報道等をもとに日本の裁判官の情報を収集、掲載しています。

米軍拘束で「人権侵害」、芥川賞作家の控訴棄却

 沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に対する抗議活動中、米軍に不当に長時間拘束されたのは人権侵害にあたるなどとして、芥川賞作家の目取真めどるま俊氏(59)が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が7日、福岡高裁那覇支部であった。大久保正道裁判長は、国側の対応を違法として8万円の賠償を命じた1審・那覇地裁判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。原告側は不服として最高裁に上告する方針。国側は控訴していなかった。
 沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に対する抗議活動中、米軍に約8時間拘束されたのは不当な人権侵害だとして、芥川賞作家の目取真めどるま俊氏(59)が国に120万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が7日、福岡高裁那覇支部であった。
 大久保正道裁判長は、米軍による行為の違法性については判断する必要がないとして、国側の対応のみを違法として8万円の賠償を命じた1審・那覇地裁判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。原告側は不服として最高裁に上告する方針。国側は控訴していなかった。
 1審判決では、中城海上保安部が米軍から目取真氏の身柄を引き渡される際、日米間の合意に基づいて直ちに引き受けなかったことを違法と認定した。
(2019/10/07 19:54 読売新聞)

目取真さん逮捕、国違法1審支持 高裁那覇支部

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設への抗議活動中に不当な身柄拘束や逮捕があったとして、沖縄県在住の芥川賞作家、目取真俊(めどるましゅん)さん(59)が国に120万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁那覇支部は7日、1審那覇地裁に続いて8万円の支払いを命じた。米軍の責任は認めなかった。
 大久保正道裁判長は、海上保安庁が米軍から身柄を引き受けるのが遅れたことと、海保が緊急逮捕したことを違法とした3月の1審判決を支持した。
 目取真さんは1997年、「水滴」で芥川賞を受賞し、沖縄を題材にした著作が多い。
(2019年10月8日 毎日新聞)

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平成31(ネ)48  令和元年10月7日
福岡高等裁判所  那覇地方裁判所
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
3原判決主文第1項及び第2項は,本判決が被控訴人に送達された日から1
4日を経過したときは,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
2被控訴人は,控訴人に対し,原審認容額に加えて,6万円及びこれに対す
る平成28年4月1日から支払済みまで年分の割合による金員を支払え。
3被控訴人は,控訴人に対し,原審認容額に加えて,6万円及びこれに対す
る平成28年4月1日から支払済みまで年分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要等(以下,略称については特記なき限り原判決のとおり。)
1本件は,控訴人が,⑴日米安保条約に基づき米軍に使用が許可され,一般人
の立入りが制限される区域に侵入したとして,米軍に身柄を確保され,その後
海上保安官に引き渡されるまでの約8時間にわたり米軍に身柄を拘束されたこ
とに関し,ヽぞ緤欅卒韻,米軍から控訴人の身柄を引き渡す旨の通知を受け
ながら直ちにその引渡しを受けなかったこと,∧瞳海,控訴人の身柄確保後
直ちに海上保安官に引き渡さなかった上,控訴人に身柄拘束の理由を告知せず,
弁護士と接見させなかったことが,憲法33条等の趣旨に反して違法であると
主張して,被控訴人に対し,国家賠償法1条1項(上記△諒瞳海旅坩戮砲弔
ては民特法1条を介した上で)に基づき,慰謝料等60万円及びこれに対する
違法行為の日である平成28年4月1日から支払済みまで民法所定の年分の
割合による遅延損害金の支払を,⑵海上保安官が,米軍からの控訴人の身柄の
引渡しに際して,刑特法12条2項の定める緊急逮捕類似の手続によって,事
前の逮捕状の発付なく,控訴人の身柄拘束を続けるとしたことについて,‘
項の定める緊急逮捕類似の手続は憲法31条,33条に違反し,これを立法し
てその改廃を怠った国会の行為は違法であり,また,海上保安官による上記
身柄拘束手続は刑特法12条2項に従って行うものとしても,同項の趣旨等に
違反して違法であると主張して,被控訴人に対し,国家賠償法1条1項に基づ
き,慰謝料等60万円及びこれに対する上記身柄拘束の日である平成28年4
月1日から支払済みまで民法所定の年分の割合による遅延損害金の支払を求
めた事案である。
原審は,控訴人の上記⑴及び⑵の請求について,それぞれ,損害賠償4万円
(合計8万円)及びこれに対する平成28年4月1日から支払済みまで年分
の割合による遅延損害金の支払を求める限度で一部認容したところ,控訴人が
敗訴部分を不服として控訴した。
2前提となる事実,争点及びこれについての当事者の主張は,次のとおり訂正
するほかは,原判決「事実及び理由」第2の1ないしのとおりであるから,
これを引用する。
⑴原判決9頁8行目の「拘束されたまま」から同行目の「海上保安官
は,」までを「拘束されていたところ,中城海上保安部所属の海上保安官は,
午後時22分,キャンプシュワブ内において,」に改め,同14行目冒頭
から同行目末尾までを「刑特法12条2項に基づき,米軍から控訴人の
身柄の引渡しを受け,逮捕状の発付を受けることなくその身柄の拘束を続け
ることとした(以下「本件緊急逮捕的身柄拘束」という。)。」に改める。
⑵原判決9頁22行目,頁11行目,11頁6行目,12頁行目,2
頁12行目,同26行目,26頁9行目,同12行目,同24行目,同2
行目及び27頁8行目の「本件緊急逮捕」を「本件緊急逮捕的身柄拘束」
に改める。
⑶原判決11頁3行目の「緊急逮捕」を「緊急逮捕類似の手続(以下「緊急
逮捕的身柄拘束」という。)」に改め,同9行目から同行目にかけて,同
13行目,同18行目,同19行目,13頁14行目,14頁1行目,16
頁24行目,19頁17行目,頁行目及び同22行目の「緊急逮捕」
を「緊急逮捕的身柄拘束」に改める。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,原審同様,控訴人の請求は,国家賠償法1条1項に基づく損害
賠償合計8万円及びこれに対する平成28年4月1日から支払済みまで年分
の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があると判断する。その
理由は,次のとおり訂正し,後記2のとおり当審における控訴人の補充的・
追加的主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」第3の
とおりであるから,これを引用する。
⑴原判決28頁26行目の「刑特法12条2項の規定する緊急逮捕」を「刑
特法12条2項の規定する緊急逮捕的身柄拘束」に改め,29頁7行目,同
21行目,33頁6行目から同7行目にかけて,同12行目,42頁4行目,
44頁13行目から同14行目にかけて,4頁2行目,46頁17行目,
48頁8行目及び同行目の「緊急逮捕」を「緊急逮捕的身柄拘束」に改
める。
⑵原判決29頁8行目の「逮捕の必要性が高い一定の犯罪」を「逮捕の必要
性・緊急性が高いといえる一定の事情がある場合」に改め,同行目の
「もっとも,」から同11行目の「考えられる」までを「このような事情と
しては,逮捕の対象犯罪が一定の法定刑以上のものであるという場合に限ら
れない」に改め,同17行目の「しかし」から同18行目の「照らすと,」
までを削除し,同22行目の「その対象犯罪が」を「その対象犯罪という面
のみからみれば,」に改める。
⑶原判決30頁2行目の「と解される。」を「ことは当然である。」に改め,
同7行目の「ほとんどである」を「多い」に改め,同9行目の「ないことか
ら,」の後に「現行犯的身柄拘束がされた場合であっても,」と加える。
⑷原判決30頁12行目の「現行犯逮捕については」から同17行目末尾ま
でを次のとおり改める。
「憲法33条は,現行犯逮捕について,犯罪と被逮捕者の結びつきが明白で,
司法審査を経なくても誤認逮捕のおそれがなく,その状況自体から逮捕の必
要性・緊急性が高いといえることから,令状主義の例外として許容するもの
であり,これを受けて刑訴法も,一定の軽微事犯については要件を加重する
ものの,現行犯逮捕の対象となる罪種自体は制限することなく無令状での身
柄拘束を認めている。米軍による現行犯的身柄拘束も,誤認逮捕のおそれが
なく,その状況自体から逮捕の必要性・緊急性が高いといえる点は刑訴法上
の現行犯逮捕の場合と同様であるから,刑特法12条2項の定める緊急逮捕
的身柄拘束は,少なくとも米軍により現行犯的身柄拘束を受けた者の引渡し
に適用される限りにおいては,対象罪種が限定されていないことを考慮して
も,憲法33条の趣旨に反するものではないというべきである。」
⑸原判決31頁26行目の「米軍により」から32頁3行目の「受けないま
ま,」を「捜査機関による身柄拘束理由や弁護人依頼権の告知,留置の必要
性の判断等がされないまま,」に改め,同4行目の「憲法33条」の後に
「及び34条」と加える。
⑹原判決36頁9行目,44頁8行目,同行目から同21行目にかけて,
同23行目,同行目,4頁3行目,同行目から同4行目にかけて,同
7行目,46頁17行目,同行目,47頁行目,48頁19行目,
同23行目,同行目,同26行目,49頁4行目,同8行目及び同11
行目の「本件緊急逮捕」を「本件緊急逮捕的身柄拘束」に改める。
⑺原判決40頁13行目の「憲法33条」の後に「及び34条」と加える。
⑻原判決44頁行目の「憲法33条」の後に「及び34条」と加え,同
14行目の「司法審査」の後に「等」と加える。
2当審における控訴人の補充的・追加的主張について
⑴控訴人は,仝業酬茲蓮な瞳海妨醜堡氾身柄拘束された者の刑特法12条
2項による米軍からの引渡しを,私人に現行犯逮捕された者の刑訴法214
条による引渡しと同様のものとしているが,刑特法12条2項の場合,米軍
による身柄拘束から引渡しまでには一定の時間を要するものであり,刑訴法
214条による引渡しとは性質が異なる,∧瞳海砲茲觚醜堡氾身柄拘束が
されているとしても,それは日本国ではなく,米国の主権に基づく行為であ
り,日本国が最初に主権を行使する時点では引渡対象者は現行犯人とはいえ
ないから,その時点での司法審査が不可欠であるなどと指摘し,米軍に現行
犯的身柄拘束された者を,刑訴法上の現行犯逮捕された者と同様に考えるこ
とはできない旨主張する。
しかしながら,,療世砲弔い討澆襪函ち圧判示のとおり,現行犯逮捕が
対象罪種を限定することなく無令状逮捕として許容される趣旨は,米軍によ
る現行犯的身柄拘束にも当てはまるというべきである。控訴人の指摘するよ
うに刑訴法214条の場合と比べて刑特法12条2項の場合の捜査官憲への
引渡しには時間を要することがあり得るものの,米軍から引き渡す旨の通知
を受けた司法警察員等が,職務上直ちに身柄を引き受けるべき高度の注意義
務を負い,刑訴法214条の場合と同様に可能な限り早期に引渡しを受ける
ことが予定されていることも考慮すれば,控訴人の上記指摘を踏まえても,
憲法33条に違反するかどうかの検討に際して,米軍に現行犯的身柄拘束を
された者と刑訴法上の現行犯逮捕をされた者とを別異に取り扱う理由はない
というべきである。
また,△療世砲弔い討癲な瞳海砲茲觚醜堡氾身柄拘束は,犯罪と被逮捕
者の結びつきが明白で,司法審査を経なくても誤認逮捕のおそれがなく,そ
の状況自体から逮捕の必要性・緊急性が高いといえる点で刑訴法上の現行犯
逮捕と同様に考えられるのであり,このことは当該身柄拘束がどの国の主権
によってされたものであるかによって異なるものではない。
以上によれば,控訴人が指摘する点は,前記判断を左右するものではなく,
この点に関する控訴人の主張は採用できない。
⑵控訴人は,刑特法12条2項は,米軍に現行犯的身柄拘束された者のみに
適用されるわけではなく,それ以外の者にも憲法33条に反して適用される
余地を残すものであるから,刑事手続法規の明確性の原則を定めた憲法31
条に違反する旨主張する。
しかしながら,前記判示のとおり,刑特法12条2項は,少なくとも控訴
人のように米軍により現行犯的身柄拘束された者に適用される場合には,憲
法33条に違反するものではないところ,同項がこのように米軍により現行
犯的身柄拘束された者の引渡しに,対象犯罪の限定なく適用されることは規
定の文言上からも明らかである。
そうすると,刑特法12条2項は,少なくとも本件における控訴人の米軍
から海上保安官への引渡しに適用される限りにおいては,何ら明確性に欠け
ることはなく,憲法31条に違反するということはできない。
したがって,この点に関する控訴人の主張は採用できない。
⑶控訴人は,米軍が,々義平佑凌畔舛魍ぞ緤欅卒韻膨召舛飽き渡さなかっ
た行為,控訴人に身柄拘束の理由を告知せず,弁護人との接見をさせなか
った行為は,慰謝料額に影響するものであり,これらの行為の違法性・行為
態様も踏まえて慰謝料額を判断するべきであると主張する。
しかしながら,上記で引用した原判決のとおり,,砲弔い討蓮に楫鎔き
渡す旨の通知から2時間が経過するまでの間の米軍による身柄拘束には違法
性は認められず,同通知から2時間経過後の米軍による身柄拘束により生じ
る損害は,海上保安官が直ちに控訴人の身柄を引き受けなかったという違法
行為により生じた損害と完全に重なり合うものといえる。また,△砲弔い
も,身柄拘束理由の告知や弁護人との接見は,刑特法12条に基づき司法警
察員等による身柄の引受け後に実施することが予定されているから,これら
が実施されなかったことも,海上保安官による上記違法行為と相当因果関係
にあるものといえ,同違法行為による損害の中で評価されている。
このように,海上保安官による上記違法行為があるという事情の下では,
控訴人の指摘する米軍の行為が違法であるか否かによって,控訴人の慰謝料
等の損害額が左右されるものではないというべきであるから,米軍の行為の
適否についてはこれを判断する要をみない。
したがって,この点に関する控訴人の主張は採用できない。
3結論
以上のとおり,控訴人の請求は,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償合計
8万円及びこれに対する平成28年4月1日から支払済みまで年分の割合に
よる遅延損害金の支払を求める限度で理由があるところ,控訴人の請求をこの
限度で認容した原判決は正当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却す
ることし,原判決主文第1項及び第2項については本判決送達日から14日間
の猶予期間を定めた上で仮執行宣言を付すことが相当である一方,仮執行免脱
宣言は相当でないのでこれを付さないこととし,主文のとおり判決する。
福岡高等裁判所那覇支部民事部
裁判長裁判官 大久保正道
裁判官 本多智子
裁判官 平山俊輔

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