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殺人などの「工藤会」系組幹部に懲役18年判決 「清水建設」銃撃

 北九州市で2011年に大手ゼネコン「清水建設」の男性社員が銃撃されるなど一般人が襲われた4事件に関与したとして、殺人や殺人未遂罪などに問われた特定危険指定暴力団「工藤会」(同市)系組幹部、今村研一被告(40)の判決が26日、福岡地裁であった。中田幹人裁判長は「地域住民に与えた恐怖感は大きく、強い非難に値する」と述べ、懲役18年(求刑・懲役20年)を言い渡した。
 4事件では同会幹部ら6〜14人が起訴されたが、このうち清水建設事件と10年に同市で暴力団排除運動を進めていた自治総連合会会長宅が銃撃された事件の判決は初めて。
 判決は清水建設事件について、暴力団排除を進める同社を威圧し、建設業界からの上納金の減収を避けるのが動機だったと指摘。自治総連合会会長事件については「暴力団に反発する住民を排除、威圧する目的だった」とし、いずれも悪質性が高いと批判した。
 弁護側は「指示に従っただけ」としてほう助罪を主張したが、判決は「銃撃で相手を死亡させることも想定できた」と退けた上で、量刑の理由で「従属的立場だったことは否定できない」と述べた。
 判決によると、今村被告は工藤会幹部らと共謀し、(1)10年3月、北九州市で自治総連合会会長方を銃撃し、会長夫婦を殺害しようとした(2)11年2月、同市の清水建設の現場事務所で男性社員を銃撃して殺害しようとした(3)同年11月、同市で建設会社会長の内納敏博さん(当時72歳)を銃撃して殺害した(4)13年1月、福岡市博多区で看護師女性の頭や胸を刃物で刺して殺害しようとした。
(2019年2月26日 11時58分(最終更新 2月26日 12時07分) 毎日新聞)

元組員に懲役18年、北九州の暴排住民宅銃撃 地裁判決

 北九州市小倉南区で2010年、暴力団排除運動に取り組む自治会長宅に銃弾が撃ち込まれた事件などに関与したとして殺人未遂などの罪に問われた工藤会系元組員、今村研一被告(40)の判決公判が26日、福岡地裁であった。中田幹人裁判長は「犯情は極めて重い」として、今村被告に懲役18年(求刑懲役20年)を言い渡した。
 中田裁判長は「暴力団が一般人を襲撃する犯行は強い非難に値する」と指摘。事件の「組織性・計画性は著しく高い」とし、今村被告が犯行車両の準備や処分などを担う役割だったと認定。「被告の責任は相当に重い」と判断した。
 今村被告がどんな事件に関わっているか知らなかったとした弁護側の主張は、実行に関与せず組の上位者に利用された点は否めないとしつつも、「過去の事件から車両が組の組織的な襲撃に使われ、殺人の恐れがあることも知り得たと推認でき、酌量の余地はない」として退けた。
 判決によると、今村被告は10年3月、工藤会幹部の瓜田太被告(55)=殺人未遂罪などで起訴=らと共謀し、自治会長宅に銃弾6発を撃ち込み、11年には同市の大手ゼネコン事務所で発砲し、社員を殺害しようとするなど同会による4つの事件に関与した。
(2019/2/26 11:58 日経新聞)

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平成26(わ)1284  組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反,窃盗,殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反,殺人未遂
平成31年2月26日  福岡地方裁判所
主文
被告人を懲役18年に処する。
未決勾留日数中1000日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1(平成29年11月30日付け起訴。以下「甲事件」という。)
C1,C2,C3,C4及びC5と共謀の上,
1平成22年3月15日午後11時13分頃,北九州市a1区b1c1丁目d
1番e1号B方敷地内において,同人方に在宅中の同人(当時75歳)及びA
(当時75歳)に対し,殺意をもって,回転弾倉式けん銃を使用して,B方台
所勝手口から家屋内に弾丸2発を発射して台所壁に着弾させ,さらに,同人方
玄関先から家屋内に弾丸4発を発射し,玄関に接した8畳和室空間を通してA
B両名が在室していたB方1階6畳寝室のふすま等を貫通させて同室押入に着
弾させるなどしたが,前記弾丸がいずれもBらに命中せず,同人らの殺害の目
的を遂げず,
2法定の除外事由がないのに,前記日時場所において,前記けん銃1丁を,こ
れに適合する実包6発と共に携帯して所持し,
第2(平成29年9月29日付け起訴。以下「乙事件」という。)
C2,C6,C7及びC5と共謀の上,法定の除外事由がないのに,
1平成23年2月9日午後7時12分頃,不特定又は多数の者の用に供される
北九州市a2区b2町c2番d2E1作業所2階事務所において,C7が,D
1(当時50歳)に対し,殺意をもって,所携の回転弾倉式けん銃で,弾丸3
発を発射し,そのうち1発を同人の下腹部に命中させたが,同人に全治約23
日間を要する下腹部挫創の傷害を負わせたにとどまり,殺害の目的を遂げず,
2同日時場所において,同けん銃1丁を,これに適合する実包3発と共に携帯
して所持し,
第3(平成29年12月28日付け起訴)
C5と共謀の上,平成23年11月18日頃,北九州市a3区b3c3丁目
d3番e3号E2南側駐輪場において,同所に駐車中のD2所有の普通自動二
輪車1台(時価約30万円相当)を窃取し,
第4(平成29年2月9日付け起訴。以下「丙事件」という。)
C2,C7,C8,C4,C9,C5及びC10と共謀の上,法定の除外事
由がないのに,
1平成23年11月26日午後9時頃,不特定若しくは多数の者の用に供され
る場所である北九州市a4区b4町c4番d4号のD3方前路上付近において,
C9が,前記D3方敷地内に居た前記D3(当時72歳)に対し,殺意をもっ
て,所携の回転弾倉式けん銃で,同人の身体を目掛けて弾丸2発を発射し,う
ち1発を同人の頚部に命中させ,よって,同日午後10時3分頃,同市a5区
b5c5丁目d5番e5号のE3病院において,同人を右内頚静脈及び右鎖骨
下動脈の離開に基づく失血により死亡させて殺害し,
2同日午後9時頃,前記D3方前路上付近において,同けん銃1丁を,これに
適合するけん銃実包2発と共に携帯して所持し,
第5(平成27年2月9日付け起訴)
1平成25年1月15日頃,北九州市a6区b6c6丁目d6番e6号E4駐
輪場において,同所に駐輪中のD4所有の普通自動二輪車1台(時価約20万
円相当)を窃取し,
2同月23日頃,同市a7区b7c7丁目d7番地e7所在の駐車場において,
同所に駐輪中の普通自動二輪車からD5の管理に係るナンバープレート1枚を
取り外して窃取し,
第6(平成26年12月8日付け起訴)
平成25年1月27日午後8時頃から同月28日午前10時頃までの間,北
九州市a8区b8町c8番d8号E5駐輪場において,同所に駐輪中のD6所
有の普通自動二輪車1台ほか1点(時価合計約40万5000円相当)を窃取
した。
第7(平成26年10月22日付け起訴。以下「丁事件」という。)
被告人は,当時特定危険指定暴力団五代目C11會常任理事兼五代目C12
組若中であったものであるが,C13(五代目C11會総裁),C14(五代
目C11會会長),C15(五代目C11會理事長兼五代目C12組組長),
C2(五代目C11會理事長補佐兼C16組組長),C7(五代目C11會上
席専務理事兼五代目C12組若頭),C8(当時五代目C11會専務理事兼五
代目C12組風紀委員長),C9(当時五代目C11會専務理事兼五代目C1
2組筆頭若頭補佐),C17(当時五代目C11會専務理事兼五代目C12組
若頭補佐),C18(当時五代目C11會専務理事兼五代目C12組組長付),
C19(当時五代目C11會専務理事兼五代目C12組組織委員),C20
(当時五代目C11會専務理事兼五代目C12組組織委員)と,組織によりD
7(当時45歳)を殺害しようと企て,共謀の上,平成25年1月28日午後
7時4分頃,福岡市a9区b9町c9番d9号のE6北側歩道上において,五
代目C11會の活動として,C13の指揮命令に基づき,あらかじめ定められ
た任務分担に従って,C17が,前記D7に対し,殺意をもって,所携の刃物
で,左側頭部等を目掛けて数回突き刺すなどし,もって団体の活動として組織
により人を殺害しようとしたが,前記D7に約3週間の入院及び通院加療を要
する左眉毛上部挫創,顔面神経損傷,右前腕部挫創及び左殿部挫創の傷害を負
わせたにとどまり,殺害の目的を遂げなかった。
(事実認定の補足説明)
第1争点
各銃刀法違反及び各窃盗被告事件については争いがなく,本件の争点は,各殺人
未遂(甲事件,乙事件),殺人(丙事件)及び組織的殺人未遂(丁事件)被告事件
について,被告人が共犯者らと黙示的共謀を遂げたか否か,被告人が正犯と評価で
きるか否かである。
第2前提事実
1C11會について
C11會は,北九州市内に拠点を置き,同市内及びその周辺を縄張りと主張する
暴力団組織であり,平成23年7月頃からは,C13を総裁,C14を会長,C1
5を理事長とする五代目C11會を称している。C12組は,C11會の主要な二
次団体であり,C11會が五代目となるに伴って,C15を組長とする五代目C1
2組を称している(なお,以下では,単にC11會,C12組ということがあ
る。)。
2被告人とC11會との関係
被告人は,平成12,3年頃,四代目C11會C21組内C16組と関わるよう
になり,C21組若頭やC12組若頭補佐も兼ねていたC16組組長C2の下で準
構成員として活動した後,平成20年12月頃,正式にC16組組員となった。C
16組は,C11會が五代目を称するようになった際,三次団体から二次団体とな
ったが,被告人は,本件各犯行前後の時期を通じて,C16組組員として,同組の
事務所当番などのほか,C2の運転手やかばん持ち等をして生活するとともに,C
2がC12組出身者であったことから,C12組の事務所当番にも入るなどしてい
た。
第3甲事件について
1甲事件の概要
関係各証拠によれば,甲事件は,C16組組員であるC5が運転し,被告人が助
手席に乗っていた自動車(車種E7)によりB方付近まで送迎されたC12組若頭
補佐のC3又はC12組内C22組若頭のC4のいずれか,あるいは両名により実
行されたものであると認められる。
2被告人の関与の状況等
C11會の組員による犯罪についての被告人の認識
被告人は,C16組準構成員となった後,平成14年頃,C16組関係者らが共
謀して飲食店にふん尿をまき散らした事件,エステ店に発煙筒を投げ込んだ事件に
ついて,犯行使用車両を準備するなどして関与し平成20年10月1日まで服役し
た後,前記のとおりC16組組員として活動していた。その間,C11會組員ない
しその関係者は,本拠とする北九州市などで多数回にわたり銃器等による殺傷事件
を発生させていたところ,被告人も,平成15年頃に,C11會関係者が前記飲食
店に手りゅう弾を投げ込み複数人が負傷したこと,平成20年7月頃に,C11會
組員がC11會内の元組長をけん銃で射殺した嫌疑で逮捕されたことを知っており,
さらに,平成20年9月頃の建設会社関係者等に対する発砲事件も知り,その内容
や発生地域からこれがC11會関係者による可能性が高いと認識していた。
甲事件における被告人の関与
被告人は,犯行数日前C2からバイクを用意するよう指示され,C5と相談する
などして,知人からバイクを借り受け,そのほかに,容易に足がつかないよう自動
車も盗んで用意することとした。犯行当日,C2から指示があり,借り受けていた
前記バイクを指定された駐輪場に移動させたが,その際,C2への連絡はふだん使
っているものと別の電話番号にするよう言われた。前記バイクを移動させ,更に自
動車(車種E8)を盗み,その旨をC2に報告して帰路につくと,C12組上位者
のC23から前記バイクのエンジンが掛からないので来るよう連絡を受け,駐輪場
付近に戻ると,C12組組長代行のC1,C12組若頭補佐のC3,C12組内C
22組若頭のC4がいた。結局バイクが動かないので,前記のE8を止めていた住
宅街のガレージに同人らを案内したところ,C1と相談を遂げた様子のC3,C4
から,その際被告人とC5が乗ってきていた知人の自動車(車種E7)で行く,運
転してくれなどと告げられ,同E7にC3,C4を乗せて待機した。その間逃走経
路についてC3,C4らと相談し,実行犯であるC3及びC4を送迎する場所がそ
の時待機していたガレージの付近であると知った。そして,実行犯らをガレージか
ら犯行現場付近まで送迎し,共に逃走するなどした。さらに後日,C4やC5と共
に犯行使用車両や着替え等の処分も行った。
3検討
以上の事実関係を前提に検討すると,被告人は,本件犯行の数日前からC2
の指示を受け,足が付かないようにするため自動車などを準備し,さらにC2から
は連絡手段としてふだんとは異なる電話番号を用いるように伝えられていた上,本
件当日,C12組の組長代行であるC1が現場で指示し,その指示に従って同組組
員らが実行することも知ったのであるから,C11會の主要な二次団体であるC1
2組が主導する形で組織として事件を起こすことを認識していたと言える(被告人
自身も公判廷でその旨述べている)。そして,その事件の中身について,C5及び
被告人が自動車で犯行現場まで送ったC3及びC4が実行し,直ちにまた同車両に
乗ってあらかじめ相談しておいた経路で逃げるという形をとるもので,しかも住宅
街で敢行されるものであることを被告人は遅くともガレージで待機をしている間に
認識するに至ったのであり,それまでにC11會の関係者による銃器等を用いた殺
傷事件を複数見聞きしていたことにも照らせば,C3ら実行犯が,住宅街にいる人
物に対して,けん銃を含む凶器を用いた加害行為に及び,場合によっては死亡させ
る事態になるかもしれないことも想定できたと認められる。
それにもかかわらず,C2らに計画の詳細を尋ねることなく,C3らを犯行現場
付近まで送るなどしたのであるから,被告人は,前記のような事態を容認して,組
織の一員として役割を果たしたと言え,けん銃を使用した殺人の未必的な故意があ
り,判示の共犯者との黙示的共謀もあったと認められる。
この点,被告人は,自分がかつて嫌がらせの事件に関わったので,この時もそう
いう事件が起きるのかなと思ったとも述べる。しかしながら,被告人自身,本件犯
行当日C3,C4が何も持っていないことからけん銃が使われることもよぎったか
もしれないと述べているとおり,過去のふん尿等による嫌がらせとは態様を異にす
ることを認識する状況にあったと言え,前記のとおりのC11會関係者が起こした
事件について被告人が見聞きしていた内容に照らせば,けん銃使用による加害行為
及びこれによる死の結果の発生についての認識が払拭されたとは言い難い。
そして,被告人の果たした役割は,実行犯らを犯行現場まで車で送り,犯行
後車で逃走を援助した上,証拠を隠滅するという重要なものであるから,被告人に
は,甲事件について,殺人未遂罪の共同正犯が成立する。
第4乙事件について
1乙事件の概要
乙事件は,判示事務所に,フルフェイスヘルメット及び作業着を着用した何者か
が立入り,発砲したものであるところ,関係各証拠によれば,四代目C12組若頭
補佐のC6がC12組上位者のC7をバイクに乗せて前記事務所に連れて行き,C
7が実行に及んだものであること,被告人,C5,C2がそれぞれ路上で2台の自
動車に分かれて待機しており,C7とC6が来ると,被告人はバイクを受け取って
運転して移動させ,他の4名は自動車2台に分乗して逃走したことが認められる。
2被告人の関与の状況等
まず,被告人は,前記のとおり,甲事件に関わっていたところ,その翌日の
報道を見聞きするなどして,自身が関与した事件が暴力団追放の運動をしていた自
治会関係者宅に対してけん銃により弾丸が撃ち込まれた事件であることを知った。
乙事件における被告人の関与は次のとおりである。被告人は,犯行の約1週
間前,C2からバイクを用意するよう言われ,その数日後にC5と共にバイクを盗
み,犯行発覚,検挙を免れるため塗装やナンバープレートの交換を行った。犯行当
日までには,同バイクをC6の試走に供し,C23から犯行時に使用されるであろ
う着衣等を受け取ってC5に渡すなどし,加えて,犯行場所となった建築現場の事
務所付近でC2から「ここの場所を覚えておけよ。」などと言われるとともに,バ
イクをa10区内の団地に運ぶこと,バイクが発進した後は,C5運転車両に乗っ
てC2が乗る車両に続き,a10区内の交差点で待機すること,バイクが戻ってき
たら乗り替わってこれを隠した上,後に処分することなどを指示された。そして,
犯行当日,C5から連絡用として他人名義の携帯電話機を受け取り,概ね前記指示
のとおり行動したが,前記団地付近に着いた際には,C6及びC7がバイクに乗っ
ており,両名が実行担当であることが分かった。被告人は,後日,犯行に使用され
たバイクや着衣等の処分をし,その後,C2から15万円を受け取り,報酬である
と理解した。
3検討
以上の事実関係を前提に検討すると,被告人は,甲事件を通して,C11會ない
しはC12組による組織的犯行としてけん銃を用いて一般人に害を加える犯行に関
与させられ得ることを認識したと言え,その後1年も経たずに乙事件に関わってい
る。そして,被告人は,自身が関与している事件が,甲事件同様,容易に使用者が
判明しない車両や連絡手段を用いた上,犯行後直ちに逃走する必要があること,複
数のC12組の上位者が関与していることを認識していた上,C2から覚えている
ように言われた建築現場の事務所付近でその指示に従い待機することになったとい
うのであるから,被告人は,C6及びC7が,同事務所に勤務する者などに対して,
けん銃を含む凶器を用いた加害行為に及び,場合によっては死亡させる事態になる
かもしれないことも想定できたと認められる。
それにもかかわらず,被告人は,C2らに計画の詳細を尋ねることなく,C6及
びC7の逃走を援助するために犯行現場付近で待機するなどしたのであるから,前
記のような事態を容認して,組織の一員として役割を果たしたと言えるのであって,
殺人の未必的故意及び黙示的共謀があったと認められる。また,暴力団による組織
的な犯行において,被告人は,犯行に使用したバイクの準備,実行犯の逃走援助,
前記バイク等の処分といった正犯と評価するに足る重要な役割を担ったと言える。
第5丙事件について
1丙事件の概要
関係証拠によれば,丙事件は,当時開催されていた大相撲九州場所を観戦するた
めに北九州市a11区にある自宅と福岡市内にあるE9を連日のように車で往復し
ていたD3の行動状況を,多数のC11會関係者が追尾したり,相撲中継のテレビ
画面に映るD3の姿を確認するなどして犯行当日まで数日間にわたって確認した上
で行われたものであること,C4がバイクを運転し,同バイクに乗ったC12組若
頭補佐のC9が実行したものであること,被告人,C5が犯行現場付近で止めた軽
自動車で待機しており,犯行を終えたC9とC4が来ると,被告人はバイクを受け
取って運転して移動させ,他の3名は軽自動車に乗って逃走したことが認められる。
2被告人の関与の状況等
まず,被告人は,甲事件に続き,乙事件についても,発生翌日の報道を見聞
きするなどして,自身が関与した事件が,けん銃を用いた発砲事件で,人をけがさ
せたものであることを知った。
丙事件における被告人の関与は次のとおりである。犯行の約3週間前C2か
らバイクを用意するよう言われた後,C5と共に判示第3のバイクを盗み,塗装や
ナンバープレートの交換を行った。犯行の約12日前,当時C12組若頭となって
いたC7の指示で,同人及びC9と共にC2使用車両に乗車し,福岡市内から小倉
市内の被害者宅付近まで被害者乗車車両を追尾するなどした。犯行当日の少し前,
C2から,当日はC5と共に被害者宅付近の三差路で待機し,バイクでやって来る
2名を自動車に乗せた上,被告人がバイクの運転を代わり,これを処分又は隠匿す
るよう指示された。また,C9,C4,C5と合流して,判示第3のバイクをC4
に試走させ,引き渡した。そして,犯行当日,他人名義の携帯電話機で関係者と連
絡をとりつつ,C9,C4,C5と合流し,同バイクが保管されていた場所にC9,
C4を送った後,概ねC2からの指示通りに行動した。また,被告人は,後日,使
用された自動車の処分,けん銃・着替えの運搬,引渡しなどをし,その後,C7か
ら15万円を受け取り,報酬であると理解した。
3検討
以上の事実関係を前提に検討すると,被告人は,甲事件を通じて,けん銃を用い
て一般人に危害を加える犯行に関与させられ得ることを認識し,さらに,乙事件に
関与してその報道を見聞きすることで,その認識を強めたと言えるところ,その約
10か月後に丙事件に関与している。そして,甲事件,乙事件と同様,自身が関与
している事件が,容易に使用者が判明しない車両等を用いること,複数のC12組
の上位者が関与していることを分かった上で,特定の人物の動向確認も行っている
ことからすれば,この人物に対して,実行犯のC9及びC4により,けん銃を含む
凶器を用いた襲撃がなされ,場合によっては死亡させるという事態になるかもしれ
ないことも想定できたと認められる。
それにもかかわらず,被告人は,C2らに計画を尋ねることなく,C9及びC4
の逃走を援助するために犯行現場付近で待機するなどしたのであるから,前記のよ
うな事態を容認して,組織の一員として役割を果たしたと言えるのであって,殺人
の未必的な故意及び黙示的共謀があったと認められる。また,暴力団による組織的
な犯行において,実行犯らの逃走援助,犯行使用車両の処分といった正犯と評価す
るに足る重要な役割を担ったと言える。
第6丁事件について
1丁事件の概要
丁事件は,福岡市a12区内の歩道上において,歩行中の被害者に対し,その左
後方から駆け寄った人物が,左側頭部を刃物で突き刺すなどして,傷害を負わせた
ものである。関係各証拠によれば,この事件は,C13が,美容形成外科クリニッ
クにおいて受けた施術に関与した看護師である被害者の言動等に不満や怒りを抱い
たことがきっかけで,その指揮命令に基づき,C11會により実行されたものであ
ること,被告人が窃取したバイク(判示第6の犯行にかかるもの)をC18が運転
して後部座席にC17を乗せて犯行現場付近に行き,C17が実行に及び,2名で
逃走したものであることが認められる。
2被告人の関与の状況等
まず,被告人は,甲事件,乙事件に続き,丙事件についても,発生翌日の報
道を見聞きするなどして,自身が関与した事件が,けん銃を用いた発砲事件で,人
を死亡させたものと知った。
丁事件における被告人の関与は次のとおりである。犯行の数週間前,C12
組筆頭若頭補佐となっていたC9から,足が付かないバイクを用意するよう言われ,
判示第5のバイクとナンバープレートを盗み,同バイクを違う色に塗装し,ナンバ
ーを付け替えるなどした。犯行数日前,指定された場所に同バイクを置いたが,こ
れが故障したことから,改めてバイクを準備するよう指示され,判示第6のバイク
を盗んで塗装やナンバープレートの交換を行った。そして,C9の指示に従って,
C12組上位者であったC18に連絡をとり,犯行当日に同バイクを引き渡した。
その後,C9から15万円を受け取り,被告人は報酬であると理解した。
3検討
被告人は,甲事件,乙事件,丙事件に関与することで,自らがC12組上位者な
どから車両の準備を依頼される場合には,同車両が組織的な襲撃に使用され,その
襲撃の結果,場合によっては被害者を死亡させるかもしれないと認識していたと言
える。関係証拠に照らしても,丁事件で車両の準備等をするに当たって,このよう
な認識を払拭するような事情があったことはうかがえない。そして,その上で,被
告人は,事件の詳細については誰にも聞くことなく,指示に従って,2度にわたり
バイクを盗み,そのうち1台を襲撃のために用いることを分かりつつC18に引き
渡したのであるから,組織的殺人の未必的故意及び黙示的共謀があったと認められ
る。また,暴力団による組織的な犯行において,犯行使用車両の準備という正犯と
評価するに足る重要な役割を担ったと言える。
第7C23及びC4との共謀について
なお,本件証拠関係の下では,甲事件,乙事件,丁事件においてC23との共謀
が,丁事件においてC4との共謀が,それぞれ認められないとしたので,その理由
を述べる。
⑴C23について
C23は,C12組の組員であり,C15の下で運転手や電話の取次ぎ等を担っ
ていた者である。そして,甲事件においては,犯行時に使用するヘルメットを実行
犯らに渡し,バイクが動かない旨被告人に連絡したこと,乙事件においては,犯行
時に着る着衣等が入ったバッグを被告人に渡したことが認められ,また,傍受され
た組員らの通話内容と犯行前後の同人らの行動状況等に照らせば,丁事件について,
実行犯らを指揮していたC9がC12組組長であるC15に対して報告等をする際,
C12組組長秘書としてその取次ぎをしていたことが強く疑われる。しかしながら,
各事件において,C23が関与するに至った経緯や同人が前記各行動をとった際の
状況等はいずれも明らかでなく,その言動が比較的明らかになっている丁事件にお
いても,事件の具体的な内容についてのやり取りまでは認めることができず,C2
3が,組長C15も関わるような組織による犯行を予測し得たにしても,その内容
として人を襲撃して殺害することまで想定していたかには疑問が残る。したがって,
各事件について,共犯者らと意を通じたとまでは認められないと判断した。
⑵C4について
C4は,丁事件の当時,C11會専務理事兼C12組組織委員長であった者であ
る。そして,C2の指名であるとC9から告げられ,実行犯であるC17が犯行当
日C13宅での当番であったのを交代し,その際,C9から「仕事」が理由と伝え
られたことなどが認められる。しかしながら,傍受された組員らの通話内容からす
れば,C17の当番の交代は一応体調不良も理由としており,C4を指名したのは
C2の個人的な理由によるものともみえること,「仕事」の内容がC4に具体的に
説明されたとは認められないことを考慮すれば,C17が人を襲撃することについ
てC4が未必的にでも認識していたかについては疑問が残り,丁事件について共犯
者らと意を通じたとまでは認められないと判断した。
(量刑の理由)
本件は,被告人が暴力団組員として活動するなかで関わった,けん銃を用いた殺
人未遂3件(甲事件(被害者2名),乙事件)・殺人1件(丙事件),刃物を用い
た組織的殺人未遂1件(丁事件),甲事件・乙事件・丙事件に関する銃刀法違反及
び丙事件・丁事件で犯行に使用されるなどしたバイク等の窃盗4件である。
1甲事件について
C11會と地元住民らが衝突し,被害男性が暴力団追放運動の先頭に立っていた
ことからすれば,犯行動機は,C11會に反発する地元住民を排除,威圧するため
であったと推認され,悪質性は高い。組織性及び計画性も認められる上,被害者ら
の就寝中に家屋外から殺傷能力の高いけん銃を用いて6発もの弾丸を撃ち込み,こ
のうち1発は被害者がいた寝室に達したのであって,危険性も高い。
2乙事件について
D8が暴力団排除に取り組んでいたことからすれば,犯行動機は,反発する建設
会社等を威圧し,当時C11會が建設業者から二次団体を経由するなどして得てい
た上納金の減収を避けることなどにあったと推認され,およそ正当化される余地は
なく,組織性及び計画性も認められる。近距離から被害者に向けて殺傷能力の高い
けん銃を用いて弾丸3発を発射し,うち1発が下腹部に命中しているのであり,危
険性は極めて高い。公的施設や病院等が立ち並ぶなか,工事関係者等が出入りする
作業所内で,発砲に及んだものであり,関係者や地域住民に与えた恐怖感は大きい。
3丙事件について
犯行動機の詳細は不明であるが,数日間にわたり,複数の組員らが被害者を監視,
追尾して動向確認するなど組織性及び計画性は顕著である。近距離から殺傷能力の
高いけん銃により弾丸2発を発射し,被害者の死亡という極めて重大な結果を生じ
させたものである。被害者の無念さは察するに余りあり,突然被害者を失った家族
らの悲しみも大きい。地域住民に与えた恐怖感も相当なものと言える。
4丁事件について
被害者を襲撃する理由としては,C11會総裁を称するC13が,被害者が勤務
していたクリニックによる施術や同人の対応に対し,個人的な不満や怒りなどを抱
いたことによるとしか考え難く,理不尽な理由による報復で正当化の余地はない。
組織的殺人未遂罪の中でも,複数の組員らにより被害者の動向確認をするなど計画
性は高く,2度の失敗を経て敢行された点で犯意も強固である。被害者を複数回に
わたり鋭利な刃物で刺すなどした行為は危険というほかなく,頭部の動脈を断裂さ
せるなどの重傷を負わせている。被害者は本件後も手がしびれた状態が続くなど後
遺症等に苦しんでいるのであり,その肉体的・精神的苦痛には大きなものがある。
5被告人の責任について
前記各犯情は重いと言わざるを得ず,暴力団が組織的犯行として一般人を襲撃し
た点は極めて強い非難に値する。被告人は,犯行に使用する車両として容易に出所
が判明しないものを選択し,塗装やナンバープレートの交換をするとともに,逃走
経路にも意見を述べるなど主体的に行動していた点もうかがわれ,丙事件では,被
害者の動向確認を行うなど他の事件と比較して関与の程度は深い。被告人が実行行
為自体には関与しておらず,共犯者間での立場は従属的なものであり,犯行の全体
像や関与者の詳細を知らぬままに,上位者の指示に反することもできず利用された
面があることも否定できないが,暴力団に加入したこと,数度の事件を経てもなお
活動し続けたことは被告人自身の選択であって酌量の余地はない。以上からすれば
被告人の刑事責任は相当に重いというべきであって,前記のように従属的な立場に
あったことに加え,暴力団を離脱し犯行を認めてからは,捜査に協力して事案の解
明に貢献してきたこと,殺人未遂,殺人,組織的殺人未遂の各被害者に対し謝罪文
を作成するとともに,公判では自らの知り得る限りを詳細かつ正確に供述しようと
試みたと言え,暴力団や自己の問題点について述べるなど真摯な反省がみてとれる
こと,その親族が,受刑中及び社会復帰後も被告人を支える旨証言していることを
考慮しても主文の刑は免れないと判断した。
(求刑)懲役20年
平成31年3月1日
福岡地方裁判所第4刑事部
裁判長裁判官 中田幹人
裁判官 川鷙Щ
裁判官 浦恩城泰史

[[その後>福岡高判R2.1.28 殺人、殺人未遂等被告事件]

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