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医科歯科大切りつけ 男に懲役7年判決

 東京医科歯科大学歯学部付属病院(東京・文京)で2017年5月、男性歯科医が刃物で刺された事件で、殺人未遂罪などに問われた無職、渡辺祐介被告(31)の裁判員裁判の判決が13日、東京地裁であった。永渕健一裁判長は「危険性が高く悪質な犯行だ」として、懲役7年(求刑同8年)を言い渡した。
 判決によると、渡辺被告は、40代の男性歯科医が同被告の婚約者と性的関係を持ったことを恨み、17年5月、病院内で歯科医の胸などを牛刀やナイフで突き刺し、全治約3週間の傷を負わせた。
 永渕裁判長は判決理由で「牛刀とナイフで被害者の胸や首を複数回突き刺しており、死亡させる危険性が高い行為であることは明らかだ」として殺意を認定。殺意はなかったとする弁護側の主張を退けた。
(2018/3/13 17:05 日経新聞)

歯科医刺傷で懲役7年=「過度な仕返し」−東京地裁

 東京医科歯科大歯学部付属病院(東京都文京区)で昨年5月、歯科医の男性を包丁などで刺したとして、殺人未遂などの罪に問われた無職渡辺祐介被告(31)の裁判員裁判の判決が13日、東京地裁であった。永渕健一裁判長は「計画性があり悪質な犯行だ」と述べ、懲役7年(求刑懲役8年)を言い渡した。
 弁護側は、顔を傷つけるのが目的で殺意はなかったと訴えたが、永渕裁判長は脇腹の傷が深さ18センチに達していたことなどから殺意を認定。「婚約者と関係を持った男性に憎しみを抱くのは理解できるが、過度な仕返しで短絡的。動機にくむべきところはない」と指摘した。
(2018/03/13-18:03 時事ドットコム)

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平成29年合(わ)第90号
殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
平成30年3月13日宣告東京地方裁判所刑事第4部
主文
被告人を懲役7年に処する。
未決勾留日数中130日をその刑に算入する。
東京地方検察庁で保管中の牛刀1本(平成29年東地領第2209号
符号1),ペティナイフ1本(同領号符号2)及び金属片1個(同領
号符号3)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1その婚約者がAと性的関係を持ったことを知って同人に対する憎しみを抱き,
平成29年5月9日午前10時36分頃,東京都〔以下省略〕の病院において,
同人(当時41歳)に対し,殺意をもって,その左側胸部を牛刀(刃体の長さ
約20センチメートル,平成29年東地領第2209号符号1)で1回突き刺
し,その右頸部等をペティナイフ(刃体の長さ約13センチメートル,同領号
符号2及び3)で数回突き刺すなどしたが,同人に全治まで約3週間を要する
左側胸部刺創等の傷害を負わせたにとどまり,死亡させるに至らなかった
第2業務その他正当な理由による場合でないのに,前記日時場所において,前記
牛刀1本及び前記ペティナイフ1本を携帯した
ものである。
(事実認定の補足説明)
1本件の争点は,判示第1の殺意の有無である。弁護人は,被告人の加害行為は
いずれも被害者の顔に傷をつける目的のためのものにすぎず,被告人に殺意は認
められない旨主張するが,当裁判所は,被告人には殺意が認められると判断した
ので,以下その理由を説明する。
2関係各証拠によれば,次の事実が認められる。
被告人が本件犯行に使用した凶器は,いずれもステンレス製で鋭利な,刃体
の長さ約20センチメートルの牛刀と刃体の長さ約13センチメートルのペ
ティナイフであり,いずれも十分な殺傷能力を有する刃物である。被告人は当
時の自宅でこれらを使用しており,その性状については十分理解していた。
被告人は,犯行前日に被害者を判示の病院で襲撃することを決意し,刃物を
収納して身体に装着する用具を購入するなどの準備をした上,前記の牛刀及び
ペティナイフを含む3本の刃物を携えて判示の病院内に向かい,同所で丸椅子
に座って事務作業中の被害者を見つけると,そのすぐ左横まで接近して被害者
の名前を呼ぶや,やや左を向いた被害者の左側胸部(ほぼ左脇腹といって差し
支えない部位)をいきなり前記牛刀で1回突き刺し,さらに床に仰向けに倒れ
込んだ被害者の右頸部等を前記ペティナイフで複数回突き刺すなどした。
その結果,被害者は,左側胸部に1か所,右頸部等に合計9か所の刺切創を
負った。このうち左側胸部の刺創は,体表から前方及び上方に向かって体内に
向かい,左第9肋骨が完全に離断して左胸腔を横断し,横隔膜,横行結腸,胃
及び肝臓を貫通して前胸壁に至る長さ約18センチメートルのもので,肋間動
脈や胃大網動脈をも損傷しており,適切な処置がなされなければ,失血等によ
り被害者を死亡させる可能性が高いものであった。そして,成人男性の肋骨を
離断するにはかなり強い力が必要であり,犯行により前記牛刀が湾曲している
ことからすれば,被告人は被害者の左側胸部に相当に強い力をもって前記牛刀
を突き刺したものと認められる。また,合計9か所に及ぶ右頸部等の刺切創は,
4か所が右頸部付近にあり,このうち右耳後部下の刺創は,側頭骨を削って外
耳道に至る長さ約4センチメートルの創傷であって,右頸部等への攻撃中に前
記ペティナイフが床に何度も音を立てて当たり,湾曲して刃先が折れたことも
併せ考えると,被告人は,右頸部等にも強い力をもって前記ペティナイフを繰
り返し突き刺すなどしたものと認められる。
以上のように,被告人は,十分な殺傷能力を有する牛刀とペティナイフを,
それらの性状を十分認識した上で本件犯行の凶器として使用し,これらを人体
の枢要部である左側胸部や右頸部等に強い力で複数回にわたって突き刺すな
どしたものである。このような行為が,重要な臓器や血管を傷つけるなどして
人を死亡させる危険性が高いものであることは明らかであり,前日から犯行の
準備を整え,攻撃する部位も決めた上で犯行に及んだという被告人が,そのよ
うな危険性に考えが及ばなかったとは到底考え難く,被告人は当然にその危険
性を認識していたものと認められる。
3これに対し,被告人は,腹部の大動脈を避けて脇腹を狙えば,被害者を死亡さ
せる危険はないと考えたなどと供述する。しかしながら,被告人は,当時医学部
の4年生で,腹部には大動脈以外にも重要な臓器や血管があることは十分に分か
っていたはずである上,白衣を着用していた被害者の身体は狙いがつけにくく,
その上ふいに予期せぬ動きをするかもしれないのであるから,被害者を死亡させ
る危険性をおよそ認識しなかったなどとは到底考えられない。
また,弁護人は,右頸部等への攻撃について,被告人が狙ったのは被害者の首
ではなく顔であった旨主張する。しかし,仮に狙いが顔であったとしても,被害
者が抵抗し,防御するなどして身動きすれば,狙いが逸れて首に当たることは容
易に想定できることであって,現に右頸部付近に複数の創傷が生じていることか
らすれば,いずれにしろ危険な行為であることに変わりはなく,被告人が自らの
行為の危険性を認識していたとの認定を妨げることにはならなない。
さらに,弁護人は,左側胸部の刺突行為が1回にとどまることや被告人が犯行
後に大人しくしていたことなどを理由に,被告人には殺意が認められない旨主張
する。しかしながら,いずれも被告人に積極的あるいは強固な殺意まではなかっ
たということには結びつくものの,被告人が人の死ぬ危険性のある行為をそれと
分かった上で行ったことを否定し,あるいはこれと矛盾する事情とはならないの
であって,被告人に被害者に対する殺意があったことについて,合理的な疑いを
生じさせるものとはいえない。
4結局,被告人は人が死ぬ危険性の高い行為をそのような行為と分かって行った
のであるから,被告人には被害者に対する殺意があったものと認められる。
(量刑の理由)
本件は,被告人が,“鏗下圓紡个掘せΠ佞鬚發辰董い修梁Χ刺瑤魑軼瓩韮渦麁
き刺し,その頸部等をペティナイフで数回突き刺すなどしたが,殺害するに至らな
かった殺人未遂,△修虜櫃竜軼甬擇咼撻謄ナイフの不法携帯からなる事案である。
前記の凶器の性状,側胸部及び頸部等への攻撃の態様からすると,本件の犯行態
様は,被害者を死亡させる危険性が相当に高い,悪質なものであったとみるほかな
い。また,被告人に被害者に対する強固な殺意があったとまでは認められないもの
の,前日から犯行に必要な用具等を準備した上,当日も病院職員等を装うために白
衣を着用するなど,相応の計画性も認められる。被害者は,本件犯行によって側胸
部を深々と貫かれるなど,全治まで約3週間を要する重い傷害を負わされ,現在も
生活上の不自由さが残り,精神科への通院も続けるなど,その蒙った肉体的,精神
的苦痛には大きいものがある。被告人が判示の経緯から被害者に憎しみを抱いたこ
と自体は理解できないではないものの,本件犯行に及ぶ程の事情とは到底いえず,
被告人の行為は短絡的で,いわば過度な復讐であったというほかないのであって,
その経緯,動機に特に酌むべきところはない。この点,被告人は,婚約者が被害者
に性的関係を強要されたと思い込んだなどと供述するけれども,仮にそうであれば,
まずは婚約者から事情を聞き,その心身を気遣うのが自然であるのに,当時の婚約
者とのやりとりを見ても,被告人にそのような素振りは一切窺われず,むしろ話合
いを望む婚約者を完全に拒絶していたのであるから,被告人の上記供述は信用でき
ず,被告人が前記のように思い込んでいたとは認められない。
これらの事情に照らすと,本件は,男女関係又は怨恨を動機として,単独で刃物
類を使用して被害者に2週間以内から1か月以内の傷害を負わせた殺人未遂の事案
(概ね懲役2年から11年までに分布し,実刑判決では懲役6年から7年までに分
布のピークがある。)の中でも,軽くはない部類に属するというべきである。
以上に加え,被害者からの要求に及ばないとはいえ,両親の協力を得て1000
万円の一時弁償金を含む高額な賠償金の支払いを提示するなど被害弁償への努力が
みられること,これまで前科がないこと,被害者への謝罪文を書き,公判廷におい
ても謝罪の言葉を口にするなど,反省の態度を示していること,出廷した母親が更
生への援助を約していることなどの事情も考慮して,被告人に対しては主文の刑を
科すことが相当と判断した。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑懲役8年,主文同旨の没収)
平成30年3月13日
東京地方裁判所刑事第4部
裁判長裁判官 永渕健一
裁判官 今井理
裁判官 柏戸夏子

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