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妻嘱託殺人、猶予付き判決 津地裁「酌むべき事情ある」

 今年八月に伊賀市の自宅で妻=当時(69)=に頼まれて殺害したとして、嘱託殺人の罪に問われた同市川西、無職笹野隆一被告(76)の判決公判が十二日、津地裁であり、田中伸一裁判官は懲役三年、執行猶予四年(求刑懲役四年)の有罪判決を言い渡した。
 田中裁判官は、笹野被告と妻の悦子さんが寝たきりの長男=当時(42)=の介護に限界を感じて無理心中を図り、長男の死亡後、妻が笹野被告に自身の殺害を依頼した点を挙げ「殺害を決意したのは酌むべき事情がある」と執行猶予の理由を述べた。
 一方で、長男の主治医からは入院を勧められており「助言に沿えば状況が改善した可能性も否定できない」と指摘。「殺害という取り返しのつかない行為を決断したことは相応の非難を免れない」と述べた。
 判決によると、笹野被告は八月十八日午後四時十五分ごろ、自宅で悦子さんから殺すよう依頼され、首をひもで絞めて殺害した。
 笹野被告は事件直前の八月十五日ごろ、長男に毛布をかぶせて胸を圧迫して死なせたとして殺人容疑で書類送検されたが、津地検は今月十一日、嫌疑不十分で不起訴とした。
 ◆福祉に頼らない理由の検証を
 今回の事件は、高齢夫婦が介護サービスに頼らず社会から孤立を深める中で起きた。事件を繰り返さないためには何が必要なのか。専門家は「なぜ福祉に頼らなかったのか、丁寧に検証する必要がある」と指摘する。
 検察側の冒頭陳述によると、笹野被告と妻の悦子さんは「他人に長男の介護を任せたくない」と二〇一一年ごろから自宅で介護を続けた。今年七月、長男の病状が悪化したことで介護に限界を感じ、無理心中を考えるようになった。主治医は入院を勧めていたが、笹野被告は従わなかったという。
 被告人質問で田中伸一裁判官が「他に方法があったのでは」と問うと、笹野被告は「反省しています」と繰り返し、病院や施設に頼らなかった理由は明らかにならなかった。
 「介護殺人」を研究する日本福祉大の湯原悦子准教授(社会福祉学)によると、介護サービスを拒絶するケースでは、それ以前に介護サービスで嫌な思いをしたなどの理由が考えられるという。「事情を丁寧に聴くべきだ」と話す。
 警察庁によると、「介護・看病疲れ」が動機となった刑法犯は二〇〇七年に六十件だったが、一六年に百五十六件と十年間で二・六倍に増えている。
 今回の事件と同様、高齢者が自宅で介護する側となるケースは増えている。一六年の厚生労働省の統計によると、介護保険制度の要介護者のうち、主な介護者が同居者だったのは58・7%。うち六十歳以上は男性で70・1%、女性で69・9%だった。
 介護をする際、福祉に頼らないことで「よくできる人たち」と見られ、支援から遠のく人も少なくないという。湯原准教授は「『大丈夫ですか』とひと言かけるだけで、介護を抱え込んで苦しくなる状況が変わるかもしれない」と話した。(熊崎未奈)
(2017年12月13日 中日新聞)

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