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最高裁裁判官国民審査「在外投票できず」違憲 東京地裁判決 立法不作為も認め批判

 海外在住の日本人が最高裁裁判官の国民審査権を行使できないのは憲法違反だとして、米国在住の映画監督らが国家賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は28日、審査機会を制限することは選挙の保障を定めた憲法15条に違反すると認め、国に計2万5000円の支払いを命じた。森英明裁判長は「国民審査は憲法上認められた重要な権利」と違憲判断し、必要な立法措置を長く講じてこなかった立法不作為も認めて批判した。
 判決がこのまま確定すれば、国会は早急な法改正を迫られることになる。
 訴訟では、直近の2017年の国民審査で在外邦人に審査用紙が配られず、投票ができなかったことの是非が争われた。
 判決は国民審査について、国民が最高裁裁判官の任命に民主的なコントロールを加える制度で重要な権利だとし、憲法は選挙権と同様に審査権を行使する機会を保障しているとした。
 その上で、審査権の行使が制限されてもやむを得ない事情があるかどうかを検討。現行制度は対象裁判官の名前が記された用紙を受け取り、辞めさせたい裁判官の名前の上に「×」を書く記号式になっているが、点字による審査では、辞めさせたい裁判官の名前を記す投票が認められていることから、「他の方法を採用、併用すれば、在外審査は可能」と言及した。
 さらに、通信手段が地球規模で発達し、在外邦人に最高裁裁判官の情報を伝えることが以前より容易になっている現状も踏まえ、「社会の状況が大きく変化した。審査を可能とする立法措置をとることが事実上不能または著しく困難だったとは言い難い」とし、憲法違反と判断した。
 最高裁大法廷は05年、在外邦人の選挙権行使を制限した公職選挙法の規定を違憲と判断し、国会は法改正で国政選挙の選挙区での在外投票を可能とした。11年には国民審査の在外投票制度を巡る同種訴訟で、東京地裁が「合憲性に重大な疑義がある」と国会に警告した。森裁判長はこれらの経緯から、「地裁判決から6年半、最高裁判決から12年もの期間が経過する状況下で、前回(17年)審査を迎えたことに正当な理由はない。違法な立法不作為の結果、原告らは国民審査の投票ができず、精神的な苦痛を被った」と結論付けた。
 判決を受け、総務省は「内容を精査し、対応を検討する」とのコメントを出した。【蒔田備憲】
 制度形骸化の指摘も
 最高裁裁判官の国民審査は任命後初の衆院選に合わせて実施され、その後は10年経過した裁判官が対象となる。罷免すべきだと思う裁判官に「×」印を記入する方式で、「×」印が有効票の半数を超えると罷免される。だが、戦後24回の審査で罷免された裁判官は一人もいない。制度の形骸化も指摘される中、今回の判決によって、国民審査制度のあり方が改めて議論される可能性もある。
 今回の訴訟で問題となった2017年の審査の投票率は53・34%。15人の裁判官のうち、7人が審査を受け、全員が信任された。有効票のうち罷免を求める票の率(罷免率)は7〜8%台だった。罷免率は、過去最も高かった下田武三氏でも15・17%(1972年)にとどまる。
 この日の東京地裁判決について、自らも国民審査を受けた元最高裁判事の泉徳治弁護士は「憲法に定められた国民審査の権利をないがしろにするなという裁判所からのメッセージ」と読み解く。法令違憲を判断できる強大な権限を持つ最高裁裁判官は、内閣が任命する。内閣による偏った任命を防ぐため、憲法は、国民が最高裁裁判官を罷免できる仕組みを設けた。泉弁護士は「国民には裁判官を選ぶ権利がある。国会は一刻も早く立法を進めるべきだ」と主張する。
 広島大の新井誠教授(憲法)も「審査権は、選挙権と異なる参政権の一種と考えられる。今回の判決は、選挙権に類似する重要な権利だと評価した結果ではないか」とみる。
 一方、国政選に比べ、国民審査に対する国民の関心が高いとは言えないのも現実だ。慶応大大学院法務研究科の横大道聡教授(憲法)は「判決がすぐに国民審査の活性化につながることにはならないだろう」と前置きしながらも、「重要な権利であることを受け止めてほしいと、国民の意識を促す意味も判決には込められているのではないか」と分析する。
 外務省によると、17年10月時点の在外邦人は約135万人。調査開始以降、過去最高を記録した。【蒔田備憲】
 原告側「日本の民主主義にとって画期的な判決」
 判決後に東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した原告らは「日本の民主主義にとって画期的な判決」と国民審査の現行制度を違憲とした東京地裁の判断を高く評価した。
 2017年の衆院選と国民審査当時、米国に住んでいた弁護士の谷口太規さん(40)は「日本に関心を持ち続けている在外邦人の権利を排除する理由はない。裁判所も同様に考えてくれた結果だ」と強調。「おかしいと思ったことに声を上げて良かった」と語った。
 米国在住の映画監督、想田和弘さん(48)もインターネット中継で会見に参加。「原告は5人だけだが、130万人の在外邦人と一緒に裁判をやってきたつもりだ」と振り返り、「国はこの判決を法改正につなげ、権利侵害されている状態を一刻も早く正してほしい」と求めた。【服部陽】
(2019年5月28日 21時57分(最終更新 5月28日 21時58分) 毎日新聞)

東京地裁、在外投票制限は「違憲」=最高裁裁判官の国民審査−国に賠償命じる

 衆院選と同時に行われる最高裁裁判官の国民審査について、在外邦人が投票できないのは憲法違反だとして、米国在住の映画監督想田和弘さん(48)ら5人が国に損害賠償などを求めた訴訟の判決が28日、東京地裁であった。森英明裁判長は、2017年の前回審査で投票できなかったことは「審査権を認めた憲法に違反する」と判断。国に対し、原告1人当たり5000円を賠償するよう命じた。
 森裁判長は国民審査制度について、「最高の司法機関である最高裁の裁判官の任命に民主的統制を及ぼそうとしたもの」とした上で、「審査権は憲法が定める国民固有の権利だ」と述べた。
 国側は、審査対象の裁判官名を記載した用紙を投開票に間に合うよう在外公館に送付することは事実上不可能と主張したが、森裁判長は「他の方法もある。在外邦人の審査権を制限するやむを得ない理由があったとは到底言えない」と退けた。
 判決はさらに、最高裁が05年に国政選挙での在外邦人の選挙権制限を違憲と判断した上、東京地裁が11年、国民審査の制限についても「憲法適合性に重大な疑義がある」と言及したと指摘。「11年の時点で違憲は明白となっていたにもかかわらず、国会は何の措置も取らなかった」と批判し、立法不作為に基づく国家賠償を認めた。
 訴訟で国側は、国民審査権について、「議会制民主主義の根幹をなす選挙権とは憲法上位置付けが異なる」などと反論していた。
 判決後、インターネットを通じて記者会見した想田さんは「喜ばしい。国は速やかに法改正し、主権者としての権利が侵害されている状態を正してほしい」と訴えた。
 総務省選挙部管理課の話 内容を精査し、対応を検討する。
(2019年05月28日14時45分 時事ドットコム)

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平成30(行ウ)143  在外日本人国民審査権確認等請求事件
令和元年5月28日  東京地方裁判所
令和元年5月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成30年(行ウ)第143号在外日本人国民審査権確認等請求事件(第1事件)
平成30年(ワ)第11936号国家賠償請求事件(第2事件)
口頭弁論終結日平成31年2月日
判決
主文
1第1事件原告らの各訴えのうち,地位確認請求に係る各訴え及び違法確認請
求に係る各訴えをいずれも却下する。
2被告は,第1事件原告ら及び第2事件原告に対し,各金000円及びこれ
に対する平成29年月22日から支払済みまで年分の割合による金員を
支払え。
3第1事件原告ら及び第2事件原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用は,第1事件原告らに生じた費用の0分の99及び被告に生じ
た費用の0分の97を第1事件原告らの負担とし,第2事件原告に生じた
費用の2分の1及び被告に生じた費用の0分の1を第2事件原告の負担と
し,その余の費用を被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1第1事件
⑴(主位的請求)
日本国外に住所を有する第1事件原告らが,次回の最高裁判所の裁判官の
任命に関する国民の審査において,審査権を行使することができる地位にあ
ることを確認する。
(予備的請求)
被告が,第1事件原告らに対し,日本国外に住所を有することをもって,
次回の最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査における審査権の行使
をさせないことは違法であることを確認する。
⑵被告は,第1事件原告らに対し,各金1万円及びこれに対する平成29年
月22日から各支払済みまで年分の割合による金員を支払え。
2第2事件
被告は,第2事件原告に対し,金1万円及びこれに対する平成29年月
22日から支払済みまで年分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,⑴日本国外に住所を有する日本国民(以下「在外国民」という。)
である第1事件原告らが,ー膂姪に,憲法条1項,79条2項及び3項
等により最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査(以下「国民審査」と
いう。)における審査権が保障され,最高裁判所裁判官国民審査法(以下「国
民審査法」という。)4条によりその行使が認められているにもかかわらず,
被告がその行使の機会を与えなかったとして,第1事件原告らが次回の国民審
査において審査権を行使することができる地位にあることの確認を求め,⇒
備的に,被告が第1事件原告らに対し,日本国外に住所を有することをもって,
次回の国民審査において審査権の行使をさせないことが違法であることの確認
を求め,また,⑵第1事件原告ら及び第2事件原告(以下「原告ら」という。)
が,平成29年月22日執行の国民審査(以下「前回国民審査」という。)
について,中央選挙管理会が在外国民であった原告らに投票用紙を交付せず,
又は原告らが現実に審査権を行使するための立法を国会がしなかった結果,審
査権を行使することができず,精神的苦痛を受けたとして,国家賠償法1条1
項に基づき,各金1万円の損害賠償及びこれに対する同日から支払済みまで民
法所定の年分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
(以下,上記⑴,寮禅瓩坊犬訌覆┐髻嵋楫鐫楼務稜Г料覆─廚箸いぁぞ綉
⑴△寮禅瓩坊犬訌覆┐髻嵋楫鎔稻ヽ稜Г料覆─廚箸いΑ)
1関係法令の定め
関係法令の定めは,別紙2「関係法令の定め」に記載のとおりである(なお,
同別紙中で定義した略称等は,以下の本文においても同様に用いるものとする。)。
2前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)
⑴第1事件原告X1は,肩書住所地に居住する在外国民であり,平成12年
9月2日,同住所地に住所を有する在外国民として,栃木県足利市の在外選
挙人名簿に登録された(甲1)。
⑵第1事件原告X2は,肩書住所地に居住する在外国民であり,平成28年
月日,同住所地に住所を有する在外国民として,東京都新宿区の在外
選挙人名簿に登録された(甲2)。
⑶第1事件原告X3は,肩書住所地に居住する在外国民であり,平成22年
6月2日,ブラジル連邦共和国内に住所を有する在外国民として,埼玉県川
口市の在外選挙人名簿に登録された(甲3)。
⑷第1事件原告X4は,肩書住所地に居住する在外国民であり,平成28年
8月19日,同住所地に居住する在外国民として,名古屋市港区の在外選挙
人名簿に登録された(甲4)。
⑸第2事件原告Xは,平成28年3月2日,アメリカ合衆国内に居住する
在外国民として,横浜市神奈川区の在外選挙人名簿に登録された。同原告は,
現在,日本国内の肩書住所地に居住している(以上につき,甲,弁論の全
趣旨)。
⑹原告らは,いずれも平成29年月22日執行の衆議院議員総選挙の投
票をすることはできたが,同日執行の前回国民審査については,投票用紙が
交付されず,投票をすることはできなかった。
3争点
⑴本件地位確認の訴えが適法か否か
⑵本件違法確認の訴えが適法か否か
⑶在外国民に対する国民審査における審査権(以下「国民審査権」というこ
とがある。)の行使制限が違憲,違法であるか否か
⑷原告らの国家賠償請求の成否
4争点に関する当事者の主張
⑴本件地位確認の訴えが適法か否か(争点⑴)
(第1事件原告らの主張)
ア在外国民は国民審査権を行使することができる地位にあること
国民審査権は,憲法条1項,79条2項及び3項等によって国民
に保障された権利であり,国民審査について,「審査に関する事項は,
法律でこれを定める。」とした憲法79条4項の規定を受けて,国民審
査法4条は,「衆議院議員の選挙権を有する者は,審査権を有する。」
と規定し,衆議院議員の選挙権を有する者,すなわち満18歳以上の全
ての日本国民に国民審査権を行使させることを確認しており,在外国民
であっても,満18歳以上であれば,国民審査権を行使することができ
る地位にある。
国民審査法8条は,「審査には,公職選挙法(昭和年法律第
0号)に規定する選挙人名簿で衆議院議員総選挙について用いられるも
のを用いる。」と規定するが,この規定を在外国民の国民審査権の行使
を制限するものと解することはできない。
国民審査法8条は,国民審査権の行使の手続を定める規定であり,在
外国民の権利行使の機会を奪うものではない。国民審査権は,憲法によ
って国民に保障され,国民審査法4条がその権利行使の主体を規定して
具体的な権利として付与したものであり,同法のその他の規定はこの権
利を行使するための手続を定めるものであって,権利自体を剥奪したり,
その行使の機会を一切奪ったりするような規定を置くことは原則として
許されない。仮にそのような規定を定めることが許容されるとすれば,
そのような制限をすることなしには審査の公正を確保しつつ審査権の行
使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合
でなければならない。しかるところ,在外国民の権利行使を制限する理
由はなく,同法8条が在外国民の権利行使を制限するものであると解す
ることは憲法に反し,許されない。
国民審査法4条が,衆議院議員の選挙権を有する者は審査権を有する
と定め,同法8条が,審査には衆議院議員総選挙について用いられる選
挙人名簿を用いる旨規定することからすれば,国民審査法は,少なくと
もその制定当時,衆議院議員総選挙における選挙権の行使の主体と国民
審査における審査権の行使の主体とを同一のものとして定めていたこと
は明らかである。これは,憲法条1項が公務員の任命と罷免とを並
列に定めて国民固有の権利であるとしているのと整合するものであり,
憲法も,衆議院議員の選挙権を有する者は当然に国民審査権を行使する
ことができると考えていたのであって,国民審査法8条はこのことを具
体化したものにすぎない。
平成年法律第47号による公職選挙法の改正によって,それまで
の選挙人名簿に加えて,在外選挙人名簿が整備されるに至ったところ,
これ以降の国民審査法8条の規定についても,憲法の趣旨等を十分に踏
まえた上で,条文を丁寧に解釈すべきである。憲法は選挙権と同等のも
のとして国民審査権を保障し,国民審査法もその趣旨に沿って両者に差
を設けないという理念に基づいて設計されており,憲法の趣旨に沿った
国民審査の実施の在り方という観点から解釈すれば,国民審査法8条の
「選挙人名簿」とは,「衆議院議員総選挙に用いる名簿」,すなわち公
職選挙法上の選挙人名簿(同法19条)及び在外選挙人名簿(同法30
条の2)の双方を指すと解すべきである。既に在外国民に国政選挙にお
ける選挙権の行使を認める制度(以下「在外選挙制度」という。)が実
施されていること,立法者が在外国民に国民審査権の行使を認める制度
(以下「在外審査制度」という。)を導入しない理由を技術上の問題に
すぎないと説明していることからすれば,その技術上の問題がなくなっ
た今日では,このような解釈が立法者意思に反するとみる理由はない。
したがって,在外選挙人名簿に登録されている在外国民の国民審査権
の行使が否定されることはない。
イ法律上の争訟性について
本件地位確認の訴えは,実質的当事者訴訟(行政事件訴訟法4条後段)
のうちの公法上の法律関係に関する確認の訴えである。国民審査権を行
使することができる第1事件原告らの地位は国民審査法4条に基づく法
的地位であり,立法を待たずにその存否を確定することができる法律関
係である。また,紛争の対象は,次回の国民審査における法的地位であ
る。第1事件原告らが特定の国民審査においてその権利を行使し得る地
位にあるか否かという具体的な権利の存否に関する現実の紛争であるか
ら,観念的で抽象的な争いではなく,政治的,経済的問題や技術,学術,
宗教上の争いでもない。前提問題として裁判所の判断に適さない問題に
ついての争いがあるわけでもない。国民審査権を有するのであれば,当
然の帰結として,国民審査権を行使することができる地位にあることも
認められなければならず,本件地位確認の訴えは,憲法及び国民審査法
の解釈論によって解決されるべき問題であり,第1事件原告らが国民審
査権を有することを裁判所が審査することができるのは当然である。本
件地位確認の訴えは裁判所法3条1項の法律上の争訟に当たる。
被告は,名簿等の手続規定が整備されていないから,本件地位確認の
訴えは法律上の争訟には当たらない旨主張する。
しかしながら,本件地位確認の訴えは,確認の訴えであり,あくまで
第1事件原告らと被告との間の法律関係を確定しようとするものであっ
て,被告は,ここで確定した法律関係を前提に法制度を整備し,執行す
る義務を負うことになるにすぎない。一定の法律関係の確認がされた後
で,具体的にどのような制度を整備するかは被告の裁量に委ねられてお
り,第1事件原告らの請求が認容されても,被告の立法裁量が害される
ことはない。実施方法の細目について定まっていないとしても,国会や
行政庁において定めればよく,第1事件原告らの法的地位それ自体が存
在することの妨げにはなり得ず,給付の訴えとは異なり,実施手続の細
目が定まっていないとしても法律関係それ自体の確認をすることは当然
に許される。本件地位確認の訴えに係る請求が認容されることによって,
被告は第1事件原告らを排除した国民審査制度を存続させて執行するこ
とは許されなくなるが,被告には違憲の法制度を維持する裁量はないか
ら,このことは被告の立法裁量を害するものではない。
ウ確認の利益について
国民審査権は,それを行使することができなければ意味がない。国家賠
償請求訴訟により慰謝料を得たところで権利行使の実質を回復することは
できず,このままでは次回の国民審査においても同様の権利侵害が続くこ
とは確実である。本件地位確認の訴えに係る請求が認容されると,被告に
は,第1事件原告らの参加を許さない国民審査制度を存続させ,執行する
裁量がないことが確定し,被告は国民審査制度を拡充する義務を負うこと
になるところ,これによって,在外国民の国民審査権の制限が憲法と国民
審査法に違反するのではないかという本件の本質的な紛争は抜本的に解決
することになる。また,第1事件原告らは,国民審査権一般の確認を求め
ているのではなく,次回の国民審査時に国外に住所を有する場合に限って
国民審査権を行使することができることの確認を特に求めているものであ
り,確認の対象は適切に選択されている。さらに,第1事件原告らは,前
回国民審査においてその権利を行使することができなかった。このままで
は,遅くとも令和3年月までに執行される国民審査において第1事件
原告らが投票することができないことは確実であり,即時確定の利益があ
る。
したがって,本件地位確認の訴えについては,確認の利益がある。
(被告の主張)
ア在外国民は国民審査権を行使することができる地位を有しないこと
憲法は,国民審査の内容につき,79条3項において「投票者の多数が
裁判官の罷免を可とするときは,その裁判官は,罷免される。」とのみ規
定し,同条4項において「審査に関する事項は,法律でこれを定める。」
と規定しており,国民審査の制度を具体的にどのような内容の制度とする
かの決定を広く立法政策に委ねている。そして,国民審査法は,審査は全
都道府県の区域を通じて行うとし(3条),審査には公職選挙法に規定す
る選挙人名簿で衆議院議員総選挙について用いられるものを用いるもの
とし(8条),罷免を可とする投票の数が過半数を占める場合であっても,
投票の総数が公職選挙法22条1項又は3項の規定による選挙人名簿に
登録されている者の総数の0分の1に達しないときは,その効力を生
じないとする(32条)等の規定を置く一方,公職選挙法の「在外選挙人
名簿」に相当する選挙人名簿に係る規定を設けていないことを総合すれば,
国民審査法は,我が国の領域主権の及ばない国外における審査を予定して
いないものというほかなく,在外国民は,国民審査権を行使することがで
きる地位を有しない。
第1事件原告らは国民審査法4条に基づく権利を主張するものの,同条
は衆議院議員の選挙権を有する者が審査権を有する旨定めるものであり,
審査人の資格を定めるものにすぎず,同法が別に審査人の名簿や投票の方
式等について規定を設けていることからしても,同条を根拠に審査権を行
使できる地位,すなわち国民審査において投票することができる地位があ
るとはいえない。また,第1事件原告らは,同法8条にいう「選挙人名簿」
は,「衆議院議員総選挙に用いる名簿」を意味し,これに「在外選挙人名
簿」が含まれる旨主張するものの,公職選挙法が「選挙人名簿」と「在外
選挙人名簿」とを区別して規定していることは明らかであるから,法律の
文言に反する解釈であって誤りである。仮に,国民審査法8条の「選挙人
名簿」に公職選挙法の「在外選挙人名簿」が含まれると解したとしても,
在外審査制度について詳細な規定が設けられていない以上,この解釈のみ
をもって直ちに在外国民が国民審査において投票することができること
にはならない。
イ法律上の争訟性について
上記のとおり,憲法は,国民審査の具体的な制度の在り方の定めを広
く国会の立法政策に委ねており,これを受けた国民審査法は,我が国の
領域主権の及ばない国外における審査を予定せず,「在外選挙人名簿」
に関する規定も設けていない。したがって,第1事件原告らが本件地位
確認の訴えにおいて確認を求める地位は,新たな立法によって,我が国
の領域主権の及ばない国外においても国民審査権の行使を可能とする制
度が採用されない限りはおよそ存在し得ないものであり,本件地位確認
の訴えに係る紛争は,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存
否に関する紛争とはいえないし,法令の適用により終局的に解決できる
ものでもない。そして,本件地位確認の訴えは,法律上の地位の確認と
いう形式によっているが,その実体は,国会によって立法措置が講じら
れておらず,自己の主張に沿う制度が実現されていないにもかかわらず,
国会の立法行為をいわば先取りして,裁判所に対して,新たな制度の創
設を求めるに等しいものである。そのような新たな制度の創設は,立法
作用に属する事項であって,司法審査に適しない事情があるともいえる。
第1事件原告らは,国民審査権自体に,その行使をすることができる
地位が含まれているとした上で,国民審査法4条に基づく法的地位の確
認を求める本件地位確認の訴えは,憲法及び国民審査法の解釈論によっ
て解決されるべき問題であり,国民審査権を有することを裁判所が審査
することができるのは当然である旨主張する。
しかしながら,憲法は,国民審査制度を具体的にどのような制度とす
るかの決定を広く立法政策に委ねているのであるから,法律による制度
の具体化を待った上で権利行使が可能になるものと解されるのであり,
国民審査制度があるからといって,あらゆる場合に審査権を行使するこ
とができる地位があるということにはならない。また,国民審査法4条
は,衆議院議員の選挙権を有する者が審査権を有するとして,審査人の
資格を定めるものにすぎず,同法が別に審査人の名簿や投票の方式等に
ついて規定を設けていることからしても,同条を根拠に国民審査におい
て投票することができる地位の確認を求めることはできない。さらに,
同法は,国外における審査を予定せず,公職選挙法の在外選挙人名簿に
相当するような規定も設けていないのであるから,国民審査法の解釈に
よっても存在しない地位の確認を求めることはできない。
したがって,本件地位確認の訴えは,裁判所法3条1項の法律上の争
訟に当たらないことが明らかであり,不適法というべきである。
ウ確認の利益について
第1事件原告らが確認を求めている「次回の国民審査において審査権を
行使することができる地位」は,仮に国民審査法8条が違憲無効であった
としても,新たな立法措置がない限り存在し得ない地位である。第1事件
原告らは,本件地位確認の訴えの認容により,被告が国民審査制度を拡充
する義務を負うと主張するが,正に,具体的立法がない以上,国民審査に
おいて投票することはできないことを自認するものであり,結局,第1事
件原告らが求めているのは,法律により具体化される以前の抽象的な権利
の確認にすぎない。また,第1事件原告らは,同法4条に基づく法律関係
の確認を求める旨主張するものの,上記イのとおり,これは審査人の資格
の有無についての法律関係にほかならず,同条を根拠に国民審査において
投票することができる地位の確認を求めることはできない。
したがって,第1事件原告らが主張している,在外国民の国民審査権に
関する法的紛争の解決にとって,本件地位確認の訴えを提起することが有
効・適切とはいえないし,このような訴訟物が確認の対象として有効・適
切ともいえないから,確認の利益がないことは明らかである。
⑵本件違法確認の訴えが適法か否か(争点⑵)
(第1事件原告らの主張)
法令の規定を新たに定めなければ原告の主張する法的地位が実現されない
場合や,立法機関が原告の法的地位を認めるか否か,あるいは認める程度・
態様について裁量を残している場合には,原告の法的地位を侵害する点で法
令の規定が違法であることについての消極的確認が認められる。仮に,本件
地位確認の訴えが不適法である場合には,消極的確認としての本件違法確認
の訴えが適法とされなければならない。
本件違法確認の訴えは,第1事件原告らとの関係で,次回の国民審査にお
いて,審査権の行使をさせないことが違法であることの確認を求めるもので
あり,特定の個人との間の個別具体的な法律関係の確認を求めるものであっ
て,抽象的な法令の違法・違憲確認や立法不作為の違法確認を求めるもので
はない。本件違法確認の訴えは,裁判所法3条1項の法律上の争訟に当たる。
(被告の主張)
本件地位確認の訴えが,新たな立法措置がない限り存在し得ない地位の確
認を求めるものであり,国民審査制度に関し,第1事件原告らと被告との間
において,他に確認の対象となり得る当事者間の具体的な権利義務ないし法
律関係が存在しないことからすれば,本件違法確認の訴えは,要するに,国
民審査法が違法であることの確認,あるいは立法不作為の違法確認を求める
ものと解されるところ,このような訴えは,当事者間の具体的な権利義務な
いし法律関係の存否に関する紛争とはいえないから,裁判所法3条1項の法
律上の争訟に当たらず,不適法というべきである。
⑶在外国民に対する国民審査権の行使制限が違憲,違法であるか否か(争点
⑶)
(原告らの主張)
ア公務員の選定及び罷免は国民固有の権利であり(憲法条1項),
国民は国会議員を選挙により選任し,同時に,最高裁判所の裁判官を審
査により罷免するとされるところ(憲法79条2項,3項),これらは
国民主権の原理(憲法前文,1条)を具体化する規定である。憲法が最
高裁判所の裁判官(以下,単に「裁判官」ということがある。)につい
て特に国民審査による罷免の制度を設けたのは,役割と権限が極めて大
きい最高裁判所を国民による民主的統制の下に置くこととしたものであ
り,国民審査は,司法制度の正当性を確保するために不可欠な仕組みで
ある。国民審査権の保障が国民主権の原理に基づくことから,選挙権に
関する憲法の規定(憲法条3項,44条ただし書)及び投票の機会
の平等の要請(憲法14条1項参照)の趣旨は国民審査にも及ぶ。
満18歳以上の在外国民に国民審査権を行使する機会を与えないこと
は,国民審査権を国民固有の権利として保障し,その行使の機会の平等
を規律する憲法14条,条1項及び3項,44条ただし書並びに7
9条2項及び3項に違反する。また,海外に居住することのみを理由と
して権利を制限することになるから,外国に移住する自由を保障する憲
法22条2項にも違反する。
さらに,満18歳以上の在外国民に国民審査権を行使する機会を与え
ないことは,満18歳以上の全ての日本国民に国民審査権の行使を認め
た国民審査法4条にも違反する。
憲法条1項は,公務員の選定及び罷免を国民固有の権利として定
めている。裁判官も公務員であり,しかも違憲立法審査権等の強大な権
限を持つ公務員である。こうしたことを考慮して,国民主権を定める同
項を具体化し,特に裁判官に対して民主的統制を及ぼすために定められ
たのが,憲法79条2項の国民審査制度である。国民審査制度が解職の
制度と解されていることは,国民審査権の重要性と何ら関係がない。そ
して,憲法が現に国民主権の実現の一環として国民に国民審査権を保障
している以上,やむを得ない事由もないのに権利を事実上はく奪するこ
とが国会の裁量に委ねられているとは解されない。在外国民の選挙権に
ついての最高裁判所判決(最高裁平成13年(行ツ)第82号,第83
号,同年(行ヒ)第76号,第77号同17年9月14日大法廷判決・
民集9巻7号87頁。以下「平成17年大法廷判決」という。)
では,選挙権の行使の制限について,やむを得ない事由の審査基準が用
いられているところ,審査権の行使を制限する場合も,選挙権の行使を
制限する場合と変わらない審査基準による必要があり,やむを得ない事
由の審査基準が用いられるべきである。しかるに,在外国民について審
査権の行使を制限するやむを得ない事由はないから,在外国民がこれを
行使することが。
イ被告は,国民審査の在外投票制度を設けないことは,在外投票制度に係
る技術上の問題があるからであり,少なくとも国会の裁量権の行使として
著しく不合理と評価できない旨主張する。
投票用紙の送付等の点について,平成28年法律第49号による国民
審査法の改正(平成28年月27日施行。以下「平成28年改正」と
いう。)の前においては,被告は審査の告示以前に投票用紙を印刷する
ことは不可能としていたが,実際には,衆議院議員の任期満了又は衆議
院の解散の時点で審査が必要な裁判官は判明しており,審査の告示を待
つことなく投票用紙を印刷することは十分可能で,在外審査制度を実施
することについての技術上の問題は存在していなかった。さらに,平成
28年改正後には,衆議院議員の任期満了の日前60日に当たる日又は
衆議院の解散の日のいずれか早い日以後直ちに審査に付されることが見
込まれる裁判官の氏名等を選挙管理委員会に通知しなければならないこ
ととされ,投票用紙も直ちに印刷されることとなったのであるから,被
告の主張を前提としても,裁判官が確定しないことによって技術上の問
題が生じるのは,任期満了の日前60日に当たる日又は衆議院の解散の
日から審査の告示の日までの間に新たな裁判官が任命された例外的な場
合に限られる。
なお,被告は,上記例外的な場合が発生すると,在外国民が投票に参
加した国民審査と参加しない国民審査の両方が生じる可能性があり,国
民審査法はこのような制度内での不整合を許容しているとはいえない旨
主張する。しかしながら,疾病や障害の程度,投票期日における用務等
によりいまだに投票することができない人もおり,公職選挙法も国民審
査法も,このような不整合を前提に成り立っているところ,このような
不整合をできる限り解消することは,投票の機会を増やすことによって
果たされるべきである。被告の主張は,そのために,一律に在外国民か
ら国民審査権の行使の機会を奪おうとするものであり,許されない。そ
もそも現行の国民審査法が在外審査制度を認めていないとする解釈は違
憲であって,同法を憲法適合的に解釈しなければならないとする原告ら
の主張に対し,憲法適合的解釈を法が許容しないというのは筋違いであ
る。
また,被告の主張する技術上の問題は,投票用紙に裁判官名を印刷し
て行う現行の方式を前提としている。
しかしながら,憲法は審査の投票についてどのような方法を用いるの
かについても法律にこれを委ねているのであって(79条4項),あら
かじめ裁判官名を印刷した投票用紙を用いるという現行の方式以外の方
法を用いることも許容されている。例えば,国民審査においても衆議院
議員の選挙と同様に,点字による投票が認められ,その際には,罷免を
可とする裁判官の氏名を投票用紙に記載すべきこととされている(国民
審査法16条1項)。また,ブラジル連邦共和国においては,1989
年に初めて電子投票機を利用した投票が行われ,00年以降全国で
電子投票が行われている。このような方法を用いれば,投票用紙の印刷
及び配布に伴う問題はなくなる。さらに,公職選挙法は,ファクシミリ
による洋上投票を認めており(49条7項),類似の制度を導入すれば,
被告の主張する弊害は完全に回避することができる。投票用紙の印刷に
厳正さを期すことが公正な審査の実施のために必要であるとしても,例
えば,投票用紙に1からまでの番号をあらかじめ印刷し,審査の対
象となる裁判官の氏名と番号を対応させた用紙を投票所内に掲示して,
投票用紙には各番号の欄に×の記号を記載する方式(以下「分離記号式
投票」ということがある。)によることができる。この方法によれば,
投票用紙について選挙と国民審査との相違点は全くなくなる上に,投票
の方式においても国内と国外との差異はほとんどなくなる。このように,
簡便かつ公正さを確保した在外審査制度を設けることは十分に可能であ
り,その実現は容易である。なお,第1事件原告らのうち2名は,平成
29年月22日執行の衆議院議員総選挙の際,日本国内の投票所で
投票をしたにもかかわらず,国民審査の投票をすることができなかった
が,国内で投票する場合には,技術上の問題は全く存在しない。
被告は,在外審査制度について,自書式投票(投票用紙に罷免を可と
する裁判官の氏名を自書する投票方法)を採用すると,投開票に時間が
かかる旨主張するものの,投開票に時間がかかるからといって,公平な
国民審査が実施できないということにはならない。投開票の時間を短縮
するための方策を講じることは十分可能である。被告は,自書式投票に
よって疑問票が増えることをも開票作業の遅滞の原因として主張するも
のの,そもそも国政選挙は,自書式投票で行われており,多数の疑問票
を生んでいる。疑問票が生じるから開票作業ができないということはあ
り得ない。また,被告は,投票用紙に番号を付すなどする投票方式につ
いて,過誤投票が増える旨主張するものの,自書式投票は多数の無効票
を生んでおり,有権者の意思を正確に反映する投票方式とは言い難く,
分離記号式投票は,自書式投票よりもよほど過誤投票の危険の少ない優
れた投票方式である。そもそも,過誤投票があり得るからといって,在
外審査制度が公平に行われないということにはならない。さらに,自書
式投票又は分離記号式投票について,被告の主張する懸念を払しょくす
るには,国民審査法4条の2第1項に基づき,当初通知した審査予定裁
判官については,記号式投票とし,その後任命された裁判官がある場合
には,その裁判官についてだけ自書式投票とする方式も考えられる。審
査の公正を害さない投票方式を用いて,在外審査制度を実施することは
可能である。
以上によれば,技術上の問題があるから在外国民に国民審査権を行使
させないことはやむを得ないとする被告の主張は理由がない。
(被告の主張)
ア在外審査制度を設けないことが憲法の諸規定に違反しないこと
国民審査は,裁判官に対する「国民罷免手続又は国民解職手続」であ
り,選任ではなく,「リコール(国民解職)」の性質を有するものであ
る。憲法条1項は,あらゆる公務員の終局的任免権が国民にあると
いう国民主権の原理を表明したもので,国民が全ての公務員を直接に罷
免すべきであるとの意味を有するものではない。そして,国民審査につ
いても,憲法79条2項において,最高裁判所の裁判官の任命は,その
任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し,その後
年を経過した後初めて行われる衆議院議員総選挙の際更に審査に付
し,その後も同様とすると規定するのみであり,選挙権に関する諸規定
(憲法条3項及び4項,44条)と規定ぶりが異なっており,在外
国民を含めた成年者に投票資格があることが規定されているものでもな
い。また,選挙については,公職選挙法において選挙運動に関する詳細
な規定が設けられている一方で,国民審査は,裁判官に対する解職の制
度であり,国民審査法には公職選挙法における選挙運動に関する規定と
類似の規定が設けられていないことからしても,国民審査は,選挙とは
異なる性質のものであることは明らかである。
さらに,国民審査は,国民主権の観点から重要な意義を持つものでは
あるが,国民主権原理や議会制民主主義を採用している諸外国において
も,最高裁判所や憲法裁判所の裁判官に対する国民審査制度を採用して
いる国家は少数であることからみても,議会制民主主義の根幹を成す選
挙権とは位置付けが相当異なることは明らかである。
選挙制度の合憲性は,国会に与えられた裁量権の行使として合理性を
有するといえるか否かによって判断され,国会がかかる選挙制度の仕組
みについて具体的に定めたところが,憲法上の要請に反するため,上記
の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是正すること
ができない場合に,初めて憲法に違反することになるものと解すべきで
ある。このような判断枠組みは,選挙制度と同様,憲法が法律でこれを
定めるものとし(79条4項),仕組みの決定については国会に広範な
裁量が認められている国民審査制度についても同様に当てはまるもので
あるところ,前記の国民審査の憲法上の位置付け,取り分け,国民審査
が「リコール(国民解職)」の性質を有するものであり,選挙権とは相
当位置付けが異なること,憲法上も,国民審査に関する規定と選挙権に
関する規定の規定ぶりが異なっていることからすれば,国民審査制度の
仕組みの決定においては,選挙制度の場合と比較して,更に国会に広範
な裁量が認められるというべきである。
したがって,国会が国民審査制度の仕組みについて具体的に定めたと
ころが憲法上の要請に反する場合というのは,例えば思想や出自を理由
に国民審査権を行使させない場合など,国会の裁量権の行使が著しく不
合理と評価される場合に限られるというべきである。
a衆議院議員及び参議院議員の選挙については,いずれも自書式投票
(投票用紙に候補者の氏名や政党名を自書する投票方法)が採用され
ているのに対し,国民審査は,名それぞれに任期の異なる裁判官
を対象とし,衆議院議員総選挙の機をとらえ,記号式投票(あらかじ
め候補者名等が記載された投票用紙に所定の記号を記載する投票方
法)を用いて行うこととされている点で,衆議院議員及び参議院議員
の選挙とは全く異なる技術上の問題がある。
b平成28年改正の前後を問わず,国民審査においては,投票用紙に
審査に付される裁判官の氏名が印刷され,罷免を可とする裁判官に×
の記号を記載する投票方法が採用されているところ,このような記号
式投票が採用された趣旨は,国民審査が,各候補者が氏名を宣伝して
投票を得る選挙とは異なる性質の制度であることから,審査人に審査
対象の裁判官全員の氏名を知らせるとともに,なるべく簡易な方法で
投票できるようにしたものであり,解職制度という国民審査制度の趣
旨に合致するものである。国民審査において記号式投票が採用されず,
自書式投票が採用された場合,衆議院議員及び参議院議員の選挙と異
なり,連記投票となることが想定される国民審査において,審査人が
裁判官の氏名を自書するのは時間及び手間を要し,投票所における投
票が滞ることになりかねないばかりか,記載の趣旨が不分明であるな
どの疑問票が増加し,開票事務が滞ることになりかねない。
c平成28年改正前の国民審査法の下では,中央選挙管理会は,国民
審査の期日前12日までに,審査の期日及び審査に付される裁判官の
氏名を官報で告示しなければならないとされ(条),国民審査は衆
議院議員総選挙と同日に行われることから,選挙の公示日を待って裁
判官の氏名等の告示を行っていた。この点,衆議院議員総選挙の期日
は,少なくとも期日の12日前に公示しなければならないが(公職選
挙法31条4項),実務上は,期日前12日に公示されるのが通常で
ある。そして,投票用紙の調製の時期については,平成28年改正前
の国民審査法上定められていなかったものの,審査の告示の前に審査
に付されることが見込まれる裁判官を通知する制度もなかったことか
ら,投票用紙は審査に付される裁判官の告示を待って印刷していた。
この点において,自書式投票を採用し,あらかじめ投票用紙の印刷及
び在外公館への送付が可能である衆議院議員及び参議院議員の選挙の
場合と相違があり,以上の取扱いは合理的なものであった。
そうすると,在外国民が在外公館において国民審査に投票するため
には,審査に付される裁判官の告示(期日前12日),各裁判官の氏
名等の印刷,裁断及び発送準備,各地の在外公館への配布準備,東京
国際郵便局への送付,在外公館への送付,到着後の各在外公館におけ
る整理,審査,(審査後の)在外公館から外務省への投票用紙の送付,
外務省から各投票所への送付の各過程を経るところ,上記の在外公館
から各投票所への投票用紙の送付だけでも原則として日から6日,
地域によってはそれ以上の郵送期間を要する状況であり,一定期間の
審査期間を確保しつつ,国民審査の期日までに作業を完了して開票に
間に合わせることは実際上不可能である。
そのため,平成年法律第47号により公職選挙法が一部改正さ
れ,在外選挙制度が創設された際に,在外審査制度を認めるか否かに
ついても政府内で検討されたが,上記のとおり主として投票用紙の調
製,送付等に関する技術上の問題により十分な投票期間を確保するこ
とができないなどの理由があることなどから,在外審査制度の創設は
見送られた。平成17年大法廷判決を受け,平成18年法律第62号
により公職選挙法が一部改正され,在外選挙制度の対象が衆議院小選
挙区選出議員及び参議院選挙区選出議員の選挙に拡大された際も,国
民審査の投票について上記の技術上の問題が解消されるものではない
ことから,在外審査制度は創設されなかった。
d平成28年改正後の国民審査法においては,中央選挙管理会は,衆
議院議員の任期満了の日前60日に当たる日又は衆議院の解散の日の
いずれか早い日以後直ちに,同日以後初めて行われる衆議院議員総選
挙の期日に審査予定裁判官の氏名等を都道府県の選挙管理委員会に通
知しなければならないとされ(4条の2第1項),当該通知の後,審
査の告示までの間に裁判官が任命された場合には,中央選挙管理会は,
直ちに,その旨及びその時における審査予定裁判官の氏名等を都道府
県の選挙管理委員会に通知しなければならないものとされている(同
条2項)。そして,平成28年改正後は,実務上,同条1項の通知を
待って投票用紙の印刷が行われるようになったが,同通知後,審査の
告示の前までに新たに裁判官が任命された場合には,同条2項の通知
を待って改めて投票用紙の印刷を行わなければならないなど,審査に
付される裁判官は審査の告示の日にならないと最終的に確定しないた
め,投票用紙の内容も審査の告示の日にならないと最終的に確定しな
い。投票用紙の調製は,どんなに早くとも国民審査の実施が確定する
衆議院解散の日から始めるしかなく,投票用紙の調製に要する期間や
在外公館への投票用紙の送付に要する期間等を考慮すると,在外公館
によっては,一定の審査期間を確保しつつ国民審査の期日までに作業
を完了して開票に間に合わせることが実際上不可能という状況に変わ
りはない。そのため,平成28年改正によっても,在外審査制度に係
る技術上の問題は解消されず,在外審査制度は創設されなかった。
e以上のとおり,在外審査制度を設けないことは,平成28年改正の
前後を問わず,技術上の問題という合理的な理由によるものであり,
少なくともこれを国会の裁量権の行使として著しく不合理と評価する
ことができないことは明らかである。
これに対し,原告らは次のとおり主張するが,いずれも理由がない。
a原告らは,平成28年改正前の国民審査法の下でも,審査の告示を
待つことなく投票用紙を印刷することは十分可能であり,在外審査制
度の実施について技術上の問題は存在していなかった旨主張する。
しかしながら,国民審査法上,衆議院議員の任期満了の日の60日
前か衆議院解散の日のいずれか早い日から衆議院総選挙の公示の日の
間に新たに裁判官が任命されるという例外的事態が生じることが予定
されている以上,投票用紙の送付が間に合わないという技術上の問題
が解消されていないことは変わりない。にもかかわらず,在外審査制
度を実施した場合,一たびこのような例外的事態が生じれば,当該国
民審査については,在外国民への投票用紙の送付が間に合わず,在外
国民が投票に参加できないことになることで,在外国民が投票に参加
した国民審査と投票に参加しない国民審査の両方が生じることとなり,
制度内で不整合が生じる結果となるが,国民審査法がこのような不整
合が生じることを許容しているとはいえない。
b原告らは,国民審査において,現在の投票用紙を用いる方法以外の
方法を用いることも許容されている旨主張する。
しかしながら,国民審査法16条1項が点字による投票を認めてい
るのは,短期間で点字により記号式投票の投票用紙を調製するのが難
しいことに加え,点字には「×」といった記号がないところ,記号式
投票の「審査に付される裁判官」の欄に点字で氏名が打たれた場合に,
その意思を表示すべき箇所に審査人が点字により正確に記載すること
が難しいという事情があるからであり,記号式投票の趣旨及び自書式
投票が採用された場合の弊害からすれば,点字による投票が認められ
ているからといって,それ以外の場合に自書式投票が許容されるとい
うことにはならない。
また,公職選挙法49条7項のいわゆる洋上投票制度は,衆議院議
員の総選挙と参議院議員の通常選挙の不在者投票を対象として制度化
されたものであり,現行の公職選挙法の体系の中で極めて例外的な制
度である。そして,在外国民にファクシミリ装置を用いて送信する投
票を認めるには,投票の確実な送受信を確保し,適正に管理執行する
観点から,それぞれ時差が異なる世界各地から送信された投票を受信
する全国の市町村の選挙管理委員会において,投票の送受信の都度,
送信者と連絡できるようにしておく必要があるが,こうした措置を講
じることは現実には不可能と考えられる。
さらに,ブラジル連邦共和国において電子投票機を利用した投票が
行われていることや,投票用紙に1からまでの番号をあらかじめ
印刷し,審査の対象となる裁判官の氏名と番号を対応させた用紙を投
票所内に掲示して,投票用紙には各番号の欄に×の記号を記載すると
いう方式も,国民審査法が公製公給主義(13条,14条)を規定し,
一人一票の原則に反した不正の投票を防止し,投票の秘密を保持し,
もって審査の公正を確保しようとする趣旨を放棄するものである。加
えて,投票用紙に番号を記載するなどする方式によった場合,番号と
対応する裁判官を誤って認識するなどして過誤投票が増加する可能性
があり,簡明な投票方法を採用することで過誤投票を防ぐなどの記号
式投票を採用した趣旨に反することになる。
c原告らは,在外国民が日本国内の投票所で投票する場合には,技術
上の問題は存在しない旨主張する。
しかしながら,在外選挙人名簿に登録されている選挙人については,
衆議院議員又は参議院議員の選挙において,日本国内における投票が
認められているところ(公職選挙法49条の2第3項,4項),これ
は,在外選挙制度を前提として,国外で投票できる選挙人が一時帰国
した際等に国内で投票できないとすることは均衡を欠くことから設け
られたものであり,そもそも国外における投票が認められていない国
民審査とは何ら関係のない事情である。
したがって,在外審査制度を設けないことは,平成28年改正の前後
を問わず,憲法の諸規定に違反するものではない。
イ在外国民の国民審査権の行使制限が国民審査法に違反しないこと
国民審査法4条は,在外国民が国民審査において投票することを認めた
ものではなく,在外国民が国民審査権を行使することができないことは,
同条に違反するものではない。
⑷原告らの国家賠償請求の成否(争点⑷)
(原告らの主張)
前記⑴(第1事件原告らの主張)アのとおり,在外国民は国民審査権を行
使することができる地位にあり,前記⑶(原告らの主張)のとおり,これを
行使することができないことは違憲,違法であることから,被告は,原告ら
に対し,次のとおり,国家賠償責任を負う。
ア投票用紙の不交付が国家賠償法上違法であること
憲法は原告らの国民審査権を保障し,国民審査法4条はその行使を認め
ている。また,同法には,原告らの国民審査権の行使を制限する規定はな
い。にもかかわらず,前回国民審査において,中央選挙管理会は,原告ら
が審査権を行使できるよう,投票用紙を原告らに交付しなかった。中央選
挙管理会は,国民審査権を有し,その行使を希望する全ての者が平等にそ
の権利を行使することができるよう,原告らに投票用紙を交付する職務上
の法的義務を負っていた(同法9条,条,14条)にもかかわらず,
この法的義務に違背し,原告らが国民審査権を行使することを事実上制限
した。これは国家賠償法1条1項の適用上違法である。
イ立法不作為が国家賠償法上違法であること
国会議員の立法不作為は,立法内容が違憲であることが明白であり,
かつ,国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠
った場合に,国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
国民審査法を始めとする現行法の解釈により在外国民の国民審査権の
行使が実現できないとするならば,その行使を制限してよい憲法上の理
由はないから,その行使を実現する法制度を整備しない立法不作為は,
憲法14条,条1項及び3項,22条2項,44条ただし書並びに
79条2項及び3項に違反する。
また,在外選挙が繰り返し実施されてきたこと,通信手段が目覚まし
い発達を遂げていること,在外国民に選挙権行使の機会を与えなかった
選挙制度について立法不作為の国家賠償を認める平成17年大法廷判決
が言い渡されていることからすれば,遅くとも同判決の時点で,在外国
民に国民審査権の行使を認めないことが違憲であることは,国会にとっ
ても明白となった。平成17年大法廷判決に係る訴訟において問題とさ
れた在外選挙制度は,平成年の公職選挙法改正によって創設された
ものであるが,この改正に当たっての国会の議論においても,在外審査
制度が同時に検討されていないことの問題性が指摘されていた。そして,
その答弁に立った政府委員は,国民審査は衆議院議員選挙に連動するも
のであり,在外国民が衆議院議員選挙において選挙権の行使が認められ
ていない以上,国民審査権の行使ができないのもやむを得ない旨の答弁
をしている。さらに,日本弁護士連合会は,平成14年7月30日,内
閣総理大臣,総務大臣,外務大臣,法務大臣並びに衆議院及び参議院の
各議長に対し,在外国民に対して国民審査権の行使を許さないのは人権
侵害に該当するという勧告をするなどしており,このような経緯からし
ても,国会は,在外国民に等しく国政選挙権の行使が認められていない
ことを違憲とした平成17年大法廷判決が出た時点において,在外国民
に対する国民審査権の制限についても違憲であることを明白に認識して
いた。
その後,平成22年に公布された日本国憲法の改正手続に関する法律
では,憲法改正についての国民投票において在外国民の権利行使が保障
されていること,平成23年には,在外国民に国民審査権の行使を認め
ない現行の国民審査制度について違憲状態と判断する地方裁判所の判決
がされていること(東京地裁平成23年4月26日判決・判例時報21
36号13頁。以下「平成23年東京地裁判決」という。)に照らせば,
国会が違憲性を知りながら,長期にわたって改正を怠り続けてきたこと
は明らかである。仮に,国会にとって在外国民に対する国民審査権の行
使の制限が違憲であることが明白になったのが同判決の時点であったと
しても,前回国民審査は,同判決により違憲状態であると指摘された国
民審査の時点から既に8年以上が経過した後に行われたのであるから,
やはり国会が長期にわたって改正を怠り続けてきたことは明らかである。
したがって,原告らが現実に国民審査権を行使するために新たな立法
が必要であるとした場合,国会は,在外審査制度の実施に必要な諸規定
を整備する法改正をする義務があったのに,これを怠ったのであるから,
当該立法不作為は,国家賠償法1条1項の適用上違法である。
ウ原告らの損害
原告らは,被告の違法行為により,前回国民審査において審査権を行使
することができず,国の意思決定に対し民主的統制を及ぼすことのできる
重要な機会を失った。国民審査は,司法に対して国民に認められた唯一の
民主的な関与方法であり,しかも,国民審査においては,全ての最高裁判
所の裁判官について審査権を行使することができ,民主的統制への影響力
は,自らの選挙区についてのみ投票権を行使できる選挙権に比べても大き
い。さらに,国民審査は,一度その機会を逃せば,同一の裁判官について
年間は審査権を行使することができなくなる。このような重大な権利
である国民審査権を剥奪された原告らの精神的苦痛は,1人当たり金1万
円を下るものではない。
エ被告の主張について
被告は,選挙権と国民審査権の権利の性質の相違,在外選挙制度と在外
審査制度についての議論・経緯の相違を指摘し,国会にとって,平成17
年大法廷判決によっては,在外審査制度を設けないことの違憲性が明らか
になったとはいえない旨主張する。
しかしながら,国民審査権も国民主権を具現化する制度であり,憲法1
条1項の公務員の選任及び罷免権の一部を成す重要な制度である。平成
17年大法廷判決が選挙権そのものにしか適用されず,国民審査権には関
係ないと国会が認識したというのは不合理である。
また,平成17年大法廷判決は,在外選挙制度についての法律案の提出
という事実自体を重視しているというよりも,法律案が提出されたことを
もって,解決が可能であったことが推認され,その事実が重要であること
を指摘しているのであるから,在外審査制度についても,いつの時点でそ
の技術上の問題が解決可能であったかが検討されるべきである。
在外審査制度については,平成17年大法廷判決が言い渡された直後に,
平成28年改正と同様の改正をすることによって,前記⑶(原告らの主張)
のとおり,少なくとも衆議院議員の任期満了の日前60日又は衆議院の解
散の日のいずれか早い日から衆議院総選挙の公示までの日の間に新たに
裁判官が任命されるという例外的な事態が生じた場合以外の場合におい
て,在外審査制度を実施することに何らの技術上の問題があったとはいえ
ない。そして,このような例外的な事態は,最高裁判所の裁判官の任命の
実務的な運用からは考え難いものであり,国民審査の歴史の中で生じたこ
とは一度もない。さらに,このような法改正を経なくとも,電子メール等
の送信技術を使用して地域の主要な在外公館において投票用紙を印刷す
ることや,点字投票の際に認められるように自書式投票を採用することな
ど様々な代替案を採用することも可能であった。
そもそも違憲状態が発生していても,国会が怠慢によってその問題を取
り上げず,十分な討議や検討をしなかった場合に,国家賠償が認められな
くなるというのは不合理である。被告は,平成年や平成18年に政府
内で検討されたという技術上の問題の解消や代替案の採用について,具体
的にどのような調査,検討等をしたのか,それがなぜ実現されなかったの
かといった具体的な理由を明らかにすることなく,単に国会に法律案が提
出されなかったことのみを指摘するが,これは,具体的な調査,検討等を
進めることなく,長期間にわたってこれを放置したからにすぎない。
(被告の主張)
ア国家賠償法1条1項にいう「違法」とは,国又は公共団体の公権力の行
使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背
することをいう。したがって,公務員の職務行為が同項の適用上違法の評
価を受けるのは,当該公務員が,職務上通常尽くすべき注意義務を果たす
ことなく,漫然と当該行為をしたと認め得るような事情がある場合に限ら
れる。
イ投票用紙の不交付が違法でないこと
前記⑴(被告の主張)のとおり,国民審査制度について,憲法は,その
具体的な在り方の定めを広く国会の立法政策に委ねており,これを受けた
国民審査法は,我が国の領域主権の及ばない国外における審査を予定せず,
「在外選挙人名簿」に関する規定も設けていない。したがって,国民審査
法上,在外国民が国民審査において投票することは認められておらず,前
回国民審査において中央選挙管理会が原告らに審査用紙を交付しなかった
ことは,同法に基づく取扱いとして誤りがなく,その職務上通常尽くすべ
き注意義務に違反したということはできないから,国家賠償法1条1項の
適用上違法となる余地はない。
ウ立法不作為が違法でないこと
前記のような国家賠償法1条1項の意義からすれば,国会議員の立法行
為(立法不作為も含む。)が同項の適用上違法となるかどうかは,国会議
員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務
に違背したかどうかの問題であって,当該立法等の内容の違憲性の問題と
は区別されるべきものである。そして,国会議員は,立法に関しては,原
則として,国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり,個別の
国民に対応した関係での法的義務を負うものではない。したがって,国会
議員の立法行為は,立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにも
かかわらず,あえて当該立法を行うというごとき,容易に想定し難いよう
な例外的な場合でない限り,同項の適用上,違法の評価を受けないものと
いうべきである。具体的には,例えば,立法の内容又は立法不作為が国民
に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な
場合や,国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所
要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかか
わらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などの極め
て例外的な場合に限り,国会議員の立法行為又は立法不作為は,同項の適
用上違法の評価を受けるものというべきである。
前記⑶(被告の主張)のとおり,在外審査制度を設けないことは,平成
28年改正の前後を問わず,憲法の諸規定に違反するものではないから,
国家賠償法1条1項の適用上違法となる余地はない。
エ原告らの主張について
原告らは,平成17年大法廷判決の存在を根拠に,同判決の時点におい
て在外審査制度を設けないことの違憲性が明らかになった旨主張する。
そもそも在外審査制度を設けないことは,憲法の諸規定に違反しないも
のであるが,この点を措くとしても,平成17年大法廷判決で問題とされ
た国政選挙における選挙権は,国民主権に立脚する我が国において,国民
の国政への参加の機会を保障する基本的権利であり,議会制民主主義の根
幹を成す権利であるのに対し,国民審査は,最高裁判所の裁判官に対する
「国民罷免手続又は国民解職手続」であり,選任ではなく,「リコール(国
民解職)」の性質を有するものである。なお,原告らは,平成年の公
職選挙法改正の審議の際に,政府委員が選挙権と審査権を完全に連動した
ものとする見解を示した旨主張するものの,政府委員は,在外国民が衆議
院議員の選挙に参加できないことの結果として国民審査にも参加できな
い旨述べたにすぎず,選挙権と国民審査権を完全に連動したものとする見
解は採っていない。したがって,平成17年大法廷判決の事案と本件とで
は,問題とされた権利についての憲法上の位置付けが異なる。
また,平成17年大法廷判決は,その判示に照らし,昭和9年に在外
国民の選挙権行使を可能とするための法律案が内閣によって国会に提出
されながら廃案となり,しかも,その後年以上の間,何らの立法措置
も講じられなかったという経緯を非常に重視して,国家賠償法1条1項の
適用上,違法の評価を受ける例外的な場合に当たると判断したことは明ら
かである。これに対し,在外審査制度については,平成年の公職選挙
法改正の際の審議において,在外審査制度を認めることとはしない理由に
ついての質疑が若干されたことはあるが,国民審査の執行について責任を
負う内閣が,在外国民の審査権の行使を認める上での問題の解決が可能で
あることを前提に,在外国民の投票を可能にするための法律案を提出した
ことはなく,そのような法律案が国会で審議されたことは一度もない。さ
らに,政府・国会関係以外を見ても,日本弁護士連合会による要望書の末
尾において,在外審査制度を設けるべきである旨の指摘がされたことなど
はあるが,在外選挙制度と比べて世論等の動向は明らかに乏しい。かかる
経緯を比較しても,本件は平成17年大法廷判決の事案とは全く異なって
いる。
したがって,平成17年大法廷判決の存在を根拠に,同判決の時点にお
いて在外審査制度を設けないことの違憲性が明らかになったとは到底い
うことができず,原告らの主張は理由がない。
第3当裁判所の判断
1本件地位確認の訴えが適法か否か(争点⑴)について
⑴第1事件原告らは,本件地位確認の訴えを公法上の法律関係に関する確認
の訴え(行政事件訴訟法4条)として提起しているところ,このような訴え
が適法であるというためには,その対象が,裁判所法3条1項にいう「法律
上の争訟」に当たることを要する。そして,ここにいう法律上の争訟とは,
当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,
それが法令の適用により終局的に解決することができるものをいうと解すべ
きである(最高裁昭和39年(行ツ)第61号同41年2月8日第三小法廷
判決・民集巻2号196頁,最高裁昭和1年(オ)第749号同6
年4月7日第三小法廷判決・民集3巻3号443頁,最高裁平成年(行
ツ)第239号同14年7月9日第三小法廷判決・民集6巻6号1134
頁等参照)。
⑵ア憲法は,天皇が,内閣の指名に基づいて,最高裁判所の長たる裁判官を
任命し(6条2項),最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官は,内閣で
これを任命する旨(79条1項)定める一方,最高裁判所の裁判官の任命
は,その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し,
その後年を経過した後初めて行われる衆議院議員総選挙の際更に審査
に付し,その後も同様とする旨定め(同条2項),最高裁判所の裁判官に
ついて国民審査の制度を設け,国民審査において,投票者の多数が裁判官
の罷免を可とするときは,その裁判官は,罷免される旨定めている(同条
3項)。これらの定めからすれば,国民審査は,最高裁判所の裁判官の解
職の制度であると解される(最高裁昭和24年(オ)第332号同27年
2月日大法廷判決・民集6巻2号122頁,最高裁昭和39年(行ツ)
第7号同40年9月日第二小法廷判決・裁判集民事80号27
頁,最高裁昭和46年(行ツ)第6号同47年7月日第三小法廷判決・
裁判集民事6号633頁等参照)。
イまた,憲法は,主権が国民に存することを宣言し(前文,1条),その
上で,公務員の選定及び罷免の権利を国民固有の権利としている(条
1項)。そして,解職の制度である国民審査制度は,最高の司法機関であ
り,一切の法律,命令,規則又は処分が憲法に適合するかしないかの終局
的な決定をするという重要な権限を有する最高裁判所の裁判官の任命に
民主的統制を及ぼす趣旨の制度であることは明らかであり,国民審査権は,
憲法条1項の定める国民固有の権利である公務員の選定及び罷免の
権利のうちの一つというべきである。
⑶ア次に,憲法は,前記⑵アのとおり,最高裁判所の裁判官の任命を国民審
査に付す場合と,投票の結果裁判官が罷免される場合を定めるほかは,審
査に関する事項は,法律でこれを定める旨規定する(79条4項)にとど
まり,上記の各場合を除き,国民審査を具体的にどのような制度とするか
については,広く立法政策に委ねているものと解される。
イ憲法79条4項の規定を受けて国民審査に関する事項を定めた国民審査
法は,衆議院議員の選挙権を有する者は審査権を有する旨定めている(4
条)。この定めは,審査権が憲法条1項にいう国民固有の権利である
公務員の選定及び罷免の権利の一つであることを受けて規定されたもの
とはいえるものの,その文言や,国民審査法に他に投票の方法等に関する
定めがあることからすれば,あくまで審査権を有する者の資格について定
めたものにすぎず,同法4条により直ちに具体的な審査権を行使すること
ができる地位が発生するものと解することはできない。
そして,国民審査法は,投票の方法等に関する定めの一つとして,国民
審査には公職選挙法に規定する選挙人名簿で衆議院議員総選挙について
用いられるものを用いる旨定める(8条)ところ,同法は,選挙人名簿と
在外選挙人名簿を異なるものとして明らかに区別しており(30条の2第
1項),在外選挙人名簿は選挙人名簿の一部ではなく,国民審査法8条の
選挙人名簿に在外選挙人名簿が含まれると解する余地がないことは明ら
かである。さらに,同法の他の規定をみても,審査は,全都道府県の区域
を通じて行い(3条),罷免を可とする投票の数が罷免を可としない投票
の数より多い裁判官は,罷免を可とされたものとするが,投票の総数が公
職選挙法22条1項又は3項の規定による選挙人名簿の登録が行われた
日のうち審査の日の直前の日現在において国民審査法8条の選挙人名簿
に登録されている者の総数の0分の1に達しないときは,この限りで
はないとしている(32条)一方,選挙人名簿に登録されない在外国民の
国民審査に関する規定は見当たらないことからすれば,同法は在外審査制
度を想定していないといわざるを得ない。
このようなことからすれば,国民審査法は,在外国民につき,公職選挙
法の定める在外選挙人名簿を用い,又はこれに相当するものを調製して用
いることにより国民審査権を行使することを認めるという立法政策を採
るものでないことは明らかである。そして,憲法79条4項によれば,在
外審査制度を創設する場合に,在外選挙人名簿を用いたものとするか否か
といった制度の枠組みについて,国会の判断に委ねられていることにも鑑
みれば,特定の条項を違憲無効とすることも含め,国民審査法その他の法
令を解釈することによって,在外国民について国民審査権を行使すること
ができる具体的な地位を導き出すことはできないというべきである。
ウ以上によれば,第1事件原告らが確認を求める「次回の国民審査におい
て審査権を行使することができる地位」は,現行の法令の解釈によって導
き出すことのできるものではなく,国会において,在外国民について審査
権の行使を可能とする立法を新たに行わなければ,具体的に認めることの
できない法的地位であるといわざるを得ない。
そうすると,本件地位確認の訴えに係る紛争は,法令の適用により終局
的に解決できるものではなく,裁判所法3条1項にいう法律上の争訟には
当たらない。
⑷したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件地位確認の訴
えは,不適法であるといわざるを得ない。
2本件違法確認の訴えが適法か否か(争点⑵)について
第1事件原告らは,本件違法確認の訴えをいわゆる無名抗告訴訟として提起
しているものと解されるところ,上記1で検討したところに照らせば,第1事
件原告らに国民審査権の行使をさせないことが違法であることを確認したとし
ても,これによって国民審査権を行使することができる法的地位が具体的に認
められるわけではない。そうすると,本件違法確認の訴えは,要するに,具体
的な紛争を離れ,国民審査法が在外国民に国民審査権の行使を認めていない点
が違法であることについて抽象的に確認を求めるものと解され,当事者間の具
体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争を対象とするものとはいえ
ないから,本件違法確認の訴えに係る紛争は,裁判所法3条1項にいう法律上
の争訟には当たらない。
これに対し,第1事件原告らは,本件違法確認の訴えは,あくまで次回の国
民審査において,在外国民である第1事件原告らに国民審査権の行使をさせな
いことが違法であることの確認を求めるものであり,抽象的に法令の違法・違
憲や立法不作為の違法の確認を求めるものではない旨主張する。しかしながら,
国民審査法を始めとする国民審査制度の関係法令は,広く一般的に適用される
ものであり,次回の国民審査を迎えていない現時点において,第1事件原告ら
との関係でのみ違法性の有無を判断しようとしても,当該法律の違法性を抽象
的に判断することと実質において異ならないこととなるから,上記主張は理由
がない。
したがって,本件違法確認の訴えは不適法であるといわざるを得ない。
3在外国民に対する国民審査権の行使制限が違憲,違法であるか否か(争点⑶)
及び原告らの国家賠償請求の成否(争点⑷)について
⑴認定事実
証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア在外選挙制度に関する立法の状況等
平成年法律第47号による公職選挙法の改正前においては,在外
国民は選挙権の行使ができない状態に置かれていたところ,昭和8年
3月24日,衆議院内閣委員会において,「海外に在留する邦人が選挙
権の行使ができるよう,早急に適切な措置を講ずること」という附帯決
議がされた(乙)。
内閣は,第1回国会に対し,昭和9年4月27日,在外選挙制
度の創設に係る「公職選挙法の一部を改正する法律案」を提出したが,
同法律案は,昭和61年6月2日の衆議院の解散により廃案となった(乙
)。
内閣は,平成9年6月日の閣議決定を経て,第140回国会に対
し,在外選挙制度の創設に係る「公職選挙法の一部を改正する法律案」
を提出した。同法律案は,審議の過程で一部修正された後,最終的に平
成年4月24日に第142回国会の参議院本会議において可決され,
法律として成立し,同年月6日,平成年法律第47号として公布
され,平成12年月1日までに全て施行された。この法律により,在
外選挙人名簿が調製され,在外国民が衆議院及び参議院の各議員選挙に
つき投票できるようになったが,平成18年法律第62号による改正前
の公職選挙法附則8項により,在外選挙制度の対象となる選挙について
は,当分の間衆議院及び参議院の比例代表選出議員の選挙に限定するこ
ととされていた(以上につき,甲の1,乙,顕著な事実)。
最高裁判所は,平成17年9月14日,(神8年月日に施
行された衆議院議員の総選挙当時,公職選挙法が,在外国民が国政選挙
において投票するのを全く認めていなかったことは,憲法条1項及
び3項,43条1項並びに44条ただし書に違反する,∧神18年法
律第62号による改正前の公職選挙法附則8項の規定のうち,在外国民
に国政選挙における選挙権の行使を認める制度の対象となる選挙を当分
の間衆議院及び参議院の比例代表選出議員の選挙に限定する部分は,遅
くとも,本判決言渡し後に初めて行われる衆議院議員の総選挙又は参議
院議員の通常選挙の時点においては,憲法条1項及び3項,43条
1項並びに44条ただし書に違反する旨の判決(平成17年大法廷判決)
を言い渡した(顕著な事実)。
平成17年大法廷判決を受けて行われた平成18年法律第62号によ
る公職選挙法の改正により,衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院
選挙区選出議員の選挙についても,在外選挙制度の対象とされた(甲1
0の1,顕著な事実)。
イ在外審査制度に関する議論の状況等
前,平成年4月23日の参議院地
方行政・警察委員会において,在外審査制度について質疑があり,政府
委員の1人は,国民審査は,選挙人名簿に基づいてやるということにな
っており,在外邦人は,衆議院選挙に今参加できていないことの結果と
して国民審査にも参加できないということになっているが,どちらかと
いうと選挙権の行使ができないというところに原因があり,その限りに
おいてはやむを得ない旨答弁した。また,政府委員の1人は,国民審査
は記号式投票で行われており,在外国民に投票を認めるとすると,審査
の告示後,投票用紙を印刷して国外に交付することになる一方,有権者
の方は,投票日の日前までには投票用紙を送付しなければならず,ほ
とんど審査期間が確保できず,技術的に実施不可能に近いというような
状況であり,現段階では見送ることにした旨答弁し,これに対し,質問
をした委員は,できる限り速やかに改正すべきであるとの意見を表明し
た(甲6)。
日本弁護士連合会は,平成14年7月30日付けで,衆議院及び参議
院の各議長,内閣総理大臣,法務大臣,外務大臣並びに総務大臣に対し,
在外国民が国民審査権を全く行使することができないことが人権侵害に
当たるとして,法改正等の措置を執るよう勧告した(甲9)。
東京地方裁判所は,平成23年4月26日,在外国民である原告らが
国民審査の投票をすることができる地位の確認等を求めた事案において,
当該在外国民らの訴えを一部却下し,その余の請求を棄却する判決を言
い渡した。同判決は,理由中の判断において,当該事案で問題とされた
国民審査が行われた平成21年8月30日時点で,在外審査制度の創設
に係る立法措置を執らないという不作為によって在外国民が国民審査権
を行使することができないという事態を生じさせていたことの憲法適合
性については,重大な疑義がある旨判示した上で,憲法上要請される合
理的期間内に事態の是正がされなかったものとまでは断定することがで
きないとして,憲法に違反するものとまではいえない旨判示した(平成
23年東京地裁判決。顕著な事実)。
日本弁護士連合会は,平成24年3月28日付けで,衆議院及び参議
院の各議長,内閣総理大臣,法務大臣,外務大臣並びに総務大臣に対し,
在外国民が国民審査権を行使することができないことが著しい人権侵害
に該当するとして,法改正等の措置を執るよう勧告した(甲の1か
ら7まで)。
現在まで,在外審査制度の創設に係る法律案が国会に提出され,審議
されたことはない(弁論の全趣旨)。
⑵在外国民に対する国民審査権の行使制限の憲法適合性等について
ア前記1⑵のとおり,憲法79条2項及び3項に根拠を有する解職の制度
である国民審査制度は,最高の司法機関であり,一切の法律,命令,規則
又は処分が憲法に適合するかしないかの終局的な決定をするという重要な
権限を有する最高裁判所の裁判官の任命に民主的統制を及ぼそうとしたも
のであることは明らかであり,国民審査権は,憲法条1項の定める国
民固有の権利である公務員の選定及び罷免の権利のうちの一つというべき
であるから,公務員の選挙についての成年者による普通選挙の保障(同条
3項),両議院の議員の選挙人の資格についての差別の禁止(憲法44条
ただし書)及び投票の機会の平等の要請(憲法14条1項)の趣旨は,国
民審査(憲法79条2項,3項)についても及ぶものと解される。したが
って,憲法は,国民に対し,国民審査において審査権を行使する機会,す
なわち投票をする機会を平等に保障しているものと解するのが相当である。
以上のような憲法の趣旨にかんがみれば,国民の審査権又はその行使を
制限することは原則として許されず,これを制限するためには,そのよう
な制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないと
いうべきである。そして,そのような制限をすることなしには国民審査の
公正を確保しつつ審査権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困
難であると認められる場合でない限り,上記のやむを得ない事由があると
はいえず,このような事由なしに国民の審査権の行使を制限することは,
憲法14条1項,条3項及び44条ただし書の趣旨に反することとな
り,審査権を認めた憲法条1項並びに79条2項及び3項に違反する
こととなるものといわざるを得ない。また,このことは,国が審査権の行
使を可能にするための所要の措置を執らないという不作為によって国民が
審査権を行使することができない場合についても,同様である。
イそこで,国民審査法が,前回国民審査当時,在外国民の審査権の行使を
認めていなかったことが,憲法の上記各規定に違反するか否かについて検
討する。
被告は,衆議院議員及び参議院議員の選挙と異なり,国民審査は,1
名それぞれに任期の異なる裁判官を対象とし,衆議院議員総選挙の機
をとらえ,記号式投票を用いて行うこととされており,平成28年改正
の前後を問わず,投票用紙の調製の問題や在外公館への投票用紙の送付
に要する期間等を考慮すると,一定の審査期間を確保しつつ国民審査の
期日までに作業を完了して開票に間に合わせることは実際上不可能であ
り,在外審査制度を設けないことについて技術上の問題という合理的な
理由がある旨主張する。そして,このほかに,在外国民に国民審査権の
行使を認めないことについて,やむを得ないと認められる事由に該当し
得るような事情は見当たらない。
確かに,都道府県の選挙管理委員会の調製した,審査に付される裁判
官の氏名が印刷された投票用紙を使用し,罷免を可とする裁判官に×の
記号を記載するという現行の記号式投票(国民審査法14条2項,
条1項)を前提とする限りにおいては,審査の告示前に投票用紙を印刷
することが可能となった平成28年改正後においても,被告が主張する
ような技術上の問題が解消されたとはいえない。すなわち,平成28年
改正後は,中央選挙管理会が,衆議院議員の任期満了の日前60日に当
たる日又は衆議院の解散の日のいずれか早い日以後直ちに,審査予定裁
判官の氏名等を都道府県の選挙管理委員会に通知しなければならないこ
ととなり(同法4条の2第1項),その通知後,投票用紙の調製をする
ことが可能となったものの,その後審査の告示までの間に裁判官が任命
される可能性がないとはいえず,審査の告示の日に近接して任命された
場合,審査の告示後に投票用紙の調製をしていた平成28年改正前と同
様に,投票用紙の調製や送付について技術上の問題がないとまではいえ
ないことになる。
しかしながら,憲法は,国民審査権の行使につきどのような方法を用
いるかについて,法律に委ねており(79条4項),現行の記号式投票
以外の方法を採用することも可能である。記号式投票は,審査人に審査
対象の裁判官全員の氏名を知らせるとともに,なるべく簡易な方法で投
票ができるようにする点で,合理性を有するものの,国民審査権が憲法
条1項の定める公務員の選定及び罷免の権利の一つであり,司法に
対する民主的統制の方法として憲法上認められた重要な権利であること
に鑑みれば,他の投票方法を採用し,又は併用することにより在外審査
制度の実施が可能となるにもかかわらず,記号式投票による投票が不能
ないし著しく困難であるという理由により一切投票を認めないことは,
不合理であるといわざるを得ない。実際にも,国民審査法16条1項は,
「点字による審査の投票を行う場合においては,審査人は,投票所にお
いて,投票用紙に,罷免を可とする裁判官があるときはその裁判官の氏
名を自ら記載し,罷免を可とする裁判官がないときは何等の記載をしな
いで,これを投票箱に入れなければならない。」として,点字による審
査につき自書式投票を採用しており,既に同法の下においても,現行の
記号式投票を維持することにより審査権の行使が技術的に不能ないし著
しく困難となるような場合において,他の合理的な投票方法を用いるこ
とにより審査権の行使が可能となるときには,その方法を採用している
例が存在しているのである。
このようなことに加えて,通信手段が地球規模でますます著しい発達
を遂げ,在外国民に対して情報を適正に伝達することについての困難が
より少なくなったこと,衆議院議員及び参議院議員の選挙について在外
選挙制度が導入され,何度も繰り返し実施されてきたことなど,在外国
民をめぐる社会の状況が国民審査制度の創設当時と大きく変化したこと
をも考慮すれば,国民審査の公正な実施に留意しつつ,在外国民による
国民審査の実施を可能とする立法措置を執ることが事実上不能ないし著
しく困難であったとはいい難い。少なくとも,現行の記号式投票の実施
に係る技術上の問題を解消するという観点からは,例えば,点字による
国民審査の投票方法として採用され,在外選挙制度においても創設以来
多数回の選挙において行われてきた投票方法である自書式投票を採用す
るなどの方法により,在外審査制度を実施することは可能であったとい
うべきである。
これに対し,被告は,国民審査において自書式投票が採用されると,
連記投票となることが想定され,審査人が裁判官の氏名を自書するのに
時間及び手間を要し,投票所における投票が滞ることになりかねないば
かりか,記載の趣旨が不分明であるなどの疑問票が増加し,開票事務が
滞ることになりかねないといった弊害がある旨主張する。しかしながら,
審査人が時間及び手間を要し,投票所における投票が滞ることがあり得
るとしても,例えば,投票所における投票用紙の記載場所を多数設ける
ことなどにより対処することが可能と考えられ,また,疑問票が増加し,
開票事務が滞るとの点については,自書式投票が採用されている国政選
挙の場合と比較して,投票用紙に記載する氏名等の数の多寡はあるもの
の,問題状況が大きく変わるとは考えにくい。したがって,被告の主張
を踏まえても,在外国民の国民審査権の行使を認めることが事実上不能
ないし著しく困難であったということはできない。
以上によれば,前回国民審査において在外国民が審査権を行使するこ
とを認めないことについて,やむを得ない事由があったとは到底いうこ
とができないから,国民審査法が,前回国民審査当時,在外国民であっ
た原告らの審査権の行使を認めていなかったことは,国民に対して審査
権を認めた憲法条1項並びに79条2項及び3項に違反するもので
あったというべきである。
ウなお,原告らは,国民審査法が,在外国民であった原告らの審査権の行
使を認めていなかったことが,外国移住の自由する事由を保障する憲法2
2条2項にも違反する旨主張するものの,在外国民に審査権の行使を認め
ないことは,直接外国移住の自由を制限するものではないから,同項に違
反するとはいえない。
また,国民審査法4条があくまで審査権を有する者の資格について定め
たものにすぎないことは前記1⑶イのとおりであるから,前回国民審査当
時,在外国民であった原告らの審査権の行使が認められなかったことが,
同条に違反するということはできない。
⑶原告らの国家賠償請求の成否
ア国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員
が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損
害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずることを規
定するものと解される(最高裁昭和3年(オ)第1240号同60年1
1月21日第一小法廷判決・民集39巻7号12頁参照)。そして,職
務上の法的義務に違背していると認められるには,職務上通常尽くすべき
注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情が
ある場合であることが必要である(最高裁平成元年(オ)第930号,第
93号同年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁
参照)。
イ審査用紙不交付が違法か否か
中央選挙管理会は,前回国民審査において,在外国民であった原告らに
対し,投票用紙を交付していない(弁論の全趣旨)。しかしながら,前回
国民審査当時,国民審査法その他の関係法令において,在外国民が国民審
査権を行使することは認められておらず,中央選挙管理会が原告らに対し
投票用紙を交付しなかったことは,法律に従ったものであり,中央選挙管
理会の職員らがその職務上通常尽くすべき注意義務に違反したとはいえ
ないから,国家賠償法1条1項の適用上違法とはいえない。
ウ立法不作為の適否等
国会議員の立法行為又は立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違
法となるかどうかは,国会議員の立法過程における行動が個々の国民に
対して負う職務上の法的義務に違反したかどうかの問題であり,立法の
内容の違憲性の問題とは区別されるべきものである。そして,上記行動
についての評価は原則として国民の政治的判断に委ねられるべき事柄で
あって,仮に当該立法の内容が憲法の規定に違反するものであるとして
も,そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに国家賠償法
1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。
もっとも,法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利利益
を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであ
ることが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわた
ってその改廃等の立法措置を怠る場合などにおいては,国会議員の立法
過程における行動が上記職務上の法的義務に違反したものとして,例外
的に,その立法不作為は,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受
けることがあるというべきである(最高裁昭和3年(オ)第1240
号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号12頁,
平成17年大法廷判決,最高裁平成年(オ)第79号同27年
12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁参照)。
在外国民も国民審査において投票する機会を与えられることを憲法上
保障されていたのであり,この権利行使の機会を確保するためには,在
外審査制度を設けるなどの立法措置を執ることが必要不可欠である。し
かるに,このような措置が講じられなかった理由については,平成
年4月23日の参議院地方行政・警察委員会において,政府委員が,在
外国民が国民審査権を行使することができないのは,衆議院議員の選挙
権の行使ができないところに原因があり,その限りにおいてはやむを得
ないなどと答弁する一方,他の政府委員は,記号式投票を前提とする技
術上の問題を理由に在外審査制度の導入を見送ることとした旨答弁して
おり,この問題に関する当時の政府の認識は上記のとおりであったと認
められる。
しかしながら,在外国民の国政選挙における選挙権の行使については,
平成年法律第47号による公職選挙法の改正により,在外選挙制度
が創設され,当初は限定的であったとはいえ,在外国民も衆議院議員の
総選挙において選挙権を行使することが可能となったところである。ま
た,国民審査権の行使の方法として,記号式投票が唯一の方法でないこ
とは明らかであり,在外選挙制度が創設された平成年当時において
も,国民審査法は点字による投票の場合に自書式投票で行う旨規定して
いたほか,新たに創設された在外選挙制度の下においても,両議員の比
例代表選出議員について,自書式投票による選挙が繰り返し実施されて
きたものである。さらに,平成14年には,日本弁護士連合会により,
両議院の議長等に対し,在外審査制度を創設しないことは人権侵害であ
る旨の勧告がされていた事実も存する。
このような状況の下で,平成17年大法廷判決は,平成8年月2
0日に施行された衆議院議員の総選挙当時,公職選挙法が,在外国民が
国政選挙において投票するのを全く認めていなかったことは,憲法
条1項及び3項,43条1項並びに44条ただし書に違反する旨判示し
たのであるから,国会としては,同判決が言い渡された平成17年9月
14日の時点において,在外国民に対し,公務員の選定及び罷免の権利
の一つであり,司法に対する民主的統制の方法として憲法上認められた
重要な権利である国民審査権を行使するのを認めていないことについて,
技術上の問題を解消する方法(前記⑵イ参照)を見いだし得る状況にあ
ったことを併せ考えれば,憲法に違反するに至っていたものといえるこ
とについて,十分に認識し得たものというべきである。
もっとも,この点に関し,被告は,平成17年大法廷判決が,平成8
年の衆議院議員総選挙当時,在外選挙制度が設けられていなかったこと
について,昭和9年に在外国民の選挙権行使を可能とするための法律
案が内閣によって国会に提出されながら廃案となり,その後長期にわた
り何らの立法措置も講じられなかったという経緯を重視して,国家賠償
法上違法と判断したのに対し,在外審査制度については,内閣が在外国
民の審査権行使を認める上での問題の解決が可能であることを前提に,
在外国民の投票を可能にするための法律案を提出したことや,そのよう
な法律案が国会で審議されたことはないことを指摘するほか,国政選挙
における選挙権と国民審査権の性質や憲法上の位置づけの相違を指摘し
た上で,平成17年大法廷判決の存在を根拠に,同判決の時点において
在外審査制度を設けないことの違憲性が明らかになったとはいえない旨
主張する。
そこで検討すると,平成17年大法廷判決の後,平成23年東京地裁
判決(前記)は,現行の記号式投票を前提とした場合に,在外審
査制度の創設に当たって解決すべき技術上の問題がなお存することを認
めつつも,上記のような自書式投票が解決方法の一つであることを指摘
した上で,一定の程度における対処は可能であるとして,少なくとも当
該事案で問題とされた国民審査が行われた平成21年8月30日の時点
において在外国民が審査権を行使することができないことの憲法適合性
につき「重大な疑義があった」旨判示している(なお,同判決は,結論
において憲法に違反するものとまではいえないと判示しているが,同日
の時点においては,憲法上要請される合理的期間内に是正されなかった
ものとまでは断定することができないことをその根拠としており,同日
の時点以前に憲法の規定に適合しない状態に至っていたことを実質的に
含意するものと理解される。)。在外選挙制度を認めないことを違憲と
する平成17年大法廷判決が言い渡された時点で,衆議院議員総選挙の
際に行われる国民審査を在外国民に認める場合の技術上の問題について
解消方法を見いだし得る状況にあった以上,国会において,在外審査制
度を設けないことが憲法に違反するに至っていたものといえることにつ
いて十分に認識し得たというべきであるが,その後,平成23年東京地
裁判決において,在外審査制度の実施における技術上の問題点と,それ
が解消され得るものであることを具体的に明らかにした上で,平成21
年8月30日の時点で在外審査制度が認められないことの憲法適合性に
ついて上記のとおり判示する司法判断が示されたこと(ちなみに,同判
決は確定し,これと異なる司法判断はその後現れていない。)により,
遅くとも同判決が言い渡された平成23年4月26日の時点においては,
在外審査制度を創設しないことが憲法に違反するに至っていたことは明
白となっていたものということができる。そして,このことは,内閣が
在外審査制度の創設に係る法律案を提出したり,国会においてそのよう
な法律案が審議されたりしたことがなかったことを考慮しても,異なる
ものではないというべきであり,また,国民審査権が国政選挙の選挙権
と性質や位置付けを異にすることも,上記の結論を左右するものではな
いというべきである。
次に,在外審査制度を創設するに当たっては,制度の基本的な枠組み
として在外選挙人名簿への登録を基礎とする方式を採用するか否か,ま
た,在外審査制度における技術上の問題を踏まえて,どのような投票方
法を採用するのが最も適切であるかといった,多くの事項について検討
する必要があることから,一定の期間を要することは否定し得ないとこ
ろである。しかしながら,平成17年大法廷判決後,平成23年東京地
裁判決が,平成21年8月30日時点で在外審査制度の創設に係る立法
措置を執らないという不作為によって在外国民が国民審査権を行使する
ことができないという事態を生じさせていたことの憲法適合性について,
重大な疑義がある旨判示した上に,その後平成24年にも,日本弁護士
連合会が衆議院及び参議院の各議長等に対し,在外審査制度の創設を勧
告したことがあったにもかかわらず,国会において,在外審査制度の創
設について何らの措置も執らないまま,平成23年東京地裁判決から約
6年半,平成17年大法廷判決からは約12年もの期間が経過する状況
の下で,前回国民審査を迎えたことから,原告らが国民審査権を行使す
ることができない事態に至っているところ,そのことについて正当な理
由があることはうかがわれない。そうすると,このような長期間にわた
る立法不作為は,前記のような例外的な場合に当たり,国家賠償法1条
1項の適用上違法の評価を受けるというべきであり,また,この立法不
作為について,過失が認められることも明らかである。
エ損害について
上記の違法な立法不作為の結果,原告らは,前回国民審査に際して,実
際に国民審査の投票を行う意向の下に在外公館又は投票所に赴き,あるい
は郵便投票の方法により衆議院議員選挙の投票を行ったにもかかわらず,
国民審査の投票をすることができず(甲1からまで,弁論の全趣旨),
精神的苦痛を被ったものと認められる。そして,本件訴訟において在外国
民の国民審査権の行使を制限することが違憲であると判断され,それによ
って,前回国民審査において投票をすることができなかったことにより原
告らが被った精神的苦痛は相当程度回復されるものと考えられることな
どの事情を総合勘案すると,原告らが被った精神的苦痛を慰謝するには,
それぞれ金000円を下らないというべきである。
4結論
以上の次第で,第1事件原告らの本件地位確認の訴え及び本件違法確認の訴
えはいずれも不適法であるから,これらを却下することとし,原告らの国家賠
償請求は,主文2項の限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由
がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官 森英明
裁判官 小川弘持
裁判官 三貫納有子
(別紙1)
指定代理人目録
松本亮一,齋藤聡史,中尾正英,松尾淳一
以上
(別紙2)
関係法令の定め
第1憲法の定め
114条1項
すべて国民は,法の下に平等であって,人種,信条,性別,社会的身分又は
門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない。
2条
⑴1項
公務員を選定し,及びこれを罷免することは,国民固有の権利である。
⑵3項
公務員の選挙については,成年者による普通選挙を保障する。
322条2項
何人も,外国に移住し,又は国籍を離脱する自由を侵されない。
444条
両議院の議員及びその選挙人の資格は,法律でこれを定める。但し,人種,
信条,性別,社会的身分,門地,教育,財産又は収入によって差別してはなら
ない。
79条
⑴2項
最高裁判所の裁判官の任命は,その任命後初めて行われる衆議院議員総選
挙の際国民の審査に付し,その後年を経過した後初めて行われる衆議院
議員総選挙の際更に審査に付し,その後も同様とする。
⑵3項
前項の場合において,投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは,そ
の裁判官は,罷免される。
⑶4項
審査に関する事項は,法律でこれを定める。
第2国民審査法の定め
12条
⑴1項
審査は,各裁判官につき,その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の
期日に,これを行う。
⑵2項
各裁判官については,最初の審査の期日から年を経過した後初めて行
われる衆議院議員総選挙の期日に,更に審査を行い,その後も,また同様と
する。
23条
審査は,全都道府県の区域を通じて,これを行う。
34条
衆議院議員の選挙権を有する者は,審査権を有する。
44条の2
⑴1項
中央選挙管理会は,衆議院議員の任期満了の日前60日に当たる日又は衆
議院の解散の日のいずれか早い日以後直ちに,同日以後初めて行われる衆議
院議員総選挙の期日に審査に付されることが見込まれる裁判官(以下この条
において「審査予定裁判官」という。)の氏名その他政令で定める事項(審査
予定裁判官がない場合には,その旨)を都道府県の選挙管理委員会に通知し
なければならない。この場合において,審査予定裁判官が二人以上あるとき
は,中央選挙管理会がくじで定めた順序により,通知しなければならない。
⑵2項
前項又はこの項の規定による通知をした後次条1項の規定による告示(以
下「審査の告示」という。)までの間に裁判官が任命された場合には,中央選
挙管理会は,直ちに,その旨及びその時における審査予定裁判官の氏名その
他政令で定める事項を都道府県の選挙管理委員会に通知しなければならない。
(以下略)
⑶項
前各項の規定は,中央選挙管理会が衆議院議員の任期満了の日前60日に
当たる日以後に1項の規定による通知をした場合において,当該通知をした
後衆議院議員の任期満了の日までの間に衆議院が解散されたときについて準
用する。この場合において,同項中「衆議院議員の任期満了の日前60日に
当たる日又は衆議院の解散の日のいずれか早い日」とあるのは,「衆議院の解
散の日」と読み替えるものとする。
6条1項
審査は,投票によりこれを行う。
67条
審査の投票区及び開票区は,衆議院小選挙区選出議員の選挙の投票区及び開
票区による。
78条
審査には,公職選挙法(昭和年法律第0号)に規定する選挙人名簿
で衆議院議員総選挙について用いられるものを用いる。
89条
審査に関する事務は,中央選挙管理会が管理する。
914条
⑴1項
投票用紙には,審査に付される裁判官の氏名として通知裁判官の氏名を4
条の2第1項の規定による通知の順序により印刷するとともに,審査に付さ
れる裁判官としてその氏名を印刷する者のそれぞれに対する×の記号を記載
する欄を設けなければならないものとし,都道府県の選挙管理委員会は,別
記様式に準じて投票用紙を調製しなければならない。
⑵2項
前項の規定にかかわらず,4条の2第2項に規定する場合には,投票用紙
には,審査に付される裁判官の氏名として新通知裁判官の氏名を同項の規定
による通知(当該通知が二以上あるときは,その直近のもの)の順序により
印刷するとともに,審査に付される裁判官としてその氏名を印刷する者のそ
れぞれに対する×の記号を記載する欄を設けなければならないものとし,都
道府県の選挙管理委員会は,別記様式に準じて投票用紙を調製しなければな
らない。
条1項
審査人は,投票所において,罷免を可とする裁判官については,投票用紙の
当該裁判官に対する記載欄に自ら×の記号を記載し,罷免を可としない裁判官
については,投票用紙の当該裁判官に対する記載欄に何等の記載をしないで,
これを投票箱に入れなければならない。
16条1項
点字による審査の投票を行う場合においては,審査人は,投票所において,
投票用紙に,罷免を可とする裁判官があるときはその裁判官の氏名を自ら記載
し,罷免を可とする裁判官がないときは何等の記載をしないで,これを投票箱
に入れなければならない。
32条
罷免を可とする投票の数が罷免を可としない投票の数より多い裁判官は,罷
免を可とされたものとする。ただし,投票の総数が,公職選挙法22条1項又
は3項の規定による選挙人名簿の登録が行われた日のうち審査の期日の直前の
日現在において8条の選挙人名簿に登録されている者の総数の0分の1に
達しないときは,この限りでない。
第3公職選挙法の定め
19条1項
日本国民で年齢満18年以上の者は,衆議院議員及び参議院議員の選挙権を
有する。
219条
⑴1項
選挙人名簿は,永久に据え置くものとし,かつ,各選挙を通じて一の名簿
とする。
⑵2項
市町村の選挙管理委員会は,選挙人名簿の調製及び保管の任に当たるもの
とし,毎年3月,6月,9月及び12月(22条及び24条1項において「登
録月」という。)並びに選挙を行う場合に,選挙人名簿の登録を行うものとす
る。
321条
⑴1項
選挙人名簿の登録は,当該市町村の区域内に住所を有する年齢満18年以
上の日本国民(11条1項若しくは2条又は政治資金規正法(昭和23
年法律第194号)28条の規定により選挙権を有しない者を除く。次項に
おいて同じ。)で,その者に係る登録市町村等(当該市町村及び消滅市町村(そ
の区域の全部又は一部が廃置分合により当該市町村の区域の全部又は一部と
なった市町村であって,当該廃置分合により消滅した市町村をいう。3項に
おいて同じ。)をいう。以下この項及び次項において同じ。)の住民票が作成
された日(他の市町村から登録市町村等の区域内に住所を移した者で住民基
本台帳法(昭和42年法律第81号)22条の規定により届出をしたものに
ついては,当該届出をした日。次項において同じ。)から引き続き3箇月以上
登録市町村等の住民基本台帳に記録されている者について行う。
⑵2項
選挙人名簿の登録は,前項の規定によるほか,当該市町村の区域内から住
所を移した年齢満18年以上の日本国民のうち,その者に係る登録市町村等
の住民票が作成された日から引き続き3箇月以上登録市町村等の住民基本台
帳に記録されていた者であって,登録市町村等の区域内に住所を有しなくな
った日後4箇月を経過しないものについて行う。
430条の2
⑴1項
市町村の選挙管理委員会は,選挙人名簿のほか,在外選挙人名簿の調製及
び保管を行う。
⑵2項
在外選挙人名簿は,永久に据え置くものとし,かつ,衆議院議員及び参議
院議員の選挙を通じて一の名簿とする。
⑶3項(平成28年法律第94号による改正前)
市町村の選挙管理委員会は,30条の第1項の規定による申請に基づき,
在外選挙人名簿の登録を行うものとする。
30条の4(平成28年法律第94号による改正前)
在外選挙人名簿の登録は,在外選挙人名簿に登録されていない年齢満18年
以上の日本国民(11条1項若しくは2条又は政治資金規正法28条の規
定により選挙権を有しない者を除く。次条1項において同じ。)で,在外選挙人
名簿の登録の申請に関しその者の住所を管轄する領事官(領事官の職務を行う
大使館若しくは公使館の長又はその事務を代理する者を含む。以下同じ。)の管
轄区域(在外選挙人名簿の登録の申請に関する領事官の管轄区域として総務省
令・外務省令で定める区域をいう。同条1項及び3項において同じ。)内に引き
続き3箇月以上住所を有するものについて行う。
630条の第1項(平成28年法律第94号による改正前)
在外選挙人名簿に登録されていない年齢満18年以上の日本国民で,在外選
挙人名簿の登録の申請に関しその者の住所を管轄する領事官の管轄区域内に住
所を有するものは,政令で定めるところにより,文書で,最終住所の所在地の
市町村の選挙管理委員会(その者が,いずれの市町村の住民基本台帳にも記録
されたことがない者である場合には,申請の時におけるその者の本籍地の市町
村の選挙管理委員会)に在外選挙人名簿の登録の申請をすることができる。
730条の6第1項(平成28年法律第94号による改正前)
市町村の選挙管理委員会は,前条1項の規定による申請をした者が当該市町
村の在外選挙人名簿に登録される資格を有する者である場合には,遅滞なく,
当該申請をした者を在外選挙人名簿に登録しなければならない。
842条1項
選挙人名簿又は在外選挙人名簿に登録されていない者は,投票をすることが
できない。(以下略)
944条1項
選挙人は,選挙の当日,自ら投票所に行き,投票をしなければならない。
46条
⑴1項
衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙以外
の選挙の投票については,選挙人は,投票所において,投票用紙に当該選挙
の公職の候補者一人の氏名を自書して,これを投票箱に入れなければならな
い。
⑵2項
衆議院(比例代表選出)議員の選挙の投票については,選挙人は,投票所
において,投票用紙に一の衆議院名簿届出政党等(86条の2第1項の規定
による届出をした政党その他の政治団体をいう。以下同じ。)の同項の届出
に係る名称又は略称を自書して,これを投票箱に入れなければならない。
⑶3項
参議院(比例代表選出)議員の選挙の投票については,選挙人は,投票所
において,投票用紙に公職の候補者たる参議院名簿登載者(86条の3第1
項の参議院名簿登載者をいう。以下この章から第8章までにおいて同じ。)
一人の氏名を自書して,これを投票箱に入れなければならない。ただし,公
職の候補者たる参議院名簿登載者の氏名を自書することに代えて,一の参議
院名簿届出政党等(同項の規定による届出をした政党その他の政治団体をい
う。以下同じ。)の同項の届出に係る名称又は略称を自書することができる。
49条の2第1項
在外選挙人名簿に登録されている選挙人(当該選挙人のうち選挙人名簿に登
録されているもので政令で定めるものを除く。以下この条において同じ。)で,
衆議院議員又は参議院議員の選挙において投票をしようとするものの投票につ
いては,48条の2第1項及び前条1項の規定によるほか,政令で定めるとこ
ろにより,44条,4条1項,46条1項から3項まで,48条及び次条の
規定にかかわらず,次の各号に掲げるいずれかの方法により行わせることがで
きる。
1号衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙にあってはイに掲げる期
間,衆議院議員又は参議院議員の再選挙又は補欠選挙にあってはロに掲げる
日に,自ら在外公館の長(各選挙ごとに総務大臣が外務大臣と協議して指定
する在外公館の長を除く。以下この号において同じ。)の管理する投票を記
載する場所に行き,在外選挙人証及び旅券その他の政令で定める文書を提示
して,投票用紙に投票の記載をし,これを封筒に入れて在外公館の長に提出
する方法
イ当該選挙の期日の公示の日の翌日から選挙の期日前6日(投票の送致に
日数を要する地の在外公館であることその他特別の事情があると認められ
る場合には,あらかじめ総務大臣が外務大臣と協議して指定する日)まで
の間(あらかじめ総務大臣が外務大臣と協議して指定する日を除く。)
ロ当該選挙の期日の告示の日の翌日から選挙の期日前6日までの間で,あ
らかじめ総務大臣が外務大臣と協議して指定する日
2号当該選挙人の現在する場所において投票用紙に投票の記載をし,これを
郵便等により送付する方法
以上

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