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新潟・福島豪雨 只見川ダム訴訟 原告側の請求棄却 「被害は天災の結果」 地裁会津若松支部 /福島

 2011年7月の新潟・福島豪雨で発生した水害は、只見川流域の発電用ダムにたまった土砂を適切に取り除かなかったのが原因だとして、金山町の住民ら34人がダムを管理する東北電力とJパワー(電源開発)に計約3億3800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、福島地裁会津若松支部であった。佐野信裁判長は「被害は天災の結果というよりほかなく、土砂との因果関係は認められない」として原告側の請求を棄却した。【湯浅聖一、宮崎稔樹】
 訴訟は、ダムにたまった土砂と水害の因果関係や、電力会社が水害を予見・回避する責任の有無が大きな争点となった。
 原告側代理人によると、治水機能を持たない「利水ダム」の土砂処理を巡る司法判断は全国初。原告側は控訴を検討している。
 判決で佐野裁判長は、東北電力に水害を予見し、浚渫(しゅんせつ)などで回避する義務があるとして一部過失を指摘したものの、土砂と水害との因果関係については「土砂を除去すれば被害を回避、軽減できたとは認められない」とした。原告側は水害時、本名▽上田(うわだ)▽宮下▽滝−−の4ダムの総貯水容量に占める堆積(たいせき)土砂の割合は19〜37・7%で、全国平均の8%より高いと指摘していた。
 Jパワーの浚渫船が流出して本名ダムの放流ゲートを塞ぎ、上流部にある川の水位を上昇させる要因になったという原告側の主張も「閉塞(へいそく)が生じたと認めるに足りる証拠がない」と退けた。
 原告団の市川守弘弁護士は「水害を回避できないのに浚渫を義務づける矛盾した判決。ダム撤去に向けた提訴も考えなくてはいけない」と批判した。
    ◇
 判決を受け、原告団は会津若松市内で記者会見した。副団長の横田正男さん(66)は「被害を軽くみられたような判決だ」と批判。「あれだけの土砂があって水害にならないわけがない。因果関係が認められないとは、常識とかけ離れている」と指摘した。
 会見には原告団長を務め、先月78歳で亡くなった元金山町長・斎藤勇一さんの長男恭範(やすのり)さん(46)=東京都品川区在住=も出席した。
 勇一さんは「住民の安全な暮らしを実現することが大事」が口癖で、原告団の精神的支柱だった。恭範さんは「地域のために闘った父の遺志を引き継ぎ、控訴するのであれば協力したい」と話した。
 「想定外では済まされない」 自宅や田畑が水没 長谷川義晴さん
 「水害は自然災害ではなく、電力会社がダムの管理を怠った人為的災害だ」。原告の一人で、新潟・福島豪雨により、自宅1階や田畑が水没した金山町越川の長谷川義晴さん(77)は法廷でそう訴えてきた。だが、26日の判決は、原告側の請求棄却となり、「このままで安全安心な生活ができるのか疑問だ」と悔しさをにじませた。
 自宅は本名ダムの上流約2キロの只見川沿いにある。豪雨時は「大したことない」と思っていたが、川の水位は次第に上昇。町の避難勧告を受けて近くの神社に避難した。翌朝、集落一帯は水浸しになっており、自宅は床上約2メートルまで浸水。1階は家財道具がめちゃくちゃで、厚さ20〜30センチの泥もたまっていた。ぼうぜんとするしかなかった。
 本名ダム建設に伴って、現在の場所に転居を余儀なくされたのが1953年。事業者の東北電力に「安全」と言われたという。
 2014年の提訴以来、毎回、裁判を傍聴した。15年9月には電力会社の過失を訴える意見陳述もした。初めての経験で、法廷に立つ前は、自宅で妻澄子さんを前に何度も練習した。「裁判長の前でうまく話せたらいいね」と励ましてくれたのがうれしかった。
 その澄子さんは昨年12月に逝去。豪雨以降、心労もあってか体調を崩しがちだったという。勝訴を期待していただけに「判決を聞けず残念だっただろう」と思いやった。
 提訴から約4年。原告団には高齢で亡くなる人や、負担の大きさを考えて訴訟の継続を諦める声も出始めている。だが、長谷川さんは決意を新たにする。「想定外の災害では済まされない。電力会社の過失が認められるまで闘いたい。理解してくれるよな」。妻の墓前でそう報告するつもりだ。【湯浅聖一】
 只見川ダム訴訟判決骨子
 ・水害は天災の結果で、土砂と水害との因果関係は認められない
 ・浚渫船がダムの放流ゲートを塞いだと認める証拠がない
 ■ことば
 新潟・福島豪雨
 2011年7月27〜30日に新潟・福島両県で発生した豪雨災害。只見町で24時間降水量が観測史上最大となる527ミリを記録し、三島、柳津、南会津3町の150世帯511人に避難指示、喜多方、只見、金山など7市町の2571世帯6486人に避難勧告が出た。只見川の氾濫で住宅や道路、JR只見線などが損壊。金山町の住宅被害は全壊23棟、大規模半壊33棟など計104棟に上った。豪雨災害を巡っては、只見町の住民も15年2月に国や県、Jパワーなどを相手取り、計約7億1600万円の損害賠償を求める訴えを福島地裁会津若松支部に起こしている。
(2018年3月27日 毎日新聞)

只見川洪水は「天災」 水力発電ダム訴訟、電力2社への請求棄却

 2011(平成23)年7月の新潟・福島豪雨で只見川の氾濫による洪水被害は、東北電力と電源開発(Jパワー)の水力発電用ダムが原因として、金山町などの住民34人が計約3億3750万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、地裁会津若松支部の佐野信裁判長は26日、「住民の精神的苦痛は天災の結果だ」として請求を棄却した。
 判決理由で佐野裁判長は、東北電力は管理する四つのダムにたまった土砂を取り除く義務があったのに怠っていたと指摘。しかし取り除いたとしても、只見川の水位は最大で68センチしか低下しないと推測され、実際の浸水状況を考慮すれば「被害の程度は変わらない」と指摘。住民側が主張した避難による精神的苦痛は「東北電の注意義務違反との間に因果関係はない」と結論付けた。
 原告住民は本名、上田、宮下の各ダムを管理する東北電力と滝ダムを管理する電源開発を相手取り、14年に提訴した。
 原告「無念の結果」 土砂除去の義務は評価
 判決後、会津若松市内で記者会見した原告団は厳しい判決に表情を曇らせた。
 34人の原告団の団長を務めていた元金山町長の斎藤勇一さんは、判決を前に2月27日に急逝した。遺影を手に出席した長男(47)は「いい報告をしたかったが、無念の結果になった」と下を向いた。自宅の浸水被害で近くの高台への移転を余儀なくされたという横田正男副団長(66)は「あれだけの土砂がたまって水害が起きないはずはないのに、判決はあっけなかった」と語った。
 代理人の市川守弘弁護士は「『土砂を取り除いたとしても水害は防げなかった』という判決は矛盾する。肩透かしの判決だ」と不満を述べた。一方で「電力会社に土砂除去の義務があると認めた部分は一つのステップになる」と評価した。
 控訴については今後検討するという。
(2018年03月27日 08時50分 福島民友)

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