報道等をもとに日本の裁判官の情報を収集、掲載しています。

部活中に熱中症で死亡、2審も元顧問の過失認定

 大分県竹田市の県立竹田高で2009年、剣道部2年の工藤剣太さん(当時17歳)が部活動中に倒れ熱中症で死亡した事故に伴い、工藤さんの両親が、県に命じられた賠償金など約2755万円を元顧問らに請求するよう県に求めた訴訟の控訴審判決が2日、福岡高裁であった。
 佐藤明裁判長は、県に対し、元顧問に賠償金100万円を請求するよう命じた1審・大分地裁判決を支持し、県側の控訴を棄却した。
 佐藤裁判長は「元顧問は、生徒の安全確保を図るべき立場にありながら生徒の状況を見守っておらず、重大な過失がある」と指摘した。
 控訴審判決によると、工藤さんは09年8月、打ち込み稽古中に「もう無理です」と訴え、竹刀を落としても気付かないまま構えるなど異常な行動を取った。だが、元顧問は倒れた工藤さんを蹴ったり、「演技じゃろうが」と言いながら10回程度、頬を平手打ちしたりした。
 佐藤裁判長は元顧問について「熱中症を疑うべきで、わずかな注意をすれば有害な結果を引き起こすことを予見できた」と判断。保険で充当された分を除く県の実質負担200万円の半分を請求するよう命じた1審を支持した。また、元副顧問の過失も認めたが、「顧問の意に反することは困難だった」として、1審同様に賠償責任を負わせることができる重過失までは認めなかった。
 この事故を巡っては、両親が起こした別の民事訴訟で、県に約2755万円の支払いを命じ、元顧問ら個人への賠償は認めない判決が確定していた。
 大分県教委は「判決内容を十分に検討して対応したい」とコメント。工藤さんの母・奈美さん(48)は「今後、学校での事故で苦しむ子供たちを出さないよう、負けてはいけないという思いで闘ってきた。剣太に合格点を出してもらえると思う」と語った。
(2017年10月02日 19時19分 読売新聞)

剣道部員の熱中症死訴訟「意識障害のふらつきを演技と決めつけ」と福岡高裁 元顧問に2審も賠償責任

 平成21年8月、大分県立竹田高校2年だった工藤剣太さん=当時(17)=が剣道部の練習中に熱中症で死亡した事故を巡り、両親が当時の顧問と副顧問に賠償責任を負わせるよう県に求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は2日、一審大分地裁に続き、元顧問に100万円を請求するよう命じた。県側の控訴を棄却した。
 判決で佐藤明裁判長は、工藤さんがふらつくなどの意識障害を起こしていたのに、すぐに救急車を呼ばず、適切な冷却措置も取らなかったと指摘。「熱中症が疑われた工藤さんの行動を演技だと決めつけて指導を続け、安全確保を図らなかった」と述べた。
 その上で元顧問の「重大な過失」を認め、県が「求償権」を行使して賠償させるよう命じた。元副顧問については「過失はあるが、元顧問の意向に逆らうのは困難だった」とし責任を否定した。
 大分県は「判決内容を検討し、今後の対応を判断する」とのコメントを出した。
 両親は今回の訴訟に先立ち、損害賠償請求訴訟を起こしたが、平成27年の確定判決は、元顧問らの賠償責任を認めなかった。県は判決に基づき約5500万円を支払った。
(2017.10.2 18:50 産経WEST)

元顧問の賠償負担、高裁も支持 大分の剣道部員死亡訴訟

 大分県竹田市の県立竹田高校で2009年、剣道部の工藤剣太さん(当時17)が練習中に熱射病で死亡した事故を巡り、県が負担した賠償金2755万円を当時の顧問や副顧問に請求するよう、両親が県に求めた訴訟の控訴審判決が2日、福岡高裁であった。佐藤明裁判長は、元顧問に100万円を負担させるよう県に命じた一審・大分地裁判決を支持し、県側の控訴を棄却した。
 争点は、元顧問らに重大な過失があったかどうかだった。県側は「熱射病が原因で意識障害になったか疑問。仮にそうだとしても、元顧問は、剣太さんが死に至るような熱射病になっていたとは認識できなかった」などと主張していた。
 高裁判決は、剣太さんが練習中に竹刀を払い落とされたにもかかわらず、竹刀を持たずに構えをとり、注意されても気づかなかったなどと指摘。熱射病による意識障害を疑うべき状況だったとして、「死に至ることを予見することができたのに、演技だと決めつけて指導を続けており、重大な過失がある」と判断した。
 一方、「元副顧問にも負担させるべきだ」などとする両親側の付帯控訴も棄却した。
 判決後、両親らが福岡市内で報告集会を開いた。
 原告弁護団の徳田靖之弁護士は「今後の部活動指導にあるべき基準をもたらし、大きな意味があると思う」と評価した。
 母の奈美さん(48)は「教師個人の責任が認められたことで、今後、行き過ぎた指導の抑止力となってくれれば。剣太も合格点を出してくれるのではないか」と語った。
 大分県教委の工藤利明教育長は「一審に続き厳しい判決。十分に検討し対応を判断したい」と話した。(興野優平、加藤美帆)
(2017年10月3日09時58分 朝日新聞)

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主文
1本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は控訴人(附帯被控訴人)の,附帯控訴費用は被控訴人(附
帯控訴人)らの,当審において補助参加によって生じた費用は控訴人(附
帯被控訴人)補助参加人の各負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨及び附帯控訴の趣旨
1控訴の趣旨
(1)原判決中控訴人(附帯被控訴人)敗訴部分を取り消す。
(2)上記取消部分に係る被控訴人(附帯控訴人)らの請求をいずれも棄却する。
2附帯控訴の趣旨
(1)原判決を次のとおり変更する。
(2)控訴人(附帯被控訴人)が,控訴人(附帯被控訴人)参加人及びAに対し
て有する求償金2755万6519円及びこれに対する平成25年5月2
日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求を怠ることが違法であ
ることを確認する。
(3)控訴人(附帯被控訴人)は,控訴人(附帯被控訴人)参加人及びAに対し,
2755万6519円及びこれに対する平成25年5月2日から支払済み
まで年5分の割合による金員を連帯して支払うよう請求せよ。
第2事案の概要
1(1)本件は,大分県が,大分県立高校の生徒が部活動中に倒れ救急搬送された
が死亡した事故につき国家賠償法1条1項に基づき同県に対して遺族への
損害賠償金の支払を命じる確定判決に従い遺族が受領を拒否した上記賠償
金を供託したところ,同県の住民である被控訴人(附帯控訴人。以下「被控
訴人」という。)らが,同県の長である控訴人(附帯被控訴人。以下「控訴
人」という。)に対し,控訴人は,上記部活動の指導をしていた教員であり,
上記確定判決において加害公務員と認定された控訴人参加人(以下「参加人
B」という。)及びA(以下「A」といい,参加人Bと合わせて「参加人B
ら」ということがある。)に対して同条2項に基づき求償権を行使すべきで
あるにもかかわらず,これを行使しないことが違法に財産の管理を怠るもの
であると主張して,地方自治法242条の2第1項3号に基づき上記求償権
(供託金額相当の2755万6519円及びこれに対する供託日の翌日で
ある平成25年5月2日を起算日とする年5分の割合による遅延損害金請
求債権)の行使を怠る事実の違法確認及び同項4号に基づき参加人Bらに対
する同求償権行使(連帯支払請求)の義務付けを求める住民訴訟である。
(2)原審は,Aにおいては国家賠償法1条2項にいう重過失が認められない
が,参加人Bにおいてはそれが認められ(争点(1)),上記供託金に対して,
当時,県が締結していた施設賠償責任保険等による保険金による充当をして
も200万円の損害が残り(争点(2)),信義則上その2分の1の限度に求償
が制限される(争点(3))とした上,この求償権を行使しないことが違法な怠
る事実に当たる(争点(4))として,々義平佑砲いて参加人Bに対して有す
る求償権100万円及びこれに対する供託の日の翌日である平成25年5
月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の請求を怠る
ことが違法であることを確認する,控訴人において,参加人Bに対し,1
00万円及びこれに対する平成25年5月2日から支払済みまで年5分の
割合による金員を支払うよう請求せよとの判決をした。
(3)これに対し,控訴人は,参加人Bについて国家賠償法1条2項の重過失を
認め(争点(1)),参加人Bの責任について保険金を優先的に充当することを
認めず(争点(2)),信義則上の求償権の制限が2分の1にとどまり(争点(3)),
求償債権を行使しないことが違法な怠る事実に当たる(争点(4))としたこと
を不服として控訴をし,被控訴人らは,Aについて国家賠償法1条2項の重
過失を認めず(争点(1)),参加人Bの責任について保険金の充当を認め(争
点(2)),さらに,求償権を信義則により2分の1に制限したこと(争点(3))
を不服として附帯控訴をした。
2前提事実は,次のほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2の2に記載のと
おりであるから,これを引用する。
(1)原判決4頁14行目の「県」を「大分県(以下「県」という。)」と改め,
同行目から15行目にかけての「り,Cの両親であ」を削り,同17行目の
「C」を「C(以下「C」という。)」と,同行目から18行目にかけての
「D高校」を「大分県立D高校(以下「D高校」という。)」とそれぞれ改
め,同18行目の「剣道部」の後に「(以下,同校の剣道部を「本件剣道部」
という。)」を,同行目の「主将」の前に「同部の」を,同19行目の「本
件事故」の前に「後記」を,同行目の「死亡した」の後に「(生年月日につ
き甲1)」をそれぞれ加え,同行目の「本件当時」を「同日」と改め,同2
0行目の「していた」の後に「(甲4)」を,同21行目,同5頁初行及び
同5行目の各「剣道部」の前にいずれも「本件」を,同5頁初行及び同5行
目の各「本件事故」の前にいずれも「後記」を,同2行目「していた」の後
に「(担当科目につき乙前B4)」を,同5行目「である」の後に「(担当
科目につき乙前C4)」をそれぞれ加え,同7行目ないし9行目を削る。
(2)同5頁11行目の「本件当日」を「平成21年8月22日」と,同13
行目の「熱射病」を「熱中症(救急搬送前の熱中症の重症度は争いがある。)」
と,同行目の「E病院」を「E病院(以下「E病院」という。)」とそれぞ
れ改め,同15行目の「同日」の後に「搬送から約6時間が経過した」を,
同行目の「甲1」の前に「以下,以上の出来事を「本件事故」という。」を
それぞれ加え,同17行目から同18行目にかけての「乙前DA2」を「甲
前19」と改める。
(3)同5頁18行目と19行目の間に次を挿入する。
「(3)参加人Bらに対する懲戒処分(甲前13,乙33,弁論の全趣旨)
平成21年12月28日開催の県教育委員会臨時会において,本件事
故に関し,参加人Bに対し停職6か月,Aに対し停職2か月の懲戒処分
を行う旨の議案が承認された。この際,教育長は,提案理由の中で,参
加人Bは,Cの体調不良に気付くのが遅れ,午前11時55分頃意識が
朦朧となり倒れるまで練習を継続した,参加人Bは,適切な予防措置を
怠り,体調に異常が生じた後も練習を継続しようとし,緊急の対応が必
要な熱中症に対する救護措置が遅れた,参加人Bは,Cの動きが悪いな
どの理由でCの腰の横を蹴り,頬を平手で複数回叩くなどしており,こ
れらの行為は学校教育法11条に禁止されている体罰に該当する,Aは,
Cの体調不良に気付くのが遅れ,適切な予防措置を怠り,体調に異常が
生じた後も練習を継続しようとし,緊急の対応が必要な熱中症に対する
救護措置が遅れた,Aは,副顧問として練習中の危険防止への配慮及び
生徒の体調の変化に十分注意し,顧問に進言すべき等の義務があったに
もかかわらず,それが不十分であった旨述べた。
県教育委員会は,同日,参加人Bに対し停職6か月,Aに対し停職2
か月の懲戒処分をした。停職中参加人Bが支給を受けなかった給与は約
360万円である。」
(4)同5頁19行目の「(3)」を「(4)」と,20行目から21行目にかけての
「県及び豊後大野市らに対し,前訴を提起した。」を「大分地方裁判所に対
し,参加人Bら,県及びE病院を設置する豊後大野市を被告として,本件事
故におけるCの死亡は参加人Bらの過失(Cが本件剣道部の練習中,熱中症
又は熱射病を発症したにもかかわらず,直ちに練習を中止し,医療施設に搬
送し,あるいは冷却措置を実施するなどの措置を執らなかったなどの過失)
及びE病院の医師の過失による旨主張して,損害賠償を求める訴え(同裁判
所平成22年222号。以下「前訴」という。)を提起した(前訴にお
ける被控訴人らの主張につき甲1)。」とそれぞれ改め,同22行目の「要
旨」の前に「前訴において,」を加え,同6頁3行目の「その余の請求を棄
却した。」を「県及び豊後大野市に対するその余の請求をいずれも棄却し,
参加人Bらに対する請求をいずれも全部棄却した(甲1)。」と改め,同4
行目の「本件」の後に「事故」を加え,同21行目の「ついては」を「おい
ては」と改め,同7頁初行の「とした」の後に「が,参加人Bらは個人責任
を負わないとした」を加え,同2行目の「後,」から同3行目末尾までを「中,
被控訴人らの県及び豊後大野市に対する各請求についての部分に対しては
当事者双方とも控訴しなかったため確定したが,被控訴人らの参加人Bら個
人に対する請求についての部分に対しては,被控訴人らにおいて,福岡高等
裁判所に控訴し,同裁判所がこれを棄却したことについても上告したものの,
上告棄却及び上告不受理の決定がされ,確定した(甲2,乙1,弁論の全趣
旨)。」と,同4行目の「(4)」を「(5)」とそれぞれ改め,同行目の「甲2」
の後に「,乙35,36,弁論の全趣旨」を加え,同24行目の「(5)」を
「(6)」と改め,同8頁4行目の「重大な過失」の前に「国家賠償法1条2項
の」を加え,同8行目の「当裁判所に」を「大分地方裁判所に対し,控訴人
を被告として,」と改める。
(5)同8頁12行目末尾の後に改行して次を加える。
「(以上は本件記録上明らか)
(7)熱中症(甲前9,11の2,21,30,49,弁論の全趣旨)
ア熱中症とは,高温多湿環境下での過度の労作・運動の結果として脱
水を伴って生ずる病態をいう。
イ一般に,体温上昇を伴わない熱けいれん,体温上昇を伴う熱疲労及
び熱射病に分類される(後記認定のとおり,熱中症を症状等に応じて
掬戮覆い鍬慧戮吠類する見解があり,概ね,熱けいれんが掬戞で
疲労が凝戞で射病が慧戮紡弍する。)。
このうち,熱疲労は,37度ないし40度の体温上昇と著明発汗に
よる高度脱水(臨床的脱水症状としての頻脈,起立性低血圧),電解
質異常(高ナトリウム血症),末梢血管拡張による循環不全及び神経
学的徴候として頭痛,めまい,全身倦怠感・疲労感,筋力低下,易怒
性等の全身症状を呈するが,通常,意識障害は認めない。
熱射病は,体温調節機能の破綻によって生命が危機的状態にある緊
急病であり,40度以上の体温上昇,低血圧,頻脈,頻呼吸,意識障
害を認める。熱射病の予後は不良で,死亡率を10パーセントないし
75パーセント若しくは80パーセントとする文献がある。ただし,
発症から20分以内に体温を下げることができれば,確実に救命でき
るとする文献がある。」
3主な争点及び争点に対する当事者の主張は,原判決「事実及び理由」欄の第
2の3,4に各記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決9
頁13行目の「熱中症を発症した」を「熱射病を発症したと疑われる」と改め,
同18行目の「内容」の後に「(熱射病にかかった場合には意識障害が起こる
とされ,足のもつれ・ふらつき・転倒,不自然な言動など少しでも意識障害が
ある場合には熱射病を疑い,すぐに救急車を要請し,同時に応急手当を行う。)」
を,同20行目の「Cが」の前に「見当識障害を生じているのであり,」を,
同21行目の「むしろ,」の後に「少しでも意識障害がある場合には熱射病に
由来するものと疑われる(甲前11の2)のであって,」を,同24行目の「し
た」の後に「と疑われる」を,同末行の「重過失」の前に「国家賠償法1条2
項の」を,同10頁初行末尾に「なお,参加人Bらの求償債務は不真正連帯債
務であり,両者の間における負担割合は,参加人Bの負担割合が7割を下回る
ことはない。」を,同16行目の「認識」の前に「招く熱中症慧戞頁射病)
を発症したと」を,同17行目末尾に「すなわち,Cが熱射病に起因する意識
障害に陥っていたかは疑問があるし,仮に,これが肯定されたとしても,参加
人Bにおいて,Cが致死的な熱中症慧戞頁射病)であったと認識できたとは
いえないから,予見可能性はない。」を,同12頁25行目の「否認」の前に
「本件保険金が本件供託による県の損害を填補することは認めるが,その余は」
を,同14頁5行目の「以上の」の前に「そして,参加人Bは,本件事故に関
して6か月の停職処分を受け,その期間中,約360万円の経済的損失を受け
ている。加えて,本件事故は,参加人Bのほかに,共同不法行為者が存在する
のであり,これらの者との過失割合(寄与度)が考慮されて,分割されるべき
ところ,Cの死亡という結果発生には,参加人Bの寄与は,直接的・重大なも
のではない(医療上の過失行為こそが,直接的,重大な原因である。)。」を,
同6行目の「べきであ」の後に「り,ごくわずかにとどま」を,同15頁17
行目の「本件において」の後に「前訴において,参加人Bに過失があることが
指摘されたものの,重過失とは認定されていないことなどの経過を踏まえ,」
をそれぞれ加える。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,被控訴人らの請求は,原判決主文第1項及び第2項の限度で理
由があるものと判断する。その理由は,以下のとおり補正し,2項において
控訴人の主張に対し,3項において被控訴人らの主張に対し,それぞれ補足
的判断を加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄の第3の1ないし5に認
定説示するとおりであるからこれを引用する(後記2項及び3項各記載以外
の当事者双方の当審における主張については,引用の原判決認定説示のほ
かに補足的判断の必要を認めない。)。
(1)原判決16頁4行目の「3,」の後に「6,」を,同5行目の「4」の後
に「,44,45,乙前B4,乙前C4」を,同7行目及び同16行目の各
「剣道部」の前にいずれも「本件」を,同18行目の「本件」の後に「事故」
をそれぞれ加え,同24行目から同25行目にかけての「防具(面)」を「面
及び小手」と,同17頁13行目の「見極め」から同14行目の「などした」
を「『どこがよかったというんだ。』と怒鳴り,座っていたパイプ椅子を左
前方に投げた(上記パイプ椅子は床に落ち,誰にも当たっていない。)」と
それぞれ改め,同14行目の「14,」の後に「17,45,」を加え,同
18行目の「もの」を「大技の打ち込み」と改め,同24行目の「2人元立
ち」の前に「小技の」を加え,その後の括弧書を削り,同18頁初行の「い
た」を「現れた」と,同3行目の「そして」から同4行目の「ことになり」
までを「参加人Bは,有効打突を取り合格と判定した部員を打ち込み稽古か
ら外すこととし,まず女子部員2人を合格と判定してこの2人を元立ちに固
定し,その後,C以外の3人が合格し,元立ちが1人となって」とそれぞれ
改め,同6行目の「乙3」の後に「,乙前B4」を加え,同10行目の「乙
前甲16」を削り,同12行目の「かつ」の後に「,腕を絞らずに(絞れず
に)打ち込んだため」を加え,同13行目の「る程の強い力で打ち」及び同
末行の「このような」から同19頁3行目末尾までをいずれも削り,同5行
目及び同23頁25行目の各「横腹」をいずれも「胴」と,同19頁5行目
及び同23頁25行目の各「前蹴りし」をいずれも「右足裏で蹴り」とそれ
ぞれ改め,同19頁17行目の「平手打ち」の前に「激しく」を,同20行
目の「していた」の後に「が,この間,参加人Bらが部員に面を取って水分
補給及び休憩をさせることはなかった」をそれぞれ加え,同20頁4行目の
「救急出動記録票」を「救急出場記録票及び傷病者搬送記録票」と,同行目
の「救急車搬入」を「救急搬送」とそれぞれ改め,同行目の「について,」
の後に「体温37.1度,意識レベルJCS200,」を,同5行目末尾の
後に「E病院搬入当時のCの体温は39.3度,全身状態不良,意識レベル
は半昏睡から昏迷であった(乙前DA1)。」をそれぞれ加える。
(2)同20頁18行目の「中に,」の後に「熱中症は症状等に応じて掬戞η
失神,熱けいれん,凝戞η疲労,慧戞η射病(重症)に分類され,熱射
病に関し」を加え,同22頁初行の「前記認定事実等によると」を「解剖所
見によると,Cの死亡原因は熱中症の中でも重症度の高い熱射病と認められ
(前提事実(2)),救急搬送中のCの意識レベルがJCS200(刺激しても
覚醒しない。痛み刺激で手足を動かしたり,顔をしかめたりする(乙34)。)
であり,救急隊員が重度の熱中症と判断したことからすると,Cは,救急搬
送開始時点では熱射病であったものと優に認められる(搬送中の体温は37.
1度であったが,E病院到着時点で39.3度であったことからすると,救
急搬送前の冷却措置により一時的に測定される体温が低くなったものと推
測される。)。そして,上記認定のとおり,打ち込み稽古において,Cのみ
が合格と参加人Bに判定されず,打ち込みを繰り返す中,Cは,腕を絞らず
に(絞れずに)面を打ち,参加人Bに「もう無理です。」などと述べ,元立
ちに竹刀を払い落とされても竹刀を構える仕草を続けるという異常な行動
に及び,他の部員らが注意しても気が付かない状態になったことからすると,
この時点で,Cに見当識障害が現れ,意識が朦朧となる意識障害が発現して
いたと認められ,既に熱射病に至っていたか,少なくともその可能性が高い
というべきである。」と改め,同初行の「本件」の後に「事故」を加え,同
2行目の「こと」を「し」と,同5行目の「こと,」を「。」と,同6行目
の「Cが」から同12行目の「のとおり,」までを「上記のとおり,Cに異
常な言動が見られ,意識が朦朧となっていることを」とそれぞれ改め,同行
目の「,熱射病」から同15行目の「といえる」までを削り,同20行目,
同末行及び同23頁16行目から同17行目にかけての各「としての」をい
ずれも「と疑われる」と改め,同22頁23行目及び同23頁4行目の各「本
件」の後にいずれも「事故」を加え,同6行目から同7行目にかけての「関
係各証拠に照らしてみても,」を削り,同9行目の「そうすると」を「職員
朝礼で配布され,参加人Bが内容を把握し自ら剣道場に貼付した『熱中症対
策(部活生指導)』に,意識が朦朧としている,言動が不自然など少しでも
意識障害がある場合には熱射病を疑い,すぐに救急車を要請し,救急車到着
までの間,体を冷やすなどの応急手当をするよう指示していることからして
も」と改め,同24頁初行の「またがり,」の後に「Cの異変を察知して近
づこうとしたAに対して,『演技じゃけん,心配せんでいい。』などとこれ
を制止し,Cに対し,」を,同2行目の「平手打ち」の前に「激しく」を,
同10行目の「直ちに」の後に「救急車を要請し,その到着までの間,」を,
同行目の「ばかりか,」の後に「熱中症を疑い,これを確認しようとするA
の対応を妨げているのである。」をそれぞれ加え,同11行目を削り,同1
2行目の「前蹴りをしたり」を「胴を蹴ったり」と,同15行目の「既に」
から同18行目の「だけの」までを「剣道がその競技の特質上,熱中症が起
こりやすいといわれていることに加え,本件事故当日,気温が上がる中で,
午前10時25分頃から防具を付けた状態で1時間以上休むことなく剣道
場で練習をしていた生徒に対し,その健康状態,体調に注意を向けて,生命,
身体の安全確保を優先的に図るべき立場にあるにもかかわらず,既に熱射病
由来の可能性の高い意識障害を生じ,それが疑われる異常行動を見て取るこ
とができるCに対し,体調はどうか,熱中症の兆しはないかといった観察や
確認をすることなく,かえって,合理的な理由もなく,Cの異常行動を熱中
症によるものではないと断定し,通常と異なるCの様子に気が付いた他の者
の関与を妨げているのであり,生徒の生命,身体に対する安全確保をおろそ
かにし,危険にさらしたものというほかなく,学校教育における生徒の安全
確保の施策に明確に反する態度であって,」と,同21行目から同22行目
にかけての「であること,ひいては」を「あるいはその疑いがあること,熱
中症であればこれを」と,同行目の「高いこと」を「あり,迅速に対応すべ
きこと」と,同25行目の「単に」から同25頁初行の「ので」までを「求
められる職責とは正反対の対応をしているので」と,同23行目の「として
の」を「と疑われる」と,同行目の「であること,ひいては」を「あるいは
その疑いがあること,熱中症であればこれを」と,同24行目の「高い」を
「ある」と,同26頁23行目の「異常行動で」を「異常行動の疑いが」と,
同行目の「ひいては」を「熱中症であれば」と,同行目の「高い」を「ある」
と,同27頁10行目から同11行目にかけての「関係各証拠から窺われる」
を「,」とそれぞれ改め,同16行目の「すぐに」の前に「これに戸惑い,」
を加え,同17行目の「こと」から同18行目の「いない」までを「ものの,
Cの様子を窺うなどしていた」と,同25行目の「地方自治法」から同28
頁18行目末尾までを「証拠(乙35,36)及び弁論の全趣旨によれば,
本件保険は,被保険者(県教育委員会(すなわち県))が他人の身体の障害
(障害に起因する死亡を含む。)について法律上の損害賠償責任を負担する
ことによって被る損害のうち,被保険者が所有等する施設の用法に伴う学校
管理下の部活動等に起因する損害を填補する責任保険であり,県教育委員会
の任命する教員の重過失を免責事由としていないことが認められる。上記認
定事実によれば,本件保険金の支払により,県がCの遺族に対して損害賠償
義務を負担することにより被る損害(本件供託により被る損害)のうち25
55万6519円が填補されたというべきである(被控訴人らも,本件保険
金が本件供託による県の損害を填補することは争わない。)。」とそれぞれ
改め,同29頁25行目の「13」の後に「,23,24」を加え,同31
頁3行目の「る。」から同10行目の「その」までを「,本件事故の」と改
め,同12行目末尾に改行の上「さらに,証拠(甲1,乙31)及び弁論の
全趣旨によれば,Cが搬入された医療機関において適切な医療行為がされて
いないという医師の過失も競合して死の結果に至ったという経過も認めら
れる。」を,同13行目の「に照らすと,」の後に「参加人Bの行為は,生
徒の生命,身体の安全を優先的に確保するという職務行為を逸脱したという
ものではあるが,」をそれぞれ加え,同14行目から同15行目にかけての
「においてのみ」を「で」と,同33頁6行目の「そのような判断」を「重
過失がないとする判断」とそれぞれ改め,同19行目の「そして,」の後に
「関係人の過失の有無や程度,損害額が明らかではないような事案とは異な
り,参加人Bに重過失を認める合理性があり,損害額も確定している本件に
おいては,」を加える。
2控訴人の主張(参加人Bにおける国家賠償法1条2項の重過失の有無)につ
いて
(1)控訴人は,Cが熱射病に起因する意識障害に陥っていたかは疑問がある
し,仮に,これが肯定されたとしても,参加人Bにおいて,Cが致死的な熱
中症慧戞頁射病)であったと認識できたとはいえないから,予見可能性は
なく,国家賠償法1条2項の重過失はない旨重ねて主張する。
(2)しかしながら,前記引用の原判決説示(補正後のもの。以下同じ。)のと
おり,Cは,救急搬送開始時点で熱射病であったと優に認められるところ,
同説示のとおり,Cが,打ち込みの練習中,竹刀を払い落とされたにもかか
わらず,これに気付かずに竹刀を持たないまま構えをとり,これを注意され
ても気づかないままであったのであるから,そして,その後,歩行中にふら
つき剣道場の壁面に頭部を打ち付けて転倒し傷を負っているのであるから,
これらの時点で,Cには見当識障害があったものということができることな
どからすると,当時,既にCが熱射病に至っていたか,少なくともその可能
性が高い。そして,上記時点で,参加人Bにおいて,熱射病に起因する意識
障害を疑うべき状況にあったものと認められる。予見可能性の点からこれを
敷衍すると,熱中症が重篤化すると死に至る危険があることは参加人Bも当
然了知していたと考えるべきところ,予見可能性の有無は,結局,熱中症
度(熱射病)を発症したCについて,熱射病と疑われる言動を認識できたか
否かによることとなるところ,熱中症は,軽度のもの(熱痙攣)から中程度
のもの(熱疲労),そして高度のもの(熱射病)までに分類されるが,前記
引用の原判決説示のとおり,足がもつれる・ふらつく・転倒する,突然座り
込む・立ち上がれない,意識が朦朧としている,言動が不自然など,少しで
も意識障害がある場合には,熱射病を疑い,すぐに救急車を要請し,同時に
応急手当てを行う対応をすべきものとされているのであるから,これによれ
ば,Cの上記行動を認識していた参加人Bにおいて,死に至る危険性のある
熱射病に起因する意識障害及び熱射病自体を疑うことができたのであり,熱
中症により死に至ることの予見可能性もあったものと認められる。
(3)控訴人は,Cが熱中症慧戞頁射病)であることを認識できなかった旨主
張するが,医師の資格がない(弁論の全趣旨)参加人Bが熱射病であるか否
かを正確に判断できるものではなく,重過失の要件として参加人Bにおける
熱射病の認識を要求するのは不合理である。上記のとおり,熱射病と診断さ
れたCについて,当時,高度の熱中症(熱中症慧戞頁射病))を認識でき
たか否かというのではなく,熱射病を疑う症状を認識できたか否かが問題と
されるべきである。
これを本件についてみると,Cの上記動作は,大会が迫り,顧問の指導を
受ける中で,剣道の心得のある者として極めて不自然な態度というほかなく
(その前後に,Cと参加人Bを含む周囲の者との間で,理解可能な応答等が
されているとしても,上記認定は左右されない。),ここにおいて予見可能
性があることは明らかである。
(4)そして,前記のとおり,参加人Bは,熱射病による意識障害,したがって
熱射病自体を疑うべき事態であるにもかかわらず,また,熱射病ではないと
断定する合理的な事情はないにもかかわらず,これを演技だと決めつけて指
導を続けたというのであるから,生徒の安全確保を図るべき教諭の立場にあ
りながら,生徒の状況を見守ることなく,また,僅かな注意をすれば有害な
結果の発生を容易に予見することが可能であったのにそれをすることもな
くいたのであって,自らの職務上の立場において負うべき注意義務の内容範
囲に照らして,重大な過失があるといわざるを得ない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
3被控訴人らの主張(Aにおける国家賠償法1条2項の重過失の有無)につい

(1)被控訴人らは,Aについても,Cが熱射病を発症していたことを容易に予
見し得たのであるから,参加人Bと同様に,国家賠償法1条2項の重過失が
あると認めるべきものと,当審においても重ねて主張する。
(2)なるほど,Aは,Cにおいて,熱中症の症状を呈していることを察知して
いるから,Aは,本件剣道部の副顧問として,早期にこれに対応すべきであ
ったのであり,Aにおいて過失があることは明らかである。
しかしながら,Aは,参加人BがD高校に赴任して以降,本件剣道部の練
習計画の策定に参与せず,本件剣道部の練習に参加する回数も限られており,
また,参加人Bとの関係においても,同人が体育教諭であり,剣道7段の資
格を有するのに対して,Aは,剣道5段の資格を有していたが,理科教諭で
あって,参加人Bの意向に反することは困難であったといえ,さらに,Cの
行動に不審な点を感じ取り,熱中症の疑いを心配して倒れたCに駆け寄った
際,参加人Bから,Cの動作が演技である旨断定的な口調で制止され,戸惑
ったというのであって,このような状況において,Aが,参加人Bの強い意
向に逆らって対応すべきことをしなかったからといって,国家賠償法1条2
項の重過失があるとまでいうことはできない。
したがって,被控訴人らの上記主張は採用することができない。
第4結論
よって,原判決は相当であって,本件控訴及び附帯控訴はいずれも理由がな
いからこれらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
福岡高等裁判所第1民事部
裁判長裁判官 佐藤明
裁判官 足立正佳
裁判官 佐藤康平

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