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浜松医大が高裁も勝訴、「渡航移植患者の診療継続拒否」裁判 3つの観点から「社会通念上、是認される」拒否と判断

 NPO法人の紹介で、中国で腎移植手術を受けた患者が帰国後、フォローアップ治療のために浜松医科大学医学部付属病院を受診、同病院が治療を継続できないとしたのは医師法19条の応召義務違反に当たるとして、271万2843円の損害賠償を求めた裁判の控訴審判決が5月16日、東京高裁(中西茂裁判長)で言い渡され、一審の静岡地裁の判決と同様に、患者(原告)の請求を退けた。
 東京高裁は、患者に対して緊急の診療の必要性があったとは言えず、浜松医大への紹介元での診療が確実に見込まれていたこと、「臓器取引と移植ツーリズムに関するイスタンブール宣言」に則った対応であるという3つの観点を踏まえ、患者の診療を拒否したことは、「社会通念上、正当として是認できる」と判断した(静岡地裁判決は、『渡航移植後の継続治療「拒否」は応召義務違反か - 静岡地裁判決◆Vol.1』などを参照)。
 静岡地裁、「診療契約成立後」は応召義務違反に当たらず
 患者は2015年1月22日、中国で、慢性腎炎治療のため腎臓移植手術を受けた。帰国後、いったんは都内の病院を受診、その紹介で浜松医大病院の腎移植外来を受診。担当医は、血液検査および尿検査の後、問診で腎臓移植手術を疑った。浜松医大病院では、イスタンブール宣言に基づき、「中国において臓器売買(臓器ブローカー)の絡むような腎移植をした者に対しては、診察・診療を行わない」という腎移植に関する「申し合わせ」を作成していた。これを踏まえ、担当医は患者に治療を継続することができない旨を伝えた。
 この対応を不服として、患者は浜松医大を提訴。2018年12月14日の静岡地裁判決は、 (1)本件では血液検査および尿検査等を実施していることを踏まえ、「診療契約の成立後に、患者である原告が被告病院に対して診療継続を求めた場面」に該当し、応召義務違反に当たらない、(2)フォローアップ治療の内容は、浜松医大病院以外で行うことができないような高度なものであったとは言えないほか、「申し合わせ」を遵守するために診療を継続できないと判断することもやむを得ず、診療契約解除の「やむを得ない事由」がある――という理由から、原告の請求を棄却した。
 東京高裁、不法行為該当性の判断を優先
 静岡地裁判決を不服として患者は控訴。控訴審は2019年3月14日に1回のみ開かれた。患者は、静岡地裁判決に対し、応召義務は診療契約締結前に限らず、診療契約成立後であっても適用されるとし、静岡地裁判決は安易に「やむを得ない事由」の存在を判断しているなどと反論。
 これに対し、浜松医大は、「既に診療契約が成立しているから、応召義務の適用場面ではない」とし、診療契約解除の「やむを得ない事由」についての判断も妥当であると主張していた。
 東京高裁は控訴審で和解勧告をしたが成立せず、5月16日の判決に至った。
 東京高裁は、まず「患者の求めにもかかわらず、担当医が診療を継続することができない旨を伝えたのであるから、医師法19条1項に関連する状況であったこと自体は疑いのないところである」と判断。その上で、「医師法19条1項の趣旨も踏まえて、担当医の対応が、社会通念上、是認されるものであるか否かという観点から、不法行為該当性を判断すれば足りる」とし、(1)患者の生命・身体への危険の有無および程度(緊急の診療の必要性)、(2)他の医療機関による診療の現実的可能性、(3)浜松医大病院において診療を拒否した目的・理由の正当性の有無および程度――といった点を総合考慮して判断するのが相当であるとした。
 患者はCMV(サイトメガロウイルス)に感染しており、重大な合併症によって容態が急変する兆候が存在したと主張していた。しかし、東京高裁は、担当医が診察した当日には判明していなかったこと、その後、別の病院の医師が内服薬の増量を指示し、その後に特段の異常症状が発生することはなかったことなどから、(1)については「緊急の診療を行う必要性が存在しなかった」と判断。
 また患者は、都内の病院を受診、その病院の紹介状を持って浜松医大病院を受診。浜松医大病院は、フォローアップを依頼する受診結果報告書を作成、患者はそれに従い、都内病院を受診した。東京高裁は、腎移植手術後のフォローアップの検査および投薬の内容は、「大学病院のように高度で専門的な医療の提供が可能な施設でなくても、内科があって泌尿器科を標榜する一般病院であれば対応が可能」などとし、受診の経過を踏まえ、(2)についても、「他の医療機関で診療を受けることが十分に可能であった」とした。
 浜松医大病院が診療を拒否したのは、患者が「申し合わせ」の対象者に該当する疑いが存在したため。東京高裁は、担当医は国際移植学会の会員としてイスタンブール宣言を遵守する必要があるとしたほか、浜松医大は国立大学法人という公益性の高い組織であり、海外渡航ビジネスに加担・関与しない方針に基づき、その疑いのある患者の診療を差し控えるという「申し合わせ」の趣旨、目的は正当であるとした。
 患者は、「イスタンブール宣言は、海外渡航移植によって臓器を受容した患者の診察を禁止していない」「仮に申し合わせに一定の合理性があるとしても、臓器売買(臓器ブローカー)の絡むような腎移植には該当せず、浜松医大はその該当性判断のための質問もしなかった」などとも主張していた。これに対し東京高裁は、前者については、「臓器移植を受けた患者に対する治療を拒否するといった方法によって、間接的に臓器取引や移植ツーリズムを抑制しようとすることが有効かつ相当と考えられる」とした。後者については、「臓器売買(臓器ブローカー)の絡むものであったと認めるに足りる証拠があるとは言えない」としたものの、前述の(1)と(2)で、緊急の診療の必要がなく、紹介元での診療が見込まれたため、「臓器売買(臓器ブローカー)の絡むような腎移植をした者」に該当するか否かを厳格に判断することが求められるものではない」と判断した。(橋本佳子(m3.com編集長))
(2019年5月16日 m3.com)

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