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時効を教えず町が勝訴 14年間分の水道料金を請求

 長野県富士見町が、住民の男性(82)に水道料金徴収の時効を大きく超える14年前からの滞納分と延滞金計約607万円の支払いを求めて提訴し、その主張を認める長野地裁諏訪支部(手塚隆成裁判官)の判決が確定したことが分かった。提訴時の水道料金の時効は2年だったが、時効の成立には債務者側がそれを主張する必要があった。行政絡みの訴訟に詳しい弁護士は「住民に有利になることは行政側が教えるべきだ。地方自治体は一般企業とは違う」と、町の対応を疑問視している。
 町が男性を提訴したのは2018年夏。町は弁護士を代理人にし、男性は「お金がなかったので」と弁護士を雇わなかった。
 提訴を知るとほぼ同時に自宅隣で営む製造会社が倒産状態になっていた。県地方税滞納整理機構から同社への発注元に、支払代金の差し押さえが通告されたのだ。半月後に税金は支払ったものの、発注は消えた。男性は「町県民税は分割で払い続けていたのに」と話す。その後は生活するだけでやっとの状態が続いている。
 判決が言い渡されたのは翌19年11月21日。支払いを命じられた606万8892円の内訳は、04年3月〜18年4月の水道料金約335万円と延滞金約271万円だった。町は今年3月13日に男性への給水を停止。4月7日、地裁諏訪支部が自宅とその敷地一帯の強制競売開始を決定した。
 公債権の税金と違い、水道料は私債権として民法が適用される。時効は公債権の原則5年に対し、2年(今年4月の新民法施行からは5年)。ただ、債務者側が主張(「時効の援用」と呼ぶ)しなければ時効が有効とはならない。
 提訴を前に、町は「債権がある限り請求しない理由はない」(上下水道課)として、滞納が始まった14年前からの水道料金と延滞金を請求。時効は男性に知らせないことにした。同課は「裁判で時効の援用をされると想定したが、それがなかった」と明かす。
 男性の方は「時効なんて全く知らなかった」と説明する。控訴をしなかったため、判決が確定。直後、町は提訴後(18年5月以降)の水道料金も請求した。19年12月までの約28万円を、男性側は今年1月末までに支払っている。
 行政関係の訴訟を数多く手がけた岡谷市の松村文夫弁護士は、富士見町のやり方に「違和感を感じる」と話す。「地方自治の目的は住民福祉の増進」としたうえで、町が時効を教えなかったことを「配慮が足りなかった」と指摘。「特に、(弁護士を付けない)本人訴訟ですから。時効を教えなかったのはよくないと思う」。延滞金の利率が14・6%と高いことにも疑問を呈している。
(2020年6月1日 15時27分 朝日新聞)

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