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東京地裁 乳児殺害 母に猶予判決 心神耗弱認める

 東京都世田谷区の自宅で今年1月、生後3カ月の長女を浴槽に沈めて殺害したとして、殺人罪に問われた無職、鈴木由美子被告(39)に対し、東京地裁の裁判員裁判は30日、懲役3年、執行猶予5年(求刑・懲役4年)の有罪判決を言い渡した。島田一裁判長は「子を守るべき立場にありながら、水に沈めるなど犯行態様は悪い」と非難する一方、事件当時は心神耗弱状態だったと認め「治療の必要性が高い」として執行猶予を付けた。
 判決によると、鈴木被告は2012年ごろから、音に対して過敏になるなど統合失調症の症状が出るようになった。不妊治療を経て16年10月に長女を出産したが、同12月から男児の声で長女の名前を呼ぶ声が聞こえるなど幻聴が生じた。
 今年1月には「知らない人から長女の名前を呼ばれることが続くと、長女が将来生きていけなくなる」との妄想的な確信を強めた。同13日午前、自宅の浴室で長女を両手で抱きかかえて浴槽内の水に沈め、溺死させた。
 島田裁判長は、量刑理由について「将来ある長女が生後3カ月という短さでこの世を去ったという結果は重大」などと指摘。その一方で「統合失調症の幻覚妄想が悪くなりつつある中で、長女を助けるためには死なせてあげないといけないとの妄想に強く影響された」と認定した。【石山絵歩】
 裁判員「どの家庭で起きてもおかしくない」
 今回の裁判で、裁判員は精神疾患のある母親が出産と子育てを経験する中で起こした事件に向き合った。
 判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで裁判員を務めた3人が記者会見した。この中で、30代の男性会社員は「自分も子育てをしている。育児ストレスが病気を進行させたと考えると、同じこと(事件)が育児中のどこの家庭で起きてもおかしくない」と話した。
 「精神に障害がある人の配偶者・パートナーの支援を考える会」代表を務める、前田直(すなお)・杏林大助教は「産後に始まる授乳などがそれまでの安定した生活リズムを崩し、精神疾患の再発の引き金になることがある。精神疾患の人は、誰にとっても難しいことを自分だけができないと思い込んで自分を追い詰めてしまう傾向がある。サポートする人的な資源を周囲に積極的に入れていくことが大切だ」と話した。【石山絵歩】
(2017年10月30日 21時28分(最終更新 10月30日 21時28分) 毎日新聞)

3カ月長女殺害、母親に猶予判決

 東京都世田谷区の自宅マンションで1月、生後3カ月の長女を浴槽に沈め殺害したとして、殺人罪に問われた無職鈴木由美子被告(39)の裁判員裁判で、東京地裁は30日、「犯行当時は心神耗弱状態だった」として、懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役4年)の判決を言い渡した。
 島田一裁判長は、被告は2012年ごろから統合失調症の症状があり、犯行前には幻聴が原因で「長女を死なせてあげないといけない」との妄想に影響されていたと判断。「犯行は悪質で殺意も強固だが、強く非難することはできない」と指摘した。
 判決によると、1月13日、長女の優佳ちゃんを自宅の浴槽に沈めて窒息死させた。
(2017年10月30日17:05 ロイター)

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事件番号平成29年合(わ)第79号
事件名殺人被告事件
宣告日平成29年10月30日
宣告裁判所東京地方裁判所刑事第16部
主文
被告人を懲役3年に処する。
未決勾留日数中100日をその刑に算入する。
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(犯行に至る経緯及び罪となるべき事実)
被告人は,平成24年春頃から,音に対して過敏になるなどの統合失調症の精神
病症状が出現し,消長がみられた。被告人は,不妊治療を経て,平成28年10月
11日,長女Aを出産した。ところが,同年12月頃から,男児の声でA[注・Aの
名と同じ発音]と呼ぶ幻聴を生じ,平成29年1月初め頃からは,自らの生活音が周
囲に迷惑をかけているため,知らない人がA[注・Aの氏名と同じ発音]と長女の氏
名を呼んでいるなどという妄想が生じた。そして,同月11日頃からは,幻聴等の
精神病的体験が増悪し,知らない人から長女の名前を呼ばれることが続くと長女が
将来生きていけなくなる,長女を死なせてあげないといけないという妄想的な確信
が強くなり,追い詰められた状態となった。
このような経緯のもと,被告人は,同月13日午前9時40分頃から同日午前1
0時頃までの間,東京都世田谷区ab丁目c番d号Bマンションeの被告人方浴室
において,長女であるA(当時生後3か月)に対し,殺意をもって,両手に抱きか
かえた同人の身体を浴槽内の水中に沈め,よって,その頃,同所において,同人を
溺水による窒息により死亡させて殺害した。
なお,被告人は,本件犯行当時,統合失調症による幻覚妄想のため心神耗弱の状
態にあった。
(量刑の理由)
被告人は,本来,母として長女を守るべき立場にありながら,生後3か月の長女
を2度にわたり,相当の時間,水中に沈め,確実に死亡したか呼吸を確認するなど
もしている。このように,犯行の態様自体は悪く,強い殺意も認められる。将来あ
る長女が生後3か月という短さでこの世を去ったという結果も重大である。しかし
ながら,被告人が長女の殺害を決意した原因は,統合失調症の幻覚妄想が急性増悪
していた中で生じた,長女を助けるためには死なせてあげないといけないとの妄想
に強く影響されていたことにあるから,健常者に対するのと同様に強く被告人の責
任を非難することはできない。
以上の事情に照らし,同種事案(単独犯,凶器なし,被告人から見た被害者の立
場は子)の量刑傾向を参考にすると,本件は,刑の執行を猶予することが十分考え
られる部類に属する。そして,被告人は,犯行直後に自首している上,服薬により
精神症状が改善傾向にある現時点では,自らの行為の意味を理解しようとする姿勢
も認められる。さらに,被告人については,治療の必要性が高く,医療観察法によ
る入通院などが見込まれるところ,適切な治療を受けられるよう夫や母親が協力す
ると述べている。
そこで,心神耗弱による減軽をした刑期の範囲内で,主文のとおり刑を定め,そ
の執行を猶予することとした。
(求刑・懲役4年,弁護人の科刑意見・執行猶予付きの懲役刑)
平成29年11月2日
東京地方裁判所刑事第16部
裁判長裁判官 島田一
裁判官 島田環
裁判官 睫郛人

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