報道等をもとに日本の裁判官の情報を収集、掲載しています。

南洋戦訴訟 元住民側の控訴棄却 福岡高裁那覇支部

 太平洋戦争中、移住先のサイパン、テニアンなどの南洋諸島やフィリピンで戦争に巻き込まれ、家族を亡くしたり負傷したりした元住民や遺族40人が、国を相手取って1人当たり1100万円の損害賠償と謝罪を求めた訴訟の控訴審判決が7日、福岡高裁那覇支部であった。大久保正道裁判長は請求を棄却した2018年1月の1審・那覇地裁判決を支持し、元住民側の控訴を棄却した。元住民側は上告する方針。
 元住民側は、旧日本軍が国民を保護する義務を怠ったのは不法行為にあたると主張したが、大久保裁判長は1審同様、1947年の国家賠償法施行前の行為に国は賠償責任を負わないとする「国家無答責」の論理を適用して訴えを退けた。
 また、戦争に従事した軍人や軍属は補償を受けているのに民間人の被害を救済してこなかったのは憲法が定めた法の下の平等に反するとの訴えにも、「国会の判断が裁量権を逸脱した不合理なものとは言えない」とした。
 沖縄県史などによると、戦前、日本の委任統治領だった南洋諸島には約9万3000人(42年)の日本人が移住し、うち半数以上が沖縄県出身者だった。太平洋戦争で島々は地上戦の舞台となり、沖縄県出身者だけで1万2000人以上が命を落としたとされる。【遠藤孝康】
(2019年3月7日 18時15分(最終更新 3月7日 19時07分) 毎日新聞)

国の責任再び認めず 南洋戦国賠訴訟・控訴審 福岡高裁那覇支部

 太平洋戦争中に旧南洋群島(北マリアナ諸島)などで戦渦に巻き込まれた住民や遺族ら40人が国に対して謝罪と1人当たり1100万円の損害賠償を求めた「南洋戦国賠訴訟」の控訴審判決が7日、福岡高裁那覇支部であった。大久保正道裁判長は「大日本帝国憲法下の旧日本軍の戦闘行為について、国は損害賠償責任を負わない」などと請求を退けた一審判決を支持、住民側の控訴を棄却した。住民側は上告する方針。
 住民側は上告の構え
 判決理由で大久保裁判長は、明治憲法下では国の権力的作用や統治権に関する行為は「民法上の不法行為責任を否定する法理が確立していた」と指摘。旧日本軍の加害行為の特異性を考慮したとしても、国の責任を負わせる法的根拠はないとした。
 救済立法を成立させず被害を放置したとの主張には、援護法の適用対象などが拡大していることなどを挙げて反論。憲法が定める法の下の平等には「違反していない」と退けた。
 判決後の会見で柳田虎一郎原告団長(81)は「軍人は補償されたが、民間人は受忍せよという。同じ人間なのに差別だ。全ての戦争被害者が救われる法律を作ってほしい」と話した。
(2019年3月8日 07:34 沖縄タイムズ)

PDF

平成30(ネ)70  
平成31年3月7日  福岡高等裁判所  棄却  那覇地方裁判所
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2主位的請求
⑴被控訴人は,控訴人らに対し,それぞれ原判決別紙謝罪文(ただし,あて
名部分は控訴人らを連記したもの。)を交付し,かつ,同謝罪文を官報に掲
載せよ。
⑵被控訴人は,控訴人らに対し,それぞれ1100万円及びこれに対する昭
和20年8月15日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3第一次予備的請求
⑴主位的請求⑴に同旨。
⑵被控訴人は,控訴人らに対し,それぞれ1100万円及びこれに対する昭
和22年5月3日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4第二次予備的請求
⑴主位的請求⑴に同旨。
⑵被控訴人は,控訴人らに対し,それぞれ1100万円及びこれに対する平
成30年5月17日(控訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の
割合による金員を支払え。
第2事案の概要(略称は原判決のものを用いる。)
1本件は,アジア太平洋戦争中の南洋群島及びフィリピン諸島(南洋群島等)
における戦闘行為(南洋戦)等の被害者又はその遺族であるとする控訴人ら
が,ー膂姪請求として,被控訴人の被用者であった旧日本軍の南洋戦におけ
る戦闘行為等が,一般住民の生命,身体,安全等への危険発生を未然に防止す
べき被控訴人の国民保護義務等に違反する不法行為に該当すると主張し,民法
709条,715条及び723条に基づき,第一次予備的請求として,条
理,憲法13条及び14条1項を根拠とする公法上の危険責任,すなわち,旧
日本軍の南洋戦における戦闘行為等は,被控訴人が控訴人ら及びその近親者の
生命,身体に対する危険を創出又は惹起したものであるから,被控訴人による
先行行為であり,その結果発生した控訴人らの損害については被控訴人が回復
すべき責任を負うと主張して,同危険責任に基づき,B萋鷦〕夙的請求とし
て,国会議員が控訴人らの被害を救済する立法をすることなく漫然と放置し続
けた立法不作為は,憲法14条1項,13条,条理及びアメリカ合衆国(米
国)に対する外交保護権放棄による救済義務に基づく立法義務に違反する国賠
法上の違法な公権力の行使に該当すると主張して,被控訴人に対し,国賠法1
条1項に基づき,それぞれ原判決別紙謝罪文(ただし,あて名部分は控訴人ら
を連記したもの。)を控訴人らに交付し,同謝罪文を官報に掲載することを求
めるとともに,損害賠償として,控訴人ら各自に対して慰謝料1000万円及
び弁護士費用100万円の合計1100万円並びにこれらに対するー膂姪請
求については終戦の日である昭和20年8月15日から,第一次予備的請求
については日本国憲法施行の日である昭和22年5月3日から,B萋鷦〕夙
的請求については第一次事件控訴人らに対しては同事件の訴状送達の日の翌日
である平成25年9月7日から,第二次事件控訴人らに対しては同事件の訴状
送達の日の翌日である平成26年4月19日から,第三次事件控訴人らに対し
ては同事件の訴状送達の日の翌日である同年8月23日から,第四次事件控訴
人らに対しては同事件の訴状送達の日の翌日である平成27年12月11日か
ら,第五次事件控訴人に対しては同事件の訴状送達の日の翌日である平成28
年8月13日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の
支払を求める事案である。
原審は,控訴人らの請求をいずれも棄却したので,控訴人らが控訴した。な
お,第二次予備的請求の附帯請求について,上記のとおり原審では各訴状送達
の日の翌日を起算日としていたが,控訴人らはその後の日である控訴状送達の
日の翌日である平成30年5月17日以降について控訴したから,当審の審判
の対象はこの限度となる。また,原審口頭弁論終結時には,45名の原告(承
継人を含む。)が存在したが,うち5名(承継人を含む。)による控訴はな
い。
2前提となる事実等,主要な争点及び主要な争点等に関する当事者の主張は,
次のとおり訂正し,後記3のとおり当審における控訴人らの補充的主張を付加
するほかは,原判決「事実及び理由」第2の1から3までのとおりであるから
これを引用する(以下の頁・行数はいずれも原判決のものを指す。)。
⑴7頁10行目「平成」を「昭和」に改める。
⑵12頁2行目「最下層」から同行目「割り振られた。」までを「最上階か
ら4層目及び5層目の船底層の船室が割り振られた。」に改める。
⑶12頁7行目末尾に改行の上,次を加える。
「美山丸は,上記魚雷攻撃により,控訴人Aら一般民間人が入室していた5
層目の船室部分が浸水し,同室にいた一般民間人285名中7名が負傷し,
83名が行方不明となり,船員2名が死亡した。5層目以外の船室部分への
被害はなく,上層階の船室に乗船していた軍人201名及び軍属68名全員
に死傷者,行方不明者はいなかった。」
⑷12頁20行目「13」の後に「・16」を,同行目「A本人」の後に
「,当審控訴人A本人」をそれぞれ加える。
⑸18頁9行目「13」の後に「・15,当審控訴人B本人」を加える。
⑹18頁20行目「戦死」の後に「した」を加え,19頁7行目「17」を
「18」に改め,同行目「C本人」の後に「,当審控訴人C本人」を加え
る。
⑺20頁10行目「生まれた」の後に「きょうだいである」,同行目「Dら
は,」の後に「昭和19年6月頃」をそれぞれ加える。
⑻20頁25行目「終戦後」の後に「の昭和21年2月頃」,同行目末尾に
「戦争孤児となった控訴人Dらは,親戚らの家で世話になったが,学校に通
うことはできず,農作業や軍雇用の仕事をして生活した。」をそれぞれ加
え,21頁10行目「9」を「10」に改め,同頁11行目「10」の後に
「,当審控訴人D」を加える。
⑼23頁4行目「10」を「11,当審控訴人E」に改める。
⑽24頁9行目「9」を「10」に改め,同行目「F本人」の後に「,当審
控訴人F本人」を加える。
⑾28頁8行目「終戦後」の後に「の昭和20年頃」を加える。
⑿28頁19行目「13」を「14」に改める。
3当審における控訴人らの補充的主張
国家無答責の法理の適用制限(争点⑴関係)
仮に,国賠法附則6項により国賠法施行前の国家の権力的作用について,
国家無答責の法理が適用されるとしても,本件のような旧日本軍の残虐非道
行為により被った損害についてまで国が責任を免れる結果となるのは,日本
国憲法の根底にある「正義公平の理念」に反する。大審院下においても,国
の権力的作用について民法上の不法行為責任を認めた事案もあるように,国
家無答責の法理は絶対的なものではなかったし,日本国憲法施行後,国賠法
施行前に発生した損害については,民法(不法行為法)を適用すべきである
との有力な見解が存し,同趣旨の裁判例(東京高等裁判所昭和32年10月
26日)も存する。したがって,本件については,条理上,国家無答責の法
理の適用が制限される結果,民法(不法行為法)が適用又は類推適用され
る。
⑵公法上の危険責任について(争点⑵関係)
公法上の危険責任は,立法論ではなく,条理法,憲法13条,14条1項
の法的根拠に基づく法理である。控訴人らが受けた南洋戦被害の特異性を直
視すれば,被害の救済を条理に求めることは一層妥当である。憲法13条,
14条1項に基づく具体的権利性を肯定する有力な見解も存する。
⑶立法不作為に係る国賠法上の責任について(争点⑶関係)
立法不作為にかかる国賠法上の違法について,仮に,最高裁判決(平成2
7年12月16日大法廷判決民集69巻8号2427頁等)がいう,いわゆ
る職務行為基準説に従ったとしても,被控訴人は,戦闘参加者と非戦闘参加
者との間の不合理な差別の解消を長期間にわたって怠っており,この差別
が,平等原則に違反することは明白であって,最高裁判例が示す「例外的
に」国賠法上の違法の評価を受ける場合に該当する。
援護法は,制定以来,順次適用範囲が拡大されているが,その拡大の推移
は,場当たり的で,理由が不明確なものが少なくない上,戦闘参加者該当性
の判断基準は極めて不明確である。その結果,南洋戦の一般民間戦争被害者
は,援護法により補償される者と比較して,合理的理由なく不当な差別的取
り扱いを受けている。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却すべきも
のと判断する。その理由は,後記⑴のとおり訂正し,後記⑵のとおり付加する
ほかは,原判決「事実及び理由」第3の1から3までのとおりであるから,こ
れを引用する。
⑴原判決の訂正
ア57頁9行目「,すなわち」から同頁10行目「否か」までを削除す
る。
イ77頁11行目「被告側の行為」を「旧日本軍の南洋戦における戦闘行
為等」に改める。
⑵当審における控訴人らの補充的主張に対する判断
ア国家無答責の法理の適用制限(争点⑴関係)について
控訴人らは,仮に,国賠法施行前の国家の権力的作用について国賠法
附則6条が適用されるとしても,条理上,国家無答責の法理の適用が制
限される結果,民法が適用又は類推適用されると主張するが,独自の見
解に基づくものであり,採用することはできない。
仮に,控訴人らの被害にかかる旧日本軍の加害行為について,国家無
答責の法理の適用が制限されると解する余地があるとしても,このよう
な大日本帝国憲法下における国家の権力的作用ないし統治権に係る行為
について,国に民法上の不法行為責任を生じさせる法的根拠がないこと
は,引用にかかる原判決第3の1⑶のとおりである。確かに,控訴人ら
が指摘する明治期の大審院判決の中には,国の権力的作用に関し,国に
損害賠償義務を肯定する事案が存するが,遅くとも昭和18年までに
は,国家の権力的作用ないし統治権に係る行為について,民法の規定の
適用を排除し,国の民法上の不法行為責任を否定する一般法理が確立さ
れたという大審院の判決の推移に照らせば,控訴人らが加害行為として
主張する昭和18年以降の南洋戦における旧日本軍の戦闘行為等に対し
て,民法が適用又は類推適用される法的論拠が存在するということはで
きない。また,控訴人らが指摘する見解や裁判例は,日本国憲法施行
後,国賠法施行前の国家の権力的作用について生じた損害について,民
法(不法行為法)の規定を適用する余地があることを述べるにとどまっ
ており,大日本帝国憲法下の国家の権力的作用について,国に民法上の
不法行為責任を負わせる法的根拠になるとはいえない。
控訴人らが主張するように,大日本帝国憲法下の国家の権力的作用に
当たる昭和18年以降の南洋戦における旧日本軍の戦闘行為等により生
じた損害について,日本国憲法下において妥当する正義公平の理念や条
理を根拠に,国に民法上の不法行為責任があると解することは,結果的
に,日本国憲法及び国賠法の遡及適用を認めるに等しい。このような解
釈は,昭和18年当時の確立した判例法理に背理するものであって,国
賠法附則6条の規定に明らかに反することとなるから,旧日本軍の加害
行為の特異性を考慮したとしてもなお,そのような解釈を採用すること
はできない。
なお,控訴人らが指摘する最高裁判所昭和25年4月11日第三小法
廷判決・集民3号225頁は,警察官である公務員の重大な過失による
家屋の破壊行為であったとしても,そのために同行為が,私人と同様の
関係に立つ経済的活動としての性質を帯びるものでなく,公権力の行使
に関しては,当然に民法の適用はない旨を説示している。同判決は,旧
日本軍の戦闘行為等に関する事案そのものではないものの,国家の権力
的作用にかかる活動による被害という点から見れば,本件に射程が及ば
ないということもできない。この点に反する控訴人らの主張は採用する
ことができない。
イ公法上の危険責任(争点⑵関係)について
控訴人らは,南洋戦の遂行により作出された特別の危険状態は,国の
行為(先行行為)に起因するから,その危険状態から生じた重大な被害
については,危険状態を支配する国が責任を負うべきであると主張す
る。しかし,このような大日本帝国憲法下における国家の権力的作用に
ついて,国家無答責の法理の適用を否定又は制限して国の責任を認める
べきであるとする控訴人らの主張を採用することができないことは,引
用にかかる原判決第3の1及び前記アのとおりであり,第一次予備的主
張にかかる控訴人らの上記主張もまた採用することはできない。
加えて,控訴人らの主張する公法上の危険責任なる概念が,控訴人ら
に対する損害賠償責任等を生じさせる法的根拠となるものと認められな
いことも,引用にかかる原判決第3の2のとおりである。
ウ立法不作為に係る国賠法上の責任(争点⑶関係)について
控訴人らが主張する立法不作為が,国賠法1条1項の規定の適用上違
法の評価を受けるものに該当しないことは,その引用にかかる原判決第
3の3のとおりである。
原判決第2の1⑸ウからクまでのとおり,援護法による援護の対象に
なる者が順次拡大されているところ,南洋戦を含む,戦争遂行という国
家意思の実現に協力した者に対する補償を拡充していくこと自体不合理
であるとはいえず,その結果生じた控訴人らとの差異が不合理な差別で
あるとはいえない。
⑶以上のとおりであるから,当審におけるその余の控訴人らの種々の主張に
ついて判断するまでもなく,控訴人らの請求はいずれも理由がないといわざ
るを得ない。
2よって,控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は正当であり,控訴人ら
の本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
福岡高等裁判所那覇支部民事部
裁判長裁判官 大久保正道
裁判官 本多智子
裁判官 神谷厚毅

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

もくじ

名前で検索


 あ行

 か行

 さ行

 た行

 な行

 は行

 ま行

 や行

 ら行?

 わ行

 

管理人/副管理人のみ編集できます