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昨年衆院選は「合憲」 東京高裁 「一票の格差」1.98倍

 昨年10月の衆院選で最大1.98倍の「一票の格差」が生じたのは憲法違反として、2つの弁護士グループが全国14の高裁・高裁支部に選挙無効を求めた訴訟の判決が6日、東京高裁であった。大段亨裁判長は「選挙当時、選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったとはいえない」として「合憲」と判断、請求を退けた。
 衆院選をめぐって最高裁は、最大格差2.30倍だった21年選挙を「違憲状態」と判断。各都道府県にまず1議席ずつ割り振る「1人別枠方式」を「格差の主因」と指摘し、24年選挙(最大2.43倍)、26年選挙(同2.13倍)も「違憲状態」と判断した。
 昨年7月施行の改正公選法で、小選挙区定数は青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島の6県で各1減する「0増6減」を行い、97選挙区の区割りが見直された結果、最大格差は1.98倍に縮小した。
(2/6(火) 16:41 産経新聞)

1票の格差 東京、札幌も「合憲」 「2倍未満が実現」

 「1票の格差」が最大1.98倍になった2017年の衆院選は投票価値の平等を求める憲法に反するとして、弁護士グループが選挙無効を求めた訴訟の判決で、札幌高裁(竹内純一裁判長)と東京高裁(大段亨裁判長)は6日、ともに小選挙区の区割りを「合憲」と判断し、請求を棄却した。原告側はいずれも上告する。
 二つの弁護士グループが全国14の高裁・高裁支部に起こした計16件の訴訟は、今回の2判決により10件連続で合憲となった。
 提訴していたのは、札幌が升永英俊弁護士、東京が山口邦明弁護士の各グループ。札幌では北海道の全12選挙区、東京では東京都と神奈川県の計6選挙区の選挙無効を求めた。
 今回、札幌高裁の竹内裁判長はアダムズ方式の導入を評価した上で、2倍未満とした区割りについて「憲法が要求する投票価値の平等を最大限尊重している」などと述べた。判決後、升永弁護士は「格差が2倍以上ではないから合憲という非常に不条理な判決だ」と語った。
 東京高裁の大段裁判長は「最大格差を2倍未満とする結果が実現されている」と評価。判決後、山口弁護士は「米国では可能な限り1対1を目指すとされている。2倍という線引きに合理性があるのか。最高裁で徹底的に戦いたい」と話した。【澤俊太郎、近松仁太郎】
高裁での「合憲」 初めて過半数に
 2017年の衆院選を巡る1票の格差訴訟は全16件のうち10件が「合憲」となり、升永弁護士のグループが全国一斉提訴を始めた09年の衆院選以降、初めて高裁段階での合憲判断が過半数となった。いずれも上告される見通しで、今後出される6件の判断も踏まえ、最高裁が判断を示すことになる。
 1票の格差訴訟は、越山康弁護士(故人)と山口弁護士らのグループが1960年代に始めた。09年以降は升永弁護士らのグループが全国の高裁で一斉提訴を続け、以後6回の国政選挙に関する高裁判決では、いずれの選挙についても「違憲」と「違憲状態」の合計が過半数を占めた。
 今回、各高裁は、94年に施行された衆院選挙区画定審議会設置法が定める「格差は2倍未満」が初めて実現された点を評価した。また、近年の最高裁判決が格差拡大の主因とみていた47都道府県に1議席を割り振る「1人別枠方式」についても、選挙前の区割り改定によって「実質的に解決された」(名古屋高裁金沢支部)などと指摘した。
 只野雅人・一橋大教授(憲法学)は各高裁の判決について「格差2倍以上の選挙区がゼロになった点に加え、国会がアダムズ方式導入を決めたことについて、将来にわたり2倍を超えない具体的な仕組みができたと評価したのだろう。格差2倍未満を維持できない『仕組み』を問題視してきた最高裁の趣旨に沿う判断だ」と理解を示した。【伊藤直孝】
(2018年2月6日 22時28分(最終更新 2月6日 22時28分) 毎日新聞)

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平成29(行ケ)31
主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求の趣旨
1平成29年10月22日施行の衆議院(小選挙区選出)議員選挙の東京都第
2区,同第5区,同第8区,同第9区及び同第18区並びに神奈川県第15区
における各選挙をいずれも無効とする。
2訴訟費用は,原告Fを除く原告らと被告東京都選挙管理委員会との間に生じ
たものは,同被告の負担とし,原告Fと被告神奈川県選挙管理委員会との間に
生じたものは,同被告の負担とする。
第2事案の概要等
1事案の概要
⑴衆議院議員総選挙の実施
平成29年10月22日,衆議院議員総選挙(以下,同日施行の衆議院議
員総選挙を「本件選挙」という。)が施行された。
本件選挙は,平成29年法律第58号(以下「平成29年改正法」とい
う。)による改正後の平成28年法律第49号(以下「平成29年改正後の
平成28年改正法」という。)により改定された選挙区割り(以下,このう
ち衆議院小選挙区選出議員の選挙(以下「小選挙区選挙」という。)に関す
るものを「本件選挙区割り」という。)の下で施行されたものである。
⑵原告ら
原告Aは,本件選挙における小選挙区選挙の東京都第2区の,原告Bは同
東京都第5区の,原告Cは同東京都第8区の,原告Dは同東京都第9区の,
原告Eは同東京都第18区の,原告Fは同神奈川県第15区の,それぞれ選
挙人である。
⑶本件請求の内容
本件は,原告らが,本件選挙区割りに関する公職選挙法の規定は,議員定
数を各都道府県の人口に比例して配分しておらず,公正な代表を選出する契
機である選挙権の平等の保障(憲法15条1項,14条1項,44条ただし
書)に反し,憲法が規定する代議制民主主義(前文,1条,43条1項)を
害する違憲・無効なものであるから,これに基づき施行された本件選挙の前
記⑵の各選挙区における選挙も無効であるなどと主張して,公職選挙法20
4条の規定に基づいて,上記各選挙を無効とすることを求めている事案であ
る。
2前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,当裁判所に顕著であるか,又は後
掲証拠若しくは弁論の全趣旨により容易に認められる事実である。
⑴原告適格
原告らは,次のとおり,本件選挙における小選挙区選挙の各選挙区の選挙
人である。(当事者間に争いがない事実)
原告A東京都第2区
原告B東京都第5区
原告C東京都第8区
原告D東京都第9区
原告E東京都第18区
原告F神奈川県第15区
⑵本件選挙の概要
本件選挙は,平成29年10月22日,平成29年改正後の平成28年改
正法による改正後の衆議院議員選挙区画定審議会設置法(以下「区画審設置
法」という。)及び公職選挙法の規定の下で施行されたものである。本件選
挙施行当時の衆議院議員の定数は465人とされ,そのうち289人が小選
挙区選出議員,176人が比例代表選出議員とされ(公職選挙法4条1項),
小選挙区選挙については,全国に289の選挙区を設け,各選挙区において
1人の議員を選出するものとされ(同法13条1項,別表第1。以下,これ
らの規定を併せて「本件区割規定」といい,後記の改正の前後を通じてこれ
らの規定を併せて単に「区割規定」ということがある。),衆議院比例代表
選出議員の選挙(以下「比例代表選挙」という。)については,全国に11
の選挙区を設け,各選挙区において所定数の議員を選出するものとされてい
る(同法13条2項,別表第2)。総選挙においては,小選挙区選挙と比例
代表選挙とを同時に行い,投票は小選挙区選挙及び比例代表選挙ごとに1人
1票とされている(同法31条,36条)。(当事者間に争いがない事実,
当裁判所に顕著な事実)
⑶本件選挙に至る経緯
ア平成21年8月30日に衆議院議員総選挙(以下,同日施行の衆議院議
員総選挙を「平成21年選挙」という。)が,平成24年12月16日に
衆議院議員総選挙(以下,同日施行の衆議院議員総選挙を「平成24年選
挙」という。)が,平成26年12月14日に衆議院議員総選挙(以下,
同日施行の衆議院議員総選挙を「平成26年選挙」という。)が,それぞ
れ施行されたが,最高裁平成22年(行ツ)第207号平成23年3月2
3日大法廷判決・民集65巻2号755頁(以下「平成23年大法廷判
決」という。)は,平成21年選挙について,最高裁平成25年(行ツ)
第209号,第210号,第211号同年11月20日大法廷判決・民集
67巻8号1503頁(以下「平成25年大法廷判決」という。)は,平
成24年選挙について,最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月
25日大法廷判決・民集69巻7号2035頁(以下「平成27年大法廷
判決」という。)は,平成26年選挙について,いずれも,各選挙におけ
る選挙区割りが,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったと判
断した。(弁論の全趣旨により容易に認められる事実,当裁判所に顕著な
事実)
イ平成26年選挙の後,各都道府県の選挙区数を増やすことなく,平成2
9年改正後の平成28年改正法による改正後の区画審設置法3条2項が定
める方式(以下「アダムズ方式」という。)により都道府県別の議員定数
を計算した場合に減員対象となる都道府県のうち,議員1人当たりの日本
国民の人口の最も少ない6県(青森,岩手,三重,奈良,熊本,鹿児島)
の各選挙区数をそれぞれ1減ずるいわゆる0増6減(以下「0増6減」と
いう。)とそれに基づく選挙区割りの改定が行われ(以下,これらを併せ
て「0増6減等の措置」という。),その結果,平成27年10月1日を
調査時とする国勢調査(以下「平成27年国勢調査」という。)の結果に
よれば,選挙区間の日本国民の人口の最大較差は1対1.956となるも
のとされた。(乙14の1,弁論の全趣旨)
ウ本件選挙は,本件選挙区割りの下で施行されたが,本件選挙当日におけ
る選挙区間の選挙人数の最大較差は,選挙人数が最も少ない鳥取県第1区
と選挙人数が最も多い東京都第13区との間で1対1.979であり,鳥
取県第1区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は0区であった。
(乙1)
3争点
⑴本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っている
か否か
⑵憲法上要求される合理的な期間内における是正がされなかったか否か
⑶本件選挙のうち東京都第2区,同第5区,同第8区,同第9区及び同第1
8区並びに神奈川県第15区における各選挙を無効とするか否か
4争点に関する当事者の主張
⑴争点⑴(本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に
至っているか否か)について
(原告らの主張)
ア新憲法の下で昭和22年に改正された衆議院議員選挙法は,中選挙区選
出議員選挙につき,各都道府県にその人口に比例して議員定数を配分した
が,その後,我が国の人口の地方から都市部への流入に応じた議員定数の
人口比例配分は,正しく行われることはなく,むしろ,平成6年にいわゆ
る「1人別枠方式」が採用されるなど,議員の定数配分における人口比例
原則の軽視は甚だしいものであった。しかし,その後の区画審設置法及び
公職選挙法の改正においては,「1人別枠方式」を定めた条文の文言が削
除されただけで,「1人別枠方式」による議員定数の配分が改められたわ
けではなく,さらに,平成29年改正後の平成28年改正法における0増
6減等の措置の合理性は明らかでなく,本件選挙区割りは,従前と同様に,
一部の選挙区について議員の定数を減じただけで,基本的に「1人別枠方
式」を含む従前の配分が継続されるものとなっている。
イまた,日本全国の人口を小選挙区選出議員の定数289で除した商であ
る43万9774人を基準人数とし,この基準人数に,本件選挙区割りに
より各都道府県に配分された小選挙区選出議員数を乗じた積と,各都道府
県の人口との差は,別表1の「基準人数による過不足議員数の検討」の
「過不足人数」欄記載のとおりとなる。東京都で基準人数の5倍,神奈川
県で基準人数の2倍,大阪府,愛知県,埼玉県及び千葉県で基準人数を超
える差(不足)がそれぞれ生じ,それに相当する議員が足りない状況にあ
る。したがって,本件選挙区割りは,各都道府県への小選挙区選出議員の
配分の点において,1人1票の人口比例配分の原則に反し,違憲である。
ウさらに,平成22年10月1日を調査時とする国勢調査(以下「平成2
2年国勢調査」という。)によると,神奈川県の人口が大阪府の人口より
多いのに,神奈川県への配分議員数が大阪府の配分議員数より1少ないと
いう逆転現象が生じていた(別表2参照)が,本件選挙区割りにおいても,
この逆転現象が放置されている。いわゆる最大較差論は,例えば2倍以内
の差であれば平等と認めること自体が問題であるばかりか,人口「比例」
配分とは無関係であり,また,最大値と最小値との比較をするだけで,そ
の中間に属する道府県を検討の対象とせず,その結果,「逆転現象」を無
視する点でも妥当でない。
エ加えて,各都道府県内における各選挙区の人口が前記イの基準人数とど
の程度かい離しているかを示した結果は,別表3の「県内最小選挙区」と
「県内最大選挙区」の各「県内基準人数との差」のとおりであり,本件選
挙区割りは,各都道府県内における各選挙区の人口が基準人数に可能な限
り近づいているものとは到底言えない。
オ以上によれば,本件選挙区割りは,憲法の要求する投票価値の平等を満
たしていないから,憲法に違反する。
(被告らの主張)
投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく,国
会が正当に考慮することのできる他の政策目的ないし理由との関連において
調和的に実現されるべきものであり,選挙制度の仕組みの決定について国会
に広範な裁量が認められているから,小選挙区制度における具体的な選挙区
を定めるに当たっては,種々の政策的考慮要素を総合的に考慮した上で,国
政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに,投票価値の平等を確
保するという要請との調和を図ることが求められる。したがって,国会が具
体的に定めた選挙制度の仕組みが,投票価値の平等という憲法上の要求に反
し,国会の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是認する
ことができない場合に初めて,憲法に違反することになる。
選挙区間の最大較差が2倍未満となる本件選挙区割りは,国会において通
常考慮し得る諸般の要素を斟酌した,一般に合理性を有するものであって,
憲法の投票価値の平等の要求に反するものとはいえず,また,選挙区間の最
大較差を2倍未満に縮小させただけでなく,被災地等の例外なく,全選挙区
を通じて較差の縮小が図られたから,この最大較差のみをもってしても,本
件選挙当時,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていなかった
ことは明らかである。
⑵争点⑵(憲法上要求される合理的な期間内における是正がされなかったか
否か)について
(原告らの主張)
新憲法の下で昭和22年に改正された衆議院議員選挙法は,中選挙区選出
議員選挙につき,各都道府県にその人口に比例して議員定数を配分したが,
その後,我が国の人口の地方から都市部への人口の流入に応じた議員定数の
人口比例配分は,正しく行われることはなく,むしろ,平成6年に「1人別
枠方式」が採用されるなど,議員の定数配分における人口比例原則の軽視は
甚だしいものであった。そして,平成23年大法廷判決は,投票価値の不平
等は違憲状態にあるとし,国会に対して「1人別枠方式」の可及的速やかな
廃止を求めたのに,その後の区画審設置法及び公職選挙法の改正においては,
「1人別枠方式」を定めた条文の文言が削除されただけで,「1人別枠方
式」による議員定数の配分が改められたわけではなく,平成27年大法廷判
決は,なお平成26年選挙の選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反
する状態にあったと判示した。
しかるに,本件選挙区割りは,アダムズ方式を用いて議員の定数を配分し
たわけではなく,従前と同様に,一部の選挙区について議員の定数を減じた
だけで,基本的に「1人別枠方式」を含む従前の配分が継続されるものと
なっている。
(被告らの主張)
憲法上要求される合理的な期間内における是正がされなかったか否かの判
断は,単に期間の長短のみならず,是正措置の内容,そのために検討を要す
る事項,実際に必要となる手続,作業等の諸般の事情を総合考慮して,国会
における是正の実現に向けた取組が,司法の判断を踏まえた立法裁量権の行
使として相当なものであったか否かという観点から行うべきである。
平成24年以降の区画審設置法及び公職選挙法の改正は,平成23年大法
廷判決から平成27年大法廷判決までの趣旨に沿って,1人別枠方式を廃止
するとともに,将来的にも選挙区間の最大較差を2倍未満とするための所要
の改正を行い,選挙区間の最大較差を2倍未満にまで縮小させたものである
こと,本件選挙は,平成29年改正後の平成28年改正法により新たに定め
られた本件選挙区割りの下での初めての選挙であり,本件選挙における選挙
区間の最大較差は,衆議院議員の小選挙区選挙上,過去最少の数値であるの
みならず,小選挙区選挙に関する累次の最高裁判所の判決において合憲とさ
れた最大較差をも相当程度に下回るものであったこと,この最大較差の縮小
は,平成23年大法廷判決が投票価値の平等に配慮した合理的な基準である
と評価した平成29年改正後の平成28年改正法による改正前の区画審設置
法3条(以下「新区画審設置法3条」という。)の求める2倍未満の較差を
まさに実現したものであったことからすると,平成24年以降の区画審設置
法及び公職選挙法の改正は,平成23年大法廷判決から平成27年大法廷判
決までの趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として十分に相当なものであって,
国会においても,本件選挙までに,本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等
の要求に反する状態にあるなどということは全く認識することができない状
況にあった。
したがって,本件選挙区割りについて,憲法上要求される合理的期間内に
おける是正がされなかったものであるなどとはいえない。
⑶争点⑶(本件選挙を無効とするか否か)について
(原告らの主張)
本件選挙には,争点⑴及び⑵において原告らが主張した違憲・無効事由が
あるから,本件選挙区割りを定める区割規定(以下「本件区割規定」とい
う。)は無効とされるべきであり,本件区割規定に基づいて施行された本件
選挙における小選挙区選挙も無効である。
(被告らの主張)
争う。
第3当裁判所の判断
1認定事実
前記第2の2の前提事実,後掲各証拠,弁論の全趣旨及び当裁判所に顕著な
事実によれば,以下の事実が認められる。
⑴衆議院議員の選挙制度における小選挙区制の採用と1人別枠方式
ア昭和25年に制定された公職選挙法は,衆議院議員の選挙制度につき,
中選挙区単記投票制を採用していたが,平成6年に公職選挙法が改正され,
これにより,衆議院議員の選挙制度は,従来の中選挙区単記投票制から小
選挙区比例代表並立制に改められた。(当裁判所に顕著な事実)
イ平成6年に制定された区画審設置法2条によれば,衆議院議員選挙区画
定審議会(以下「区画審」という。)は,衆議院小選挙区選出議員の選挙
区の改定に関し,調査審議し,必要があると認めるときは,その改定案を
作成して内閣総理大臣に勧告するものとされている。(当裁判所に顕著な
事実)
ウ平成24年法律第95号(以下「平成24年改正法」という。)による
改正前の区画審設置法3条(以下「旧区画審設置法3条」という。)は,
前記イの選挙区の区割りの基準(以下,後記の改正の前後を通じて「区割
基準」という。)につき,。厩爐砲いて,前記イの改定案を作成するに
当たっては,各選挙区の人口の均衡を図り,各選挙区の人口のうち,その
最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上にならないように
することを基本とし,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮して
合理的に行わなければならないものと定めるとともに,■温爐砲いて,
各都道府県の区域内の選挙区の数は,各都道府県にあらかじめ1を配当す
ることとし(以下,このことを「1人別枠方式」という。),この1に,
小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人
口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とすると定めていた(以
下,この区割基準を「旧区割基準」といい,この規定を「旧区割基準規
定」ともいう。)。(当裁判所に顕著な事実)
エ小選挙区比例代表並立制の導入の際に1人別枠方式を設けること等につ
いて,区画審設置法の法案提出者である政府側からは,投票価値の平等の
確保の必要性がある一方で,過疎地域に対する配慮,具体的には人口の少
ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点も重要であることか
ら,定数配分上配慮したものである旨の説明がされていた。(当裁判所に
顕著な事実)
⑵平成21年選挙
平成21年選挙の小選挙区選挙は,平成14年法律第95号により改定さ
れた選挙区割り(以下「平成14年選挙区割り」という。)の下で施行され
た(以下,平成21年選挙に係る衆議院小選挙区選出議員の選挙区を定めた
上記改正後(平成24年改正法による改正前)の公職選挙法13条1項及び
別表第1を併せて「平成14年区割規定」という。)。(当裁判所に顕著な
事実)
平成14年の上記改正の基礎とされた平成12年10月1日を調査時とす
る国勢調査の結果による人口を基に,平成14年区割規定の下における選挙
区間の人口の較差をみると,最大較差は人口が最も少ない高知県第1区と人
口が最も多い兵庫県第6区との間で1対2.064であり,高知県第1区と
比べて較差が2倍以上となっている選挙区は9選挙区であった。平成21年
選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は,選挙人数が最も少ない
高知県第3区と選挙人数が最も多い千葉県第4区との間で1対2.304で
あり,高知県第3区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は45選挙
区であった。(乙2の1,当裁判所に顕著な事実)
⑶平成23年大法廷判決
平成23年大法廷判決は,平成21年選挙について,選挙区の改定案の作
成に当たり,選挙区間の人口の最大較差が2倍未満になるように区割りをす
ることを基本とすべきものとする旧区画審設置法3条1項の定めは,投票価
値の平等の要請に配慮した合理的な基準を定めたものであると評価する一方,
平成21年選挙時において,選挙区間の投票価値の較差が前記のとおり拡
大していたのは,同条2項の1人別枠方式がその主要な要因となっていたこ
とが明らかであり,かつ,人口の少ない地方における定数の急激な減少への
配慮等の視点から導入された1人別枠方式は既に立法時の合理性が失われて
いたものというべきであるから,旧区割基準のうち1人別枠方式に係る部分
及び旧区割基準に従って改定された平成14年区割規定の定める平成14年
選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと判示
した。しかし,平成23年大法廷判決は,これらの状態につき憲法上要求さ
れる合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,旧区割基準規定
及び平成14年区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものと
いうことはできないとした上で,事柄の性質上必要とされる是正のための合
理的期間内に上記の状態を解消するために,できるだけ速やかに旧区割基準
中の1人別枠方式を廃止し,旧区画審設置法3条1項の趣旨に沿って平成1
4年改正区割規定を改正するなど,投票価値の平等の要請にかなう立法的措
置を講ずる必要があると判示した。(当裁判所に顕著な事実)
⑷平成24年改正法
平成23年大法廷判決後,平成23年大法廷判決を受けて行われた各政党
による検討及び協議を経て,平成24年6月及び7月に複数の政党の提案に
係る改正法案がそれぞれ国会に提出され,これらの改正法案のうち,旧区画
審設置法3条2項の削除及びいわゆる0増5減(各都道府県の選挙区数を増
やすことなく議員1人当たりの人口の少ない5県の各選挙区数をそれぞれ1
減ずることをいう。以下同じ。)を内容とする改正法案が,同年11月16
日に平成24年改正法として成立した。平成24年改正法は,附則において,
旧区画審設置法3条2項を削除する改正規定は公布日から施行するものとす
る一方で,各都道府県の選挙区数の0増5減を内容とする改正後の公職選挙
法の規定は次回の総選挙から適用する(公職選挙法の改正規定は別に法律で
定める日から施行する)ものとし,上記0増5減を前提に,区画審が選挙区
間の人口の較差が2倍未満となるように選挙区割りを改める改定案の勧告を
公布日から6か月以内に行い,政府がその勧告に基づいて速やかに法制上の
措置を講ずべき旨を定めた。
上記の改正により,旧区画審設置法3条1項が同改正後の区画審設置法3
条(以下「新区画審設置法3条」という。)となり,同条においては,前記
⑴ウ,隆霆爐里澆区割基準として定められた(以下,この区割基準を「新
区割基準」という。)。(以上につき,乙3の1(17ないし29頁),乙
4(241頁),乙8の6(2頁))
⑸平成24年選挙
平成24年改正法の成立と同日に衆議院が解散され,平成24年12月1
6日に平成24年選挙が施行されたが,平成24年選挙までに新たな選挙区
割りを定めることは時間的に不可能であったため,平成24年選挙は前回の
平成21年選挙と同様に平成14年区割規定及びこれに基づく平成14年選
挙区割りの下で施行されることとなった。(当裁判所に顕著な事実)
平成24年選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は,選挙人数
が最も少ない高知県第3区と選挙人数が最も多い千葉県第4区との間で1対
2.425であり,高知県第3区と比べて較差が2倍以上となっている選挙
区は72選挙区であった。(乙2の2)
⑹平成25年の公職選挙法及び区画審設置法の改正
平成24年改正法の成立後,平成24年改正法の附則の規定に従って区画
審による審議が行われ,平成25年3月28日,区画審は,内閣総理大臣に
対し,選挙区割りの改定案の勧告を行った。この改定案は,平成24年改正
法の附則に規定に基づき,各都道府県の選挙区数の0増5減を前提に,選挙
区間の人口の較差が2倍未満となるように17都県の42選挙区において区
割りを改めることを内容とするものであった。(乙3の2(37頁),乙5,
乙6)
上記勧告を受けて,平成25年4月12日,内閣は,上記改定案に基づく
選挙区割りの改定を内容とする公職選挙法の改正事項(平成14年区割規定
の改正規定及びその施行期日)を定める法制上の措置として,平成24年改
正法の一部を改正する法律案を国会に提出し,平成25年6月24日,この
改正法案が平成25年法律第68号(以下「平成25年改正法」という。)
として成立した。平成25年改正法は同月28日に公布されて施行され,平
成25年改正法による改正後の平成24年改正法中の上記0増5減及びこれ
を踏まえた区画審の上記改定案に基づく選挙区割りの改定を内容とする公職
選挙法の改正規定はその1か月後の平成25年7月28日から施行されてお
り,この改正により,各都道府県の選挙区数の0増5減とともに上記改定案
のとおりの選挙区割りの改定が行われた(以下,上記改正後(平成29年改
正後の平成28年改正法による改正前)の公職選挙法13条1項及び別表第
1を併せて「平成25年区割規定」といい,平成25年区割規定に基づく上
記改定後の選挙区割りを「平成25年選挙区割り」という。)。(乙4(2
41,242頁),当裁判所に顕著な事実)
上記改定の結果,平成22年国勢調査の結果によれば,選挙区間の人口の
最大較差は1対1.998となるものとされた。(乙3の2(53頁),乙
4(242頁))
⑺平成25年大法廷判決
平成25年大法廷判決は,平成24年選挙について,平成24年選挙時に
おいて平成14年区割規定の定める平成14年選挙区割りは平成21年選挙
時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものではある
が,前記⑷のような平成24年選挙までの間の国会における是正の実現に向
けた取組が平成23年大法廷判決の趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として
相当なものでなかったとはいえないから,憲法上要求される合理的期間にお
ける是正がされなかったとはいえず,平成14年区割規定が憲法14条1項
等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で,国会にお
いては今後も新区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取
組が着実に続けられていく必要があると判示した。(当裁判所に顕著な事
実)
⑻平成25年大法廷判決後の状況
国会においては,平成26年6月には,衆議院に,有識者により構成され
る検討機関として衆議院選挙制度に関する調査会が設置され,同調査会にお
いて衆議院議員選挙の制度の在り方の見直し等が進められ,衆議院議院運営
委員会において同調査会の設置の議決がされた際に,同調査会の答申を各会
派において尊重するものとする旨の議決も併せてされている。同調査会にお
いては,同年9月以降,平成26年選挙及び平成27年大法廷判決の前後を
通じて,定期的な会合が開かれ,投票価値の較差の更なる縮小を可能にする
定数配分等の制度の見直しを内容とする具体的な改正案などの検討が行われ
ていた。(乙8の1ないし16,乙9)
⑼平成26年選挙
平成26年11月21日の衆議院解散に伴い,同年12月14日,前記0
増5減の措置による改定を経た平成25年選挙区割りの下において平成26
年選挙が施行された。(当裁判所に顕著な事実)
平成26年選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は,選挙人数
が最も少ない宮城県第5区と選挙人数が最も多い東京都第1区との間で1対
2.129であり,宮城県第5区と比べて較差が2倍以上となっている選挙
区は13選挙区であった。(乙2の3)
⑽平成27年大法廷判決
ア平成27年大法廷判決は,平成26年選挙について,平成25年選挙区
割りにおいては,平成25年改正法成立の約3か月前の平成25年3月3
1日現在及び約6か月後の平成26年1月1日現在の各住民基本台帳に基
づいて総務省が試算した選挙区間の人口の最大較差は既にそれぞれ1対2.
097及び1対2.109であり,上記試算において較差が2倍以上と
なっている選挙区はそれぞれ9選挙区及び14選挙区となっており,さら
に,平成26年選挙時における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.
129に達し,較差2倍以上の選挙区も13選挙区存在していたものであ
り,このような投票価値の較差が生じた主な要因は,いまだ多くの都道府
県において,新区割基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異な
る定数が配分されていることにあるというべきであり,このような投票価
値の較差が生じたことは,全体として新区画審設置法3条の趣旨に沿った
選挙制度の整備が実現されていたとはいえないことの表れというべきであ
り,以上のような平成26年選挙時における投票価値の較差の状況やその
要因となっていた事情などを総合考慮すると,平成25年改正法による改
正後の平成24年改正法による選挙区割りの改定の後も,平成26年選挙
時に至るまで,平成25年選挙区割りはなお憲法の投票価値の平等の要求
に反する状態にあったものといわざるを得ないと判示した。(当裁判所に
顕著な事実)
イそして,平成27年大法廷判決は,憲法上要求される合理的期間内にお
ける是正がされなかったといえるか否かについて,平成23年大法廷判決
の言渡しから平成26年選挙までに,2回の法改正を経て,旧区画審設置
法3条2項の規定が削除されるとともに,直近の平成22年国勢調査の結
果によれば,全国の選挙区間の人口の較差が2倍未満となるように定数配
分と選挙区割りの改定が行われ,平成26年選挙時の投票価値の最大較差
は前回の平成24年選挙時よりも縮小し,更なる法改正に向けて衆議院に
設置された検討機関において選挙制度の見直しの検討が続けられているの
であって,このような考慮すべき諸事情に照らすと,国会における是正の
実現に向けた取組が平成23年大法廷判決及び平成25年大法廷判決の趣
旨を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものでなかったということは
できず,憲法上要求される合理的期間を徒過したものと断ずることはでき
ないと判示した。(当裁判所に顕著な事実)
なお,平成27年大法廷判決は,国会においては,今後も,衆議院に設
置された検討機関において行われている投票価値の較差の更なる縮小を可
能にする制度の見直しを内容とする具体的な改正案の検討と集約が早急に
進められ,新区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取
組が着実に続けられていく必要があるというべきであると判示した。(当
裁判所に顕著な事実)
⑾平成28年の区画審設置法及び公職選挙法の改正
ア前記⑻の衆議院選挙制度に関する調査会は,平成26年9月から平成2
7年12月までの16回にわたる会議の開催を経て,平成28年1月14
日,衆議院議長に対し,答申(以下「本件答申」という。)を行った。本
件答申の内容は,小選挙区選挙に関連する部分をみると,―圧脹ゝ聴の
定数を10人(小選挙区選出議員の定数を6人,比例代表選出議員の定数
を4人)削減する,∩挙区間の1票の較差を2倍未満とする,E堝刺
県への議席配分は,各都道府県の人口を一定の数値で除し,それぞれの商
の整数に小数点以下を切り上げて得られた数の合計数が小選挙区選挙の定
数と一致する方式(アダムズ方式)により行うこととし,各都道府県の議
席は,その人口を当該数値(除数)で除した商の整数に小数点以下を切り
上げて得られた数とする,づ堝刺楔への議席配分の見直しは,制度の安
定性を勘案し,10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口に
基づき行う,ヂ腟模国勢調査の中間年に実施される簡易国勢調査の結果,
較差2倍以上の選挙区が生じたときは,区画審は,各選挙区間の較差が2
倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うなどというもので
あった。(乙8の1ないし17,乙10(3,4頁))
イ本件答申を受けて,平成28年5月20日,平成28年法律第49号
(以下「平成28年改正法」という。)が成立した。平成28年改正法の
内容は,「人口」を「日本国民の人口」とした(平成28年改正法による
改正後の区画審設置法3条1項)上で,ゞ莢菴垣瀉嵋。馨鬚痢こ徳挙区
の日本国民の人口のうち,最も多いものを最も少ないもので除して得た数
が2以上とならないようにすることを基本とするとされていた規定につき,
基本とするという部分を削除し,各選挙区間の日本国民の人口の最大較差
が2倍以上とならないように厳格化すること(平成28年改正法による改
正後の区画審設置法3条1項),各都道府県の区域内の選挙区の数を平
成32年以降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づき,アダ
ムズ方式により配分すること(同法3条1項,2項),∧神37年以降
の簡易国勢調査の結果に基づく各選挙区間の日本国民の人口の最大較差が
2倍以上になったときは,各都道府県の選挙区数を変更することなく,区
画審が較差是正のために選挙区割りの改定案の作成及び勧告を行うものと
すること(同法3条3項,4条2項)等というものであった。もっとも,
平成28年改正法の附則においては,ゞ莢菴海蓮な神27年国勢調査の
結果に基づく小選挙区選出議員の選挙区の改定案の作成及び勧告を行うも
のとすること(附則2条1項),ただし,↓,硫定案の作成に当たって
は,小選挙区選挙の定数6減の対象県について,平成27年国勢調査の結
果に基づき,アダムズ方式により都道府県別定数を計算した場合に減員対
象となる都道府県のうち,議員1人当たりの日本国民の人口の最も少ない
都道府県から順に6県とすること(附則2条2項1号),J神27年国
勢調査の結果に基づき,各選挙区の日本国民の人口に関し,将来の見込人
口を踏まえ,平成32年までの5年間を通じて較差2倍未満となることを
基本として区割りを行うなどの措置をとること(附則2条3項),な神
28年改正法の施行後においても,全国民を代表する国会議員を選出する
ための望ましい選挙制度の在り方については,不断の見直しが行われるも
のとすること(附則5条)が定められた。(乙11の1(10ないし20
頁),乙11の2(4ないし10,12ないし17頁),乙13の1)
ウ平成28年改正法の成立後,前記イの平成28年改正法の附則の定めを
受け,区画審による審議が行われ,区画審は,平成29年4月19日,内
閣総理大臣に対し,選挙区割りの改定案の勧告を行った。この改定案は,
0増6減を前提に,選挙区間の最大較差が2倍未満となるように19都道
府県の97選挙区において区割りを改めることを内容とするものであった。
(乙14の1,2,乙16(7ないし13頁))
上記勧告を受けて,内閣は,平成29年5月16日,上記改定案に基づ
く選挙区割りの改定を内容とする公職選挙法の改正事項(平成25年選挙
区割規定の改正規定及びその施行期日)を定める法制上の措置として,平
成28年改正法の一部を改正する法律案を国会に提出し,平成29年6月
9日,この改正法案が成立した(平成29年改正法)。平成29年改正法
は同月16日に公布,施行された(ただし,平成29年改正後の平成28
年改正法中の公職選挙法の改正規定は,その1か月後の平成29年7月1
6日に施行された。)。平成29年改正後の平成28年改正法により,各
都道府県の選挙区数の0増6減とともに,上記改定案のとおりの選挙区割
りの改定が行われ(この改定により成立した選挙区割りが本件選挙区割り
であり,本件選挙区割りを定めている上記改正後の公職選挙法13条1項
及び別表第1が本件区割規定である。),平成27年国勢調査の結果によ
れば,選挙区間の日本国民の人口の最大較差は1対1.956とされた。
(前提事実⑶イ,乙14の1,乙16(13ないし16頁),乙18の
1)
⑿本件選挙
平成29年9月28日の衆議院解散に伴い,同年10月22日,前記0増
6減の措置等による改定を経た本件選挙区割りの下において本件選挙が施行
された。本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差をみると,選挙人
数が最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と比べて,選挙人数が最も多い選挙
区(東京都第13区)との間で1対1.979であり,較差が2倍以上と
なっている選挙区は0選挙区であった。(前提事実⑶ウ,当事者間に争いが
ない事実)
2争点⑴(本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っ
ているか否か)について
⑴憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば投票価値の平等を要求している
ものと解される。他方,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する絶
対の基準ではなく,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ない
し理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ,国会の
両議院の議員の選挙については,憲法上,議員の定数,選挙区,投票の方法
その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(43条2項,47
条),選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。
衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用
される場合には,選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定す
るに際して,憲法上,議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平
等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められている
というべきであるが,それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考
慮することが許容されているものと解されるのであって,具体的な選挙区を
定めるに当たっては,都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを
基本的な単位として,地域の面積,人口密度,住民構成,交通事情,地理的
状況などの諸要素を考慮しつつ,国政遂行のための民意の的確な反映を実現
するとともに,投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが
求められているところである。したがって,このような選挙制度の合憲性は,
これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお,国会に与えられた裁量権の行
使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり,国
会がかかる選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが,上記のよう
な憲法上の要請に反するため,上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超
えており,これを是認することができない場合に,初めてこれが憲法に違反
することになるものと解すべきである(最高裁昭和49年(行ツ)第75号
昭和51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁,平成23年大
法廷判決,平成25年大法廷判決及び平成27年大法廷判決参照)。
⑵前記1の認定事実(以下「認定事実」という。)⑾及び⑿のとおり,本件
選挙は,平成26年選挙の後に成立した平成29年改正後の平成28年改正
法の附則の規定に基づいて,0増6減等の措置により改定された選挙区割り
(本件選挙区割り)の下で施行されたものであり,0増6減等の措置により,
平成27年国勢調査の結果によれば,選挙区間の日本国民の人口の最大較差
は1対1.956とされ,本件選挙当日においても,選挙人数が最も少ない
鳥取県第1区と選挙人数が最も多い東京都第13区との間の較差は1対1.
979となっており,鳥取県第1区と比べて較差が2倍以上となっている選
挙区は0選挙区であった。
なるほど,認定事実⑾のとおり,平成29年改正後の平成28年改正法に
より,都道府県への議席配分(各都道府県への選挙区数の配分)はアダムズ
方式により行うこととされたが,本件選挙区割りは,平成29年改正後の平
成28年改正法の附則の規定に基づく0増6減等の措置により改定された経
過措置としての選挙区割りにすぎず,平成24年改正法による0増5減の措
置等(認定事実⑷)を経ているとしても,本件選挙区割りにおいては,0増
5減等の措置及び0増6減等の措置における定数削減の対象とされた県以外
の都道府県について旧区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経てお
らず,1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項が削除された後の新区
割基準並びに平成29年改正後の平成28年改正法による改正後の区画審設
置法3条が定める現行の区割基準(以下「現行区割基準」という。)に基づ
いた定数の再配分が行われていないから,いまだ相当数の都道府県において,
そのような再配分が行われた場合に配分されるべき定数とは異なる定数が配
分されているという評価を免れず,本件選挙区割りが,平成23年大法廷判
決が廃止を求めた旧区割基準中の1人別枠方式の影響を脱しているものとは
いえない。
しかし,認定事実⑾イのとおり,平成28年改正法の内容は,ゞ莢菴垣
置法3条の,各選挙区の日本国民の人口のうち,最も多いものを最も少ない
もので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とするとされ
ていた規定につき,基本とするという部分を削除し,各選挙区間の日本国民
の人口の最大較差が2倍以上とならないように厳格化すること,各都道府
県の区域内の選挙区の数を平成32年以降10年ごとに行われる大規模国勢
調査の結果に基づき,アダムズ方式により配分すること,J神37年以降
の簡易国勢調査の結果に基づく各選挙区間の日本国民の人口の最大較差が2
倍以上になったときは,各都道府県の選挙区数を変更することなく,区画審
が較差是正のために選挙区割りの改定案の作成及び勧告を行うものとするこ
と等というものであって,アダムズ方式を採用した点について,他の人口比
例を図る方式を選択した場合との優劣という点で異なる見解もあり得,また,
最終的に各都道府県に配分された選挙区数についての具体的な選挙区割りを
的確にする必要が残されることとなるが,平成28年改正法の内容自体につ
いては,合理性を有するものということができる。そして,本件選挙区割り
は,経過措置として,いわば応急措置的なものという評価は免れないところ
であるが,上述のとおり,本件選挙区割りにおいては,平成27年国勢調査
の結果によれば,選挙区間の日本国民の人口の最大較差は1対1.956と
され,本件選挙当日においても,選挙人数が最も少ない鳥取県第1区と選挙
人数が最も多い東京都第13区との間の較差は1対1.979となっており,
鳥取県第1区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は0選挙区であっ
たのであるから,平成21年選挙(認定事実⑵),平成24年選挙(認定事
実⑸)及び平成26年選挙(認定事実⑼)と比較すると,選挙当日における
選挙区間の選挙人数の較差が最も小さくなっているのであり,また,本件選
挙区割りは,いわば応急措置的なものであるとしても,選挙区間の選挙人数
の最大較差を2倍未満とするという結果が実現されており,新区割基準(平
成29年改正後の平成28年改正法による改正前のもの)及び現行区割基準
が求める選挙区間の日本国民の人口の最大較差を2倍未満とするという結果
を概ね満たしているという推認を妨げるに足りる証拠はない。
そうすると,原告らが主張する点を考慮しても,少なくとも本件選挙当時,
本件区割規定の定める本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反す
る状態にあったとはいえないから,本件選挙区割りを定める公職選挙法の本
件区割規定が憲法に違反していたということはできない。
3結論
よって,本件選挙における小選挙区選挙の東京都第2区,同第5区,同第8
区,同第9区及び同第18区並びに神奈川県第15区の各選挙が無効であると
は認められず,原告らの請求は,その余の争点について判断するまでもなく,
いずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第10民事部
裁判長裁判官 大段亨
裁判官 西村英樹
裁判官 松本真

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平成29(行ケ)35
主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求の趣旨
1平成29年10月22日施行の衆議院(比例代表選出)議員選挙の東京都選
挙区及び南関東選挙区における各選挙をいずれも無効とする。
2訴訟費用は被告の負担とする。
第2事案の概要等
1事案の概要
⑴衆議院議員総選挙の実施
平成29年10月22日,衆議院議員総選挙(以下,同日施行の衆議院議
員総選挙を「本件選挙」という。)が施行された。
本件選挙は,平成29年法律第58号による改正後の平成28年法律第4
9号(以下「平成29年改正後の平成28年改正法」という。)により改定
された選挙区割り(以下「本件選挙区割り」という。)の下で施行されたも
のである。
⑵原告ら
原告A,同B,同C,同D及び同Eは,いずれも本件選挙における衆議院
比例代表選出議員の選挙(以下「比例代表選挙」という。)の東京都選挙区
の選挙人であり,原告Fは,本件選挙における比例代表選挙の南関東選挙区
の選挙人である。
⑶本件請求の内容
本件は,原告らが,本件選挙区割りに関する公職選挙法の規定は,公正な
代表を選出する契機である選挙権の平等の保障(憲法15条1項,14条1
項,44条ただし書)に反し,憲法が規定する代議制民主主義(前文,1条,
43条1項)を害する違憲・無効なものであるから,これに基づき施行され
た本件選挙の前記⑵の各選挙区における選挙も無効であるなどと主張して,
公職選挙法204条の規定に基づいて,上記各選挙を無効とすることを求め
ている事案である。
2前提事実(いずれも当事者間に争いがないか,当裁判所に顕著な事実であ
る。)
⑴原告適格
原告A,同B,同C,同D及び同Eは,いずれも本件選挙における比例代
表選挙の東京都選挙区の選挙人であり,原告Fは,本件選挙における比例代
表選挙の南関東選挙区の選挙人である(当事者間に争いがない事実)。
⑵本件選挙の概要
本件選挙は,平成29年10月22日,平成29年改正後の平成28年改
正法による改正後の衆議院議員区画定審議会設置法及び公職選挙法の規定の
下で施行されたものである。本件選挙施行当時の衆議院議員の定数は465
人とされ,そのうち289人が小選挙区選出議員,176人が比例代表選出
議員とされ(公職選挙法4条1項),小選挙区選挙については,全国に28
9の選挙区(以下「小選挙区」ということがある。)を設け,各小選挙区に
おいて1人の議員を選出するものとされ(同法13条1項,別表第1),比
例代表選挙については,全国に11の選挙区(以下「比例区」ということが
ある。)を設け,各比例区において所定数の議員を選出するものとされてい
る(同法13条2項,別表第2。以下,これらの規定を併せて「本件区割規
定」という。)。総選挙においては,小選挙区選挙と比例代表選挙とを同時
に行い,投票は小選挙区選挙及び比例代表選挙ごとに1人1票とされている
(同法31条,36条)。(当事者間に争いがない事実又は当裁判所に顕著
な事実)
3当事者の主張
(原告らの主張)
本件選挙における比例代表選挙の東京都選挙区及び南関東選挙区の各選挙は,
以下の違憲・無効事由があるから,無効である。
⑴比例区単位の議員数の不平等(違憲・無効事由1)
日本全国の人口を比例代表選出議員の定数176で除した商である72万
2129人を基準人数とし,この基準人数に,本件選挙区割りにより各比例
区に配分された議員定数を乗じた積と,当該比例区の人口との差は,別表1
の「過(+)不足(−)議員数」の「過不足人数」欄記載のとおりとなる。
東京都選挙区においては,上記差が123万9078人となり,基準人数を
超え,議員数が1人を超えて足りない状況にあるから,本件区割規定は,人
口比例配分の原則に照らして許容することができる限度を超え,違憲である。
⑵比例区及び当該比例区内の小選挙区の合計議員数の不平等(違憲・無効事
由2)
本件選挙区割りにより比例区に配分された議員数と,当該比例区内の小選
挙区選出議員数とを合算した数を,比例区ごとに比較すると,別表2の
「H28年改正法」欄記載のとおりとなり,人口3位の東海選挙区の合計議員
数が53人であるのに対し,人口4位の九州選挙区の合計議員数が55人と
なっており,逆転現象が生じている。また,日本全国の人口を衆議院議員の
定数465で除した商である27万3322人を基準人数とし,この基準人
数に,各比例区に配分された議員定数(比例代表選出議員数と小選挙区選出
議員数の合計数)を乗じた積と,当該比例区の人口との差は,別表2の「過
(+)不足(−)議員数」の「過不足人数」欄記載のとおりとなり,11の
うち8の比例区において,上記差が基準人数を超え,議員数の過不足が生じ
ている。したがって,本件選挙区割りを定める本件区割規定が民主主義憲法
に違反することは明らかである。
⑶小選挙区単位の議員数の不平等(違憲・無効事由3)
小選挙区選挙と比例代表選挙は,選出された議員の地位,任期及び権能に
差異がなく,議員が議会で行使する投票権も等価値であること,小選挙区選
挙と比例代表選挙との並立制が採用されたのは,前者で民意の集約を図り,
後者で民意の忠実な反映を図ることにより,両者が相まって,公職選挙法が
目的とする公正かつ効果的な代表を創出せんとする趣旨によるものであるこ
と,重複立候補制の採用により小選挙区選挙と比例代表選挙との関係がより
緊密なものとなっていることから,小選挙区選挙と比例代表選挙は不可分一
体の「総選挙」である。したがって,本件選挙における小選挙区選挙が違
憲・無効である以上,比例代表選挙も違憲・無効である。
⑷南関東選挙区の区割りに関する裁量権の逸脱(違憲・無効事由4)
南関東選挙区は千葉県,神奈川県及び山梨県により構成されているが,千
葉県は他の2県と飛び地の関係にあり,これら3県を1つの選挙区に構成し
た理由は,政党の利害関係に結びついていると考えるのが相当であるから,
本件選挙区割りは立法裁量権を逸脱したものである。
(被告の主張)
本件選挙における比例代表選挙の東京都選挙区及び南関東選挙区の各選挙は,
以下のとおり,違憲・無効ではない。
⑴比例区単位の議員数の不平等(違憲・無効事由1)
本件選挙の比例区間における議員1人当たりの日本国民の人口の最大較差
は,四国選挙区と東京都選挙区との間の1対1.213にとどまり,この程
度の較差をもって違憲状態にあると判示した最高裁判所の判決がないことを
踏まえると,上記最大較差が憲法の投票価値の平等の要求に反するに至って
いたとはいえない。
⑵比例区及び当該比例区内の小選挙区の合計議員数の不平等(違憲・無効事
由2)
小選挙区選挙と比例代表選挙は異なる選挙であり,選挙制度に関する具体
的な定めが憲法の投票価値の平等の要求に反するか否かを判断する場合にお
いても,両選挙はそれぞれ別個独立にこれを判断すべきである。
⑶小選挙区単位の議員数の不平等(違憲・無効事由3)
小選挙区選挙と比例代表選挙は,選挙制度としての機能及び選挙の方法が
異なり,両者は異なる選挙であるから,比例代表選挙の無効を求める訴訟に
おいて,小選挙区選挙の憲法適合性を問題とすることはできない。
なお,本件選挙において重複立候補制が採用されていることは,両者が異
なる選挙であることを左右するものではない。
⑷南関東選挙区の区割りに関する裁量権の逸脱(違憲・無効事由4)
比例代表選挙の選挙区は,全国を単位とした場合には候補者数が膨大にな
り,都道府県を単位とした場合には比例代表制の趣旨が生かされないことに
なること,今日では,行政,経済その他の面において都道府県を超えた広域
的な結びつきが見られること等が考慮され,全国を11に分けた広域のブ
ロックとされたものであるから,「飛び地」の関係にある県が含まれている
からといって,国会の裁量権の限界を超えるものということはできない。千
葉県,神奈川県及び山梨県は,関東甲信越地域として行政,司法上同一の区
別とされることがある上,千葉県と神奈川県は海上において隣接し,東京湾
アクアライン等により直接結びついている。
第3当裁判所の判断
1比例区単位の議員数の不平等について(違憲・無効事由1)
原告らは,日本全国の人口を比例代表選出議員の定数176で除した商であ
る72万2129人をもって基準人数とし,この基準人数に,本件選挙区割り
により各比例区に配分された議員定数を乗じた積と,当該比例区の人口とを比
較すると,東京都選挙区の人口は,基準人数を超える超過部分が存在する,す
なわち,同区に配分された議員数が1人を超えて足りないことから,本件区割
規定は,人口比例配分の原則に照らして許容することができる限度を超え,違
憲であると主張するので,以下,検討する。
憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば投票価値の平等を要求しているも
のと解される。他方,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する絶対の
基準ではなく,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由
との関連において調和的に実現されるべきものであるところ,国会の両議院の
議員の選挙については,憲法上,議員の定数,選挙区,投票の方法その他選挙
に関する事項は法律で定めるべきものとされ(43条2項,47条),選挙制
度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。
衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用さ
れる場合には,選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに
際して,憲法上,議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保
たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべ
きであるが,それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮すること
が許容されているものと解されるのであって,具体的な選挙区を定めるに当
たっては,都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位
として,地域の面積,人口密度,住民構成,交通事情,地理的状況などの諸要
素を考慮しつつ,国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに,投
票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているとこ
ろである。したがって,このような選挙制度の合憲性は,これらの諸事情を総
合的に考慮した上でなお,国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有す
るといえるか否かによって判断されることになり,国会がかかる選挙制度の仕
組みについて具体的に定めたところが,上記のような憲法上の要請に反するた
め,上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是認するこ
とができない場合に,初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべき
である。
上記のとおり,定数配分及び選挙区割りを決定するに際しては,憲法上,議
員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重
要かつ基本的な基準とすることが求められているが,本件選挙における比例区
間の日本国民の人口較差は別表3のとおりであり,最大較差は,四国選挙区と
東京都選挙区との間の1対1.213にとどまっていたことに照らせば,比例
代表選挙に係る本件選挙区割りは,国会に与えられた裁量権の行使として合理
性を有するものと認められるから,憲法が要求する投票価値の平等を損なうと
ころがあるとは認められず,憲法に違反するところがあるとはいえない。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
2比例区及び当該比例区内の小選挙区の合計議員数の不平等及び小選挙区単位
の議員数の不平等について(違憲・無効事由2及び3)
原告らは,本件選挙区割りにより比例区に配分された議員数と当該比例区内
の小選挙区選出議員数とを合算した議員数を,比例区ごとに比較すると,他の
比例区より人口が少ないのに,議員数の多い比例区が存在するという逆転現象
が生じており,また,11のうち8の比例区において,議員数の過不足が生じ
ているから,本件選挙区割りを定める本件区割規定が民主主義憲法に違反する
ことは明らかであり,さらに,小選挙区選挙と比例代表選挙は,不可分一体の
「総選挙」であるから,本件選挙における小選挙区選挙が違憲・無効である以
上,比例代表選挙も違憲・無効であると主張する。
しかし,選挙区割りを異にする二つの選挙(小選挙区選挙と比例代表選挙)
の議員定数を一方の選挙の選挙区ごとに合計して当該選挙区の人口と議員定数
との比率の平等を問題とすることには,合理性がないことが明らかであり,ま
た,比例代表選挙の無効を求める訴訟において,小選挙区選挙の仕組みの憲法
適合性を問題とすることはできない(最高裁平成11年(行ツ)第8号同年1
1月10日大法廷判決・民集53巻8号1577頁,最高裁平成13年(行
ツ)第233号同年12月18日第三小法廷判決・民集55巻7号1712頁
参照)。
したがって,原告らの上記主張は,その余の点について判断するまでもなく,
採用することができない。
3南関東選挙区の区割りに関する裁量権の逸脱について(違憲・無効事由4)
原告らは,千葉県,神奈川県及び山梨県から構成される南関東選挙区は,千
葉県が他の2県と飛び地の関係にあり,3県を1つの選挙区に構成した理由は,
政党の利害関係に結びついていると考えるのが相当であるから,本件選挙区割
りは立法裁量権を逸脱したものであると主張する。
しかし,前記第2の2の前提事実⑵のとおり,比例区は,全国を11に分け
て設けられた選挙区であり,東京都及び北海道を除くと,府県の範囲を超える
広域のブロックとされている(公職選挙法13条2項,別表第2)が,証拠
(乙1,2)によれば,これは,全国を単位とした場合は,候補者数があまり
に膨大になること,他方,都道府県を単位とした場合には,比例代表の趣旨が
生かされないことに加え,今日では行政,経済において都道府県を超えた広域
的な結びつきが見られ,今後更に国民の生活圏の拡大が予想されることによる
ものであると認められる。そして,千葉県,神奈川県及び山梨県は,関東甲信
越地域として行政,司法上同一の区分に分類されることがあり,地理的に近接
し,交通上の直接のつながりもあり,いずれも東京都に隣接する地域として共
通していることは,当裁判所に顕著な事実である。そうすると,千葉県,神奈
川県及び山梨県を同一ブロックとして南関東選挙区としたことは,国会に与え
られた裁量権の行使として合理性を欠くものとはいえず,南関東選挙区を定め
た本件選挙区割りが立法裁量権の範囲を逸脱したものとは認められない。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
4結論
よって,本件選挙区割りを定める本件区割規定が憲法に違反するとはいえな
いので,本件選挙における比例代表選挙の東京都選挙区及び南関東選挙区の選
挙が無効であるとは認められず,原告らの請求はいずれも理由がないから,こ
れらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第10民事部
裁判長裁判官 大段亨
裁判官 西村英樹
裁判官 松本真

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