の許否判断に
おける重大な消極要素であるとして,‖梢楊承舛領昂瑤鰺僂い親国
の悪質性が極めて高いこと,控訴人は就労目的で本邦に不法入国
し,平成23年10月頃まで稼働しており,我が国の出入国管理制度
の根幹に関わる重大な問題であること,3姐饋妖佻針,飽稟燭靴燭
とを挙げている。
この点,,良塰‘国については,控訴人は,他人名義の旅券を使
用して不法に入国したことが認められ,その経緯に酌むべき事情はな
いから,消極要素として考慮されることはやむを得ない。しかし,他
方で,在留特別許可制度は,退去強制事由が存在する外国人に対して
在留資格を付与する制度であり,法は,不法入国者であっても一定の
事情がある場合には在留資格を付与することを予定しているとみるこ
ともできるから,不法入国の点を過度に重視することはできない。
また,△良塰‘国後の就労の事実は,在留資格の存在を前提とす
る入管法70条1項4号の資格外活動罪に該当しないのであるから,
就労の事実そのものを犯罪視することはできず,その違法性は不法入
国により既に評価されているともいい得るし,控訴人が本邦で日々の
生活の糧を得るために働くこと自体は,人道上非難されるべきことで
もない。
さらに,の外国人登録法違反は,それのみで直ちに退去強制事由
となるものではなく,同法違反に対する非難の度合いが大きいともい
えない。
そうすると,上記の諸事情は,消極事由として評価し得るとして
も,これらを過大視することはできない。しかも,控訴人は,それ以
外の点においては,平成22年に本邦に入国以来,約7年に渡って特
段の問題もなく生活してきた者であり,かつ,自ら任意に不法入国の
事実を出頭申告したのであるから,上記違反事実に対する反省の態度
や本邦の法に真摯に向き合おうとする態度も十分にうかがうことがで
きる。本件裁決に当たっては,上記の消極事由だけではなく,かかる
在留を認めるべき事情も十分に加味して検討されるべきであったとい
える。
(4)小括
以上に検討したことからすると,前記(1)のとおり,本件裁決当
時,控訴人とAとの間には安定かつ成熟した婚姻関係の実態があった
と認められ,本件処分は同関係により真摯な意思をもって形成された
控訴人ら家族の結合を破壊し,甚大な不利益を与えかねない。他方
で,前記(3)のとおり,被控訴人の指摘する控訴人の消極事由は,こ
れだけを捉えて殊更重視することはできない。しかるに,本件裁決
は,名古屋入管の入国審査官が控訴人らから事情聴取をした際,控訴
人とAの婚姻関係の実態を十分に把握せず,又は同関係及び本件処分
による控訴人ら家族等の不利益を軽視する一方で,前記(3)の控訴人
にとって不利な情状のみを殊更重視し,これをもって看過し難い重大
な消極要素になると評価することによってされたものといわざるを得
ない。
そうすると,本件裁決は,その判断の基礎となる事実に対する評価
において明白に合理性を欠くことにより,その判断が社会通念に照ら
し著しく妥当性を欠くことは明らかであるから,裁量権の範囲を逸脱
又は濫用したものであるというべきである。よって,控訴人による本
件裁決の取消請求には理由がある。
4本件処分の違法性について
本件処分は,名古屋入管局長から本件裁決をした旨の通知を受けた名
古屋入管主任審査官が,入管法49条6項に基づいてしたものであるが,
上記3において述べたとおり,本件裁決に裁量権の範囲を逸脱濫用した
違法性があって取り消されるべきである以上,これを前提とする本件処
分も違法というほかなく,その取消請求にも理由がある。
第4結論
以上によれば,控訴人の本件各請求はいずれも理由があるから認容す
べきところ,これと結論の異なる原判決は失当であるから取り消すこと
とし,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第4部
裁判長裁判官 藤山雅行
裁判官 水谷美穂子
裁判官 金久保茂

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