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元選対事務局長に有罪=田母神被告陣営の運動員買収―東京地裁

 2014年2月の東京都知事選をめぐり、元航空幕僚長田母神俊雄被告(69)=一審有罪、控訴=の陣営運動員らに現金を配ったとして、公選法違反罪に問われた元選対本部事務局長、島本順光被告(70)の判決が24日、東京地裁であった。
 家令和典裁判長は「民主主義の根幹である選挙の公正さに大きな疑念を抱かせる犯行」と述べ、懲役2年、執行猶予5年、追徴金200万円(求刑懲役2年、追徴金200万円)を言い渡した。
 家令裁判長は、1億円超の寄付金のうち数千万円が運動員らの報酬に充てられたと指摘。「島本被告は首謀者といえる立場で刑事責任は重い」と述べ、「選挙運動の報酬という認識はなかった」とする弁護側の無罪主張を退けた。
 判決によると、島本被告は田母神被告らと共謀。選挙運動の報酬として運動員6人に計295万円を渡したほか、自身も200万円を受け取った。
(7/24(月) 10:36 時事通信)

田母神氏陣営の元事務局長に有罪判決 東京地裁、無罪主張退ける

 平成26年2月の東京都知事選で落選した元航空幕僚長、田母神(たもがみ)俊雄被告(69)陣営をめぐる選挙運動員買収事件で、公職選挙法違反(買収、被買収)罪に問われた当時の選対事務局長、島本順光(のぶてる)被告(70)の判決公判が24日、東京地裁で開かれた。家令和典裁判長は「選挙の公正さに大きな疑念を抱かせる犯行」として島本被告に懲役2年、執行猶予5年、追徴金200万円(求刑懲役2年、追徴金200万円)を言い渡した。
 弁護側は運動員について「田母神被告の警備を行う事務員で、選挙運動への報酬という認識はなかった」などとして無罪を主張していた。家令裁判長は「運動員らが選挙運動にあたる行為をしていることを認識していた」と指摘し、いずれも、選挙運動に対する報酬にあたると判断した。
 判決によると、島本被告は選挙運動の報酬として、陣営から200万円を受領。また、田母神被告や会計責任者らと共謀し、26年3〜5月、複数の運動員らに対し、報酬として計295万円を渡すなどした。
 田母神被告は同法違反罪で有罪判決を言い渡され、控訴中。
(7/24(月) 10:48配信 産経新聞)

田母神陣営の元選対事務局長に有罪判決 14年都知事選

 2014年の東京都知事選に立候補して落選した元航空幕僚長・田母神俊雄被告(69)=控訴中=らによる公職選挙法違反事件で、東京地裁は24日、同法違反(買収、被買収)の罪に問われた元選挙対策本部事務局長・島本順光(のぶてる)被告(70)に対し、懲役2年執行猶予5年、追徴金200万円(求刑懲役2年、追徴金200万円)の判決を言い渡した。
 判決によると、島本被告は14年3〜5月、田母神氏らと共謀して運動員6人に計295万円を渡し、自らも報酬として200万円を受け取った。家令和典裁判長は「首謀者として、民主主義の根幹である選挙の公正さに大きな疑念を抱かせた」と非難した。
 弁護側は「報酬は選挙期間外の活動に対するものだ」と一貫して無罪を主張していた。だが、家令裁判長は「そうした内容で田母神氏らと合意した事実はなく、後付けの弁解に過ぎない」と退けた。一方で「保釈まで相当の期間身柄を拘束された」として、執行猶予を付けた。
 この事件では10人が起訴され、これで略式命令を受けた1人を含め全員に有罪判決が言い渡された。田母神氏は懲役1年10カ月執行猶予5年の判決を不服として控訴している。(藤原学思)
(7/24(月) 11:34配信 朝日新聞)

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事件番号 平成28年特(わ)第807号
被告事件名公職選挙法違反被告事件
宣告日平成29年7月24日
宣告裁判所東京地方裁判所刑事第13部
主文
被告人を懲役2年に処する。
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
被告人から金200万円を追徴する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,平成26年2月9日執行の東京都知事選挙において,同選挙に立候補
したAの選挙対策本部事務局長であったものであるが,
第1A及び前記選挙において同人の出納責任者であったBと共謀の上,別表記載
のとおり,平成26年3月中旬頃から同年5月8日までの間,東京都港区ab
丁目c番d号ef号室g事務所等において,前記選挙においてAの選挙運動者
であったCら5名に対し,同人らが前記選挙に際し選挙区内をAと共に歩きな
がら同人の氏名等を周知して同人への投票を呼びかける街頭練り歩きに参加し
つつ,Aらの進路を誘導するなどの選挙運動をしたことの報酬とする目的をも
って,現金合計280万円を供与し,
第2Bと共謀の上,平成26年3月中旬頃,g事務所において,前記選挙におい
てAの選挙運動者であったHに対し,同人が同年1月23日から同年2月7日
までの間の合計10日間うぐいす嬢としてAの選挙運動用車両に乗車し前記選
挙の選挙人にAへの投票を呼びかけるなどの選挙運動をしたことの報酬とする
目的をもって,1日3万円の割合で計算した金額である現金30万円を供与し,
もって法定の支給限度額である1日1万5000円の割合で計算した金額を超
える現金15万円を供与し,
第3平成26年3月中旬頃,g事務所において,Bらから,自己が前記選挙に際
しAの選挙運動に関する事務を統括するなどの選挙運動をしたことの報酬とし
て供与されるものであることを知りながら,現金200万円の供与を受けた。
(補足説明)
第1本件の争点等
弁護人は,被告人の公判供述に基づき,判示各事実について,被告人が各受供与
者に現金を供与し,自ら現金供与を受けたことは争わないものの,被告人は選挙運
動をしたことの報酬として現金を供与したり,現金供与を受けたわけではないとし
て,被告人は無罪である旨主張している。その理由の骨子は,次のとおりである。
“鏐霓佑蓮ぃ如ぃ董ぃ典擇咤弔倭挙運動事務員として選挙管理委員会に登録さ
れていると思っていた,■董ぃ典擇咤弔選挙期間中に行ったことは選挙運動では
ない,F,E,D及びGが選挙運動を行っていたとしても,被告人はFらが選挙
運動をしているとは認識していなかった,と鏐霓佑Hに供与した超過分の15万
円は選挙運動とは別の活動に対する報酬である,ィ辰剖〕燭気譴晋酋癲ぃ鼎剖〕
された現金のうち10万円及び被告人が供与を受けた現金はいずれも選挙期間を除
いた前後の期間の活動に対する報酬である。
これに対し,当裁判所は,判示のとおり,被告人の各供与及び受供与は選挙運動
をしたことの報酬としてされたものであり,被告人にはその認識(故意)があった
と認定したので,以下,その理由を補足して説明する。
第2関係証拠から認められる事実
関係証拠によれば,以下の事実が認められる(弁護人は,Bの証言について,I
の証言と矛盾することや,Bには自らの別件横領の刑事責任を回避するために虚偽
の供述をする動機があることなどを指摘して,信用できない旨主張するが,弁護人
が指摘する点を考慮しても,少なくとも,以下の認定に供した限度では,Bの証言
は信用できる。)。
1被告人の経歴,本件選挙への関与及び現金供与までの概要
被告人は,平成元年に航空自衛隊を退職後,国会議員の秘書を約23年間務
めたが,その間,参議院議員選挙に3回秘書として関与し,うち1回は事務局長的
な立場で関与していたほか,他の議員らの選挙の応援に行った経験があった。
被告人は,自衛隊勤務中はAとはほとんど面識はなかったが,同人が統合幕僚学
校長をしていた頃,国会議員の指示でAに講演を依頼したことがあり,その後は行
事で挨拶を交わしたこともあった。また,被告人は,約10年前に,知人を通じて
Bと知り合い,それ以後,Bに発送代行の仕事を頼んだり,被告人の息子が立候補
した選挙で,届出事務などを頼んだりしていた。
平成25年12月下旬頃,Aは,平成26年2月9日執行の東京都知事選挙
(以下「本件選挙」という。)への立候補を決意し,Aの自衛隊在職中の部下であっ
たCは,Aの選挙を応援することとした。Cは,自身が立候補した参議院議員選挙
で被告人に助言を受けた経験などから,被告人は選挙経験が豊富であると見込み,
被告人にAの選挙の手伝いを依頼したところ,被告人は,保守の論客であったAを
応援する気持ちから,これを了承した。その後,Aが会長を務める政治団体Jの幹
事長であるIの主導によって,Aの選挙対策本部(以下「本件選挙対策本部」とい
う。)が発足し,Iが本部長,被告人が事務局長,Bが出納責任者,CがAの秘書役
と警護役を担う「会長付」にそれぞれ就任した。本件選挙の告示日である平成26
年1月23日,Aは,本件選挙に立候補し,Bは,東京都知事選挙候補者届出書を
東京都選挙管理委員会に提出し,それとともに,選挙運動事務員等届出書も提出し
たが,同届出書には車上運動員の女性6名(Hを含む。)のみしか記載されていなか
った。
Aは,選挙期間中,東京都内各所において,街頭演説や街頭練り歩きなどを行い,
選挙人に対し,自らへの投票を訴えるなどした。
Iの意向により,本件選挙に要する資金は,Aを支持する者からの寄付金で
賄うことになり,同寄付金は,同年1月7日に設立されたAを代表者とし,Bを会
計責任者とする政治団体K名義の貯金口座に集められた。被告人,I,Aは,定期
的に,Bから,寄付金の合計額の報告を受けていた。本件選挙対策本部では,選挙
資金の支出について,5万円までの支出は出納責任者であるBの決裁を,5万円を
超える支出については選挙対策本部事務局長である被告人の決裁を,10万円を超
える支出は選挙対策本部長であるIの決裁をそれぞれ必要とすると定められていた。
同年2月9日,本件選挙の投開票が行われ,Aは,約61万票を獲得したも
のの,落選した。
政治団体Kでは,同日までに,全国の支持者から合計1億円以上の寄付金を集め
るなどしており,本件選挙に関する経費等を支払っても,数千万円の余剰金が出る
見込みとなった。被告人は,前記余剰金を原資として,本件選挙対策本部のメンバ
ーらに対し,報酬を支払うことを計画し,Bに,メンバーの名前とそれぞれの報酬
額を記載したメモを渡した。
被告人の上記メモでは,Iに400万円,被告人に200万円,Cに100万円,
L,M及びBに各50万円,E,N及びOに各30万円,P,Q,R,S,D,F
及びGに各20万円を支払う計画であった。その後,被告人らは,この報酬の支払
についてAに了承を求めた際,Aから,Cへの報酬の増額及びT,U及びVへの報
酬支払を求められた。被告人は,Aの意向を踏まえ,Cへの報酬額を100万円か
ら200万円に増額し,さらに,T及びUに各50万円,Vに30万円を支払うよ
うに計画を修正し,報酬の支払全体についてAの了承を得た。
他方,Bは,同月24日,東京都選挙管理委員会に選挙運動費用収支報告書を提
出したが,同報告書の人件費の項目には,うぐいす嬢5名(Hは含まれていない。)
に対する車上運動員報酬の記載しかなかった。
被告人は,上記計画に基づき,同年3月中旬頃,g事務所において,Bから
自己の報酬として現金200万円を受領した。
被告人は,Bから配付用の現金を受け取り,同月中旬頃,g事務所において,
Cに現金190万円,Gに現金20万円,Hに現金30万円をそれぞれ手交し,同
月下旬頃,Fに現金20万円を手交した。さらに,被告人は,同年5月7日,E名
義の普通預金口座に30万円,D名義の普通預金口座に20万円をそれぞれ振込送
金し,同月8日,各口座に入金させた。
2被告人の本件選挙対策本部における役割及び活動等
被告人は,日中は,選挙対策本部事務所内の奥にある,事務所内のスタッフ
が全員見える席に座っており,人の配置を決めたり,不具合のあるところに手当て
するなど,事務所が円滑に機能するようにしていたほか,各部門の打合せにも入り,
問題解決の手助けをするなどしていた。
また,本件選挙対策本部では,スタッフ間の情報共有等を行う目的で,朝礼と夕
礼が行われており,いずれも事務局長である被告人がとり仕切っていた。朝礼では,
被告人が主に発言し,その日の流れや,その日のボランティアをどこに配置するか
などの確認,前日までの問題点や反省点の確認,その時点での得票に関する情報の
共有などを行っていた。夕礼では,被告人が各部門の担当者を指名し,各部門から
反省事項等の報告をさせるなどして,1日の振り返りを行い,被告人やIが教訓を
導き出したり,翌日のスケジュールの確認を行うなどしていた。夕礼においては,
Aに直接攻撃を仕掛けてくる人物に対処したことも報告されたが,街頭演説の際,
マイクの音声が入らない事態になったため,Fが,周辺を巡回して不審者を発見し,
その不審者について無線で連絡を入れるなどして警戒していたところ,不審者がそ
の場から去り,その後音声も入るようになったなどという街頭演説妨害に対処した
出来事も報告された。また,夕礼では,街宣活動の状況を撮影した動画に映ってい
る,Aの警護をしている者の表情が固いので,イメージが悪くなるという指摘がさ
れたこともあった。
さらに,被告人は,Aの応援弁士として街宣活動に同行したWとの連絡調整を行
っており,4回ほど,Wを街宣場所まで案内したことがあった。また,被告人は,
街宣現場において,スケジュールを変更するか否かで混乱が生じた場合に,Eから
指示を仰がれ,指示をしたこともあった。
その他にも,被告人は,電話で投票を呼びかける際のマニュアルを作成したり,
トラブルに対して指示を出したり,他のスタッフでは対応できないクレーマーが来
た時には直接対応するなどしていた。
被告人は,選挙期間の終盤である平成26年2月6日頃,「貢献度評価(勤
務期間,役割機能度,効果程度を総合判断:同順位では,記述順が貢献度順とみる)」
と題する書面(以下「貢献度評価書」という。)を作成した。同書面には,「1M
さん」「2Bさん」「3Xさん」「4Nさん,Yさん,Qさん,Oさん,Pさん」
「5Z1さん(勤務期間)」「6Z2さん(時間帯)」「7Lさん」「8Z3さ
ん,Rさん,Gさん」「9Cさん」「10Z4さん,Z5さん,Z6さん」「11
Sさん(勤務期間),Eさん,Dさん,Fさん」などと記載されていた。
3C,E,F,D,G及びHの本件選挙における活動等
Cについて
Cは,Aに自身の選挙を応援してもらったり,就職先を紹介してもらったりした
恩義から,Aの選挙運動を全力で手伝いたいと考え,選挙期間中,「会長付」として,
Aの自宅と街宣場所,更にはテレビ局などへの送迎を行い,終日,Aに随行してい
た。Cは,Aやその支持者らによる街頭演説及び街頭練り歩きなどの場面では,A
の進路誘導や身辺警護等を行いつつ,Aを当選させるため,握手を希望する選挙人
の存在をAに教えたり,記念撮影やサインを希望する選挙人の求めに応じて,写真
撮影に協力するなどした。Cは,警護関係の責任者として,街宣現場では,同じく
「会長付」の肩書を持つE,F及びDらの指揮をとっており,夕礼に参加した時に
は,自ら警護関係についての報告を行っていた。
Eについて
Eは,いとこであるCに要請されたことをきっかけに,Cの選挙でAが応援して
くれたことの恩返しという気持ちもあって,Aの選挙を手伝うこととし,平成26
年1月9日頃に上京して,本件選挙対策本部に加わった。Eは,「会長付」として,
街宣活動の際に,Aに随行していた。その際,Eは,Aの警護のほか,街頭練り歩
きなどが顔見世興行的な性質があることを踏まえ,有権者からAの写真撮影の依頼
があった時に,写真を撮影したり,Aが有権者との握手を行っている際には,有権
者にAとの握手を促すなどしたこともあった。また,Eは,Aに対し,街頭演説の
際の表現の仕方について助言をしたこともあった。Eは,街宣活動の現場責任者で
はなかったが,被告人に対し,街宣活動の発着の際に電話連絡を入れて,スケジュ
ールどおり動いているかを連絡したり,現場で混乱が生じた場合に,被告人に電話
をして,指示を仰いだこともあった。Eも,毎回ではなかったが,夕礼に参加して
いた。
Fについて
Fは,Aの思想,歴史観に共感しており,Aが東京都知事になることを望んで,
平成26年1月20日頃,本件選挙対策本部に加わり,「会長付」の肩書を与えられ
た。Fは,街頭練り歩きや街頭演説に随行して,Aの警護を行うとともに,Aを誘
導するなどしていた。また,Fは,街頭練り歩きの際などには,Aと有権者が握手
できるよう誘導したり,有権者がAとの写真撮影を希望する場合には,写真を撮影
するなどした。また,Fは,街宣活動時に,Aの名前が書かれたのぼりを持って歩
いたり,有権者に対して,Aです,よろしくお願いします,などと声掛けしたこと
もあり,被告人に対し,雑談の中で,警護担当なのにのぼりを持つことになった旨
話したことがあった(なお,Fは,その後,Z7らから注意を受けて,のぼりを持
つ行為や声掛け行為はしなくなった。)。Fは,選挙運動が始まって3日目以降に,
被告人から,Cから連絡が入らないので,街宣現場の出発・到着について,Fから
も連絡を入れるよう指示されたことから,可能な限り,被告人に対し,上記の事項
について,電話連絡を入れていた。Fは,朝礼には数回しか参加していないが,夕
礼には参加しており,CとEが夕礼に出席していない時に,Fが報告を行ったこと
もあった。
Dについて
Dは,数年前からAと付き合いがあり,Aの歴史観に共感しており,Cの依頼を
受けて,本件選挙の告示日の二,三日前に上京して本件選挙対策本部に加わった。
Dは,「会長付」として,街頭演説及び街頭練り歩きなどに随行し,Aの身辺警護等
を行っていたほか,街頭練り歩きの際に,のぼりを持ってAの傍らを歩いたり,手
を差し出してAの進路誘導を行ったり,握手を希望する有権者の存在をAに教えた
り,記念撮影を希望する有権者とAの写真を撮影するなどした。また,Wが街頭練
り歩きに参加したときには,Dは,少人数でAとWの両名の警護をする必要性に加
え,Wに有権者の注目が集まり,Aの影が薄くならないようにとの配慮から,Aと
Wが離れた際には,両名を近づけるよう誘導した。さらに,Dは,街宣活動の際に
保守系の有力者と名刺交換をして,その者らの会合の話を被告人に伝えたり,Aが
受け取った名刺の情報をパソコンに入力し,そのうち,選挙活動の支援をしてくれ
そうな者のリストを作成するなどした。また,Dは,街宣活動に随行しない日には,
選挙対策本部において電話の応対をし,抗議の電話に対しては,相手をなだめる言
葉を述べるなどした。
(なお,上記事実は,主としてAの街宣活動の状況を撮影した動画及びDの検察
官調書における供述により認めた。Dの検察官調書中の供述は,街宣活動時の客観
的証拠である前記動画によって裏付けられているほか,D自身が供述したのでなけ
れば判明しないような内容が含まれており,特に不自然,不合理な点はなく,C,
E,Fの各供述とも整合しており,信用できる。これに反するDの当公判廷におけ
る供述部分は,甚だあいまいであることなどから,信用できない。)
Gについて
Gは,本件選挙当時,大学生であったが,大学で被告人の講義を受講しており,
被告人から,社会勉強として,Aの選挙を手伝わないかと誘われたことをきっかけ
に,平成26年1月中旬頃から,Aの選挙を手伝うことになった。Gは,被告人か
ら,若者として何事にも誠実に一生懸命取り組みなさいと言われていた。Gは,当
初は,被告人から指示を受けて,Aの運転手を務め,A宅から事務所,街宣場所ま
での送迎を行っており,その時には,「A会長付」の肩書を付与されていた。その後
は,「総務」の肩書で,選挙対策本部事務所で庶務業務を担当し,茶菓子・備品の買
い出し,新聞の切り抜き,広報担当者が書いた文章の確認・修正,来客の名刺の管
理,電話の取り次ぎ,候補資料の確認など,諸雑務を積極的に行っていた。Gは,
街宣現場へのビラや備品の補充,腕章の管理も行っており,1日で数回街宣現場と
事務所を行き来したり,街宣活動に同行したりすることもあった。Gは,Aの当選
を望んでいたため,街宣現場に赴いた際には,街宣活動に参加して周囲の有権者に
手を振ったり,街頭練り歩きの際にスピーカーを持ったり,有権者によろしくお願
いしますなどとあいさつしたりしたことがあった。
Gは,事務所を空ける際には,被告人や事務所にいる他の者に,外出の目的を伝
え,外出先から帰ってきた際には,被告人に対し,少なくとも,帰ってきた旨の報
告を入れていた。Gは,最初に被告人から上記のような心がけで手伝うように言わ
れていたことから,被告人に対し,逐一指示を仰ぐことはしていなかったが,自分
が日々どのような業務をしているかは,被告人に報告していた。また,Gは,被告
人から,行ってはいけない事柄について指示をされたことはなかった。
Hについて
被告人は,ボランティアの女性にうぐいす嬢を務めてもらうことを考えていたI
に対し,プロのうぐいす嬢を雇うことを提案し,了承を得た。被告人は,旧知のH
に対し,本件選挙でうぐいす嬢を務めることを依頼し,これを受け,Hは,10日
間うぐいす嬢として活動した。また,Hは,被告人から,素人のボランティアのう
ぐいす嬢たちに一から教えてあげてほしいと頼まれたため,同女らのために原稿を
作り,遊説カーに同乗した同女らを指導するなどしたが,自らうぐいす嬢としての
活動を行う時間とは別途時間を設けて指導するということまではしなかった。また,
Hは,ボランティアのうぐいす嬢たちは最初は遊説などにも慣れていなかったこと
から,同女らが話す時間を短くし,その分自分が長く話すなどの配慮をしたり,選
挙に慣れていないドライバーに対し,車の停め方やスピーカーの位置を提案するな
どした。
Hは,平成26年3月14日,被告人から,報酬として現金30万円を受け取っ
たが,Hの認識では,プロのうぐいす嬢は,法定の支給限度額である1日1万50
00円の割合で計算した金額より多くの報酬をもらうことが通例であった。この時,
被告人は,Hに対し,皆よく本当に頑張ってくれた,ありがとう,と言ったが,報
酬の内訳についての説明はしなかった。なお,Hは,同年12月の衆議院議員選挙
の際にも,被告人から依頼を受け,A陣営のうぐいす嬢として活動したが,実質8
日間しか活動せず,また,被告人から選挙に慣れていないうぐいす嬢1名に対する
指導を頼まれてもいなかったが,報酬として30万円を受け取った。
第3争点に対する判断
1F,E及びDが選挙運動を行ったことについて
公職選挙法にいう選挙運動とは,特定の公職の選挙につき,特定の立候補者
又は立候補予定者のため投票を得又は得させる目的をもって,直接又は間接に必要
かつ有利な周旋,勧誘その他諸般の行為をすることをいうものと解される(最高裁
第一小法廷昭和53年1月26日判決・刑集32巻1号1頁参照)。
弁護人は,F,E及びDの本来的な業務である「警備業務」は,選挙運動で
はないなどとして,同人らの行為は選挙運動に当たらない旨主張している。
しかしながら,第2で認定したとおり,F,E及びDは,「会長付」としてAの街
頭演説や街頭練り歩きに随行し,Aの身辺警護をしていただけでなく,Cから逐一
指示を受けることなく,それぞれがその場の状況に応じて,Aの進路誘導や選挙対
策本部への連絡等の街宣活動を円滑に実施するための行為や,Aの氏名が記載され
たのぼりを持ったり,Aと有権者との握手の促しや写真撮影への協力等のAと有権
者の触れ合いを促進してAへの投票に結び付き得る行為を行ったりしていたほか,
Aの生命身体に対する直接の危害を伴わない街頭演説に対する妨害行為を排除する
役割も果たしていたのである。したがって,本件選挙において,F,E及びDは,
純粋な警備業務ではなく,警備業務を中心とした街宣活動の支援活動に従事してい
たものであり,Aのため投票を得させる目的で必要かつ有利な行為をしたものと評
価できるから,判示のとおり選挙運動をしたものと認められる(なお,被告人並び
にC,G及びHがそれぞれ判示の選挙運動を行ったことについては,関係証拠から
優に認められ,弁護人も特に争っていない。)。
2各受供与者及び被告人に対する供与が選挙運動の報酬としてされたこと及び
その認識について
被告人の公判供述の要旨
アGには,最初はAの運転手をしてもらったが,交通違反などがあって運転手
をやめた後は,積極的に何でも人が嫌がることをやるようにと言ったところ,Gは
自主的に活動していたので,いちいち指示したことはなかった。そのため,私はG
が何をしていたかいちいち把握していたわけではない。
DとEはCが連れて来た人と認識しており,Fがボランティアで来た人というこ
とは当時はよく知らなかった。この3人は,Cの下で,Aの警備を行う事務員と考
えていた。
イ私は,Bに誰を事務員として選挙管理委員会に登録するかを指示したことは
ないが,選挙経験のあるBが登録手続を行っていると思っていた。寄付金について
は,選挙期間中,Bから累計の寄付額については知らされていたが,支出を除いた
残高は知らされていなかった。
ウ平成26年2月6日,今後のAの政治活動に必要であるなどの考えから,自
分が分かる範囲の人の本件選挙における貢献度を評価して貢献度評価書を作成し,
Iに示した後,Iに対し,常勤の人には給料と日当を払いますけど,と言ったとこ
ろ,Iは「いいんじゃない。」と答えた。
私は,同月6日か7日,Bに対し,給料と日当をこれで払うからと言って,名前
と報酬額を書いたメモをBに渡した。各報酬額の内訳は,B,L,Mの50万円は,
平成25年12月30日から平成26年2月中ぐらいまでの間のうち,選挙期間を
除く約2か月間における働きに対する50万円である。Cの100万円は,1日1
万5000円として,平成25年12月30日から平成26年3月末までの期間の
うち選挙期間を除く70日間を乗じると105万円になり,5万円を削って100
万円とした。自分の200万円は,1日3万円でCと同様に仕事をする期間を70
日間として計算すると210万円になり,10万円を削って200万円とした。D,
F,Gの20万円は,1日1万円として,選挙期間18日に前後1日ずつ加えた2
0日間仕事をしたとして計算した金額であり,E,N,Oらの30万円は,この2
0日間に加え,選挙期間より前から仕事をしていたので10万円を加えた金額であ
り,この者たちの選挙期間中の給料は,事務員としての給料を支払う趣旨であった。
また,Hに法定の支給限度額を超える15万円を支払った趣旨は,トーク原稿の
作成や他のうぐいす嬢への指導等に対する報酬という趣旨である。
弁護人の主張
弁護人は,被告人の上記供述に基づき,E,F,D及びGについて,
選挙運動をしたとは認識しておらず,選挙運動をしたことの報酬として現金を供与
するという認識(Hに供与した法定の支給限度額を
Cが受け取った現金並びにEが受け取った現金のうち10万円は,選挙期間の前後
の期間における働きに対する「給料」である旨主張している。
E,F,D及びGに対する供与について
ア被告人は,上記のとおり,国会議員の秘書を約23年間という長期間にわた
って務め,その間に選挙に関与したことも数回あった。その経験からすれば,被告
人は,街頭演説や街頭練り歩き等の選挙運動がどのようなものであるかは当然に理
解していたはずであり,そのような知識や経験があったからこそ,選挙対策本部事
務局長として,プロのうぐいす嬢を雇うなどの選挙運動の方針を提案するとともに,
実際に街宣活動に立ち会わずとも,夕礼で担当者から報告を受けて,翌日以降の選
挙運動の仕方について指導したり,Eから問い合わせがあった時にも対処したりす
ることができたと考えられる。
そして,E,F及びDはいずれも,警備専門の要員として雇い入れられたわけで
はなく,Aの選挙を手伝うために本件選挙対策本部に加わったものであり,Aに投
票を得させる目的を有しているCの指示の下,「会長付」として街宣活動に随行して
いたのであるから,Eらがそれぞれ,街宣現場の状況に応じて,Aの身辺警護にと
どまらず,Aの進路誘導や,有権者とAとの触れ合いを促進するための行為,街宣
活動に対する妨害の排除等,Aの街宣活動を円滑に実施し,その効果を上げるため
の種々の活動に従事することは,被告人にとっても認識の範囲内の出来事といえる。
逆に,被告人は,E,F及びDのいずれに対しても,警備業務に専念し,それ以外
のことはしないように注意したことはなく,Eらを統率するCに対して,そのよう
な注意をするよう促したこともないのであって,被告人が上記のような認識を持つ
ことを妨げるような事情は何らうかがわれない。加えて,被告人は,EやFをして,
街宣活動がスケジュールどおり行われているかなどについて連絡させたり,夕礼に
おいて,Fらが街頭演説の妨害に対処したことについて報告を受けるなどして,実
際の街宣活動の状況についても一定程度把握していたものと認められるから,Eら
が選挙運動に当たる行為をしていることは認識していたものと認められる。
また,Gについても,被告人自身,何事にも一生懸命に取り組むようにとの指示
を出しており,同人が街宣現場と事務所を行き来していることも報告を受けて認識
していたのであるから(これを否定する趣旨の被告人の供述は信用できない。),G
が街宣現場に赴いた際,その場の状況に応じて選挙運動を行うことも想定していた
ものと認められ,そのような可能性が排除されていたとは到底考えられない。
イこれに対し,被告人は,G,F,E及びDは選挙運動事務員として登録され
ていると認識しており,上記4名に対する供与は登録事務員に対する報酬の意図で
あったと述べるが,選挙運動事務員等届出の内容を確認しておらず,選挙運動事務
員に対する給料が計上される選挙運動費用収支報告書についても,その内容を特に
確認したこともない上,上記4名について,選挙運動事務員に対する法定の支給限
度額等に基づき厳密に報酬額を算定したような形跡も全くないことに照らすと,被
告人の上記供述は不自然,不合理であり,到底信用できない。
ウ以上によれば,被告人は,E,F,D及びGが,選挙期間中に選挙運動を行
っていたことを認識しながら,これに対する報酬として,判示の各供与をしたこと
が認められる。なお,Eに対する報酬の一部について,仮に,告示前の政治活動等
に対する報酬の趣旨が含まれるとしても(E自身は,本件当時はそのようなことは
全然考えていなかった旨供述している。),上記報酬の現金30万円は一括して供与
されており,各部分の割合を特定することはできないのであるから,全額につき供
与罪が成立するものと認めるのが相当である(最高裁第三小法廷昭和30年5月1
0日判決・刑集9巻6号1006頁参照)。
Hに対する供与について
Bは,「被告人から,プロのうぐいす嬢を使うが,プロのうぐいす嬢は法定の報
酬額では雇えない旨聞いた」旨供述しており,この供述は,Hが述べるようなうぐ
いす嬢の報酬の実態に整合するものであるから,信用できる。加えて,被告人の選
挙運動の経験や,平成26年12月の衆議院議員選挙の際のHに対する報酬支払の
状況にも照らすと,被告人は,上記の実態を認識した上で,Hに対し,本件選挙に
おける選挙運動の報酬として現金30万円を供与したものと推認できる。また,H
は,本件選挙において,上記のとおり,うぐいす嬢としての活動以外にも,素人の
うぐいす嬢たちへの指導などを行っているが,これらは自身のうぐいす嬢としての
活動と並行して行っていたにすぎず,うぐいす嬢としての活動と完全に切り離すこ
とはできない上,被告人は,Hに30万円を一括して交付しており,その趣旨や内
訳等も説明していないのであるから,仮に30万円の一部について上記指導等に対
する報酬等の趣旨を含んでいたとしても,全体として,うぐいす嬢としての選挙運
動に対する報酬の支払と認められ,被告人の故意も優に認められる。被告人は,H
は当然に上記の趣旨を理解してくれると思ったなどと弁解するが,採用の限りでは
ない。
Cに対する供与及び被告人の受供与について
被告人は,選挙期間中に本件選挙対策本部のメンバーの貢献度を評価し,常勤者
に報酬を支払うことについてIの了解を得ており,その後,被告人が報酬支払の対
象者及び報酬額を記載してBに渡したメモには,選挙期間中の活動に対する報酬を
支払う者と区別せずに被告人及びCも記載されていたことに照らすと,被告人及び
Cに対する報酬についても,選挙期間中の選挙運動に対する報酬の趣旨は当然に含
まれており,被告人もそのことを認識していたものと推認される。
これに対し,被告人は,被告人及びCに対する報酬は,平成25年12月30日
から平成26年3月末までのうち選挙期間を除く70日間の活動に対する報酬であ
る旨述べる。しかし,被告人が本件当時そのような報酬の内訳をBやCらに説明し
たことはない上,AやIらとの間で,被告人及びCが平成26年3月末までAのた
めに働き,それについて報酬を支払う旨の合意がされていたとは認められず(むし
ろ,Cは同月3日以降は仕事に復帰している。),被告人がそれを前提として厳密に
報酬額を算定したような形跡も全くないのであって,被告人の上記供述は後付けの
弁解にすぎない。なお,仮に,被告人及びCに対する報酬に選挙期間前の政治活動
等に対する報酬の趣旨が含まれるとしても,Cに対する現金190万円,被告人に
対する現金200万円は,それぞれ一括して供与・受供与されており,各部分の割
合を特定することはできないのであるから,全額につき供与罪・受供与罪が成立す
るものと認めるのが相当である(上記最高裁昭和30年判決参照)。
3結論
以上の次第で,被告人の各受供与者に対する供与及び被告人自身の受供与はいず
れも選挙運動の報酬としてなされたものであり,被告人にその認識があったことは
合理的な疑いを容れる余地なく認められる。
(量刑の理由)
本件は,平成26年2月9日執行の東京都知事選挙に立候補したAの選挙対策本
部事務局長であった被告人が,Aや出納責任者であったBと共謀するなどして,選
挙運動者らに対し,選挙運動をしたことの報酬とする目的をもって,現金を供与し,
被告人自身も現金の供与を受けたという事案である。受供与者は6名と少なくなく,
各供与額は15万円ないし190万円で,その合計は295万円と高額に上ってい
る。被告人自身の受供与額も200万円と高額であり,本件は民主主義の根幹であ
る選挙の公正さに大きな疑念を抱かせる犯行というべきである。
被告人は,長年にわたり国会議員の秘書を務め,Aの選挙対策本部事務局長とし
て選挙運動を統括する地位にありながら,本件現金供与を発案し,供与額を決め,
実際に各受供与者に現金を交付しているのであるから,本件現金供与の首謀者とい
える立場にあり,かつ,現実に果たした役割も非常に大きい。
以上に照らすと,被告人の刑事責任は重い。
その上で,被告人は,不合理な弁解に終始しており,反省の情をうかがうことは
できないが,前科前歴がなく,保釈されるまで相当期間身柄拘束を受けたことも考
慮すると,被告人については,主文の懲役刑に処した上,その刑の執行を猶予する
のが相当と判断した。
(検察官の求刑−懲役2年,主文同旨の追徴)
平成29年8月2日
東京地方裁判所刑事第13部
裁判長裁判官 家令和典
裁判官 吉戒純一
裁判官 須藤晴菜

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