報道等をもとに日本の裁判官の情報を収集、掲載しています。

工藤会系組幹部に懲役20年判決 福岡地裁 一般人襲撃3事件に関与

 北九州市で2011年に建設会社「博新建設」会長が射殺されるなどした一般人襲撃3事件に関与したとして、殺人などの罪に問われた特定危険指定暴力団「工藤会」系組幹部、桜木淳典(あつのり)被告(40)に対し、福岡地裁(足立勉裁判長)は21日、懲役20年(求刑・懲役25年)を言い渡した。
 他の2事件は、10年に同市で暴力団排除運動を進めていた自治総連合会会長宅が銃撃された事件と、11年に大手ゼネコン「清水建設」の男性社員が銃撃されけがをした事件。
 判決は、博新建設と清水建設の両事件は「会の意に沿わない企業や個人への見せしめが動機」と推察。自治総連合会会長事件については「(暴排)運動への威圧などが目的だとうかがえる」とした。
 桜木被告については、共犯者の証言などから3事件とも実行犯らとの共謀関係を認定。実行役の送迎や、犯行に使われた車を処分するなどしたとし「犯行遂行に重要な役割を果たした」と非難した。
(2019年10月21日 18時51分(最終更新 10月21日 18時51分) 毎日新聞)

「見せしめ」で役員射殺 工藤会系組員に懲役20年判決

 指定暴力団工藤会(北九州市)が市民らを襲撃したとされる一連の事件のうち、建設会社役員射殺事件など3件に関わったとして、殺人や殺人未遂などの罪に問われた工藤会系組員桜木淳典被告(40)の判決公判が21日、福岡地裁であった。足立勉裁判長は、懲役20年(求刑懲役25年)を言い渡した。
 判決によると、桜木被告は、工藤会の新事務所撤去運動に参加した北九州市の自治会長宅銃撃(2010年3月)▽同市で起こった清水建設従業員銃撃(11年2月)▽同市の建設会社役員射殺(同年11月)の3事件で、複数の組員らと共謀。実行犯を車で送迎したり、犯行に使った車や実行犯の着衣を処分したりした。足立裁判長は「従属的な立場であったが、重要な役割を果たした」とした。
 動機について判決は、自治会長事件は「暴力団追放運動に取り組んでいたことから、工藤会に対する反対運動への威圧などの目的」、ほか二つの事件は「工藤会の意に沿わない企業や個人に対する見せしめ」と推認されるとした。
(2019年10月21日19時01分 朝日新聞)

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宣告日令和元年10月21日
事件名殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反,殺人未遂,窃盗
裁判官福岡地方裁判所第3刑事部 足立勉國分進加藤貴
(主文)
被告人を懲役20年に処する。
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1【自治会長事件】
C,D,E,F,G及びHと共謀の上,
1平成22年3月15日午後11時13分頃,北九州市a区のA2方敷地内に
おいて,D又はEのいずれか,あるいは両名が,A2方に在宅中の同人(当時
75歳)及びA1(当時75歳)に対し,殺意をもって,所携の回転式けん銃
を使用して,A2方台所勝手口から家屋内に弾丸2発を発射して台所壁に着弾
させ,さらに,同人方玄関先から家屋内に弾丸4発を発射し,玄関に接した8
畳和室空間を通してA2ら2名が在室していたA2方1階6畳寝室のふすまを
貫通させて同室押し入れに着弾させるなどしたが,上記弾丸がいずれもA2ら
に命中せず,A2らの殺害の目的を遂げず,
2法定の除外事由がないのに,上記日時場所において,上記けん銃1丁を,こ
れに適合する実包6発と共に携帯して所持し,
第2【I事件】
C,J,K,F及びGと共謀の上,法定の除外事由がないのに,
1平成23年2月9日午後7時12分頃,不特定若しくは多数の者の用に供さ
れる場所である北九州市b区c町d番eL移転新築工事作業所2階事務所にお
いて,Kが,M(当時50歳)に対し,殺意をもって,所携の回転弾倉式けん
銃を使用して,弾丸3発を発射し,そのうち1発を同人の下腹部に命中させた
が,同人に全治約23日間を要する下腹部挫創の傷害を負わせたにとどまり,
殺害の目的を遂げず,
2上記日時場所において,上記けん銃1丁を,これに適合する実包3発と共に
携帯して所持し,
第3【窃盗事件】
Gと共謀の上,平成23年11月中旬頃,北九州市a区fg丁目h番i号N
南側駐輪場において,同所に駐輪中のO所有の普通自動二輪車1台(時価約3
0万円相当)を窃取し,
第4【P事件】
C,K,Q,E,R,G及びSと共謀の上,法定の除外事由がないのに,
1平成23年11月26日午後9時頃,不特定若しくは多数の者の用に供され
る場所である北九州市b区のT方前路上付近において,Rが,上記T方敷地内
にいた上記T(当時72歳)に対し,殺意をもって,所携の回転弾倉式けん銃
を使用して,同人の身体を目掛けて弾丸2発を発射し,うち1発を同人の頚部
に命中させ,よって,同日午後10時3分頃,同市a区jk丁目l番m号のU
病院において,同人を右内頚静脈及び右鎖骨下動脈の離開に基づく失血により
死亡させて殺害し,
2同日午後9時頃,上記T方前路上付近において,上記けん銃1丁を,これに
適合する実包2発と共に携帯して所持した。
(事実認定の補足説明)
第1争点
被告人が窃盗事件の犯行に及んだことについては当事者間に争いがなく,関
係証拠上も明らかである。自治会長事件,I事件及びP事件については,いず
れも,被告人と他の共犯者らとの間の殺人及び銃砲刀剣類所持等取締法(以下
「銃刀法」ともいう。)違反の共謀の有無が争点であり,自治会長事件について
は更に,実行犯の殺意の有無も争点となっている。
第2自治会長事件について
1自治会長事件の概要について
関係証拠によれば,自治会長事件は,被告人が運転する自動車に乗りA2方
付近まで移動したD又はEのいずれか,あるいは両名が,a区自治総連合会会
長等を務めるA2及びその妻A1が在室するA2方家屋内にけん銃で弾丸6発
を撃ち込んだ事案であること,犯行後,D及びEは,被告人が運転する上記自
動車に乗り逃走したことが認められる。
2実行犯の殺意の有無について
⑴関係証拠によれば,以下の事実が認められる。
自治会長事件の実行犯(D又はEのいずれか,あるいは両名)は,平成2
2年3月15日午後11時13分頃,A2方敷地内において,A2方の台所
勝手口戸のガラスをコンクリートブロックで割った直後に,回転式けん銃を
使用して,同勝手口付近から家屋内に向けて弾丸2発を発射し,次いで同人
方の玄関先に移動し,家屋内に向けて弾丸4発を発射した。勝手口付近から
発射された弾丸2発のうち1発と,玄関先から発射された弾丸4発は,いず
れもほぼ水平方向に発射され,前者は台所の壁面(台所床面から約105セ
ンチメートルの高さ部分)に,後者はいずれも玄関のアルミ枠ガラス引き戸
(玄関床面から約125ないし142センチメートルの高さ部分)を貫通し,
玄関内側の壁面やA2及びA1が当時在室していた居室内の押し入れ内等に
着弾した。また,勝手口付近から発射されたもう1発の弾丸は,台所の天井
で跳弾してその壁面に着弾した。
⑵上記実行犯は,一般家屋の敷地内において,通常家人が就寝等のために在
宅している時間帯に,いずれも家屋内に向けて6発の弾丸を発射しているこ
と,当該発射行為に使用されたと推定される38口径の回転弾倉式けん銃は,
人を殺傷する能力を十分に有するものであること,弾丸の発射角度は6発中
5発がほぼ水平方向であり,実際にA2らが在室していた部屋の押し入れ内
に弾丸が着弾していることなどからすると,実行犯は,いずれの発射行為の
際も,A2方家屋内に所在する人物にけん銃の弾丸が命中し,最悪の場合死
亡することとなっても構わないという認識,すなわち,未必的な殺意をもっ
て犯行に及んだといえるのであって,実行犯に殺意があったことは優に認め
られる。
この点,弁護人は,通常家人が就寝しているであろう時刻に,通常就寝場
所としては使用されない勝手口や玄関に銃弾を撃ち込んでいることからする
と,実行犯としては人がいないことを想定していたと考えられるなどと主張
して,実行犯の殺意を争っている。しかし,犯行時刻は当然に家人全員が就
寝しているであろう時刻とまではいえないし,実行犯が,家人が家屋内のど
こにいるかを確認した上でけん銃を発射したような形跡も全くうかがわれな
い。かえって,実行犯は,勝手口戸のガラスをコンクリートブロックで割っ
た直後に犯行に及んでおり,物音に気付いた家人が勝手口や玄関などに出て
くる可能性を生じさせてからけん銃を発射しているともみられることを併せ
考えれば,実行犯において,発射した弾丸が家屋内にいる家人に当たるかも
しれないとの認識を有していたことは明らかである。その他の弁護人の主張
を踏まえて検討しても,実行犯に殺意があったとの上記判断は動かない。
3被告人と他の共犯者らとの共謀の有無について
⑴関係証拠によれば,自治会長事件当時,暴力団組織である四代目甲會の傘
下には四代目乙組が,さらにその傘下にはCを組長とする丙組が存在し,乙
組や丙組の構成員として,乙組組長代行のH,乙組若頭補佐のD,乙組本部
長兼丙組組長のC,乙組組員のE及びF,乙組組員兼丙組組員の被告人及び
Gらが在籍していたことが認められる。
⑵Gは,公判で,自治会長事件に関与する前の出来事として,_義帆醗の
Vが,平成19年10月に甲會丁組の元組長に対してけん銃使用による殺人
事件を起こし,一審で無期懲役の判決の言渡しを受けた前後頃の平成21年
当時,被告人と二人でVに面会に行ったことがあったこと,∧蠢帆醗のW
が,平成15年頃,nの飲食店Xに手りゅう弾を投げ込んで店内にいた人を
負傷させた事件で現行犯逮捕され,その際に死亡したところ,平成20年に
Gが出所した後に,甲會の上位者の指示により,被告人外1名と合計3名で
Wの墓参りをしたことがあったこと,その他にも,甲會組長らが漁協組合
の関係者を射殺して身柄を拘束され,無期懲役等の判決を受けたことなどを
見聞きしたことを供述している。Gの上記供述は具体的で,特に不自然な点
はなく信用できることから,Gが供述するとおりの事実があったと認められ
る。
そして,G及び被告人の各供述によれば,Gと被告人は,丙組に出入りす
るようになった時期が近く,その後いずれも丙組組員となって同様の立場で
同様の活動をしてきたと認められるところ,Gが供述する´△枠鏐霓佑盒
に体験している事実であり,VやWがどのような事件を起こしたかを被告人
だけが知らなかったということは考えにくい。また,被告人が丙組内でGと
同様の立場にあることからすれば,のような甲會組員がけん銃を使用して
殺人事件を起こしたといった話を,被告人も周囲の組員から聞くなどして当
然に知っていたことが推測される。
そうすると,被告人は,遅くとも自治会長事件が起きる平成22年3月時
点までには,甲會がけん銃等を用いて人を殺傷することを含む重大な事件を
起こすこともあり得る組織であることを認識していたものと推認できる。
⑶また,Gは,自治会長事件への被告人の関与等に関して,おおむね,以
下のとおり述べる。すなわち,「事件の三,四日前くらいの頃に親方(C)か
らバイクを用意するよう指示を受け,足のつかないバイクを用意することと
し,Cの指示があった旨伝えるなどして被告人と相談し,盗めそうなバイク
を探したが見つからず,被告人が知人からバイクを借り受けた。事件当日,
被告人とはお互いに他人名義のいわゆる飛ばしの携帯電話を使うなどして連
絡を取り合っており,午後4時頃にYの自動車(ゴルフ)に乗ってやってき
た被告人と合流した後,Cから指示された駐輪場まで被告人と共に上記バイ
クを運んだ。バイクが使えない場合に備えて車も用意することにし,被告人
と一緒に自動車(グロリア)を盗み,知人に電話で了解を得て,その知人の
倉庫にグロリアを止めた。その後,Fからバイクが動かないと電話で連絡を
受けたので,被告人が運転するゴルフで上記駐輪場まで戻ったが,その途中,
Fが運転する自動車(ふだん乗っている車でない黒色の軽自動車)とすれ違
った際にお互いに相手に気付き,横並びに並んで窓を開けて話した。上記駐
輪場では,作業服を着てヘルメットをかぶったEが,エンジンがかからない
と言ってバイクを押しており,車も用意していることを伝えると,Eは,H
と話をした後,車のところへ案内するよう指示をしてきたので,被告人が運
転するゴルフに同乗し,EやHらが乗る自動車(ベンツ)を先導して上記倉
庫まで案内した。同倉庫入口で,ベンツからは,Eや,Eと同様に作業服を
着たDが降り,グロリアを見て,Hと協議した上で,私と被告人に対し,ゴ
ルフで現場付近まで送っていくよう指示をした。そこで,被告人,私,D,
Eがゴルフに乗り込み,4人で犯行後の逃走経路を話し合いつつ,その場で
2時間ほど待機した後,Eが道案内をし,被告人がゴルフを運転して現場付
近へ移動した。その途中,Eの指示で道に落ちていたコンクリートブロック
を1個拾って,Dに渡すか,その足元に置いた。現場付近に着くと,DとE
がゴルフから降りていき,被告人と共にゴルフの車内で待機していると,複
数の発砲音が聞こえ,DとEがゴルフに戻ってきた。被告人がゴルフを運転
して,先に話し合った経路のとおり逃走し,D及びEと別れた後,被告人に
自宅まで送ってもらった。この間,Cとはお互いに他人名義の携帯電話を使
って連絡を取り合い,逐次状況を報告していた。」というのである。
Gの上記供述は,全体として具体的かつ詳細である上,内容にも特段不自
然,不合理な点は見当たらない(被告人自身,足のつかないバイク等を用意
するよう指示した者からは,Gと一緒にその用意をするように言われた旨供
述するところ,丙組組員であるGと被告人の両名に対して,犯行の際に用い
るバイク等の調達を指示できる人物は,Gが述べるように,丙組組長のCで
あると考えるのが自然である。)。Gの供述のうち,犯行当日に被告人と電話
で連絡を取り合ったという点や,知人に倉庫の使用について電話で了解を得
たという点,Fからバイクが動かない旨電話で連絡を受けたという点,Cに
逐次状況を報告したという点については,いずれもこれら関係者との携帯電
話の通話履歴により客観的に裏付けられており,Gがコンクリートブロック
1個を拾ってDに渡すなどした点については,A2方の台所勝手口戸付近に
コンクリートブロック1個が遺留されていた事実と整合している。被告人と
極めて親しい友人関係にあったGには,虚偽の供述をして被告人を陥れるよ
うな事情は何ら見当たらないことも併せ考えると,Gの上記供述は全体とし
て信用性が高いといえる。
これに対して弁護人は,犯行当日に関するGの供述のうち,仝畍紕柑頃
にゴルフに乗った被告人と合流した旨を述べる点は,ゴルフを被告人に貸し
渡したYの供述と一致しているが,犯行当日の自身の行動に関するYの供述
は,移動時間や買物時間を踏まえると無理があり,これに符合するGの供述
も信用できない,■討らバイクが動かないので戻ってほしい旨言われて移
動途中にFの自動車とすれ違いFと話をしたという点は,Fがふだんと違う
自動車に乗っていたなどのGの供述に照らすとその際にGがその自動車をF
運転の自動車であると認識することは困難であるから信用できないなどとし
て,このように信用できない部分がある以上,Gのそれ以外の供述部分も信
用できない旨主張する。しかし,上記,療世蓮な杆鄂佑亮臘イ鯑Г泙┐討癲
Yが供述する買物や移動等の行動が時間的に無理であるとまでは必ずしもい
えず,Yの供述やこれに沿ったGの供述が直ちに不自然,不合理であるとは
いえない。また,上記△療世癲ぃ任錬討箸垢谿磴α阿謀渡辰韮討反回会話
しており,その際にお互いの位置関係を確認したのではないかとGが供述し
ていることなども踏まえると,両名が自動車ですれ違った際に相手に気付い
たとするGの供述が特に不自然,不合理であるとはいえない。その他の弁護
人の主張を踏まえて検討しても,Gの供述の信用性を疑わせるような事情は
見いだせない。
信用できるGの供述に他の関係証拠も総合すると,被告人は,自治会長事
件において,Cからの指示を受けて,足のつかない(使用者が判明しない)
バイクを探し,知人からバイクを借り受け,Gと共にグロリアを盗むなどし
てこれらを用意したこと,犯行当日,他人名義の携帯電話を使用してGと連
絡を取りつつ,Gと共に指示された駐輪場にバイクを移動させ,さらには,
D及びEの送迎役を引き受け,自らが知人から借り受けたゴルフにD,E及
びGを乗せて犯行後の逃走経路について話合いをしたこと,ゴルフを運転し
てD及びEを犯行現場付近まで移動させ,犯行後は両名をゴルフに乗せて逃
走させていることが認められるから,遅くとも犯行後の逃走経路についてD
らと話合いを遂げた時点において,被告人は,自らが関与している事件が,
乙組の幹部や自身の上位者も含む複数の甲會組員による組織的な犯行であり,
容易に使用者が判明しない車両や携帯電話を用い,かつ,犯行後直ちに逃走
する必要がある重大な事件であることを認識していたものと認められる。こ
のことに,上記⑵のとおり,被告人は,甲會がけん銃等を用いて人を殺傷す
ることを含む重大な事件を起こすこともあり得る組織であることを認識して
いたことを併せ考えると,遅くとも上記話合いを遂げた時点において,被告
人は,D又はEのいずれか,あるいは両名がけん銃を含む凶器を使用して人
を殺傷する事件を起こすであろうことを少なくとも未必的には認識していた
ものと認められる。そして,被告人は,こうした認識の下,特段,CやGと
いった事件関係者に対して犯行計画について尋ねることもないまま,自らが
知人から借り受けたゴルフを運転して,D及びEを犯行現場付近まで送迎し,
犯行を終えた両名を逃走させるなどすることで,犯行に関して重要な役割を
果たしたものであるから,被告人には,自治会長事件につき,他の共犯者ら
との共謀による共同正犯が成立する。
⑷この点,被告人は,ー治会長事件にCは関与していない,∋件当日,
逃走経路について話し合っている際に,実行役から,脅しに行く,コンクリ
ートブロックを持って行くので探してくれ,と言われたので,コンクリート
ブロックだけを使って車を壊すような犯罪をすると思っていたと供述し,弁
護人も被告人の供述を前提に,被告人とCら他の共犯者らとの間の殺人,銃
刀法違反の共謀の事実は認められない旨主張する。
しかし,,糧鏐霓佑龍―劼蓮と鏐霓佑忙惻┐鬚靴燭箸い人物の氏名や素
性を一切明らかにしないなど具体性を欠く極めて曖昧なものであるし,Cの
関与を述べるGの供述についてはGが勘違いしているのではないかなどと根
拠のない推測を述べるにとどまるものであって,信用できない。△糧鏐霓
の供述は,被告人としては,自らが関与している事件が,前述のとおり,乙
組の幹部であるCやDも含む複数の甲會組員が関与し,入念な準備が必要と
なる事件であることを認識していたと認められるのに,現場に向かう直前に
道で拾ったコンクリートブロックを使って車を壊すというような,これまで
甲會が組織的に起こしてきた事件と比して格段に軽微で,場当たり的な犯行
になるだろうとの認識を持ったというのであって,不自然,不合理というほ
かなく,信用できない。これらの点についての弁護人の主張は採用できない。
第3I事件について
1I事件の概要について
関係証拠によれば,I事件は,Jが運転するバイクの後部座席に乗りI株式
会社の判示工事作業所付近まで移動したKが,同作業所2階の事務所に立ち入
り,工事長である被害者に対して,けん銃で弾丸3発を発射し,うち1発を被
害者の下腹部に命中させて傷害を負わせた事案であること(なお,けん銃の発
射方向とその際の被害者の位置,被害者までの距離等に照らすと,3発いずれ
も被害者に向けて発射したものと認められ,優に殺意が認められる。),犯行後,
Gがバイクを受け取り運転して隠匿し,KはC運転の自動車に,Jは被告人運
転の自動車にそれぞれ乗り逃走したことが認められる。
2被告人と他の共犯者らとの共謀の有無について
⑴関係証拠によれば,I事件当時,甲會(四代目)傘下の乙組(四代目)に
は,乙組本部長兼丙組組長のC,乙組若頭補佐のJ,乙組直若のK,乙組組
員のF,乙組組員兼丙組組員の被告人及びGらが在籍していたことが認めら
れる。
⑵Gは,I事件への被告人の関与等に関して,おおむね,以下のとおり述べ
る。すなわち,「事件の1週間から10日前に,親方(C)からバイクを用意
するよう指示を受けたので,上位者からの指示である旨告げて被告人と相談
し,被告人と一緒にバイクを盗んだ。その旨Cに報告すると,Cからバイク
の保管を命じられたので,車体を黒く塗り替え,知人の使用許可を得た倉庫
に保管した。バイクを動かす際に使うヘルメットを用意しようと思ったが,
自分で買いに行くと防犯カメラに映ってしまうので,被告人に相談し,被告
人がZにヘルメットを買いに行かせ,Zからヘルメットを受け取った。また,
事件前日までに,Cからの指示で,着替えが入っているというバッグをFか
ら受け取り,これを保管しておくよう告げて被告人に預けた。そして,従前,
Cからは,連絡を受けたらバイクを指定する場所まで移動させて実行役に引
き渡し,被告人が運転する自動車に乗って待機し,バイクが戻ってきたらそ
れに乗り替わって一旦隠すなりした上で,処分するよう指示されていたが,
事件当日,被告人から,飛ばしの携帯電話1台を渡され,この携帯電話に登
録されている2つの番号は,Cと被告人の当日の連絡先の携帯電話番号(い
ずれも飛ばしの携帯電話)であり,この携帯電話にバイクで指定された場所
まで向かうよう連絡が入る,と告げられた。夕方頃に連絡が入り,バイクを
運転してCから指定されていた場所まで向かうと,同所には,Cが乗るZの
自動車(カペラ)と,被告人が乗る被告人の知人の軽自動車が停車しており,
カペラからいずれも作業服を着てフルフェイスのヘルメットを持ったJ及び
Kが降りてきて,いずれもヘルメットをかぶり,Jがバイクの運転席,Kが
後部座席に乗車して,同所を出発した。Cが運転するカペラも出発したので,
被告人が私の同乗する軽自動車を運転してカペラについて行き,2台の自動
車は線路沿いの道に到着した。そこで10分前後待機していると,J及びK
が乗ったバイクが現れ,Jは被告人が運転する軽自動車に,KはCが運転す
るカペラにそれぞれ向かった。私は軽自動車を降り,バイクを運転して,逃
走先として決めていた団地の駐輪場に止めると,飛ばしの携帯電話で被告人
と連絡をとり,迎えに来るよう依頼した。被告人は上記軽自動車で私を迎え
に来たが,同車内に他の人は乗っておらず,後部座席にはヘルメットや着替
えが置かれており,被告人は私に対し,Jが車内で狭そうに着替えていたと
話した。その後,私と被告人は,Cの指示で焼鳥屋に向かい,近くのコイン
パーキングに軽自動車を止めたところ,そこにZのカペラも止まっていた。
焼鳥屋でC,Jと食事をし,解散するに当たって,Cから着替え等の処分を
指示されたので,被告人と共に,カペラと軽自動車に載っていた二人分の着
替え等を一つのバッグにまとめ,翌日以降,被告人と二人でバイクと着替え
等を処分した。」というのである。
Gの上記供述は,全体として具体的かつ詳細であり,内容にも特段不自然,
不合理な点は見当たらない。同供述のうち,ZがGのためにヘルメットを購
入し,カペラが犯行に使用されたという点は,被告人に頼まれてヘルメット
を購入し,カペラを貸し渡した旨のZの供述により裏付けられ,被告人から
飛ばしの携帯電話を受け取ったという点は,同様に被告人に頼まれてプリペ
イドカード式の携帯電話3台を購入し,全て被告人に渡した旨のZの供述及
びその契約状況に関する照会事項回答書等の客観証拠により裏付けられてい
る。また,バイクの車体を塗り替えて知人の使用許可を得た倉庫に保管した
という点は,Gがスプレーでバイクを塗り替えている様子を目撃したなどと
して同旨を述べる上記知人の供述と整合している。前述したように,Gには
虚偽の供述をして被告人を陥れるような事情は何ら見当たらないことも併せ
考えると,Gの上記供述は全体としてその信用性が高いといえる。
これに対して弁護人は,“鏐霓佑Zにヘルメットを購入させ,Zがヘル
メットをGに渡したという点や,■任Fからバッグを受け取り,これを被
告人に渡したという点は,いずれも事実の経過として不自然,不合理であり,
Gの供述及びこれと整合するとされるZの供述はいずれも信用できないと主
張する。しかし,,療世砲弔い討蓮ぃ任龍―劼吠杆鄂佑主張するほどの不
自然さは感じられないし,被告人から依頼を受けてZが購入したヘルメット
がGに渡ったという主要な部分については,G,Z,被告人の各供述は合致
している。△療世砲弔い討癲と塙圓忙藩僂垢詁散馘の受取役と保管役とを
別々の人物に担当させるということ自体が特に不自然,不合理であるとはい
えないし,Gは,Fから受け取ったバッグを被告人に渡したのは保管場所が
なかったからかもしれないとも供述しているところ,このような経緯でGが
被告人にバッグを保管させたとしても,やはり不自然,不合理であるとはい
えない。その他にも弁護人は,G及びZの各供述の信用性には疑問があると
して,るる主張するが,主張を踏まえて検討しても,両名の供述の信用性を
疑わせる事情は見いだせない。
信用できるGの供述に他の関係証拠も総合すると,被告人は,I事件にお
いて,Cからの指示を受けて,Gと共に犯行に使用するバイクを盗んで用意
したほか,C,G及び被告人間の犯行当日の連絡用として,飛ばしの携帯電
話3台をZに調達させ,うち1台をGに渡したこと,犯行当日には,Zから
借り受けたカペラをCに提供するとともに,別途知人から軽自動車を借り受
け,これを運転して,C,J,K及びGと集合した上で,作業着とヘルメッ
トを着用したJ及びKが,Gが移動させたバイクに乗って集合場所から出発
するのを見届けた後,カペラを運転するCに追従して,Gと共に犯行後のJ
及びKとの合流場所に移動して待機したこと,犯行を終えて戻ってきたJを
自らが運転する軽自動車に乗せて逃走させ,Cの指示により,J及びKが使
用した着衣等をGと共に処分したことが認められ,遅くともC,J,K及び
Gと集合した時点において,被告人は,自身の関与している事件が,乙組の
幹部や自身の上位者も含む複数の甲會組員が関与して行う組織的な犯行であ
り,自治会長事件と同様,容易に使用者が判明しない車両や携帯電話を用い,
かつ,犯行後直ちに逃走する必要がある重大な事件であることを認識してい
たものと認められる。そして,被告人は,I事件当時,過去に甲會組員が起
こした事件についての認識に加えて(上記第2の3⑵参照),自身がI事件の
前年に発生した自治会長事件に関与したことを通じて,甲會がけん銃等を用
いて人を殺傷することを含む重大な事件を起こすこともあり得る組織である
ことを十分に認識していたと認められるから,遅くとも,上記集合時点にお
いて,被告人は,J又はKが実行役として,けん銃を含む凶器を使用して人
を殺傷する事件を起こすであろうことを少なくとも未必的には認識していた
ものと認められる。被告人は,こうした認識の下,特段,CやGといった事
件関係者に対して犯行計画について尋ねることもないまま,J及びKの逃走
に備えて待機し,犯行後のJを逃走させたほか,Gと共に,J及びKが犯行
の際に使用した着衣等の処分を行うなどすることで,犯行に関して重要な役
割を果たしたものであるから,被告人には,I事件につき,他の共犯者らと
の共謀による共同正犯が成立する。
⑶この点,被告人は,。瓢件にCは関与していない,⊆孫毀鬚人を脅す
とか,放火したりすることは想定したものの,けん銃を使った事件を起こす
ことは想定していなかったと供述する。しかし,,糧鏐霓佑龍―劼砲弔い
は,自治会長事件で検討したのと同様に,Cの関与があった旨のGの供述は
自然な内容で信用に値する一方で,Cの関与を否定する被告人の供述は,具
体性を欠く極めて曖昧なもので信用できない。△糧鏐霓佑龍―劼砲弔い討癲
甲會の上位者などの事件関係者に確認した上でそのように想定したと述べる
ものではなく,上記⑵で検討した結果も踏まえると,信用できない。
第4P事件について
1P事件の概要について
関係証拠によれば,P事件は,平成23年11月中旬から開催されていた大
相撲九州場所を観戦するために北九州市内の自宅と福岡市内のBセンターとを
ほぼ毎日往復していたP株式会社の会長である被害者を,数日間にわたり甲會
組員らが追尾するなどして行動確認をした上,Eが運転するバイクの後部座席
に乗り被害者方前路上付近まで移動したRが,被害者に対して,けん銃で弾丸
2発を発射し,うち1発を被害者の頚部に命中させて殺害した事案であること,
犯行後,Gがバイクを受け取り運転して隠匿し,E及びRは被告人が運転する
自動車に乗って逃走したことが認められる。
2被告人と他の共犯者らとの共謀の有無について
⑴関係証拠によれば,P事件当時,Cは甲會(五代目)直若兼丙組組長,K
は乙組(五代目)若頭兼乙組内己組組長,Eは乙組組織委員長,Qは乙組筆
頭若頭補佐,Rは乙組若頭補佐,Sは乙組組員兼己組預かり,G及び被告人
は乙組組員兼丙組組員であったこと,Cを含め乙組出身者が組長を務める二
次団体は乙組一門と称され,乙組一門の組員は乙組の幹部として登用される
ことがあったことが認められる。
⑵Gは,P事件への被告人の関与等に関して,おおむね,以下のとおり述べ
る。すなわち,「平成23年11月に入った頃に,親方(C)からバイクを用
意するよう指示を受けたので,上位者からの指示である旨伝えた上で被告人
と相談し,被告人と一緒にバイクを盗んで,知人の倉庫に保管し,修理や塗
装をした。同月17日には,Kに指示され,Cの自動車(ランサー)を運転
し,KやRと共に,Bセンターでの相撲観戦を終え北九州市内の自宅へ帰る
被害者が乗る自動車をその自宅付近まで追尾した。その後,Cから指示があ
り,事件当日に被告人と二人で被害者方付近の三差路で目立たない車に乗っ
て待機し,同所にやってくるバイクに乗った二人組を被告人が上記車に乗せ
てその場から逃走させ,私が二人組からバイクを受け取り,そのバイクを隠
した上で処分するよう言われた。事件当日以外の日にR,E及び被告人と集
合した際,被害者の自宅近くの道路でEがバイクを試し乗りして転倒させ,
バイクの左のクリアウインカーのところが割れたことがあった。事件当日は,
被告人が知人から借りてきた自動車(ワゴンR)に私,R及びEが乗り,R
とEが車内で作業着に着替えるなどして3時間から4時間くらい待機した後,
被告人と共にR及びEをワゴンRでバイクの保管場所まで送り,Cから指示
された三差路付近で待機した。Eが運転し,Rが後部座席に乗るバイクがや
って来たので,バイクを受け取り,R及びEが被告人運転のワゴンRに乗る
のを見た。バイクを別の場所に隠した後,被告人と連絡を取って,ワゴンR
で迎えに来てもらった。ワゴンRにはけん銃や着替え等が乗せられていて,
けん銃につき,被告人は,2発発射したが3発弾が残っているという趣旨の
ことを言っていた。Cの指示で,けん銃をCに渡すとともに,着替え等が入
ったバッグをCの実家前に止められた車の中に隠し,後日,被告人と二人で
ワゴンRとバイクを海中に投棄して処分した。」というのである。
Gの上記供述は,全体として具体的かつ詳細であり,内容にも特段不自然,
不合理な点は見受けられない。同供述のうち,ワゴンRが犯行に使用された
という点については,被告人にワゴンRを貸し渡した旨の被告人の知人の供
述により裏付けられ,被害者の行動確認状況については携帯電話の通話履歴
やETCの使用履歴等と,犯行後の逃走状況については逃走経路付近の防犯
カメラの映像等とよく整合している(なお,海中から引き揚げられたバイク
には左ウィンカーカバーが装着されていなかったところ,これは弁護人が指
摘するようにバイクが海面に落下する際などに破損した可能性も否定できな
いが,少なくともGが供述するEの転倒状況と矛盾するものではない。)。前
述したように,Gには虚偽の供述をして被告人を陥れるような事情は何ら見
当たらないことも併せ考えると,Gの上記供述は全体として信用性が高いと
いえる。
これに対して弁護人は,Gの供述によると,犯行前にR,E,G,被告人
の4人が被害者の自宅の近所で合流し,Eがバイクを試し乗りして転倒した
ということであるが,余りにも軽率な行為であって不自然であるなどとして,
Gの供述は信用できないと主張する。しかし,P事件の犯行は,複数の甲會
組員が関与して行う組織的・計画的な犯行であり,実行役には犯行を確実に
遂行することが期待されていたものと推察されることからすると,犯行の実
行や現場からの逃走に万全を期するために,犯行現場付近での待機時間を利
用してEがバイクの試走を行ったとも考えられ,そのことが特に不自然であ
るとはいえない。
信用できるGの供述に他の関係証拠も総合すると,P事件において,被告
人は,Cからの指示を受けて,Gと共に犯行に使用するバイクを盗んで用意
したほか(窃盗事件),ワゴンRを知人から借り受けて用意したこと,犯行当
日には,ワゴンRを運転し,実行役のR及びEをバイクの保管場所まで送っ
た上,事前に決めた場所で待機し,犯行を終えバイクで戻ってきた両名をワ
ゴンRに乗せて逃走させたこと,Cの指示で,Gと共に,Eらが使用したけ
ん銃や着衣等をCに渡すなどした上,後日,バイク及びワゴンRを海中に投
棄して処分したことが認められ,犯行に先立ち,Rらと共にEによるバイク
の試走の現場に居合わせるなどしていたことも踏まえると,自らが関与して
いる事件が,自治会長事件及びI事件と同様,乙組の幹部や自身の上位者も
含む複数の甲會組員が関与して行う組織的な犯行であり,容易に使用者が判
明しない車両を用い,かつ,犯行後直ちに逃走する必要がある重大な事件で
あることを認識していたものと認められる。そして,被告人は,P事件当時,
過去に甲會組員が起こした事件についての認識に加え(上記第2の3⑵参照),
自身が上記両事件に関与したことを通じて,甲會がけん銃等を用いて人を殺
傷することを含む重大な事件を起こすこともあり得る組織であることを十分
に認識していたと認められることからすると,被告人は,R又はEが実行役
として,けん銃を含む凶器を使用して人を殺傷する事件を起こすであろうこ
とを少なくとも未必的には認識していたものと認められる(被告人自身,公
判において,けん銃を使うことは知らなかったが,以前に2回発砲事件に関
与しているので,そういうこと(けん銃を使うこと)も考えたのではないか
と思うと供述している。)。被告人は,こうした認識の下,特段,CやGとい
った事件関係者に対して犯行計画について尋ねることもないまま,自らが知
人から借り受けたワゴンRを運転して,犯行前に実行役のR及びEをバイク
の保管場所まで送り,犯行を終えた両名を逃走させたほか,Gと共に,両名
が犯行に使用するなどしたけん銃や着衣等を隠匿したり,バイクやワゴンR
の処分を行うなどすることで,犯行に関して重要な役割を果たしたのである
から,被告人には,P事件につき,他の共犯者らとの共謀による共同正犯が
成立する。なお,Cの関与を認めるGの供述が信用でき,これを否定する被
告人の供述が信用できないのは,自治会長事件及びI事件で検討したのと同
様である。
(量刑の理由)
本件は,被告人が暴力団組員として活動する中で関与した,けん銃を用いた殺人
未遂2件(自治会長事件(被害者2名)及びI事件)並びにけん銃を用いた殺人1
件(P事件)及びその犯行に使用するためのバイク盗1件(窃盗事件)からなる事
案である。
被告人を含む甲會組員らは,複数名で実行役,その送迎役等の役割を分担し,犯
行に使用するけん銃や移動用のバイク,自動車等を用意するなど周到な準備をした
上で各犯行に及んでおり,とりわけP事件においては,犯行に先立ち,数日間にわ
たって被害者を追尾するなどして行動確認をしていたものであって,いずれの犯行
も組織性・計画性が際立っている。
自治会長事件の実行犯は,被害者両名が在宅する家屋内に向けてけん銃で6発の
弾丸を撃ち込み,I事件の実行犯は,工事関係者等が出入りする工事作業所内にお
いて,近距離から被害者に向けてけん銃で3発の弾丸を発射し,うち1発をその下
腹部に命中させ,P事件の実行犯は,住宅街の路上付近において,近距離から被害
者に向けてけん銃で2発の弾丸を発射し,うち1発をその頚部に命中させており,
いずれも危険性が極めて高い凶悪な犯行というほかはない。これにより,I事件の
被害者は全治約23日間を要する傷害を負い,P事件においては,被害者が搬送先
の病院で死亡するという極めて重大かつ悲惨な結果が生じている。
自治会長事件,I事件及びP事件のいずれについても動機は明らかではないもの
の,自治会長事件の犯行は,被害者がa区自治総連合会会長等として暴力団追放活
動に取り組んでいたことから,甲會に対する反対運動への威圧等の目的で行われた
ことがうかがわれるし,I事件及びP事件の各犯行は,甲會の意に沿わない企業や
個人に対する見せしめが動機であると推察されるのであって,反社会的な犯行とし
て厳しく非難されなければならない。
このような犯行において,被告人は,組織の上位者の指示に従って行動し,実行
行為には直接関与しておらず,Gを除く他の共犯者らとの関係では従属的な立場に
あったといえるが,窃盗事件等により,犯行に使用するバイクや自動車の用意を行
ったばかりでなく,実行犯の送迎や,犯行使用車両及び実行犯の着衣等の処分など,
各犯行の遂行に当たり重要な役割を果たしたものであるから,その犯情は相当に重
い。
しかるに,被告人は,窃盗事件を除く上記3事件について,Cの関与を否定した
上で,自らの認識につき曖昧な供述をして共謀を否認しており,各犯行に加わるこ
ととなった原因である甲會との関わりを今なお断ち切っていないことにも照らすと,
真摯な反省を見て取ることはできない。また,被告人は,本件以前に上記累犯前科
を含め3回にわたり服役したことがあるにもかかわらず,わずか約1年8か月余り
の間に本件各犯行を敢行しており,法律を守る意識に著しく欠けている。
そうすると,被告人が窃盗事件については犯行をおおむね認めていること,内妻
が証人として出廷し,被告人の社会復帰を待ち続ける旨述べたこと,本件各犯行が
いずれも上記確定裁判の余罪であることといった被告人に有利に斟酌できる事情を
十分考慮しても,被告人の責任は重大であり,主文の刑を科すこととなるのはやむ
を得ないと判断した。
(求刑懲役25年)

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