報道等をもとに日本の裁判官の情報を収集、掲載しています。

杉並のリフォームめぐる殺害事件で懲役14年 東京地裁

 去年、東京・杉並区で、工務店の元社員が、住宅のリフォームをめぐってトラブルになった62歳の女性を殺害した罪などに問われた裁判で、東京地方裁判所は、「動機は身勝手というほかなく、酌むべき点は乏しい」として懲役14年の判決を言い渡しました。
 去年4月、東京・杉並区の住宅で、上田美惠子さん(当時62)が遺体で見つかり、この家のリフォームをめぐってトラブルになっていた工務店の元社員、青木啓之被告(53)が去年1月に上田さんを殺害し、遺体を床下に遺棄したとして、殺人と死体遺棄の罪に問われました。
 被告側は殺害を認めましたが、「遺棄した時点では死亡していなかった可能性がある」として死体遺棄の罪は成立しないと主張していました。
 30日の判決で東京地方裁判所の丹羽敏彦裁判長は、「傷の状況などから遺棄した時に死亡していたか、ごく短時間のうちに死亡する状況だった」として被告側の主張を退けました。
 そのうえで、「被害者の発言が事件のきっかけにはなったが、命を奪われるような落ち度はなく、動機は身勝手で酌むべき点は乏しい」として懲役14年を言い渡しました。
(1月30日 12時19分 NHK)

元工務店社員に懲役14年判決「身勝手な動機」 杉並女性遺棄事件で東京地裁

 東京都杉並区清水の無職、上田美恵子さん=当時(62)=が自宅床下から遺体で見つかった事件で、殺人と死体遺棄の罪に問われた元工務店社員、青木啓之(ひろし)被告(53)の裁判員裁判の判決公判が30日、東京地裁で開かれた。丹羽敏彦裁判長は「動機は身勝手」として懲役14年(求刑懲役16年)を言い渡した。
 丹羽裁判長は「被害者の発言が殴打するきっかけとなった」とする一方、「被害者に暴力を受けたり生命を奪われたりしなければならないほどの落ち度はない」と指摘。さらに「殺害の直接の動機は殴打を隠蔽して保身を図ることにあった」と結論づけた。
 弁護側は、「床下に押し込んだ時点で被害者が死亡していたとは言い切れない」として死体遺棄罪は成立しないと主張していたが、判決は遺体の状況などから同罪が成立すると認定した。
 判決によると、青木被告は工務店の担当者として上田さん方を訪れた平成29年1月11日、上田さんに叱責され、包丁で上田さんの胸を刺して殺害した上、遺体を台所の床下に捨てた。
(2018.1.30 12:07 産経ニュース)

杉並女性殺害で懲役14年=元リフォーム業者−東京地裁

 東京都杉並区の民家床下から住人の上田美恵子さん=当時(62)=の遺体が見つかった事件で、殺人などの罪に問われた元リフォーム業者、青木啓之被告(53)の裁判員裁判の判決で、東京地裁(丹羽敏彦裁判長)は30日、懲役14年(求刑懲役16年)を言い渡した。
 丹羽裁判長は「手足を粘着テープで縛られ抵抗できない被害者を包丁で刺すなど執拗(しつよう)な犯行。顔を殴ったことを隠蔽(いんぺい)するために殺害を決意しており身勝手だ」と非難した。
 弁護側は、遺棄時点で被害者は死亡していなかったとして死体遺棄罪は成立しないと訴えたが、丹羽裁判長は「刺し傷で心臓に穴が開いており、既に死亡していたか、短時間で確実に死亡する状況だった」と退けた。
 判決によると、青木被告は昨年1月11日、上田さんを包丁で刺して殺害。床下収納スペースの下に遺体を押し込み、ふたの上に冷蔵庫を置いた。
(2018/01/30-12:12 時事ドットコム)

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平成29年刑(わ)第939号,同年合(わ)第93号
殺人,死体遺棄被告事件
平成30年1月30日宣告
主文
被告人を懲役14年に処する。
未決勾留日数中180日をその刑に算入する。
理由
(犯行に至る経緯)
被告人は,リフォーム店の営業担当者として被害者から自宅のリフォームの相談
を受けていたが,被害者が被告人の母親を揶揄するような言動をしたことなどから,
被害者に不快感を覚えていた。被告人は,平成29年1月11日,東京都杉並区a
b丁目c番d号被害者方において,被害者から玄関ドアの修理について叱責された
際に,従前における同人の言動も思い出して憤激し,同人の顔面を手拳で殴打し,
仰向けに倒れた同人に馬乗りになって更にその顔面を手拳で数回殴打した上,その
顔面及び手足等を粘着テープで緊縛するなどし,同人を被害者方床下収納孔下の床
下に運び入れた。
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1同日,被害者方において,被害者(当時62歳)に対し,殺意をもって,そ
の左胸部を包丁(刃体の長さ約18センチメートル:平成29年東地領第44
04号符号1)で数回突き刺し,よって,その頃,同所において,同人を胸部
刺切創による失血により死亡させ,
第2同日,被害者方において,前記第1のとおりその左胸部を数回突き刺され
た状態の同人を,被害者方床下収納孔下の床下から南側に押し込んだ上,同収
納孔に床下収納ボックスを取り付け,蓋を閉めてその上に冷蔵庫等を置くなど
して隠匿し,もって死体を遺棄した。
(事実認定の補足説明)
弁護人は,遺棄行為完了時までに被害者が死亡したことについて合理的疑いがあ
るから,判示第2について,死体遺棄罪は成立しない旨主張する。
そこで検討すると,関係証拠により認められる〆原刺瑤ら背部まで達する5つ
の刺切創は,いずれも左肺を貫通し,更にそのうちの1つは心臓の右心室内部に刺
入して穴を開けていたなどという被害者の受傷状況,鼻と口を塞ぐような状態で
粘着テープが重ねて被害者の顔面に巻かれていた状況,「だらんとして体に力が
入っていなかった」(被告人の公判供述)という刺突後の被害者の様子に加え,被
害者の死因等に関する解剖医Aの証言を併せてみれば,被告人が被害者を隠匿した
時点で,被害者は既に死亡していたか,あるいは,ごく短時間のうちに確実に死亡
する状況にあったといえる。そのような状況の被害者を隠匿することが死体遺棄罪
に該当することは明らかである。
(量刑の理由)
被告人は,殴打された後に粘着テープで手足等を緊縛されるなどして全く抵抗で
きない状態にある被害者の左胸部を包丁で突き刺し,背部まで貫通する創傷だけで
も5つ生じさせた。このような刺突の強さや回数等からして,殺人の犯行は,強固
な殺意に基づく執ような態様によるものといえる。死体遺棄についても,被害者方
の床下収納孔下という予想外の場所に隠匿するなど,手際のよい犯行といえる。本
件により突然生命を奪われた被害者の苦痛,無念さは計り知れず,被害者の行方を
案ずる中で最悪の結果を迎えた遺族らが被告人の厳罰を求めるのも当然のこととし
て理解できる。
弁護人は,被害者の発言が本件犯行のきっかけとなったのであって被害者には落
ち度があり,さらに,当時,母親の病状や介護の負担等につき被告人が悩んでいた
ことなども指摘して,犯行に至る経緯について被告人に有利に考慮すべき事情があ
る旨主張する。しかしながら,被害者の発言が殴打行為のきっかけとはなったもの
の,暴力を受けたり,ましてや生命を奪われたりしなければならないような落ち度
があったなどとは評価できない。しかも,被告人が被害者を殺害しようと決意した
直接の動機は,先行した殴打行為等を隠ぺいして保身を図ることにあったことは動
かし難い。殺人及び死体遺棄の犯行動機は身勝手というほかなく,犯行に至る経緯
や動機に酌むべき点は乏しい。
そうすると,本件は,同種の殺人事案(刃物類を用いた前科のない単独犯による
もの)の中でも,重い方の部類に位置する事案といえる。
以上を前提に,被告人が事実を認め反省の態度を示していること,家族からの支
えが期待できることなどの事情も考慮して,主文の刑が相当であると判断した。
(検察官の求刑;懲役16年,弁護人の科刑意見;懲役8年)
平成30年1月30日
東京地方裁判所刑事第3部
裁判長裁判官 丹羽敏彦
裁判官 大川隆男
裁判官 上田佳子

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