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福岡高裁、2審は危険運転適用 飲酒事故でバイクの男性死なせる

 熊本県で昨年、飲酒運転でバイクと衝突事故を起こし、男性を死なせたとして自動車運転処罰法違反(危険運転致死)の罪に問われた末広裕央被告(40)の控訴審判決で、福岡高裁は4日、同法の過失致死を適用して懲役5年6月とした一審裁判員裁判判決を破棄し、より重い危険運転致死に当たると認定、懲役7年を言い渡した。
 判決理由で山口雅高裁判長は、現場は見通しの良い交差点で、前を見ていれば、衝突の数秒前から対向車線を直進してくるバイクが視野に入ったとし「アルコールの影響で状況を認識する能力が大きく低下していた」と判断した。
 1審熊本地裁は、正常な運転が困難な状態だったとは認めず、過失致死を適用していた。
 2審判決によると、被告は昨年6月23日未明、熊本県八代市北の丸町の交差点で飲酒運転し、右折する際にバイクと衝突。男性は転倒、死亡した。
(2018.7.4 22:37 産経WEST)

一審の裁判員への説明「不十分」と高裁 判決を破棄 飲酒運転の危険運転致死罪適用巡り

 熊本県で昨年6月、飲酒運転で死亡事故を起こしたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)罪で起訴された末広裕央被告(40)の控訴審判決が5日までに福岡高裁であった。山口雅高裁判長は、危険運転ではなく過失運転致死を適用し懲役5年6月とした一審の裁判員裁判判決を破棄し、危険運転致死に当たるとして懲役7年を言い渡した。
 一審・熊本地裁の裁判員裁判判決は「飲酒により状況認識能力が低下していたが、減速して右折するなどし、殊更危険な態様の運転ではなかった」と判断した。
 これに対し山口裁判長は「一審では検察官が危険運転致死罪の適用条件で重点を置くべきポイントを示さなかった」と指摘。それに基づいて裁判所が作った裁判員向けの資料も説明不足で、結果的に裁判員が法律を正しく理解できず、誤った判決につながったとの見方を示した。
 その上で「飲酒の影響で正常な運転が困難だったことに疑いを挟む余地はない」として、危険運転致死罪の適用が妥当と判断。一審を破棄し、より重い量刑を選択した。
(2018/7/5 9:02 日経新聞)

二審は危険運転致死を認定 「過失」の裁判員判決を破棄 福岡高裁

 熊本県八代市で昨年6月、飲酒運転で男性をはねて死なせたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)の罪に問われた京都府城陽市の大工末広裕央被告(40)の控訴審判決で、福岡高裁は4日、同法の過失致死と道交法違反(酒酔い運転)の罪を適用して懲役5年6月とした一審熊本地裁の裁判員裁判判決を破棄。アルコールの影響で正常な運転ができない状態だったとして、より罰則の重い危険運転致死の罪を認定し、懲役7年を言い渡した。
 争点は危険運転致死罪の成否。一審判決は、被告が約4時間にわたり多量の酒を飲んで酔っていたとした一方で、道路状況に応じた運転操作を行っていることなどから「正常な運転が困難な状態」だったとは認めず、検察側が予備的訴因として追加した過失致死などの罪を適用していた。検察、弁護側の双方が控訴した。
 山口雅高裁判長は、危険運転致死罪には運転操作能力だけでなく、危険に対処する状況認識能力も考慮する必要があると指摘。運転操作については「10回から20回通ったことがある道路であれば酔った状態でも運転は可能」とした上で、現場は見通しの良い交差点で、前を見ていれば衝突の5秒前には直進してくるバイクが見えていたとして「アルコールの影響で状況を認識する能力が相当に低下していた」と判断した。
 さらに地裁が裁判員に対して、状況認識能力についても考慮するよう説明していなかったとして「裁判員が正しい理解をすることができずに、誤った判断が下された」と述べた。
 判決によると、被告は昨年6月23日未明、当時住んでいた熊本県八代市で飲酒運転し、右折する際にバイクをはねて、新聞配達員米本好也さん=当時(55)=を死亡させた。
    ◇      ◇
 ■難しい判断、法改正指摘も
 飲酒運転による自動車運転処罰法の危険運転致死罪を巡っては、適否が割れるケースが相次ぐ。4日の福岡高裁判決は、プロの裁判官も悩むという同罪を市民が判断する難しさを改めて示した。
 福岡市の海の中道大橋で2006年に起きた3児死亡事故では一審福岡地裁判決が当時の業務上過失致死傷罪としたのに対し、高裁判決は危険運転致死傷罪を適用した。北海道小樽市で14年、女性4人が死傷した事故では札幌地検が酒の影響ではなく脇見運転が原因として被告を過失運転致死傷罪で起訴。しかし厳罰を求める遺族らの声を受け、後に危険運転致死傷罪に訴因変更した。
 同罪の認定には、被告が「アルコールの影響で正常な運転ができない状態」の証明が求められる。元裁判官の陶山博生弁護士はこの点を「裁判員にとっては要件があいまいで、判断を難しくさせている」と指摘。その上で「市民感覚を司法に取り入れるという裁判員裁判の意義を考えれば、呼気中のアルコール濃度といった分かりやすい基準を示すなどの法改正が必要ではないか」と話した。
(2018年07月05日 06時00分 西日本新聞)

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平成30年7月4日福岡高等裁判所第1刑事部判決
平成30年(う)第92号 危険運転致死(予備的訴因及び第1審認定罪名道路交通
法違反,過失運転致死)被告事件
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役7年に処する。
理由
第1原判決の要旨及び控訴趣意
1本件の主位的訴因は,次のとおりの危険運転致死の事実である。被告人は,
平成29年6月23日午前1時7分頃,普通貨物自動車(以下「被告人車両」とい
う)を運転して,熊本県八代市A町B番C号付近の信号機により交通整理の行われ
ている交差点(以下「本件交差点」という)をD町方面からE町方面に向かい,時
速約27劼捻折進行しようとした。その際,運転開始前に飲酒したことから,前
方注視及び運転操作が困難な状態,すなわち,アルコールの影響により正常な運転
が困難な状態で被告人車両を走行させたため,対向車線をF町方面からD町方面に
向かい直進してきた被害者(当時55歳)運転の普通自動二輪車(以下「被害者車
両」という)右前部に自車右前部を衝突させた。その結果,被害者は,被害者車両
とともに路上に転倒し,外傷性くも膜下出血等の傷害を負い,同日午前1時53分
頃,原判示のG病院において,前記傷害により死亡した。
2これに対し,原判決は,被告人が,本件事故当時,自動車の運転により人を
死傷させる行為等の処罰に関する法律2条1号にいう「アルコールの影響により正
常な運転が困難な状態」にあったというのには合理的な疑いが残るとして,予備的
訴因に従って,次の2つの事実を認定した。まず,被告人が,酒気を帯び,アルコー
ルの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で,本件交差点付近道路に
おいて,被告人車両を運転した,という道路交通法違反の事実(原判示第1)を認
定した。次に,被告人が,被告人車両を運転して,本件交差点を右折進行するに当
たり,進路の前方を注視し,対向直進車両の有無及びその安全を確認して,その進
行を妨げないようにすべき自動車運転上の注意義務があるのに,これを怠り,対向
車線を直進してきた被害者車両に気付かず,自車右前部を被害者車両に衝突させ,
その結果,被害者を死亡させた,という過失運転致死の事実(原判示第2)を認定
した。その上で,原判決は,これらの事実により,被告人を懲役5年6月に処した。
3検察官の控訴の趣意は検察官江口昌英作成の控訴趣意書に,これに対する答
弁は主任弁護人遠山眞浩及び弁護人吉田賢一共同作成の答弁書に,弁護人の控訴の
趣意は前記主任弁護人作成の控訴趣意書に,それぞれ記載されたとおりであるから,
これらを引用する。検察官は主位的訴因を認定しなかった事実誤認を主張し,弁護
人は予備的訴因を前提にして量刑不当を主張している。
第2事実誤認の主張について(検察官)
検察官の論旨は,要するに,被告人は本件当時アルコールの影響により正常な運
転が困難な状態であったと認められるのに,被告人がそのような状態であったと認
めるのに合理的な疑いがあるとした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らか
な事実の誤認がある,というのである。
そこで記録を調査し,当審における事実取調べの結果も併せて検討すると,被告
人は,本件当時,アルコールの影響により正常な運転が困難な状態であったと認め
られるから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある。以
下その理由を説明する。
1前提となる事実
原審で取調べ済みの各証拠によると,次の各事実が認められる。
⑴本件事故前の飲酒量及び酩酊状況
被告人は,本件事故前日の午後7時14分頃,熊本県宇土市内建築工事現場での
仕事を終え,帰路に就いた自動車内で,運転をしながら350㎖缶のビール3本を
飲み,その後,午後8時46分,八代市内のスナックに立ち寄り,午後11時46
分頃までの間,約220㎖グラス入りビールを約8杯飲んでいる。
⑵本件事故前の運転状況
被告人は,前記スナックを出て,本件事故の約4分前から,出張中に投宿してい
たアパートに向かい,被告人車両の運転を開始して,本件事故現場まで約1.3
を運転し,本件事故現場から約700m手前の交差点では,赤色信号により停止し
た自動車の後方に,約13.7mの車間距離を空けて,自車を停止させた上,前車
が青色信号により発進した約8秒後,自車を発進させている。
⑶本件事故の態様
被告人車両は,本件事故現場の約80m手前で時速約46劼任△辰燭,本件事
故現場直近では時速約27劼妨座し,本件交差点の入口付近において,右折する
車両専用の車線に入り,青色信号に従って,そこから内小回りの右折を開始し,被
害者車両と衝突している。捜査報告書(原審甲41)によると,本件事故から約5
か月後に本件事故の時刻頃被告人車両から被害者車両方向の視認状況を見分したと
ころ,視界は遮るものがなく良好であり,被告人は,遅くとも衝突の5秒前から,
被害者車両のヘッドライトの光を視認することが可能であったということができ
る。
本件事故後の言動,飲酒検知結果
被告人は,被害者車両と衝突した後,約9.3m進んで自車を停止させて降車し
た。被害者車両の後方をパトカーで警らしていた警察官が,本件事故を目撃して本
件事故現場で被告人に駆け寄ってきて,酒臭に気付き,飲酒検知に応じるよう求め
たところ,被告人は,そんなことはどうでもいい,バイクの運転手は大丈夫かなど
と繰り返し述べている。本件事故発生から約40分後,被告人の呼気からは,1リッ
トルにつき0.97咾離▲襯魁璽襪検出されており,呼気検査の際,被告人は,
歩行中終始ふらつき,直立させても常に左右にふらつく状態であった。被告人は,
その後,パトカーに乗車し,警察官から,被害者は病院に緊急搬送されたが,その
状況は分からないと説明されたのに,それでも繰り返して被害者は大丈夫なのか尋
ねている。
2被告人の原審供述
被告人は,原審公判において,次のとおり供述している。スナックで飲酒してか
ら運転を開始した時,周囲の店舗の照明や街灯等が少しぼやけて見えており,本件
事故現場の約700m手前の交差点での記憶はなく,本件事故前に対向車線を走る
被害者車両やパトカーのライトを見た記憶もない。被害者車両と衝突した衝撃を感
じて,人をはねたことに気付き,驚いてすぐブレーキを踏んだ。本件事故現場付近
の道路は,これまで10回から20回ほど通っており,普段は本件交差点の中央付
近まで進んでから右折を開始しており,今回のように,本件交差点の入口付近から
内小回りに右折した理由は分からない,というのである。
3当裁判所の判断
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条1号にい
う「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」とは,アルコールの影響に
より道路交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態をいい,ア
ルコールの影響により前方を注視してそこにある危険を的確に把握して対処するこ
とができない状態もこれに当たると解される(最高裁平成23年10月31日第三
小法廷決定・刑集65巻7号1138頁)。
⑵原判決は,次の理由から,被告人が「アルコールの影響により正常な運転が
困難な状態」であったことには合理的な疑いが残るとしている。まず,運転開始か
ら本件事故現場に至るまでの間,自宅に向かって自車を走行させ,道路状況に応じ
た運転操作をしており,本件事故現場の約700m手前の交差点では,車間距離や
停止時間に若干不自然な点はあるものの,少なくとも前方の危険は認識し,それを
回避するための運転操作ができていた。次に,本件交差点を右折するに当たり,減
速し,右折車線に進路変更して右折を始めていることに加え,本件事故現場に残さ
れたタイヤ痕や引きずり痕,被告人車両の停止距離などから,被告人は被害者車両
と衝突した際直ちにブレーキを踏んだ可能性があり,直進車両に気付かなかったこ
と,かなり内小回りであったこと以外には,一般的な右折操作を行っていた。さら
に,被告人は,飲酒検知等の際,酩酊状態にはあったが,その言動からは,自分が
衝突事故を起こし,被害者が負傷したことを認識していたこともうかがえる,とい
うのである。
原判決が「結論」において説示したところからも明らかなように,原判決は,被
告人が,道路状況に応じた運転操作ができていたこと,見当識を失っていた様子が
うかがえないことから,「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」とい
うには合理的な疑いがあると判断したものということができる。しかし,それまで
10回ないし20回通ったことのある道路であれば,相当に酩酊した状態であって
も,道路状況に応じた運転操作をすることは可能であり,そのような道路における
運転操作の態様は,正常な運転の能力に対するアルコールの影響を判定する指標に
はならないというほかない。むしろ,飲酒し酩酊したことにより,周囲で生起して
いる状況をそれに対処できる程度に認識することができない状態になったのであれ
ば,危険を的確に把握して対処することができなかったというほかなく,「アルコー
ルの影響により正常な運転が困難な状態」にあったと判断するべきことになる。そ
して,衝突事故を起こした後,事故に気付き,被害者の負傷も認識できたというだ
けでは,危険を的確に把握して対処できたというには足りないことは明らかである。
⑶そこで本件の事実関係に即して検討すると,被告人は,本件当夜,4時間3
0分以上の間,ビールを約2810㎖も飲酒し,本件事故後呼気1リットルにつき
0.97咾發離▲襯魁璽襪検出されているから,本件当時相当に深い酩酊状態に
あったということができる。また,被告人は,警察官から飲酒検知を求められたの
にも,適切に応答ができず,自分の関心事だけを一方的に述べ,被害者が病院に緊
急搬送されてその状況は分からない旨の説明を受けても,繰り返して被害者の状況
を尋ねており,そのことからは,多量の飲酒のため,周囲で生起している事象を適
正に認識できていなかったというほかない。
被告人の原審供述は,本件事故当時の状況について記憶にないところが散見され
るが,それは多量の飲酒による事後の健忘とみるべきであり,本件事故当時の状況
認識能力が低下していたことを示すものとはいえない。しかし,被告人が,本件事
故現場の約700m手前の交差点で,前車から約13.7mも車間距離を空けて停
車し,前車の発進から約8秒間も自車の発進が遅れたことは,被告人の状況認識能
力が相当に低下していたことを示している。被告人は,アルコールの影響がなけれ
ば,前方を注視すれば容易に認識可能な事象について,多量の飲酒によるアルコー
ルの影響から,適正に認識することができない状態にあったといわざるを得ない。
しかも,被告人が本件交差点の入口付近から内小回りに右折したのは,対向車線
を走行してくる被害者車両との距離,被害者車両の速度について,適正に認識でき
なかったため,被害者車両より前に本件交差点を通過できると誤って認識した可能
性が否定できないのである。まして,原判決のように,被告人が,アルコールの影
響により,遅くとも衝突の5秒前から認識可能で,当然視野に入ってくる対向して
直進してきた被害者車両に気が付かなかったとすれば,それ自体で,アルコールの
影響により状況を認識する能力が相当に低下しており,前方を注視してそこにある
危険を的確に把握して対処することができない状態にあったというほかない。
⑷以上からすると,被告人は,多量の飲酒によるアルコールの影響から,自動
車を安全に走行させるために必要な周囲の状況を認識する能力が大きく低下してお
り,前方を注視しそこにある危険を的確に把握することができない状態にあったと
いうべきである。
本件においては,公判前整理手続において,検察官が,本件の事実関係の下でウ
エイトを置くべきポイントをあげず,「アルコールの影響により正常な運転が困難
な状態」に該当する根拠となる事実を平板に羅列する証明予定事実記載書面を提出
した。そのため,裁判所が検察官及び弁護人の了解を得て作成した裁判員に対する
説明案では,裁判員に対する「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」
の説明の中に,前方を注視しそこにある危険を的確に把握することができない状態
が含まれることは明らかにされながら,その例示として,前方注視自体の能力の欠
如や運転操作能力の欠如が示されていたに過ぎない。説明案においては,その判定
の指標も主として運転操作能力に対するアルコールの影響にあるとされ,危険に対
処するために必要な状況認識能力に対するアルコールの影響が考慮対象になること
の説明がされていない。その結果,裁判員が,「アルコールの影響により正常な運
転が困難な状態」に関して正しい理解をすることができずに,誤った判断がされた
ものというほかない。
以上によれば,被告人が本件当時アルコールの影響により正常な運転が困難な状
態にあったことに合理的疑いを容れる余地はなく,主位的訴因が認められるから,
主位的訴因を排斥した原判決は,論理則,経験則に反し,原判決には判決に影響を
及ぼすことが明らかな事実の誤認がある。
検察官の事実誤認の論旨は理由があり,弁護人の量刑不当の論旨について判断す
るまでもなく,原判決は破棄を免れない。
第3破棄自判
よって,刑訴法397条1項,382条により原判決を破棄し,同法400条た
だし書により,当裁判所において更に次のとおり判決する。
(罪となるべき事実)
被告人は,平成29年6月23日午前1時7分頃,被告人車両を運転して,熊本
県八代市A町B番C号付近の信号機により交通整理の行われている本件交差点をD
町方面からE町方面に向かい,時速約27劼捻折進行しようとした。その際,運
転開始前に飲酒したことから,アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で
被告人車両を走行させたため,対向車線をF町方面からD町方面に向かい直進して
きた被害者車両の右前部に自車右前部を衝突させた。その結果,被害者は,被害者
車両とともに路上に転倒して,外傷性くも膜下出血等の傷害を負い,同日午前1時
53分頃,G病院において,前記傷害により死亡した。
(法令の適用)
被告人の判示所為は,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する
法律2条1号(人を死亡させた場合)に該当するので,その所定刑期の範囲内で被
告人を懲役7年に処し,原審における訴訟費用は刑訴法181条1項ただし書を適
用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
本件は前記のとおりの危険運転致死の事案である。被告人は,仕事を終えてから,
帰宅途中飲酒しながら自動車を運転し,さらに安易にスナックでの飲酒に赴いた上,
多量の飲酒により相当に深い酩酊状態に陥りながら,翌日の仕事に疲労を残さない
よう帰宅して就寝しようと考え,被告人車両の運転を開始しており,被告人が本件
に至った経緯は自己本位で十分に非難に値するものである。本件事故後まもなくさ
れた飲酒検知の結果をみても,被告人の飲酒によるアルコールの影響は相当に大き
かったということができる。被害者は,仕事に励み,趣味のツーリングにも勤しん
でいたのに,青信号に従って交差点を直進した際,心ない飲酒運転をしていた被告
人によって,突然一命を絶たれることとなったのであり,その無念は察するに余り
ある。被害者の妻や長男ら遺族の悲しみは深く,飲酒運転をしてかけがえのない被
害者を奪った被告人に対し,厳しい処罰感情を抱くのも当然である。被告人は,平
成21年普通乗用自動車の酒気帯び運転により懲役6月,3年間執行猶予に処せら
れており,それ以前にも酒気帯び運転による罰金前科3犯がある上,本件に至った
経緯をみても,安易に酒気帯び運転を行う傾向が認められる。被告人の刑事責任は
かなり重いといわなければならない。
他方,被告人は,状況を認識する能力が相当に低下しており,前方を注視しそこ
にある危険を的確に把握することができない状態にはあったものの,本件交差点に
おいては,減速して右折車線に入ってから右折しており,高速度で運転するなど,
殊更危険な態様で被告人車両を運転していたわけではない。本件のように,直進す
る被害者車両に右折する加害者車両が衝突する事故の態様は,アルコールによる影
響がなくとも,しばしばみられるところである。被告人は,原審公判において,反
省の言葉を述べ,被害者の遺族との間で5350万円の損害賠償義務を認め,自賠
責保険から支払われる3000万円に加えて,雇用主と連帯して2350万円の賠
償を行う旨の示談を成立させ,原判決後,雇用主の協力を得て,その支払を一部終
えている。また,被告人の雇用主は,原審公判において,被告人に対する支援を約
束しているなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。
そこで,これらを総合考慮して,被告人を主文の刑に処することとした。
福岡高等裁判所第1刑事部
裁判長裁判官 山口雅
裁判官 平島正道
裁判官 盒狭Ъ

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