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大津中2自殺 いじめとの因果関係認定 元同級生側2人に賠償命じる
 大津市で2011年、市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が自殺したのはいじめが原因だとして、遺族が当時の同級生3人と保護者に計約3850万円の損害賠償を求めた訴訟で、大津地裁は19日、いじめ行為と自殺との因果関係を認め、元同級生2人に、請求のほぼ全額となる計約3750万円の支払いを命じた。西岡繁靖裁判長は「生徒の自殺の主たる原因は、2人の元同級生の行為にあったと優に認められる」と判断した。
 市が設置した第三者調査委員会も2人の行為を「いじめ」と認定し、「重篤ないじめ行為は、自死につながる直接的要因になった」としており、この判断をほぼ踏襲する形となった。
 判決は、自殺の約1カ月前から2人の暴力などの行為がエスカレートし、生徒との間に「いじる」側と「いじられる」側という役割の固定化を生じさせたと指摘。連日顔を殴ったり、蜂の死骸を食べさせようとしたりした行為の積み重ねが、生徒に孤立感や無価値感を形成させたと認定した。
 また、この関係が今後も継続するとの無力感、絶望感につながり、死にたいと願う気持ち「希死念慮」を抱かせたと言及。こうした心理に至った人が自殺に及ぶことは「一般に予見可能」とし、2人の加害行為と自殺との間に相当因果関係が認められると結論付けた。
 一方、2人の保護者については監督義務違反がなかったと判断。残りの元同級生1人についても、関与の度合いが低いとして賠償責任を否定した。訴訟で元同級生側は「家庭環境などが原因だった」と主張したが、判決は原因を家庭に求めることはできないとした。
 生徒の自殺を巡っては、大津市教委が「いじめと自殺との因果関係は不明」と発表し、両親が「いじめで自殺したのは明らか」と12年2月、元同級生らと市を相手取り提訴。市の第三者委が、いじめと自殺との因果関係を認めたため、市は15年3月、両親に謝罪し、1300万円を支払うことで和解した。元同級生らとの裁判は分離されて続いていた。
 3人を巡っては、滋賀県警が12年12月、暴行や器物損壊など計13件の疑いで当時14歳だった2人を書類送検、刑事罰に問われない当時13歳だった1人を児童相談所に送致。大津家裁は14年、当時14歳と13歳の少年2人を保護観察処分、14歳の1人を不処分としている。【小西雄介、戸上文恵】
(2019年2月19日 15時53分(最終更新 2月20日 00時31分) 毎日新聞)

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平成24(ワ)121  損害賠償請求事件
主文
1被告A1及び被告B1は,原告甲に対し,連帯して,187
8万8684円及びうち1505万4942円に対する平成2
7年4月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
2被告A1及び被告B1は,原告乙に対し,連帯して,187
8万8684円及びうち1505万4942円に対する平成2
7年4月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
3原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用のうち,原告甲と被告A1及び被告B1との間に生じ
たものは,これを4分し,その1を同原告の,その余を同被告
らの負担とし,原告乙と被告A1及び被告B1との間に生じた
ものは,これを4分し,その1を同原告の,その余を同被告ら
の負担とし,原告らとその余の被告らとの間に生じたものは,
原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
1⑴被告A2,被告A3,被告B2,被告B3,被告C2及び被告C3は,原
告甲に対し,連帯して1929万9289円及びこれに対する平成23年
10月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
⑵被告A2,被告A3,被告B2,被告B3,被告C2及び被告C3は,原
告乙に対し,連帯して1929万9289円及びこれに対する平成23年
10月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2⑴被告A1,被告B1及び被告C1は,原告甲に対し,被告A2,被告A3,
被告B2,被告B3,被告C2及び被告C3と連帯して1929万928
9円及びこれに対する平成23年10月12日から支払済みまで年5分の
割合による金員を支払え。
⑵被告A1,被告B1及び被告C1は,原告乙に対し,被告A2,被告A3,
被告B2,被告B3,被告C2及び被告C3と連帯して1929万928
9円及びこれに対する平成23年10月12日から支払済みまで年5分の
割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1本件は,中学2年生で自殺した亡Xの両親である原告らが,亡Xの自殺の原
因は,同学年の生徒であった被告A1,被告B1及び被告C1(以下,被告A
1,被告B1及び被告C1を合わせて「被告少年ら」という。)から受けたい
じめにあるとして,被告少年らの親又はその配偶者である被告A2,被告A3,
被告B2,被告B3,被告C2及び被告C3(以下,被告少年らの親又はその
配偶者であるこれらの被告6名を合わせて「被告父母ら」という。)に対し,
被告少年らに責任能力がなかったことを理由に民法714条1項に基づき,又
は被告父母らに監督義務の懈怠があったことを理由に同法709条に基づき,
連帯して(同法719条),原告ら各自が亡Xから相続した死亡逸失利益及び
慰謝料並びに原告ら固有の慰謝料等の合計額3859万8578円から大津市
負担部分を除いた1929万9289円及びこれに対する亡Xの死亡日の翌日
である平成23年10月12日(以下,年の記載のない月日の記載は平成23
年のものとする。)から支払済みまで同法所定の年5分の割合による遅延損害
金の支払をそれぞれ求める(被告父母らに対する同法714条1項に基づく請
求と同法709条に基づく請求は選択的併合と解される。)とともに,被告少
年らに対し,責任能力があった場合には,同条に基づき,監督義務の懈怠を理
由に損害賠償責任(同条)を負うとされる被告父母らと連帯して(同法719
条),上記金員の支払をそれぞれ求める事案である。
なお,原告らは,民事訴訟法41条1項に基づく同時審判の申出をしている
が,同申出は,法律上両立し得ない関係にある民法714条1項に係る被告父
母らに対する請求(前記第1の1)と,同法709条に係る被告少年らに対す
る請求(前記第1の2)につきされているものと解される。
2前提事実(当事者間に争いがない事実若しくは当裁判所に顕著な事実又は後
掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
⑴ア亡Xは,平成▲年▲月▲日生まれで,死亡当時,大津市立a中学校(以
下「本件中学校」という。)の2年3組(以下,特記しない限り学年と
学級は亡X在籍当時の本件中学校のものを指す。)に在籍していた。原
告甲と原告乙は,亡Xの父母であり,原告らの間には,亡Xの3歳上の
姉である丙(以下「長姉」という。)と亡Xの双子の姉である丁(以下
「丁」又は「次姉」という。)がいる。(甲455,弁論の全趣旨)
イ被告A1は,亡Xの死亡当時,亡Xと同じ2年3組に在籍していた。被
告A2と被告A3は,被告A1の父母である(以下,被告A1,被告A2
及び被告A3を合わせて,「被告Aら」という。)。
ウ被告B1は,亡Xの死亡当時,亡Xと同じ2年3組に在籍していた。被
告B2は被告B1の母であり,被告B3は,平成22年に被告B2と婚姻
した同人の配偶者である(以下,被告B1,被告B2及び被告B3を合わ
せて「被告Bら」という。)(弁論の全趣旨)。
エ被告C1は,亡Xの死亡当時,亡Xとは別の学級である2年1組に在籍
していた。被告C2と被告C3は被告C1の父母である(以下,被告C1,
被告C2及び被告C3を合わせて「被告Cら」という。)。
⑵亡Xは,10月11日午前8時10分頃,自宅のあるマンションの14階
から地上に飛び降り,出血性ショックにより死亡した。(甲485)
⑶原告らは,平成25年10月9日,独立行政法人日本スポーツ振興センタ
ーから,大津市教育委員会を通じて,亡Xの死亡に係る災害共済給付金
(死亡見舞金)2800万円を受領した(甲487)。
⑷原告らは,大津市も被告として本件訴訟を提起し,前記第1の被告らに大
津市を加え,請求額も原告ら各自につき3859万8578円及びこれに
対する遅延損害金としていたが,平成27年3月17日の本件口頭弁論期
日において,大津市及びその余の被告らに対する請求を二分し,大津市に
対して1929万9289円及び遅延損害金の支払を,その余の被告らに
対して同額の金員の連帯支払をそれぞれ求める訴えに変更した上,同日の
和解期日において,大津市との間で,大津市が原告ら各自に対して既払金
(前記⑶の災害共済給付金2800万円)を除き,和解金としてそれぞれ
650万円(総額1300万円)を支払う旨の訴訟上の和解をした。そし
て,原告らは,同年4月3日,大津市から,上記和解金を受領した(甲4
88)。
第3争点及び争点に対する当事者の主張
1争点
⑴被告少年らによるいじめの有無,態様等及び共同不法行為の成否
⑵被告少年らの行為と亡Xの自殺との因果関係の有無
⑶被告少年らの責任能力の有無
⑷被告父母らの監督義務の懈怠の有無等
⑸損害額
⑹損害の填補の有無
2争点に対する当事者の主張
⑴被告少年らによるいじめの有無,態様等及び共同不法行為の成否
【原告らの主張】
ア被告少年らは,亡Xに対し,「いじられキャラ」との役割を一方的に押
し付け,その役割が入れ替わることのない関係性の中で,1学期以降,
別紙一覧表のとおり,亡Xを転倒させ,殴打し足蹴にするなどして負傷
させる,蜂の死骸を食べさせようとするといった暴行のほか,下半身を
半ば露出させて嘲笑する,顔面に落書きをする,眼前で亡Xの筆記用具
や教科書等を損壊する,自殺の練習や万引き等を強要し,自宅を荒らす
といったいじめを長期間にわたり継続的に行った。
イこれらのいじめは,一連一体の継続的なものとして行われ,亡Xに耐
え難い精神的,肉体的苦痛を与えたもので,全体として亡Xに対する共
同不法行為を構成するものである。
【被告Aらの主張】
ア原告らが被告A1によるいじめであると主張する行為に対する認否は別
紙一覧表の被告Aらの認否・反論欄記載のとおりであり,被告Aらにお
いて認めたもの以外に原告らの主張する被告A1の言動は存在しない。
イ被告A1と亡Xは,4月以降,亡Xが被告A1や被告B1の自宅に頻
繁に遊びにきて時には宿泊し,夏休みにはユニバーサル・スタジオ・ジ
ャパン(以下「USJ」という。)に3人で遊びにいき,花火大会にも
行くなど非常に仲が良かった。9月中旬頃には,亡Xが原告甲に無断で
購入したゲーム機について,被告A1が貸したことにして,原告甲への
口裏合わせに協力することもあった。このような関係にある中において
行われた被告Aらが認めた被告A1の上記アの言動は,亡Xに対する嫌
がらせなどではなく,男子中学生の友人間における遊びやけんかの範囲
内にある行為であったから,亡Xに対する不法行為を構成するようなも
のではない。
なお,別紙一覧表行為番号54について,被告A1は,何ら関与して
おらず,その存在も知らなかったから,他の被告少年らとの共同不法行
為が成立することはない。
【被告Bらの主張】
ア原告らが被告B1によるいじめであると主張する行為に対する認否は別
紙一覧表の被告Bらの認否・反論欄記載のとおりであり,被告Bらにお
いて認めたもの以外に原告らの主張する被告B1の言動は存在しない。
イ亡Xは,被告B1が転居してから初めて自宅に遊びにきた友人であり,
夏休みには,頻繁に遊びにきて1週間に2回程度はそのまま宿泊してい
くようになり,被告B1の兄とも親しくなって一緒に遊んでいた。また,
被告B1と亡Xは,夏休みに,祭りや花火大会,ゲームセンター,US
Jに行くなどして楽しい思い出を共有し,夏休みを経て,お互いに最も
親しく,一緒に過ごすことの多い友人となっていた。学級の中でいじら
れ役であった亡Xに対して被告B1がちょっかいを出すこともあったが,
それは亡Xとの間で形成された信頼関係を前提としたもので,ふざけた
言動もお互いに許し合っており,嫌がらせをしようとしたものではない。
被告Bらにおいて認めた被告B1の上記アの言動についても,そのよう
な友人関係や別紙一覧表記載の経緯及び言動の内容,これらの言動を経
ても亡Xと被告B1の互いの態度に変化がなかったこと等に照らせば,
亡Xに対するいじめとして違法と評価されるものでないことは明らかで
ある。
【被告Cらの主張】
ア原告らが被告C1によるいじめであると主張する行為に対する認否は別
紙一覧表の被告Cらの認否・反論欄記載のとおりであり,被告Cらにお
いて認めたもの以外に原告らの主張する被告C1の言動は存在しない。
イ被告C1と亡Xとの関わりは上記ア記載の程度である。これに加え,被
告C1は,亡Xや他の被告少年らとは学級も異なり,亡Xとの接点も希
薄で,自身が居合わせていない場面で亡Xと他の被告少年らとの間でど
のようなやり取りがあったのかも把握していなかったのであるから,被
告C1の上記行為が亡Xに対する不法行為を構成するものではなく,他
の被告少年らとの間に共同不法行為が成立することもない。
⑵被告少年らの行為と亡Xの自殺との因果関係の有無
【原告らの主張】
ア亡Xは,前記⑴【原告らの主張】記載のとおり,元は仲の良かった被告
少年らから受けた執拗で苛烈な暴行や屈辱的な言動,その他の陰湿ない
じめにより耐え難い身体的,精神的苦痛を被り,自己肯定感を喪失する
中で,これを同級生や教員らが看過したことから疎外感,孤立感を更に
深めて精神的に追い詰められて自殺を決意し,実行したもので,被告少
年らによる亡Xに対するいじめの執ようさ,苛烈さ及び悪質さ等からす
れば,これにより亡Xが希死念慮を抱き自殺に至ることに高度の蓋然性
があることは明らかであり,被告少年らによるいじめと亡Xの自殺との
間には事実的因果関係がある。
イいじめは被害者に身体的,精神的苦痛を与え,短期間で孤独感,無力
感及び無価値感を覚えさせるなど深刻な影響を及ぼし,時に急性スト
レス障害(ASD)や心的外傷後ストレス障害(PTSD)その他の
精神症状を発症させるなどして,希死念慮による自殺を生じさせる行
為であり,特に暴行その他の有形力の行使を伴う場合には,被害者を
より一層耐え難い状態に追い詰めることになるし,思春期のいじめは
仲間集団から排除されることによる強い孤立感を感じさせることにな
るから,そのようないじめは,一般的に被害者に希死念慮を抱かせ,
最終的には自殺を決行させるものであり,このようないじめによる自
殺は通常起こり得る結果であるといえる。
亡Xは,被告少年らから前記⑴【原告らの主張】記載のとおり,正に
被告少年らから執拗で苛烈な暴行や屈辱的な言動,その他の陰湿な行
為を伴ういじめを受け,耐え難い身体的,精神的苦痛によって追い詰
められ,学校でつらいことがあった旨示唆した上で希死念慮を示すな
どした後に自殺したもので,ASD,PTSDその他の精神的疾患に
罹患していたとも推認される状況にあったのであるから,被告少年ら
のいじめと亡Xの自殺との間には,相当因果関係が認められるという
べきである。
なお,被告C1は,亡Xのみならず,他の被告少年らにとっても苦手
意識を抱かせるような異質さ,特異性を有し,亡Xにとっては何をさ
れるか分からない脅威となる存在であったが,その被告C1が被告B
1と共に10月8日に亡X宅を訪れ,部屋を荒らして漫画本や腕時計
を窃取し,いじめから逃避することができる最も安全で唯一の場所で
ある亡Xの自宅まで奪ったことが,亡Xを最終的に追い詰める決定的
な出来事となったというべきである。
いじめによる死亡結果の発生を特別損害とみた場合であっても,前記
⑴【原告らの主張】記載の加害行為を自ら行った被告少年らは,具体
的な加害行為の態様や程度,亡Xの被った心身の苦痛や孤立の状況等
を全て認識しており,亡Xが自殺すること又は亡Xが耐え難い苦痛に
より追い詰められ,自殺に追いやられる危険な状態に陥っていること
を認識又は予見することができる状況にあった。
以上によれば,被告少年らの加害行為と亡Xの自殺による損害との間
には相当因果関係が認められるというべきである。
ウなお,被告らは,亡Xの家庭に問題がある旨主張するが,そもそも酷
い嫌がらせやいじめ,暴行等を受けるストレスは人生の中でもまれに経
験するような強いものであるのに対して,家庭問題は日常的に経験する
ストレスで一般的に問題とならない程度のものにすぎない。
この点をおくとしても,亡Xが小学6年生の頃に滋賀県中央子ども家
庭相談センター(以下「相談センター」という。)所長に対して本件中
学校の校長が行った虐待通告は合理的な根拠のないもので,亡Xやその
長姉に対する虐待事象が確認されないとして約2か月で終了しており,
亡Xが小学校の頃から家庭で繰り返し虐待を受けていたなどという事実
は存在しない。原告甲は,社会性や常識を持った人物に育ってほしいと
考えて子が不適切な言動を取ったときは厳しく口頭で叱り,同じことを
繰り返した場合にはたたくこともあったが,理由もなく日常的にたたく
というようなことはなく,子らが中学生になってからは,たたくこと自
体控えるようになっており,子と親との信頼関係を壊すようなものでは
なかった。また,原告ら家族は,十分にコミュニケーションを取ってご
く普通の家庭生活を送っており,原告乙と長姉が近くで別居して暮らす
ようになった後は家族がそろう機会はなかったものの,各自が連絡を取
り一緒に過ごすことができ,親子関係も良好に維持されていた。さらに,
原告甲が祖父母の金員を盗んでいた亡Xに書くように指導した反省文は,
内容も常識的で,亡Xを精神的に追い込むようなものではなかった。そ
して,亡Xは原告甲を慕っており,自殺直前の時期でも,中間試験前に
は一緒に問題集を解き,試験後には手応えを報告し,自殺の前日に原告
乙と墓参に出掛けた際には原告甲の好物を選んで購入し,帰宅後は原告
甲の作った夕食を取るなどしていた。これらの事情に照らせば,被告ら
の指摘する家庭問題など存在しないことは明らかというべきである。
【被告Aらの主張】
ア前記⑴【被告Aらの主張】欄記載のとおり,被告A1の亡Xに対する
言動で問題とされるのは9月中旬頃から10月中旬頃までの約3週間に
おける男子中学生同士の遊びや単なるけんかの範囲内にある行為にすぎ
ない上,被告A1と亡Xは非常に仲が良く,亡Xがしばしば被告Aら宅
に泊まったり,夏休みには被告B1らと共にUSJや花火大会に出掛け
たり,9月中旬頃にも亡Xの依頼で被告A1が原告甲に対する口裏合わ
せをするような友人関係にあった。
被告A1の言動や亡Xとの友人関係が上記のようなものであったのに
対し,亡Xの家庭環境等についてみると,亡Xは,小学生の頃から原告
甲によって顔や頭を殴られるなど体罰を含む厳しいしつけを受けていた
が,原告甲の暴言を契機に原告乙が2月に自宅を出て別居し,7月には
亡Xの長姉も原告甲とのけんかを契機に自宅を出て原告乙の下で暮らす
ようになったことから,両名と離れて自宅で原告甲及び次姉と生活する
ようになり,7月頃には担任のア教諭に対し,父親が嫌であり,何かあ
っても家には連絡をしないでほしいなどと述べるようになっており,大
好きなゲーム機も原告甲から取り上げられていた。そのような中,9月
頃以降,亡Xが祖父母宅から金員を窃取したり,原告甲に無断で被告A
らや被告Bら宅に外泊したり,夏休みに被告A1らとUSJに出掛けて
いたことが原告甲の知るところとなり,亡Xは同原告から殴られたり足
蹴にされたりしたほか,掃除用具の柄の部分で何度もふくらはぎをたた
かれ,同月15日には体罰を受けた後に泣きながら本件中学校に電話を
するような状況に置かれていた。その後,亡Xは,原告甲から,同月2
3日に予定されていた被告Bら宅での外泊を取り止めさせられ,以後の
外泊を一切禁止されたが,さらに,亡Xの発達障害を疑って心療内科で
の診察を検討していた原告甲からお前は病気であるというようなことを
言われて自宅を飛び出し,同月25日には帰宅せずに自宅のあるマンシ
ョン一階のソファで一晩過ごすなどしていた。また,亡Xは,10月7
日には,被告A1らに対し,原告甲が被告A1と被告C1のことを悪く
言っている旨述べて「甲死ね」などと口にするようになった。そのよう
な中,亡Xは,死亡前日の同月10日には原告乙と一緒に隣県への墓参
りに出掛け,帰宅途中,「帰りたくない」「ママ,どうしたら戻ってく
んの」などと述べたが,原告乙から離婚も考えている旨初めて告げられ
た。亡Xは,同日,帰宅後に原告甲からの指示で祖父母の金員を盗んで
いたことについての反省文の書き直しをさせられたが,反省文には「わ
るい友達は一人もいない。それだけはわかってほしい。」などと記載し
ていた。死亡当日の同月11日,亡Xは,自宅のテレビの後ろにパンの
袋を捨てたことについて,原告甲から午前7時頃に電話で叱責され,通
話の最中に亡Xが一方的に電話を切ったため午前7時57分にも原告甲
から再度電話を受け,上記の点について注意をされた。その約13分後
の午前8時10分頃に,遺書を残すことなく,自宅のあるマンションの
14階から転落して死亡した。
これらを総合すると,亡Xは,中学2年生の男子にとって精神的負担
を伴う衝撃的な出来事である父母の離婚を亡Xと強いきずなを有してい
た別居中の母から前日に告げられたこと,父から暴力や厳しい叱責等を
受けてゲームや友人との交遊を禁じられるなどしていたこと,そのよう
な父から反省文を作成させられる中で,死亡当日の早朝に更に叱責され
たこと等によって,悲しみ,気分の落ち込み,孤独,無力,希望の無さ,
無価値感等の感情を抱き,これにより希死念慮が発生し,衝動的に自殺
したとみるのが相当であり,被告A1の言動と亡Xの死亡との間に事実
的因果関係は存在しないというべきである。
イ本件において認められる各事情からすると,亡Xの自殺は通常損害と評
価できるものでは到底ない。また,上述した被告A1の亡Xに対する言
動の内容や経過,被告A1と亡Xとの関係性,亡Xの置かれていた環境,
そのような亡Xの環境を被告A1が知らなかったこと等に照らせば,被
告A1において,亡Xの自殺を予見することは不可能であった。
以上によれば,被告A1の行為と亡Xの死亡との間に相当因果関係を認
めることができないことは明らかである。
【被告Bらの主張】
ア本件では,。卸遒妨狭隹気,7月に亡Xの長姉がいずれも原告甲との
不仲を理由に自宅を出て別居するようになり,10月10日には当初半
年間の予定で別居していた原告乙がいつ自宅に戻るのか尋ねた亡Xに対
して離婚も考えている旨告げるに至るなど亡Xの家族関係が崩壊してい
たこと,原告甲がしつけと称して亡Xを小学生の頃から厳しく叱責し,
時に殴打したり,足蹴にしたり,「殺すぞ」と申し向け,亡Xが中学生
になってからも顔面にあざができるほど殴打しており,9月にも亡Xが
原告甲に無断でUSJに行ったり,被告Bら宅に宿泊したり,預金を引
き出すなどしていたことを知って亡Xを怒鳴り付け,顔や頭を殴打し,
体を足蹴にし,掃除用具の柄で何度もふくらはぎをたたくなど懲戒権を
はるかに逸脱した身体的虐待を加えて亡Xとの関係が悪化していたこと,
8狭霍辰発達障害の特徴に合致する言動のあった亡Xに対して暴力を
伴う叱責により一方的な価値観を押し付けて抑圧し自尊心を損なわせて
自宅における亡Xの居場所を奪っていたこと,じ狭霍辰亡Xの問題行
動の原因が被告少年らにあると決め付けて校外で被告少年らと遊ぶこと
を禁止するなどして亡Xに対する監督を強化し,被告少年らとの交友,
祖父母宅,学校の教職員との関係といった亡Xの居場所を失わせていっ
たこと,ニ苅悗聾狭霍辰砲茲辰導惱塾に通わされ成績が良くなるまで
大好きなゲーム機を取り上げられていたが,10月上旬に返却された中
間テストの成績が良くなかったこと,児童支援機関から亡Xの発達障
害の可能性について指摘を受けた原告甲が9月25日に亡Xに対して
「病気かもしれない」旨告げたところ,亡Xが自宅を飛び出して一人で
野宿をして一夜を明かすなど精神的に大きな衝撃を受けていたこと(亡
Xは発達検査の受検予定日の前日に自殺しており,自身が病気であると
いわれたことやその検査をすることが心理的負担となったことがうかが
われる。),亡Xが祖父母宅から金員を盗んだ上に嘘をついて隠蔽し
ようとしたことについて,被告少年らによる恐喝を疑う原告甲から執拗
に厳しく金員の使途を追及され,叱責されながら手書きで繰り返し反省
文の書き直しをさせられたことで心理的圧迫を受けていたこと等,被告
少年らの行為とは別の多数の要因が亡Xの自殺に強く影響しており,被
告少年らの行為と亡Xの自殺との間に事実的因果関係は存在しない。
イ被告少年らの行為は,仮に亡Xの自殺の一因となっているとしても,苛
烈で執ようなものでも長期間にわたる反復継続的なものでもないから,
亡Xの自殺によって生じた損害は通常損害ではなく特別損害である。
そして,被告B1の亡Xに対する行為の内容や,そもそも被告B1が自
らの行為についていじめに当たるとの認識すら有していなかったこと等
に鑑みれば,被告B1において亡Xの自殺を予見し,又は予見し得たと
いえないことは明らかである。
【被告Cらの主張】
ア被告C1の亡Xに対する言動の内容及び程度は前記⑴【被告Cらの主張】
欄記載のとおりで,その関わりは限られている上,いずれも亡Xの同意
や理解があり,亡Xの心理的負荷となるようなものではなかった。他方,
亡Xの家庭環境についてみると,原告乙と亡Xの長姉は原告甲の言動を
理由に亡Xの意向に配慮することなく自宅を出て別居し,原告乙は当初
半年間の予定であった別居期間を延長している状況にあり,そのような
中で,原告乙は,亡Xの死亡の前日に,いつ戻ってくるのか尋ねる亡X
に対して離婚も考えている旨返答していた。また,原告甲は,亡Xに対
して,9月15日以降,亡Xが無断で外泊やUSJに行くなどしていた
ことを知って亡Xのふくらはぎを掃除用具の柄でたたき,同月21日に
は亡Xが自己名義の預金を無断で引き出して使用していたことを知って
金員の使途を書き出させたり,テストの成績が良くなるまでという条件
でゲーム機を取り上げ,以後の外出や外泊を禁止するなどし,同月25
日には亡Xが祖父母宅で金員を窃取していたことを知って児童支援機関
に相談したところ発達障害の可能性を示唆されたことから亡Xに対して
病気かもしれないと述べ,いら立った亡Xが投げ捨てるような言葉を残
して自宅を出て野宿をするような状況を作出し,亡Xの自殺の数日前に
は祖父母宅から現金を持ち出した件について複数回反省文を書かせ,亡
Xの自殺の当日にはパンの袋が放置されていたことの注意のため2回に
わたり電話をするなどしていた。これらの家庭環境や原告甲との関係性
が亡Xにとって心理的負荷となっていたと考えられること等も併せ考慮
すれば,被告C1の言動と亡Xの自殺との間に事実的因果関係は存在し
ないというべきである。
イ上記の点に加え,亡X,被告A1及び被告B1とは学級も異なり亡Xと
の接点も希薄で,自身が居合わせていない場面で亡Xと被告A1及び被
告B1との間でどのようなやり取りがあったのかも把握していない被告
C1が亡Xの自殺を予見することなど到底不可能であるから,被告C1
の言動と亡Xの自殺との間には相当因果関係も存在しないというべきで
ある。
⑶被告少年らの責任能力の有無
【原告らの主張】
被告少年らのいじめは,いずれも極めて悪質かつ重大で,卑劣なものであ
るが,そのほとんどが公衆の面前で繰り返し行われており年齢相応ではな
い短絡的なものといえること,被告少年らが亡Xの自殺後も死者に対する
冒とくを繰り返し,反省の色は皆無でいじめを受ける側の心情に思いを致
すことができないこと等に鑑みれば,当時,被告少年らは,法律上非難さ
れ何らかの法的責任が生じることを認識し得る精神能力を有しておらず,
道徳上非難されることを認識する知能も欠いており,責任能力がなかった
ことは明らかである。
したがって,被告父母らは,民法714条に基づく損害賠償義務を免れな
い。
【被告Aらの主張】
被告A1は,本件当時,中学2年生の通常の生徒であり,自己の行為の法
律上の責任を弁識するに足りる知能を備えていない者であったことをうか
がわせる事情は存在しないから,責任無能力者であったといえないことは
明らかである。
【被告Bらの主張】
否認ないし争う。
【被告Cらの主張】
被告C1の年齢からして,本件当時に被告C1が責任無能力者であったと
いえないことは明らかである。
⑷被告父母らの監督義務の懈怠の有無等
【原告らの主張】
ア被告A2及び被告A3について
被告A2及び被告A3は,中学2年生の頃には被告A1の学習意欲が
落ち,夏休みの宿題をしなくなったのに指導を疎かにしており,10
月5日に被告A1が亡Xとけんかをしたとして本件中学校から呼出し
を受けた際にも,被告A1が亡Xを殴り無理矢理に殴り返させている
ことや周囲には日頃の様子をいじめと心配する声があるという状況を
認識しながら,いじめではないという担任教諭の言葉を鵜呑みにし,
その場限りの表面的な指導や雑談の中で言及するに留まっており,適
切な措置を執らずにこれを放任した。
被告A2及び被告A3が被告A1の動静を日頃からきめ細かく観察
し,真剣に向き合っていれば被告A1によるいじめは回避できたはず
であるから,被告A2及び被告A3の監督義務の懈怠と亡Xの死亡の
結果との間には因果関係がある。
イ被告B2及び被告B3について
被告B1は,中学生になると欠席や遅刻が増えて怠学するようになり,
中学1年生の2学期には万引きと喫煙で警察に補導され,9月9日に
は他の生徒と机の片付けに際して言い争いとなり,腰に机をぶつけら
れたことに立腹し硬い水筒を投げてその生徒の頭に当てるなど,怠
学・万引きに留まらず他者への暴力行為が現れ,その非行性が深まっ
ていたほか,夏休みには亡Xを連日のように自宅に呼んで週2回程度
宿泊させ,深夜にも招き入れるなど問題行動が生じていたところ,被
告B2及び被告B3はしばしば本件中学校から呼出しを受けるなどし
てこれらを知りながら,時に表面的な注意をする程度で,被告B1の
指導を行えるだけの関係性を築くこともなく放任していた。
被告B2及び被告B3が被告B1の動静を日頃からきめ細かく観察し,
真剣に向き合っていれば被告B1によるいじめは回避できたはずであ
るから,被告B2及び被告B3の監督義務の懈怠と亡Xの死亡の結果
との間には因果関係がある。
ウ被告C2及び被告C3について
被告C1は,中学生になると欠席や遅刻が増え,授業を妨害し,怠学
するようになったが,被告C2及び被告C3は,これを知っていた上,
被告C1の授業妨害や粗暴な言動,万引き等について何度も本件中学
校から呼出しを受け,被告C1が文化祭前頃には他の生徒の乳首を強
くつまむなどして負傷させたことについて被害者の下に謝罪に行った
こともあるのに適切に対処することなく放置しており,9月12日頃
には被告C1が登校せずにコインランドリーのトイレに1日籠もり,
10月7日頃には朝の6時半頃に自宅を飛び出すなど明らかな問題行
動に及んでいたのに適切な指導をしていなかった。
被告C2及び被告C3が被告C1の動静を日頃からきめ細かく観察し,
真剣に向き合っていれば被告C1によるいじめは回避できたはずであ
るから,被告C2及び被告C3の監督義務の懈怠と亡Xの死亡の結果
との間には因果関係がある。
【被告Aらの主張】
アそもそも前記⑴【被告Aらの主張】ア記載の被告A1の行為は不法行
為と評価されるものではなく,亡Xの自殺との間に事実的因果関係も存
在しないから,被告A2及び被告A3に不法行為責任は生じない。
イこの点をおくとしても,亡Xが苦痛に感じたとされる被告A1の行為
は10月5日のトイレ内での出来事のみであるところ,被告A3は,当
日に呼び出されてア教諭から状況の説明とともに当該行為を亡Xに対す
るいじめとは認識していない旨の報告を受けた後,被告A1から事情を
聞いた上で注意し,被告A2にも報告しているのであるから,被告A1
の行為に対する監督義務は尽くされている。また,仮に,当該監督義務
の不履行があったとしても,被告A1は以後亡Xに対して苛烈ないじめ
と評価されるような行為をしておらず,その後に原告乙からの離婚の意
向の告知や原告甲からの叱責を受けて同月11日に亡Xが自殺したとい
う経緯があることや,被告A1と亡Xの関係性,亡Xの家庭環境等を被
告A2及び被告A3が知り得なかったことに鑑みれば,被告A2及び被
告A3に故意又は過失があるとはいえないし,被告A2及び被告A3の
監督義務違反と亡Xの自殺との間に事実的因果関係や相当因果関係があ
るともいえない。
ウ被告A2及び被告A3は被告B1及び被告C1の亡Xに対する行為な
ど知り得ず,被告B2及び被告B3の被告B1に対する指導状況,被告
C2及び被告C3の被告C1に対する指導状況についても知り得ないか
ら,被告A2及び被告A3と他の被告らとの間で共同不法行為が成立す
る余地はない。
【被告Bらの主張】
被告B2及び被告B3は,前記⑴【被告Bらの主張】ア記載の被告B1の
亡Xに対する行為について本件中学校から知らされたことはなく,全く関
知してないから,被告B2及び被告B3には被告B1の行為や亡Xの自殺
について予見可能性がなく,相当因果関係は存在しない。
【被告Cらの主張】
そもそも前記⑴【被告Cらの主張】ア記載の被告C1の行為が不法行為と
評価されるものではなく,亡Xの自殺との間に事実的因果関係も存在しな
いから,被告C2及び被告C3の監督義務が問題となる余地はない上,被
告C2及び被告C3は,クラスになじむことができずに遅刻や早退が増加
しているという被告C1が当時抱えていた問題に対して情報を共有し,被
告C1を諭して出席を促すなど適切な対応をしていたのであり,監督義務
の懈怠と評価されるような事情は存在しない。
⑸損害の有無及びその額
【原告らの主張】
ア亡Xの損害
逸失利益3959万7157円
亡Xは,死亡当時14歳であったから,平成21年度賃金センサス産
業計・企業規模計・男子労働者・学歴計・全年齢平均賃金529万8
200円を基礎とし,就労可能期間を18歳から67歳までとし,生
活費控除率を5割とすると,逸失利益の額は3959万7157円と
なる(529万8200円×(1−0.5)×14.9474=39
59万7157円。小数点以下切り捨て。以下同じ。)。
慰謝料2000万円
亡Xは,被告少年らのいじめにより悩み,苦しみ抜いた末に14歳で
命を絶たなければならなかったのであり,その精神的,肉体的苦痛に
対する慰謝料の額は2000万円を下らない。
イ原告らの損害
慰謝料各500万円
亡Xは,心の優しい,友人や後輩を大切にする,ムードメーカー的存
在であり,中学2年生という難しい時期にあっても,原告らが将来を
楽しみにし,愛情を持って育てた大切な息子であった。その亡Xをい
じめによる自殺という最も悲しい形で失った原告らの精神的苦痛は言
葉では表し難く,その悲しみが薄れることはない。それにもかかわら
ず,いじめが存在したとの教育委員会の判断を独善的な観点から批判
する文書が配布され,亡Xの自殺の責任が原告甲にあるかのような内
容の電子メールが送付されるなどして,原告らの精神的苦痛はより大
きなものとなっている。こうした原告らの精神的苦痛を慰謝する足り
る金額は,各自500万円を下らない。
葬儀費用60万円
ウ弁護士費用各350万円
亡Xからの相続分と原告らの損害の合計額は,原告ら各自につき,3
509万8578円であるから,弁護士費用の額はそれぞれ350万円
とするのが相当である。
エ小計
以上によれば,原告ら各自の損害額は3859万8578円となり,大
津市との和解の際に2分の1に分けた被告らに対する損害の額は,原告
ら各自につき1929万9289円となる。
【被告らの主張】
争う。
⑹損害の填補の有無
【被告らの主張】
原告らは,亡Xの自殺に関し,独立行政法人日本スポーツ振興センター
からの災害共済給付金(死亡見舞金)2800万円と大津市からの和解金
1300万円の合計4100万円を受領しており,既に損害が填補されて
いる。
【原告らの主張】
原告らに対する大津市等からの既払金4100万円については,大津市に
対する請求金額(元本と遅延損害金で4100万円を超える額)に充当さ
れ,被告らに対する請求について損益相殺等の影響が生じるものではない。
第4当裁判所の判断
1前記前提となる事実,後掲各証拠(ただし,後記認定に反する部分は採用し
ない。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。なお,認定事
実の末尾に付記した【1】などの数字は,別紙一覧表の行為番号を指す(ただ
し,その一部のみを含む場合もある。)。
⑴ア亡Xは,平成22年4月に本件中学校に入学した男子生徒であり,卓球
部に所属しており,2年生当時の身長は170センチメートルを超えて
いた。亡Xは明るく温厚で,親しみやすい性格であり,級友の笑いを誘
うような目立った言動も見られ,周囲の雰囲気を和ませる人柄であった
が,学校生活では,整理整頓が不得手で,字が汚く,忘れ物や提出物の
不提出が多かった。なお,亡Xは,級友からは,自信家の側面もあると
も見られており,本件中学校の教員らからは,規範意識が十分でなく,
人と違うことをしたり困らせたりして自分に興味を持たせようとする傾
向があって,多少の配慮を要する生徒である,自分より立場が下だと思
う生徒には余計な干渉をして授業中にも迷惑を掛けるが,立場が上だと
思う生徒には何も言えずに従っており,ルーズな面が目立つとも見られ
ていた。(甲49,51,52,55,57,103,105,121,
225,226,457,乙イ3の7,乙ロ20の1,証人ア,原告乙
本人)
亡Xは,本件中学校入学当時は自宅である原告甲宅で原告ら及び二人
の姉と生活していたが,原告ら夫婦の間ではさ細なことで口論に発展す
ることが頻繁にあり,口論の際に原告甲から「気違い」と言われたこと
を契機に,2月20日以降,原告乙が自宅から自転車で5分程度の距離
に位置する自身の実家の銭湯から更に徒歩二,三分程度の距離に位置す
るアパートで別居して生活するようになった。亡Xは,週に一,二回,
原告乙の別居先を訪問していた。(甲477,478,乙ロ3・乙ハ4
4・乙ニ7(いずれも同一の平成24年11月4日付け原告乙の警察官
調書。以下「原告乙調書」という。),証人丁,原告甲本人,原告乙本
人)
亡Xについては,当時在籍していた小学校が原告甲の亡Xに対する言
動を長姉から聴取して相談センターに虐待通告をしたことがあったが,
2か月間亡Xのモニタリングが継続された後,虐待事象が確認されなか
ったとして,案件の係属が終結された。また,亡Xは,本件中学校に入
学した平成22年4月頃,背の低い生徒に対して「チビ」とからかって
殴られたこと,同年9月頃に隣の学級の生徒に「死ね死ね‥」との電子
メールを送ったこと,すれ違いざまに当該生徒の肩をたたくことを繰り
返したこと等についてそれぞれ指導を受けたことがあった。亡Xがこれ
らの指導を受けた際には,原告らも本件中学校に呼び出されたが,原告
甲は,教員の前や自宅で亡Xの頭部等をたたいて叱っており,翌日に亡
Xの足等にあざを確認した当時の担任教諭が尋ねたところ,亡Xは原告
甲にたたかれて生じたと申告していた。他方,原告乙は,本件中学校で
実施された三者懇談会の際に亡Xの学習及び生活の態度を叱責し,感情
的になって一人で帰宅することがあり,そのような言動について教員か
ら留意されていた。(甲226,454の2,455,乙イ4の1,1
7,原告甲本人)
イ被告A1は,亡Xと同学年の男子生徒で,水泳部に所属しており,2年
生当時の身長は170センチメートル程度であった。被告A1は,目立
ちたがりで,自ら面白いことをしたり,他人をからかったりすることで
皆を笑わせて注目を集めようとするところがあり,級友からは,人の輪
の中心にいるような存在で,優しくて思いやりがある面も有していると
評される一方で,力が強く,悪ふざけが過ぎて騒々しい,人をからかう
際に以前より乱暴になったなどと思われていた。また,教員の中には,
被告A1について,一見すると好印象であるが,教員が見ていないとこ
ろでは手を抜く面や,けんかの際の形相等に凄いものがあり,表裏のあ
る人物であると見る向きもあり,部活動の際の練習の態度が良くないと
の評価も受けていた。(甲11の1・2,49,51,52,55,5
7,60,225,乙ロ20の1,証人ア)
ウ被告B1は,亡Xと同学年の男子生徒で,入学当初はサッカー部に所
属していたが,1年生のうちに退部しており,2年生当時の身長は16
0センチメートルを少し超える程度であった。被告B1は,級友からは,
明るい人物であるが調子に乗りすぎて悪ふざけが過ぎるような面や,人
の悪口を陰で言う傾向があり,すぐに逆上し物に当たったりする短気で
激しいところがあると評され,教員からは,学力が低く,学習や学校生
活の面では無気力であり,授業中に近くにいる生徒に余計な干渉をする
と評価されていた。
被告B2は,被告B1が1年生の時,万引き及び喫煙の疑いで本件中
学校から1回ずつ呼出しを受けたことがあり,万引きの件については,
被告B1が万引きを認めたので,万引きがいけないことであると指導し
た上で,万引きをした店舗に被告B1と共に謝罪に赴き,喫煙の件につ
いては,被告B1が喫煙の事実を否定し,その場に居合わせただけであ
ると説明したので,そのことを前提にした指導を行った。
なお,被告B1の出席状況は,1年生に5日欠席,65日遅刻,2年
生1学期に1日欠席,19日遅刻,2学期(10月7日まで)に14日
遅刻というものであった。
(甲51,55,57,60,225,226,乙イ24の1,25,
26,乙ハ56,証人ア,被告B2本人)
エ被告C1は,亡Xと同学年の男子生徒で,入学当初は柔道部に所属し
ていたが,1年生のうちに退部していた。被告C1は,級友からは,明
るい性格で,よく冗談をいう人物であると評されていたが,他方で,プ
ライドが高く,逆上しやすい部分があり,周囲の状況を考えないことが
あるとも評され,教員からは,授業中に授業の妨げとなるような大声を
出したり,歌を歌ったり,他の生徒に余計な干渉をしたり,授業中に歩
き回って退室したりして迷惑を掛けていると評価されていた。このため,
被告C3は,本件中学校から,複数回,被告C1が授業の妨げになる行
為に及んで注意されることがあった旨の報告を受け,その都度,被告C
1に対し,人の迷惑になることをしてはいけないと指導した。
被告C1の出席状況は,1年生に欠席8日,遅刻18日,2年生1学
期に欠席9日,遅刻16日,2学期(10月7日まで)に欠席7日,遅
刻5日であった。
(甲49,51,55,60,225,226,318,381,乙イ
5の2,26,被告C3本人)
⑵ア亡Xと被告A1及び被告B1は,2年生になるまで互いに面識はなかっ
たが,クラス替えによって4月から2年3組のクラスメートとなり,亡
Xと被告B1の教室内での席が近かったことや,3名が携帯型ゲーム機
の同じゲームを愛好していたこと等もあって親しくなり,5月中旬頃以
降,被告A1と共通の小学校の出身である他の2名のクラスメートと共
に,休み時間や部活動に参加しなかった日の放課後を一緒に過ごすよう
になり,やがて昼食も一緒にとるようになった。(甲44,49,51,
52,55,60,475,乙ロ20の1,乙ハ56)
1学期には,被告A1,被告B1及び亡Xを含むその周辺の生徒の間で
は,休み時間に廊下等で,互いの肩を持って相手に足をかけて転ばせよ
うとする「こかし合い」や,相手の首に背後から腕を回して後ろに引っ
張り,時にそのまま床に転んだりする「首絞め」,相手のズボンを下ろ
す「ズボンずらし」が遊びとして行われていた。この頃,こかし合いは
被告A1及び被告B1が互いに又は亡Xやその他の者に仕掛けることが,
首締めは被告B1が被告A1や亡Xに対して仕掛けることが,ズボンず
らしは被告A1が他の者に仕掛けることが多く,亡Xがこれらの遊びを
被告A1及び被告B1に仕掛けることはほとんどなかったが,こかし合
いで亡Xが勝つことや,亡Xが被告A1及び被告B1以外の友人に身体
的接触を伴う技を仕掛けることもあった。(甲44,52,60,40
6,475,乙ロ20の1,乙ハ33,56)
亡Xは,1学期の後半頃には,休日等に被告A1や被告B1の自宅を訪
れるようになり,被告A1及び被告B1が連れだって亡Xの自宅を訪れ
たことも少なくとも一度はあった。(甲55,60,乙ロ20の1,乙
ハ56)
イ他方,亡Xについては,6月21日,ある生徒がペンを持ち去られた
としてア教諭に訴え出たところ,亡Xが持ち去っていたことが判明し
たというトラブルがあり,ア教諭が原告甲にその旨を連絡した翌日,
亡Xから原告甲にたたかれた,家には連絡をしないでほしいと告げら
れたことがあった。(乙イ12の4ないし7,証人ア)
7月頃,公立高校の2年生であった亡Xの長姉が,原告甲から注意
を受けたことを契機に原告甲宅を出て,原告乙の下で生活するように
なった。(甲477,478,乙イ4の1,甲302・乙ロ4・乙ハ
39・乙ニ8(これら4通はいずれも同一の平成24年10月20日
付け亡Xの次姉の警察官調書。以下「次姉調書」という。),原告甲
本人)
原告甲は,7月の三者面談の際,ア教諭から亡Xが提出物を期限内
に出せないことを指摘され,交付された成績表の成績も悪かったこと
から,同月20日以降,亡Xと次姉を自宅近くの学習塾に通わせると
ともに,成績が向上するまでとの約束で携帯型ゲーム機等を取り上げ,
亡Xの趣味であるコンピューターゲームをすることを禁止した。(甲
10の1・2,乙ハ45,原告甲本人)
しかし,亡Xは,別居した原告乙から,お年玉等が預け入れられた
亡X名義の郵便貯金口座(以下「本件貯金口座」という。)のキャッ
シュカードを亡Xのものであるとして渡されており,幾許かの預金を
下ろすこと自体については原告乙の了承を得ていたところ,同月22
日,本件貯金口座から7万円を引き出し,原告甲に取り上げられたも
のとは別の機種の携帯型ゲーム機及びこれに対応するゲームソフトを
購入した。(乙ロ19,乙ハ40,45,原告甲本人,原告乙本人)
⑶ア夏休みになると,亡Xは,週に数回以上被告Bら宅を訪れるようになり,
そのうち週に一,二回程度は,原告甲に無断で被告Bら宅に宿泊した。
また,亡Xは,被告少年らと花火大会に出掛けたり,原告甲に無断で被
告A1及び被告B1と3人でUSJに行って遊んだ後,被告A1と共に
被告Bら宅に宿泊したりするなどしており,深夜に被告Bら宅を訪れ,
このような時間に一人で帰らせられないので宿泊するよう被告B2に勧
められて被告Bら宅に宿泊することもあった。(甲8,60,乙ハ56,
59,61,62,被告B1本人,被告B2本人)
イ亡Xは,夏休みを上記のように被告B1や被告A1と過ごす一方で,
原告乙宅や原告ら双方の祖父母宅にも宿泊しており,この間,自己名義
の本件貯金口座から,7月28日に3万円,8月1日に2万4000円
を引き出したほか,同月19日以降9月25日頃まで,原告らの双方の
実家から,それぞれの祖父母等の金員を数千円から数万円ずつ複数回無
断で持ち出して遊具等の購入に充てていた(なお,亡Xは3月頃から銭
湯を営む母方祖父母宅から金員を持ち出していた。)。(乙ロ5の2・
乙ハ40,45,46,原告甲本人)
ウこの頃,亡Xは,卓球部の友人に対し,自身の状況について「家出を
している」などと述べていたが,原告甲及び次姉と天橋立に泊り掛けで
旅行し,海水浴やバーベキューを楽しむなどもしていた。(甲456,
乙イ7の10,証人丁)
⑷ア9月に2学期が始まると,2年3組の中で席替えがあり,亡Xは被告B
1の後ろの席になった。(乙ハ44,56)
また,被告C1は,2学期以降,休み時間などに2年3組を訪れて被告
A1,被告B1,亡Xらと過ごすようになり,やがて一日に2回から4回
程の頻度で2年3組を訪れるようになった。(甲49,51,55,57,
60,乙イ5の2,乙ニ16,20,)
イ被告A1は,夏休みの課題に手を付けず,2学期になっても未提出
のままであり,ア教諭からは,2学期になって言葉遣いが乱暴になり,
授業中にノートを取らないなど怠惰な態度を示すようになった,いら
いらした様子を示すことがあり留意する必要があると評価されていた。
(証人ア,被告A1本人)
被告B1は,2学期に入った後,9月9日に2年3組の女子生徒に
水筒を投げてぶつけたとして,教諭に自宅の訪問を受けたことがあり,
被告B2は,被告B1に対し,先にやられたとしても物を投げてはい
けないと指導したことがあった。被告B1は,同月13日は7時間目
の授業に出席せずに無断で下校し,同月14日は2時間目及び3時間
目の授業を無断で欠席するなどし,同月15日に母子で指導を受けた。
また,被告B1は,同月16日,被告C1と共に2年3組の男子生徒
の胸部をつねって負傷させたが,当該生徒は後難を懸念して同じ学級
の被告B1については被害を申告しなかった。(甲57,140,乙
イ7の1・8・9,16の3,被告B2本人)
被告C1は,2学期に入った後,9月8日は帰りの会に出席せずに
下校し,同月12日は理由なく欠席して1日コインランドリーのトイ
レに籠もるなどしたため,母子で指導を受けた。また,被告C1は,
同月16日,被告B1と共に2年3組の男子生徒の胸部をつねって負
傷させたことから,被告C3と共に上記男子生徒宅に謝罪に赴いたこ
とがあった。さらに,被告C1は,10月5日,ライターを所持して
いたことが発覚して本件中学校から被告C3にその旨連絡されたこと
があったほか,同月7日には午前6時30分に自宅を飛び出したこと
があった。(甲57,140,乙イ7の6・8・9,12の2・3,
被告C3本人)
ウ本件中学校内では,2学期が始まった後も,亡Xと被告A1及び被告
B1は,周辺の生徒らを含めた1学期と同様のグループで過ごすことが
多かったが,9月半ば頃には,教室や廊下において,被告A1がこかし
合いによって下に組み敷かれた亡Xをそのまま押さえ込んだり,首締め
や相手の頭を脇に抱えて絞める「ヘッドロック」をして倒された亡Xの
上にまたがって押さえ込んだりするほか,被告B1が被告A1による押
さえ込み等に加勢したり,自ら亡Xに首絞めやヘッドロックをしたり,
被告A1及び被告B1が「肩パン」と称して亡Xの身体を殴るなどして,
亡Xが痛がったり,苦しそうにしたりする素振りを見せることが増える
ようになった。また,被告A1及び被告B1は,個別に,又は協力して,
亡Xに対するズボンずらしを行い,時には亡Xの下着や臀部が露出する
ほどズボンを下げることもあった。これらの状況を目撃した生徒らの中
には,被告A1及び被告B1からそのような行為をされた際やその直後
に亡Xが笑っている場面を目にしたことがあっても,亡Xが一方的にや
られている,やり過ぎではないかといった印象を抱く者が相当数存在し
た。【32】【37】(甲44,52,92,93,106,119,
120,149ないし159,223,227,309,378ないし
380,406,475,476,乙ロ2。この点,被告A1は,ズボ
ンずらしを1回やったこと以外の事実は否認し,被告B1も上記各事実
を否認するが,多数のクラスメートが上記事実を目撃した旨警察官に供
述していたのであり,その内容も相互に符合しているから,上記各証拠
により上記事実を認めることができる。なお,被告A1は,亡Xに肩パ
ン等をしたことを自認していた(甲238,309,乙ロ6の2)。)
また,被告A1は,9月8日に本件中学校のグラウンドで体育祭の綱
引きの予選が行われていた際に,体育座りをしていた亡Xに対し,後ろ
から近づいて亡Xの頚部に腕を巻き,そのまま亡Xの身体を被告A1の
体の上に乗せるような形で後ろに倒れ込み,亡Xの頚部を絞める「首絞
め」を仕掛けたり,亡Xの上に乗って肩を押したりするなどした。被告
B1も,上記予選の際,うつ伏せになっていた亡Xの腰の辺りにいきな
りまたがるように座り,亡Xの頚部に腕を回して亡Xの身体を後ろにの
け反らせるように引っ張るなどした。これらの行為を仕掛けられた亡X
は苦しそうな様子で,解放された後もつらそうな表情であった。【37】
(甲33,56,61,141の1,309,406,乙イ7の8,7
の10,被告A1本人。この点,被告A1及び被告B1は上記事実を否
認するが,被告A1自身が亡Xの背後から手を首に回して引き倒したこ
とを自認し(甲33,61,被告A1本人),かつ,1学期は亡Xと昼
食を共に取っていた仲の良いクラスメートが明確かつ具体的に被告A1
による上記行為を目撃した旨警察官に供述していたのである(甲141
の1)のであるから,上記各証拠により被告A1の行為に係る上記事実
を認定できる。また,被告B1は,亡Xにまたがってその身体をのけ反
らせるように引っ張ったことを自認していた(甲56)のであるから,
被告B1の行為に係る上記事実も上記各証拠により認定できる。)
このような状況が続くと,日頃は皆が笑うような態度で応じることの
多い亡Xの反応が乏しくなることが増え,そのことに対しても被告A1
及び被告B1が苛立ちを見せるようになっていたが,そのような時間が
過ぎると,亡Xは再び何事もなかった様子で被告A1及び被告B1らと
行動を共にしていた。なお,亡Xが被告A1及び被告B1に対して両被
告からされているような態様で手を出すことはなかった。(甲52,9
3,105,106,309,379)
また,被告A1及び被告B1は,亡Xの筆箱又はその中身や亡Xの弁
当を隠すことがあったほか,9月の中旬頃以降,亡Xの眼鏡を取り上げ,
これを隠したり,返すように求めて追い掛ける亡Xを面白がってからか
うということが複数回あった。【20】【38】(甲33,74,10
5,108,357,乙イ2の9・16・60ないし62・65,5の
1。この点,被告A1及び被告B1は上記各事実を否認するが,被告A
1自身,その可能性を否定しておらず(甲33),被告B1もその事実
を自認していた(甲56)上,複数のクラスメートが上記事実を目撃し
た旨警察官に供述していたのであるから,上記各証拠により上記事実を
認めることができる。)
他方,学校外では,亡Xは,少なくとも,9月頃以降,被告A1及び
被告B1と共に,複数回,近隣の商業施設で文房具や菓子等を万引きす
るなどしていた。(甲10の1・2,337,乙イ2の61,7の9,
乙ハ56,被告B1本人)
⑸アア教諭は,9月15日午後5時頃,被告B2から,夏休み中に亡Xが頻
繁に被告Bら宅に宿泊しており深夜に訪れていたことや,USJに被告
B1及び被告A1と出掛けたこと等を知らされ,同日午後6時45分頃,
これらの状況を原告甲に電話で告げた。(甲477,乙イ3の7,7の
6,12の4,16の3,乙ハ45,62,証人ア,被告B2本人)
これらの無断外泊や遠出を知らなかった原告甲は,同日,体調不良で
早退して自宅にいた亡Xを詰問したが,亡Xが当初はこれらを否定しよ
うとし,さらに,詰問の過程で判明した亡Xの所持する本件貯金口座の
キャッシュカードについて原告甲の財布から抜き出したものと誤解した
上で,亡Xが明らかに事実と異なる説明や曖昧な説明をしたとして,激
しく怒り,亡Xを怒鳴り付けて顔や頭をたたいたり,体を蹴ったりする
などした上,掃除用具の柄で亡Xのふくらはぎを複数回たたく罰を与え,
見かねた次姉から制止された。(甲10の1・2,乙イ3の7,7の8,
12の4,乙ハ40,45,次姉調書,証人丁,原告甲本人)
その後,亡Xは,自宅を出て母方の祖父母宅に行き,同日午後8時頃,
同宅から本件中学校にア教諭と話したいと泣きながら電話をしたが,ア
教諭は帰宅した後であった。亡Xは,その日は母方の祖父母宅に宿泊し
た。(甲258,乙イ3の7,7の4,12の1・4ないし7,16の
3,次姉調書,証人ア)
亡Xは,翌16日も体調不良で学校を欠席したが,夕方,自宅に電話
をしてきたア教諭に対し,昨日の状況を説明し,ア教諭から原告甲に話
す前に亡Xに話してほしかった等と述べた。なお,亡Xは,その後数日
間は,原告甲とまともに口をきかなかった。(甲5の2,乙イ12の
1・4ないし7,16の3,証人ア)
イ原告甲は,台風の影響で休校となった9月21日,亡Xが本件貯金口
座から引き出していた金額を確認し,亡Xにその使途をノートに書き出
させたが,掲記された使途が全てであるとは思えず,亡Xが何者かに金
員を取られている可能性があると考えた。また,原告甲が亡Xの部屋に
携帯型ゲーム機等があるのを発見して亡Xに問い質したところ,亡Xは,
実際には自らが購入したものであったが,事情を知らない原告甲に被告
A1から借りたものであると説明した。これらの状況や,亡Xが被告B
ら宅に無断外泊していた状況を受けて,原告甲は,同日,亡Xを伴い,
被告Bら宅を訪れ,被告B2に対し,迷惑を掛けたことを謝罪し,以後
は子ども同士の遠出や外泊をさせない意向であるので承知しておいてほ
しい旨告げた。亡Xは2学期が始まった後も被告Bら宅を訪れており,
以前から連休中の9月23日に宿泊する約束をしていたが,上記の際に
被告B2からこれを知らされた原告甲は,同日の被告Bら宅での宿泊に
ついても断った。また,原告甲は,亡Xと共に被告Aら宅を訪れ,応対
した被告A1に対し,上記ゲーム機を返却する趣旨で手交し,後刻に電
話連絡のあった被告A3に対して今後の亡Xの交遊の方針について被告
B2に告げたのと同趣旨の発言をした。なお,被告A1は,原告甲と亡
Xが訪れる前に亡Xから話を合わせるように依頼されてこれを了承して
おり,亡Xの上記ゲーム機を自身のものとして受け取ったが,翌日学校
で再び亡Xに上記ゲーム機を交付した。(甲8,10の1・2,477,
乙イ7の6・10,乙ロ5の1・2,乙ハ45,46,62,原告甲本
人,被告A1本人,被告B2本人)
ウこの頃,亡Xは,被告A1及び被告B1らとの会話の中で,本件貯金
口座から金員を引き出して使用していることが原告甲の知るところとな
り,その金額が大きいので,亡Xだけではなく被告A1及び被告B1に
何か買ってやっているのではないかと原告甲から疑われていること等を
話題にした。被告A1及び被告B1は,疑われたことに腹を立て,原告
甲を罵るなどした。(甲52,54,55,406,乙ハ56,57)
⑹このような中,亡Xは,本件中学校内で,以下のような扱いを受けた。
ア被告B1は,少なくとも9月中旬頃から下旬頃にかけて,2年3組の教室
付近の廊下で,周囲に被告A1を含めた複数の男子生徒がいる状況で,複数
回,仰向けに寝た状態の亡Xにまたがって抵抗する同人の頚部を絞めたり,
同様に亡Xにまたがって手で防御している同人の顔面付近を殴打するなどし
た。この際,殴られる度に反動で亡Xの頭部が廊下の壁に繰り返し当たって
いる様子を目撃した女子生徒が被告B1に止めるよう注意したが,周囲の男
子生徒のいずれかが遊びであるので大丈夫である旨述べるだけで,被告B1
は,被告A1から制止されるまで亡Xを殴打し続け,制止された後もなお亡
Xを足蹴にした。これを見た同級生らの中には,亡Xがいじめられていると
の印象を持った者も複数存在した。さらに,被告B1は,この頃,被告A1
やその他の級友もいる中で,亡Xを足蹴にしたことが複数回あり,被告A1
も,2年3組の教室又はその付近の廊下で,亡Xを強く足蹴にしたり,顔面
を殴打したりしたことがあった。【22】(甲44,91,111,112,
118,186,227,234,370,371,378,381,38
2。この点,被告A1及び被告B1は上記事実を否認するが,2年3組の前
を通行するなどしていたクラスメート及び同級生が上記事実を目撃した旨警
察官に供述していたのであり,その内容も相互に符合しているのであるから,
上記各証拠により上記事実を認めることができる。)
イ9月中旬頃から下旬頃にかけての授業中,被告B1が振り向いた際に後ろ
の席に座っていた亡Xの頬に黒色のペンを接触させたため,亡Xは授業終
了まで頬を押さえて過ごし,帰りの会の前の休み時間に洗面所に洗い流し
にいった。この様子を見ていた被告A1は,被告B1と相談して洗面所か
ら戻った亡Xの顔にペンで更に落書きをすることを思いつき,帰りの会が
始まる前の2年3組の教室内で,被告A1において亡Xを転倒させ,仰向
けの状態の亡Xの背後から腕を首に回して圧迫するなどして押さえ込み,
被告B1が馬乗りになるなどして,「嫌だ。」などと言って抵抗していた
亡Xの顔に被告B1がペンで髭のような落書きをした。ア教諭が止めに入
って被告A1及び被告B1は手を離したが,亡Xの様子を見た周囲は笑っ
ていた。なお,亡Xもその後は笑いを浮かべ,再び落書きを洗い流すため
に洗面所に赴いていた。【9】(甲33,44,104,135ないし1
40,141の1・2,142ないし145,309,406,475,
474,乙ロ20の1,23,24,乙イ2の44,乙ハ56,57,6
0,証人ア,被告A1本人,被告B1本人。なお,被告A1及び被告B1
は亡Xが嫌がっていたことを否認するが,多数のクラスメートが亡Xは嫌
がっていた旨警察官に対して供述していたのであるから,上記各証拠によ
り上記事実を認定することができる。)
ウ被告A1は,9月中旬頃から下旬頃にかけて,2年3組の教室内で,被告
B1やその他の級友もいる中で,亡Xを床に倒し,その背後から羽交い締
めにする首絞めやヘッドロックをすることが複数回あり,その様子を見か
ねたア教諭から制止されることもあった。【44】(甲11の1・2,4
4,92,93,106,証人ア。この点,被告A1は上記事実を否認す
るが,複数のクラスメートが上記事実を目撃した旨警察官に供述していた
のであり,ア教諭も被告A1が亡Xに羽交い絞めをしていたが,ひどかっ
たので,声掛け,あるいは,同教諭が被告A1に羽交い絞めを仕掛けた旨
証言等していることから,上記各証拠により上記事実を認めることができ
る。)
⑺他方,この頃,亡Xは,学校外では,以下のような状況にあった。
ア亡Xは,連休中の9月23日(金曜日・秋分の日)ないしその翌日か
ら,自宅ではなく父方の祖父母宅に宿泊するなどしていたが,同月25
日(日曜日)の朝,祖母の作った朝食を食べる際,涙を流しながら「こ
んなにおいしい朝ご飯を食べたことはない。」と繰り返し述べ,食事が
終わって祖母とソファーに座っていた際,祖母の首に前から抱き付き,
泣きじゃくりながら「暗くて静かな山の中に行って死にたいねん。」と
述べた。亡Xの様子がおかしいと感じた祖母は,「つらいことがあった
のか。」と尋ねたが亡Xからは応答がなく,重ねて「家でつらいことが
あったのか。」と尋ねたところ,亡Xは首を横に振った。さらに,祖母
が「学校?」と尋ねると,亡Xは首を縦に振った。祖母が「学校でどん
なことがあったの?」と尋ねたが,亡Xは一切答えなかった。そこで,
祖母は,亡Xに対し,「そんなにつらかったら学校は行かないでもいい。
お父さん,お母さんに頼んであげてもいい。」と声を掛けた。(乙イ1
2の1・4ないし7,乙ハ45,原告甲本人)
イそのようなやり取りをする一方で,9月25日,亡Xは父方の祖母の
財布から数千円を抜き取った。同祖母からこれを知らされた原告甲が母
方の祖父母にも確認したところ,亡Xが以前から双方の祖父母等の金員
を複数回抜き取っていたことが判明した。亡Xは,その後に訪れた母方
の祖母から金員の抜き取りについて注意を受け,その日の夜,父方の祖
母からも,同様に注意を受けたが,その際,最後に我慢できなくなった
ら同祖母に連絡をしてほしい,そのときには一緒に暗い山の中でもどこ
でも行くからと伝えられた。(乙イ7の4・6・7,12の1・4ない
し7)
他方,原告甲は,事態を重く受け止め,同日中に相談機関に電話で亡
Xの様子を告げて相談し,軽度の発達障害がある可能性を告げられたこ
とから,亡Xに軽度の発達障害があると思い込み,心療内科を受診させ
ようと考え(その時期について,原告甲は中間テスト終了後と考え,9
月29日の時点で発達検査は10月13日が受診予定とされていた。),
自宅に戻っていた亡Xに対し,受診のため休校する必要がある関係から
その都合を確認する際,「何度も同じことを繰り返すのは病気かもしれ
んのやで」などと述べたところ,亡Xは,大変苛立った様子で病気であ
れば病気でよい旨一方的に言い放って自宅を後にした。結局,亡Xは自
宅の近隣マンションの一階にあるソファーで一夜を明かした。原告甲は,
9月26日午前1時頃まで亡Xを自宅で待っていたが寝入ってしまい,
午前5時頃に目覚めて亡Xを探しにいこうとしたところ,午前6時頃に
亡Xが帰宅した。(甲10の1・2,乙イ7の4・6・7,12の1・
4ないし7,乙ハ45,証人ア,原告甲本人)
ウ原告甲は,亡Xの金銭の抜き取りが判明した翌日の9月26日(月曜
日),本件中学校を訪れ,ア教諭らに対し,亡Xの行状と相談センター
に相談したこと等について説明し,金銭の問題は亡Xに言わないように
要望した。同日,遅刻して3時間目から登校した亡Xは,ア教諭に対し,
原告甲とは話していないこと,祖母の財布から500円を抜き取ったこ
とについて祖母から「裏切られた」と言われたこと,自宅にいてもいつ
も命令されて面白くないこと,父親,長姉及び次姉はいずれも亡Xより
立場が上なので逆らえないことなどを話した。ア教諭は,原告甲の話を
聞いて亡Xに発達障害がある可能性を否定できないと考えていたが,原
告甲からの要望を踏まえてこれらの点には言及せず,家族に心配を掛け
て掛けてはいけないなどと指導した。(甲5の2,10の1・2,乙イ
3の7,4の1,7の4・6・7,12の1・4ないし7,16の3,
乙ハ45,証人ア)
⑻被告B1は,9月下旬頃,被告A1や級友二名がいる中で,被告B1が亡
Xの首に紐をかけて絞めようとするのを亡Xが防いで脱出しようとする遊
びをした際,亡Xが簡単に防御して脱出したことに苛立って立腹し,2年
3組教室前の廊下において,かなり興奮した状態で,亡Xを転倒させ,倒
れた亡Xの頚部を左足で強く踏みつけ,このままでは大変なことになると
判断した被告A1によって制止された。亡Xは涙を流しており,頚部には
跡が残っていたが,教室に戻って次の授業の担当の教諭やア教諭から首の
跡について尋ねられた際には,次姉によって付けられた旨述べて本当のこ
とを話さなかった。【23】(甲44,50,56,184,319,3
73ないし377,384の1・2,385,386,406,乙イ2の
50,3の6,乙ハ48,56)
⑼被告B1は,亡Xが遅刻して3時間目から登校した9月26日(月曜日)
の授業中,後ろの席の亡Xの方を振り向くと,亡Xの筆箱からオレンジ色
のインクペンを取り出し,「やめてくれ」等と述べて亡Xが嫌がる素振り
を示しているのに,インクの芯の部分を取り出した上ではさみで切断し,
インクがこぼれる状態にして亡Xの筆箱に戻すなどして,筆箱の内部や筆
記用具等に広範囲にわたってオレンジ色のインクを多量に付着させた。こ
の際,被告B1は,はさみで亡Xの消しゴムについても切断し,筆箱につ
いても切れ目を入れて破損させており,こぼれたインクは,亡Xの両手や
机,机上の教科書などにも多量に付着した。授業をしていた教師はこれに
気付いて事情を尋ねたところ,亡Xは困ったような表情で「こんなんされ
た。」とは述べるものの,「大丈夫」などと答えるのみでそれ以上事情を
説明ようとはしなかった。亡Xは,様子を見て気の毒に思った友人2名と
その後の休み時間に筆箱等を洗ったが,筆箱等に付着したインクは水で洗
っても十分にはとれなかった。【8】(甲44,50,56,105,1
20,141の1,193の1,325ないし329,333ないし33
7,474,乙ロ23,乙ハ56,61,被告B1本人)
このほか,時期は必ずしも明らかでないものの,被告B1が亡Xの筆箱
を亡Xの席からゴミ箱に投げ入れたこともあった。【17】(甲56)
⑽被告A1及び被告B1は,9月26日又は同月27日,被告C1から譲り
受けた制汗スプレーで遊んでいたところ,遅刻してきた亡Xに対し,遅刻
した罰であるなどとして,亡Xが嫌がって抵抗しているにもかかわらず,
被告B1において制汗スプレーの内容物が無くなるまで亡Xに制汗剤をか
け続けた。【10】(甲33,44,61,93,108,141の1,
309,乙イ12の4ないし7,16の3。被告A1及び被告B1は,亡
Xに制汗剤をかけ続けたことを否認するが,複数のクラスメートがこれを
目撃した旨警察官に対して具体的に供述していたのであるから,上記事実
を認めることができる。)
⑾被告A1及びB1は,本件中学校の文化祭が行われた9月28日(水曜日)
の昼休みに,2年3組の教室内で,亡Xが「やめてよ」などと繰り返し述
べているにもかかわらず,亡Xの机の中にあった同人のテスト成績カード
(生徒の試験の点数を保護者に知らせるために生徒を通じて学校から保護
者に交付され,内容を確認した保護者が確認印を押して再び生徒を通じて
学校に返還される方法で一年間使用されるもの。)1枚をその眼前で細か
く破り捨てた。この際の亡Xの様子は,近くの席に座っていた生徒からは
大変悲しそうに見えた。また,被告B1は,上記のテスト成績カードを破
り捨てた際又はこれに近接する日時頃に,亡Xの英語の教科書の表紙を背
の部分で引き裂くとともに,歴史の資料集の表紙を大きく引き裂き,テス
トに用いられた同人のプリントを引き裂いて小さく丸めるなどしたほか,
同人の家庭科のプリントや文化祭のプログラムの表紙に,被告B1の印を
それぞれ十か所以上押印するなどした。【21】(甲44,50,56,
61,64,105,106,119,121,140,141の1,1
93の1,344,345,348ないし356,358ないし360,
406,474ないし476,乙イ2の44,15,乙ロ6の2,23,
乙ハ52,56,被告A1本人。被告B1は,成績カードを破ったこと及
び被告B1の印を押印したこと以外の事実を否認するが,複数のクラスメ
ートによる上記事実を目撃した旨の警察官に対する供述があり,実際に,
亡Xの英語の教科書及び歴史の資料集の表紙が破られた状態で残され,破
られたプリントが修復された状態で残存していた(甲64,344,乙イ
15)ことからすれば,上記各証拠により上記各事実を認めることができ
る。なお,被告A1は,本人尋問において,亡Xの成績カードを破ったこ
とを自認している。)
なお,破られ丸められていた亡Xのプリントは,セロハンテープを貼り
付けて補修されていた。また,亡Xのノートには,「Xキモイシネ」
などの記載がなされていた。(甲64,345,乙イ15)
後日,亡Xは,ア教諭から既に提出期限の徒過していたテスト成績カード
の提出を求められたが,紛失したなどと述べてこれに応じず,再三の提出
要求を受けて,10月3日の週に,友人に手伝ってもらってセロハンテー
プを貼り付けて補修した同カードを提出することとなり,その状態を見て
使用に耐えないと判断したア教諭からテスト成績カードの再発行を受ける
結果となった。(乙イ12の4ないし7,16の3,証人ア)
⑿本件中学校の体育祭のあった9月29日(木曜日)に,体育祭の会場であ
ったa陸上競技場において,以下の出来事があった。
ア被告少年らは,昼前後頃,a陸上競技場メインスタンドの2年3組の席
として指定された観覧席付近において,亡Xを含む数名の友人と,あら
かじめ罰ゲームを決めて,じゃんけんをして負けた者が,その罰ゲーム
を受けるという「じゃんけん罰ゲーム」という遊びをしており,じゃん
けんに負けた者が無関係の女子生徒に突然土下座ないし告白する罰ゲー
ムをするなどして興じていた。
この中で,亡Xは,被告少年らを含む現場にいた生徒らのいずれかか
ら,近隣の商業施設から万引きをしたと告白するよう要求され,その旨
大声で告白させられた。【43】
また,手等を鉢巻きで縛るなどして拘束するということが罰ゲームの
候補として挙がったが,参加者が皆そのような罰ゲームを前提としての
じゃんけんを嫌がっていたところ,参加者の間に「亡Xでいいか」とい
う雰囲気が形成され,亡Xもじゃんけんをすることなく手等を鉢巻き等
で拘束されることを了承した。その結果,被告少年ら及びその周りにい
て一緒に遊んでいた者が,亡Xに対して,鉢巻きを用いて,その両手首
を後ろ手で縛ったり,その両足首を縛ったり,亡Xの口にガムテープを
貼るなどした(なお,このガムテープは被告C1が持ち込んだもので,
この際,被告A1は,鼻で呼吸することが得意でない亡Xのために,口
に貼られたガムテープを緩めた。)。さらに,そのような状態で亡Xの
手を鉢巻きで手すりに結び付けたり,応援席に寝転がらせたりしたほか,
亡Xの眼鏡を外し,両手首を後ろ手に縛られ口にガムテープを貼られた
状態の同人を押したり蹴ったりして歩かせるなどした。また,この間,
亡Xが,被告A1に背負われた状態で,被告B1,C1から足蹴にされ
たりしたこともあった。さらに,被告C1は,じゃんけん罰ゲームとし
て,亡Xのすねにガムテープを貼り付けて剥がすなどしたが,被告C1
を含む亡X以外の者もこの罰ゲームを受けた。なお,被告A1はこのじ
ゃんけんには参加しなかった。【39】【40】
ところで,亡Xに対する上記各行為は,a陸上競技場メインスタンドで
体育祭を観覧する他の生徒がいる中で行われたもので,これを見た他の
生徒の中には,止めるように注意する者,亡Xが見世物にされていると
の印象を持った者,他の男子生徒に助けてあげてほしいと依頼する女子
生徒も存在した。
(甲32ないし34,45ないし47,56,58,61,67,68,
75ないし77,79,80,82ないし90,92,93,94の
1・2,98,99,101,105,106,109,111,11
4,115,117ないし119,121,122,123の1・2,
124,125,126の1・2,127,128の1・2,129,
258,309,365,406,475,乙イ2の50,3の4,乙
ロ20の1,23,乙ハ57,乙ニ16,被告A1本人,被告B1本人,
被告C1本人。この点,被告らは,亡Xがその了解の下で手足を鉢巻き
で縛られ,口にガムテープが貼られたこと以外の事実を否認するが,複
数のクラスメートや同級生が上記各事実を目撃した旨警察官に具体的に
供述しており,付近を通りかかって指導した教諭による警察官に対する
供述とも符合するのであるから,上記各証拠により上記事実を認定する
ことができる。なお,被告C1は亡Xのすねにガムテープを貼ってはが
したことを自認していた(甲56,58,128の3)。)
イ被告少年ら,亡Xらは,同日昼頃,a陸上競技場メインスタンドで,負
けた者が付近に落ちていた蜂の死骸を食べるという罰ゲームを前提とし
て,じゃんけんを行ったところ,亡Xが負けたものの,蜂の死骸を食べ
ることを拒否して逃げ出したので,被告A1と被告B1が追い掛け,上
記メインスタンドの階段踊り場で,被告A1が亡Xを転倒させ,腕で亡
Xの腕等を押さえ,その状態の亡Xに対して,被告B1が手に蜂の死骸
を持って亡Xに食べさせようとした。亡Xが「止めてくれ」等と必死に
抵抗し,被告A1に背後から押さえられて仰向けになった状態で,絶対
に口に蜂を入れさせないという様子で口を閉じたので,被告B1が亡X
の唇の上に蜂の死骸を乗せたところ,亡Xがこれを吹き飛ばし,これを
契機に被告A1及び被告B1の行為は収束した。【41】(甲58,6
1,67,68,103,140,141の1,170,173ないし
177,179,180,187,188,192,193の1・2,
194ないし196,309,406,474,475,乙ロ20の1,
乙ハ56,乙ニ406)
ウ亡Xは,アンケートに,体育祭はa陸上競技場ではなく本件中学校のグ
ラウンドで開催された方が良かったとの感想を記載していたが,これを
提出することはなかった。(甲11の1・2)
⒀被告B1は,文化祭等の後の9月30日(金曜日)から10月の初め頃の
間の休み時間中,亡Xがいない間に,亡Xの机上に同人のスポーツバック
を置いてその上で黒板消しをたたき,スポーツバックの内外や机をチョー
クの粉塗れにした。その後に自席に戻った亡Xは「なんやこれ」などと驚
いていた。【14】(甲44,56,141の1,406)
⒁ア教諭は,9月末頃から,日頃元気な亡Xの表情が暗いと感じており,同
月30日には教室で2年3組の生徒が被告A1及び被告B1の亡Xに対す
る言動について「あれ,いじめちゃうん」などと指摘するのを聞き,放課
後に亡Xに確認したが,亡Xは,特に問題はなく大丈夫という趣旨の回答
をした。(乙イ10の5,証人ア)
⒂9月29日又は30日頃,亡Xは,学習塾の帰りに,同じ学習塾に通う友
人に,「万引きしていると皆が言っているので,やめようと思って断った
ら被告B1とかに殴られる」と話した。また,それまで,その塾において,
亡Xが友人に「俺死にたいわ」などと力のない声で1日に二,三回告げ,
友人が「死ぬなよ」などと声を掛けると,亡Xは「分からん」などと応答
することが繰り返されていたが,体育祭の頃から死にたいという言葉を口
にすることがなくなった。(乙イ2の15,6の2)
⒃被告A1は,10月3日(月曜日)の昼休みに,2年3組の教室付近の廊
下で,被告B1及び他の級友2名のいる中,「やり返してこい。」などと
述べて亡Xの上半身を何度も小突くように殴り,亡Xが渋々ながら小突き
返すと,更に力を強めて亡Xの顔面や上半身等を殴るなどし,その結果,
亡Xの眼鏡がゆがんだ。被告A1と亡Xは,5時間目の授業が始まった後,
被告A1は手指の痛みを,亡Xは頬の痛みをそれぞれ訴えてほぼ同時に保
健室に行き処置を受けたが,イ養護教諭に対し,被告A1は荒々しい態度
を示しながら亡Xの話し方にイライラしたので殴った旨,亡Xは表情の乏
しい様子で顔を殴られて痛い旨,それぞれ述べた。処置を受けた亡Xは,
2年3組の教室に戻った後,授業中,自席で机に顔を伏せていた。【45】
(甲44,199,203ないし205,208,218ないし220,
228,231,232,237,475,乙イ2の44,3の3・5・
6・8,7の9,13の4。この点,被告A1は,ボクシングのまねごと
をしていたにすぎないとして上記事実を否認するが,複数のクラスメート
が上記事実を目撃した旨警察官に供述していた上,被告B1も被告A1が
廊下で亡Xを一方的に殴り,亡Xが殴り返さなかったところを見た旨警察
官に供述し(甲237),被告A1自身が,保健室において,イ教諭に対
し,ボクシングのまねごとをしていたとの説明をしておらず,亡Xの話し
方にイライラして殴ったと説明をしていたのであるから,上記各証拠によ
り上記事実を認めることができる。)
ア教諭は,イ教諭から,5時間目の終了後,被告A1が亡Xの顔を殴った
こと,被告A1の様子がおかしいこと,早急に指導していく必要があるこ
とを告げられ,「とうとうやりましたか」などと応答した後,帰りの会の
際に亡Xに事情を尋ねたが,亡Xは,「被告A1の手が顔に当たっただけ
で,大丈夫,大丈夫」等と述べるにとどまったため,翌朝の2年生の教諭
の打合せでは,「大丈夫でした」と報告した。(甲134,205,乙イ
10の5,16の3)
⒄被告A1は,10月4日(火曜日)の帰りの会の前である午後3時20分
頃,2年3組の教室付近の廊下で,亡Xの顔面,胸部及び腹部等を殴打す
るなどし,人だかりを見た本件中学校のウ教諭及びエ教諭が駆け付ける騒
ぎとなった。この際,亡Xの反撃はほとんど奏効しておらず,途中から様
子を見た生徒は,被告A1が亡Xを一方的に強く殴ったり蹴ったりしてお
り,制止しないと危険だと感じていた。なお,上記教諭らが駆け付けた際
には,興奮した様子の被告A1がいるだけであったが,上記教諭らが周囲
の生徒に何があったのか尋ねると,被告A1と亡Xがけんかしていた旨告
げられた。この際の状況は,駆け付けた教諭らから,当日にア教諭に,翌
5日の学年の打合せにおいて本件中学校の2年生を担当する教諭らにそれ
ぞれ報告された。【47】(甲44,109,113,185,222,
224ないし226,229,258。この点,被告A1は,上記事実を
否認するが,教諭らが駆け付けたというエピソード(なお,【49】とは
別の機会・教員によるものである。)を伴って廊下で被告A1が亡Xを殴
っていたことを目撃した旨の多数の同級生の警察官に対する供述があり,
現場に臨場した教諭らの供述とも良く符合することからすれば,上記各証
拠により上記事実を認めることができる。)
⒅ア亡Xは,10月5日(水曜日),帰りの会の前の休み時間である午後2
時15分頃から午後2時20分頃までの間,被告B1に眼鏡を取り上げ
られ,本件中学校中校舎3階男子トイレまで同被告を追いかけた。その
場に居合わせた被告A1は,亡Xの言動が気に入らなかったことから,
亡Xに「殴っていいか」と尋ね,「いい」と答えた亡Xの顔面を殴打し,
「やり返さないともっと強くするぞ」と言った。亡Xは仕方なくといっ
た様子で被告A1の腕の辺りを一発殴り返したところ,被告A1が亡X
の顔面や上半身を,亡Xが被告A1の上半身を,それぞれ複数回強く殴
り合う状況となった。殴り合いは,被告A1の求めに応じて被告A1と
亡Xが互いに抱き合う形で終了したが,亡Xの顔面にはあざができてい
た。この間,同トイレ及びその付近には,亡Xと被告A1のほか,被告
B1,被告C1以外に二人の同級生が同トイレにいたが,被告A1以外
の者が亡Xに手を出すこともこれを制止することもなかった。【49】
(甲31,33,34,44,50,58,61,193の1,229,
246,249,252ないし257,259ないし261,263な
いし265,309,406,475,乙イ3の7,7の1・6・8・
9,12の1・4ないし7,16の3,乙ロ6の1,20の1,23,
乙ハ56,57,60,乙ニ16,被告A1本人。この点,被告A1は,
亡Xに殴るから殴り返せと述べて1発ずつ殴り合った後に抱き合って教
室に戻ったと主張し,上記事実のうち,これと異なる部分を否認するが,
極めて多数の同級生が亡Xと被告A1のトイレでの殴り合いを目撃した
旨警察官に供述していたのであり,しかも,このうち教諭に助けを求め
る行動に出た生徒もいたことからすれば,被告A1が主張するように1
発ずつの殴り合いで終了したはずがなく,被告A1自身,キ教諭からの
聞き取りに対し,何発か殴ったことを認めていた(甲309)のである
から,上記各証拠により上記事実を認定することができる。)
2年3組の女子生徒の数名は,垣間見えた上記トイレの中の様子や物
音から亡Xが被告A1らから暴力を振るわれていると認識して,付近に
いたオ教諭に対してはその旨を,2年3組の教室にいたア教諭に対して
は亡Xがいじめられている旨を告げるなどして亡Xを助けるよう求めた
が,オ教諭が駆け付けた際には,既に被告A1や亡Xは上記トイレから
出てくるところであった。教室に戻ると,亡Xは,顔面のあざについて
尋ねた級友に対し,自分でやったなどと説明していたが,被告A1及び
被告B1は,女子生徒が教諭に報告したことについて「ちくんなや」な
どと不満を述べていた。(甲31,44,233,249,252,2
59,260,379,乙イ6の2,16の3)
イア教諭は,放課後に亡Xと被告A1を呼んで二人を同席させた上で事情
を確認した。被告A1は,以前から亡Xに対してやり返すように言って
いたのにやり返してこず,ウジウジしている話し方や態度に腹が立って
おり,今日もウジウジしていたので「殴っていいか」と尋ねて殴った旨
述べた。他方,亡Xは,つらそうな表情をして,被告A1の「殴るぞ」
の言葉に「いいよ」と答えると殴られ,亡Xからも被告A1の胸から肩
の辺りを一発殴り,その後,数発ずつ殴ったこと,やり返さないともっ
と強くするぞと言われたので今日はやり返そうと思っていたこと,これ
まで強くやり返したことはなく,初めて強く殴り返したが,今日のこの
ことについては嫌だったこと等を述べた。ア教諭は,亡Xと被告A1に
互いに謝罪をさせ,帰宅するためのバスの時刻が到来した被告A1が先
に退出した。被告A1が退出した後でア教諭が亡Xに再び確認したとこ
ろ,亡Xは,同教諭に対し,今日は嫌だったが,被告A1とは友達でい
たいなどと述べた。(甲258,乙イ7の1,12の1・4ないし7,
16の3,乙ロ6の1,20の1,証人ア,被告A1本人)
ウア教諭は,同日中に原告甲と被告A3に子らを伴って来校するように求
め,先に亡Xと二人で来校した原告甲及び後から一人で来校した被告A
3に対し,学年主任の教諭と共に個別に面談し,被告A1及び亡Xの両
名から聞いたトイレでの経緯や,今回の件について一部の生徒からいじ
めではないかとの指摘もあるが担任としてはけんかであると認識してい
ること等について説明した。なお,被告A3は,被告A1のことで本件
中学校に呼び出されたのは,入学直後の合宿でけんかをした件以来2度
目のことであった。(甲225,226,乙イ3の7,7の8,12の
1・4ないし7,16の3,乙ロ7の1・3,22の2,26,乙ハ4
5,証人ア,被告A3本人)
なお,原告甲は,同日までに,亡Xの部屋から以前に被告A1に返した
はずの携帯型ゲーム機等を発見し,亡Xが被告A1の使い走りとして当
該ゲーム機の所持を強いられているのではないか等と疑っていたため,
ア教諭から学校に呼び出された際にこれを持参し,ア教諭との面談の前
に,亡Xに対し,これから被告A1やその親に対して確認するが,当該
ゲーム機は本当に被告A1から亡Xが借りたものであるのかについて,
原告甲において真実を知っているなどと虚実を交えて質したところ,亡
Xは,原告甲の疑念とは異なり,当該ゲーム機が被告A1のものではな
く亡Xのものであることを明らかにした。(甲10の1・2,乙イ7の
6,16の3,原告甲本人)
また,原告甲は,同日の面談の後,亡Xと共に近隣の商業施設に赴いた
ところ,被告A1や被告B1を見かけ,被告A1がア教諭からの呼出し
に応じていないことを不快に思うとともに,被告A1及び被告B1らの
態度に万引き等のよからぬことをしているのではないかと疑念を抱き,
亡Xに対し,被告A1や被告B1らと当該商業施設で万引きをしている
のではないか,原告甲は当該商業施設から聞かされて知っている,当該
商業施設に聞きにいこうなどと虚実を交えて質したところ,亡Xは,当
初は否定していたものの,やがて自分だけが菓子や消しゴムを万引きし
ていたが他の人はしていないなどと述べるに至った。(乙イ6の2,1
0の4,16の3,乙ハ40,45,原告甲本人)
この際,亡Xは,原告甲から,被告A1や被告B1からいじめられて
いるのではないかと複数回尋ねられたが,いずれの質問に対してもじゃ
れているだけであると回答した。(甲10の1・2)
原告甲は,その直後にア教諭に電話をかけ,被告A1が上記商業施設に
いたこと,亡Xが当該商業施設での万引きを認めたことを報告するとと
もに,亡Xは否定しているが被告A1や被告B1らも万引きをしている
のではないか,被告A1に対する指導結果は報告してほしいなどと告げ
た。(甲226,乙イ6の2,7の1,12の1・4ないし7,16の
3,乙ハ40,45,原告甲本人)
他方,被告A3は,帰宅後,被告A1からア教諭の説明内容を踏まえて
事情を確認し,殴るから殴り返せという形で殴ることを強要するのは良
くない旨などを説諭し,父親である被告A2にもこの件を報告したが,
被告A2が被告A1に重ねて指導したりすることはなかった。(甲8,
乙ロ7の3,22の2,25,被告A1本人,被告A2本人,被告A3
本人)
エア教諭と学年主任の教諭による指導の状況は,同日,事態を受けて開か
れた2年生の担当教員による緊急の集約会議において報告され,今後の
対応が検討された。同会議では,同日の事態は被告A1と亡Xのけんか
であると位置付けられたが,いじめを疑う必要があるとの意見が出され
たこと等も踏まえ,週明けの同月11日に本件中学校の生徒らに対して
実施される予定であった善行迷惑調査の調査結果に留意する方針が了承
された。(甲225,226,258)
⒆10月7日(金曜日)は前日から行われていた中間試験の最終日であ
ったが,被告B1は,同日の午前中,亡Xの鞄を開けて中から袋に入
った状態のパンを取り出し,亡Xが「やめて」等と言って嫌がってい
たにもかかわらず,これを食べたため,亡Xの昼食用のパンは残り僅
かとなった。なお,被告B1は,それまでにも複数回,亡Xの昼食で
あるパン等を取り上げ,亡Xの承諾なしに食べていたが,被告B1が
このようなことをするのは,亡Xに対してのみであった。【11】
【12】【52】
また,被告B1は,同日,亡Xに対し,「Xうざい」「おまえ嫌いや
ねん」「みんなに嫌われてるの気付かへんのけ」などと亡Xをひぼう
する言葉を多数投げ掛けており,周囲の者は,日頃とは異なり亡Xの
表情が引きつっていると感じていた。
(甲44,92,141の1,392ないし400,406,474。
この点,被告B1は,上記事実を否認するが,1学期に亡Xと一緒に
昼食をとっていたクラスメートが,2学期になって初めて亡Xが一緒
に昼食をとろうと言ってきたという印象的なエピソードを伴って具体
的に被告B1が亡Xのメロンパンを取り上げて食べた状況を供述して
おり(甲141の1,474),この者以外にも複数のクラスメート
が亡Xのパンや握り飯を被告B1が亡Xの了解を得ずに食べてしまっ
た旨警察官に供述していたのであるから,上記各証拠により上記事実
を認定することができる。)
亡Xは,同日,4時間目の終了した午後零時40分過ぎ頃,本件中
学校中校舎3階男子トイレにおいて,他の生徒も複数いる中で,ふざ
けた様子の被告A1及び被告B1のいずれかから,「なんやねん,死
ねや」,「なんで泣いてんねん」などと声をかけられ,胸ぐらを掴ま
れたり,顔面を殴打されたり,足で蹴られて「痛い」と声を上げたり
するなどした。この頃,亡Xは,上記男子トイレにおいて,うつむき
ながら手で目を隠すようにして鼻をすすりながら,一人で涙を流して
いるところを目撃され,居合わせて声を掛けた生徒に対し,「大丈夫」
と返答した。亡Xは,午後零時50分頃,保健室を訪れ,イ教諭に対
し,手を伸ばしながら「ああ,やっとテストが終わった」と述べると
ともに,自然に鼻血が出てきたと説明したが,いじめを疑うイ教諭か
ら「いつから殴られるようになったんや。」と尋ねられ,「2学期か
ら殴るのがきつくなった。」と不安そうな様子で答えた。【53】
(甲44,205,312,315,317,318,320,47
5,乙イ2の34,13の4。この点,被告A1及び被告B1は上記
事実を否認するが,同級生が10月7日の中間テストが全て終了した
後に上記事実各を目撃した旨警察官に供述していたのであり(甲31
7,318,320),これに沿うクラスメートの警察官に対する供
述(甲475)もある上,その直後に保健室で手当てを受けた亡Xが
イ教諭に2学期から殴られるのがきつくなったと述べたことも併せ考
慮すると,上記各証拠により上記各事実が認められる。なお,保健室
備付けの救急処置の記録(乙イ13の4)には,亡Xの処置時刻とし
て亡X以外の者の筆跡で「11:50」と記載されているが,イ教諭
の警察官調書には「ああ,やっとテスト終わった。」と述べて手を伸
ばしていたという亡Xの様子が極めて具体的に記載されている(甲2
05)ことから,亡Xの保健室来室時刻は午前11時50分ではなく,
中間テストが全て終了した午後零時40分以降であり,上記の「1
1:50」の記載は「12:50」の誤記であると認められる。)
10月7日,亡Xは,被告A1らに殴られて話しづらくなった等と
述べて,被告A1及び被告B1らのグループではなく,1学期の頃に
昼食を共にしていた友人らのグループに入って昼食を取った。なお,
被告B1が午前中にパンを取り上げて食べたため,亡Xが食べたパン
の量は僅かであった(甲44,141の1,399,474,乙イ7
の11)。
被告A1及び被告B1は,亡Xから,9月中旬以降,原告甲が被告
A1と被告B1が亡Xに対して銀行口座から預金を引き出させるなど
しているのではないかと疑っていることを告げられて立腹し,「甲死
ね」「X死ね」などと発言することがしばしばあったが,10月7日
には,原告甲が被告A1と被告B1が自ら万引きをしたり,亡Xに万
引きをさせているのではないかと疑っていること,被告A1と被告B
1のどちらがリーダーであるのか把握しようとしていること等を告げ
られて更に立腹し,昼食後から地域清掃作業が開始されるまでの間に,
2年3組の教室内において,亡Xの前で「甲死ね」などと怒ったよう
に大声で繰り返し言い,その様子を見て事情を聞いた被告C1も加わ
ると,被告少年らは,全員がそれぞれ「甲死ね」と大声を出し,その
全員又はいずれかが「X死ね」などと大声を出した。亡Xは,それ以
前の機会には一緒になって「甲死ね」と言うこともあったが,この日
は顔をしかめていた。【33】(甲33,34,44,50,52,
54,58,61,73,104,107,108,141の1,2
33,234,270ないし277,279,280,309,47
4,475,乙イ2の44・49,乙ロ20の1,24,乙ハ56,
57,乙ニ16,被告A1本人。被告少年らは,亡Xと一緒に「甲死
ね」と言っただけであると主張し,その余の上記事実を否認するが,
複数のクラスメートが上記事実を目撃した旨警察官に供述し,被告C
1も「Xも一緒に死ね」と言ったこと自認していたのである(甲58,
279)から,上記各証拠により上記事実を認めることができる。)
イ原告甲は,10月7日以降,亡Xに対し,祖父母らの金銭を盗んだこ
と等について,祖父母らに向けた反省文を作成するように求め,体裁が
不十分であったり,原告甲が把握している事実が記載されていなかった
ことから,嘘の部分が残っていれば泥棒と同じことになるなどと申し向
けて書き直させた結果,亡Xは,同月10日までに,それぞれの祖父母
らに対して,反省文を各3通作成した。なお,亡Xは,父方の祖父母に
対する反省文の最後に「それでも,俺には,悪い友達は一人もいない。
それだけは,わかってほしい。」などと記載していた。(甲10の1・
2,乙イ6の2,10の4,乙ロ5の2,乙ハ40,45,46,原告
甲本人)
⒇被告B1及び被告C1は,10月8日(土曜日)午後3時頃,前触れなく
原告甲宅を訪問した。なお,同宅を訪れるのは,被告B1が3回目であり,
被告C1は初めてであった。
当時,原告甲宅には,亡Xと次姉が在宅しており,被告B1及び被告C
1は,原告甲宅に30分ほど滞在したが,この間,被告B1及び被告C1
のいずれかが奥の和室の戸を開けて次姉の被っていたかぶり布団を勢いよ
くまくったり,その後に自室に移動して内鍵をかけていた次姉に声をかけ
て部屋の扉を開けようとしたほか,被告B1が亡Xにこかし合いを仕掛け
るなどして暴れ,被告B1と亡Xが揉み合いになった際に被告B1の持参
していた煙草の箱を亡Xが踏んだことや被告C1に亡Xの足が当たったこ
とに被告B1及び被告C1が激高して亡Xに詰め寄ったり,被告C1が怒
った口調で亡Xに「漫画くれや」と申し向けたり,亡Xを自室の外に出し
た上で室内を荒らし,更に学習机の袖机とその背後の壁との隙間に亡Xの
財布を隠すなどした。亡Xは両名を歓迎しておらず,原告甲が帰宅するな
どと述べて早々に退去するよう求めたため,被告B1及び被告C1は,原
告甲宅を退去したが,この際,亡Xの財布を隠したことを明かさなかった
ほか,亡Xの意向に反して,被告C1が亡Xの漫画本18冊と同人が原告
甲から次姉とそろいで誕生日の祝いとして贈られた腕時計1個を持ち去っ
た。亡Xは,被告B1及び被告C1の退去後,自身の財布が見当たらない
ことに気付いて自宅内を2時間ほど探したが,発見することができなかっ
たため,同日午後5時33分以降,被告B1の携帯電話に4度にわたり電
話をかけ,2回目の電話をかけた午後5時36分には,被告B1の携帯電
話に留守番電話機能を使って「あのぅ,スケットダンスの漫画,なんか,
お父さんが売るとか言ったから,売るとか言っとるから,ちょー返して。」
という内容の伝言をするなどした。これに対し,被告B1から同被告及び
被告C1のいるa公園に来るよう求められたため,亡Xは,a公園に赴い
て,被告B1及び被告C1に対し,財布の返還を強く求めるとともに漫画
の返還を求めたが,両被告が財布のことは知らない旨述べるとともに,書
籍を直ちに返還することも拒んだことから,亡Xは財布の所在を知らされ
たり,書籍等の返還を受けたりすることなく帰宅し,その日の夜,原告甲
に対し,翌日に卓球大会に行くのにお金が要るとして,財布が無くなった
ことを告げた。【54】
亡Xの死亡後,長姉により亡Xの自室内の机の後ろから同人の財布が発
見された。その際,当該財布に在中していた金額は35円であった。
(甲8,11の1・2,32,34,50,58,96,283,286,
291,293,294,296,297,300ないし303,305
ないし308,乙イ7の6,乙ハ53,56,57,61,乙ニ12の1,
16,20,被告B1本人,被告C1本人。この点,被告B1及び被告C
1は,亡X宅を訪れ,退去する際,被告C1が漫画本18冊及び腕時計1
個を持ち帰ったことは認め,その余の事実は否認するが,亡Xと共に自宅
にいた次姉が,上記の事実を,自ら体験した事実及び被告B1及び被告C
1が退去した後に亡Xから聞かされた事実として,検察官及び警察官に供
述していた(甲32,300,301)ところ,亡Xのクラスメートや同
級生が被告B1及び被告C1から亡Xの漫画本を盗み,財布を盗んだ,あ
るいは,机の下に隠したと聞かされたと警察官に供述しており(甲50,
297,306,307),実際に財布が亡Xの机の背後から発見された
こと(甲293)から,上記各証拠により上記事実を認定することができ
る。)
亡Xは,10月9日(日曜日),所属していた卓球部の活動として近隣の
体育館で開催された卓球大会に参加し,午前8時頃から午後3時頃まで卓
球部の友人らと行動を共にした。亡Xは,同日の朝には,ぼうっとして少
し下を向いており,日頃亡Xのことを元気で賑やかな人物だと考えていた
同部の友人が少し驚くほど元気のない様子であったが,試合には数回勝利
し,試合の合間には楽しそうに同部の友人と隠れん坊をして遊ぶこともあ
り,友人に対し,真偽は不明であるものの,当日参加していた同部の別の
生徒の握り飯1個を無断で食べ,当該生徒のその他の握り飯を潰したなど
と述べることもあった。(甲108,299,397)
なお,亡Xは,卓球部の友人に対し,かねてから,原告甲と被告A1及
び被告B1について愚痴をこぼしており,原告甲に対しては,勉強をしろ
とうるさい,自宅の壁を手拳で壊した,力では敵わないなどと,被告A1
及び被告B1に対しては,一緒に遊びたくないなどと述べていた(なお,
原告甲については元力士で力が強いなどと自慢もしていた。)が,10月
9日の卓球大会からの帰路では,翌日は被告A1らと遊ばなくてはならず,
被告A1らが亡Xの自宅に呼びにくること,被告A1らを自宅に入れると
部屋の中を荒らされたり,物を盗られたりするかもしれないことを落ち込
んだ様子で心配しながら話し,上記友人から,自宅を空けて留守にすれば
よいのではないかとのアドバイスを受けた。(甲298,299)
同日,卓球大会から帰宅していた亡Xは,夕食の準備をしている長姉に対
し,「どうしたらばれずに学校を休めるか」などと質問したが,長姉が理
由を尋ねると「いいわ」と返答して質問を終えた。(乙イ7の6,10の
4,21の1)
ア10月10日(月曜日・体育の日),被告A1,被告B1及び被告C1
は3名で原告甲宅に向かったが,インターホンを押しても応答がなかっ
たため,同宅を辞去した。(甲308,乙ロ20の1)
イ亡Xは,同日,原告乙及び次姉と共に石川県にある原告乙の祖母の墓参
りに出掛け,原告甲の好物を土産に購入して帰路についたが,道中,原
告乙に対し,「ママ,いつ,戻って来んの。パパに1回,ママに戻って
来てって言ったらって話したけど,パパは『俺から戻って来てとは言わ
ん』って言ってた。ママ,どうしたら戻って来んの。」等と話しかけた。
これに対し,原告乙は,戻りたい気持ちもあるが,戻ってから原告甲と
どう接していいか分からず自信がない旨述べるとともに,離婚も考えて
いることを初めて亡Xに告げた。亡Xは,帰路の車内で,「帰りたくな
い。もう着くんか。嫌やなぁ。」等と発言したが,次姉と共に帰宅し,
原告甲と3名で夕食を取り,原告甲への土産も共に賞味した。(甲45
6,乙イ10の4,原告乙調書,原告甲本人,原告乙本人)
ウ亡Xは,同日夜,祖父母らに対する反省文を書き上げた。(甲10の
1・2,乙イ7の6,10の4,乙ハ45,46,原告甲本人)
亡Xは,同月11日(月曜日),午前6時頃に原告甲が仕事のために自宅
を出た後,自宅の固定電話から,長姉の携帯電話に,午前6時31分と午
前6時46分の2回にわたり電話をかけたが,電話はつながらなかった。
(乙イ7の6,26)
原告甲は,同日午前7時頃,職場から自宅に電話をかけて亡Xが起きてい
るか確認するとともに,亡Xに対し,パンの袋をテレビの後ろに放置しな
いよう注意したところ,注意を受けている最中に,亡Xが電話を切ったた
め,同日午前7時57分頃,原告甲は再び自宅に電話をかけて,亡Xに再
度パンの袋の件について注意をした。(乙イ7の6,10の2・4,証人
丁,原告甲本人)
亡Xは,同日午前8時10分頃,自宅のあるマンションの14階から飛
び降りて自殺した。(前記前提事実⑵)
亡X死亡後,被告A1,被告B1及び被告C1が,亡Xの机において,ト
ランプ遊びに興じたり,被告A1及び被告B1が,学級通信に掲載された
亡Xの顔写真に爪で傷付けたりしたことがあった。(甲11の1・2,1
07,108,118,141の1,乙イ16の2,被告A1本人)
原告らは,平成25年10月9日,独立行政法人日本スポーツ振興センタ
ーから,大津市教育委員会を通じて,災害共済給付金(死亡見舞金)28
00万円を受領した。また,原告らは,大津市も被告として本件訴訟を提
起し,前記第1の被告らに大津市を加え,請求額も3859万8578円
及びこれに対する遅延損害金としていたが,平成27年3月17日の本件
口頭弁論期日において,大津市及びその余の被告らに対する請求を二分し,
大津市に対して1929万9289円及び遅延損害金の支払を,その余の
被告らに対して同額の金員の連帯支払をそれぞれ求める訴えに変更した上,
同日の和解期日において,大津市との間で,大津市が原告ら各自に対して
既払金(独立行政法人日本スポーツ振興センターからの災害共済給付金2
800万円)を除き,和解金としてそれぞれ650万円(総額1300万
円)を支払う旨の訴訟上の和解をした。そして,原告らは,同年4月3日,
大津市から,上記和解金を受領した。(前記前提事実⑶,⑷)
2前記認定事実を踏まえ,各争点について判断する。
⑴争点⑴(被告少年らによるいじめの有無,態様等及び共同不法行為の成否)
及び争点⑵(被告少年らの行為と亡Xの自殺との因果関係の有無)につい

争点⑴のうち,被告少年らによるいじめの有無,態様等の認定については,
その理由も含め,前記1の認定事実で説示したとおりであり,ここでは,
その共同不法行為の成否について判断する。以下では,まず,争点⑵のう
ち,亡Xの自殺の原因について判断した上で,争点⑴の共同不法行為の成
否,争点⑵の相当因果関係の有無の順に判断する。
ア亡Xの自殺の原因(争点⑵)
前記認定事実によれば,亡Xが自殺に至るまでの被告少年らとの関わ
りは,以下のとおりである。
亡Xと被告A1及び被告B1は,2年生で同じクラスになり,5月
中旬以降,共通の趣味であるゲームを通じて次第に親しくなり,1学
期のうちに,休み時間にこかし合いや首絞め,ズボンずらしに興じた
り,放課後もその行動を共にしたりし,その後,昼食も一緒にとった
り,休日にお互いの自宅を訪れるなど,次第にその関係を深めていき
(前記認定事実⑵ア),夏休みに入ると,亡Xが頻繁に被告Bら宅を
訪れ,週に一,二回は宿泊を伴うようになり,被告A1及び被告B1
と,花火大会やUSJに出掛けるなど,その関係を更に深めていった
(同⑶ア)。
このような3名の親密な関係は,2学期に入っても継続したが,被
告A1がこかし合いやヘッドロックで転倒した亡Xの上にまたがって
押さえ込み,被告B1も,これに加勢したり,自らこれらの行為に及
ぶようになったり,被告A1及び被告B1が亡Xに肩パンをしたりし
て,亡Xを痛がらせたり苦しがらせたりするようになり,ズボンずら
しも,下着や臀部が露出するまでするようになり,綱引き予選の際に
は,被告A1が亡Xを倒して首絞めを仕掛けたり,被告B1がうつ伏
せの亡Xの上にまたがって頚部を後ろから引っ張ったりするなど,1
学期と比べて亡Xに対する行動が次第にエスカレートし,周囲にやり
すぎとの印象を与えるようになるとともに,これらの行為に対する亡
Xの反応も乏しくなってきた(同⑷ウ)。また,被告A1及び被告B
1が亡Xの文房具,弁当及び眼鏡を隠したりするなどの行為も見られ
るようになった(同⑷ウ)。このように,2学期に入ると,被告A1,
被告B1及び亡Xとの間で,仕掛ける側と仕掛けられる側,「いじる」
側と「いじられる」側という役割が固定化した関係が構築され,被告
A1及び被告B1による,仕掛ける行為や「いじる」行為が次第に強
いものにエスカレートしていき,対等な友人間のふざけ合いといえな
い場面もしばしばみられるようになった。そして,亡Xとしては,被
告A1及び被告B1のこれらの行為をどのように受け止めてよいのか,
とまどいを見せることもあり,被告A1及び被告B1の期待した反応
と異なったため,同人らが苛立ちを覚える結果となった。
このような状況の中,被告C1が被告A1,被告B1,亡Xらの学
級を訪れ,これらの者の関係に参入するようになり,これらの者の間
における上記のような亡Xの位置付けがより明確に固定化されること
となった。また,亡Xの金銭問題を契機に,原告甲が被告A1及び被
告B1の関与を疑い,そのことが亡Xから被告A1及び被告B1に伝
えられた結果,被告A1及び被告B1の亡Xに対する対応・行為がよ
り厳しいものに変質し,遊びという名の下に,亡Xを床に倒して首を
絞めたり,顔面を殴打したり,顔面に落書きをしたり,あるいは,亡
Xを足蹴にするという暴行に及ぶようになった(前記認定事実⑸,
⑹)。亡Xは,親しい関係を構築したはずの被告A1及び被告B1か
ら,上記のような暴行を受け始めるようになり,急激に被告A1及び
被告B1の関係が悪化していくのを感じ,その間に,祖母に希死念慮
を吐露し,その原因が家庭ではなく学校にあることを示唆することも
あった(同⑺ア)。
さらに,2学期が始まって1か月も経たない9月下旬には,亡Xに
対する行為がより深刻化し,被告B1は,亡Xに仕掛けた遊びで同人
が簡単に脱出したというだけで激高し(そのこと自体に被告B1の亡
Xを格下と位置付ける意識が強く現れている。),亡Xを転倒させて
その頚部を踏み付け(前記認定事実⑻),亡Xのインクペンのインク
芯を切断してインクを大量に筆箱に付着させたり(同⑼),亡Xのス
ポーツバックをチョークの粉まみれにしたりした(同⒀)ほか,被告
A1と共に制汗スプレーを使い切るまで亡Xに吹き付けたり(同⑽),
亡Xのテスト成績カードを破ったり(同⑾)と,友人間のいたずらの
域を大きく逸脱する行為に及ぶようになった。
そして,同月29日に開催された体育祭において,被告少年らは,
じゃんけん罰ゲームと称しながらじゃんけんを経ないまま,亡Xの口
にガムテープを貼ってその手足を鉢巻きで緊縛したり,すねにガムテ
ープを貼ってはがしたり,じゃんけん罰ゲームとは無関係に亡Xを足
蹴にしたりしたほか,じゃんけん罰ゲームにおいてじゃんけんに負け
た亡Xに,蜂の死骸を食べさせようとし,その口の上に蜂の死骸を乗
せ,その様子を楽しむなどした(同⑿)が,他の参加者が受けた罰ゲ
ームが,せいぜい,すねにガムテープを貼ってはがす,女子生徒に土
下座するといった程度にすぎなかったことを考慮すると,亡Xのみが
著しく均衡を欠く罰ゲームを受けたことになる上,亡Xの様子を見た
他の生徒や教諭が鉢巻きでの緊縛を制止し,あるいは,亡Xの死亡後
に多数の目撃者が名乗り出るなど周囲に極めて強烈な印象を残すよう
な異常な状況に亡Xが置かれていたということができる。これらの行
為を受けた結果,担任の教諭が亡Xの表情が暗いと感じるようになり,
亡Xも学習塾の友人に対して頻繁に希死念慮を吐露していたが,体育
祭の後はこのような行動も見られなくなった(同⒂)。
その後も,10月3日から同月5日にかけて,被告A1が,亡Xの態
度に苛立ちを覚えたという理由から,同人の顔面等を殴打するという
暴行に及ぶとともに反撃を強いるという出来事が連続し,これを目撃
した生徒が教諭に制止するよう求めるなどして教諭が現場に臨場し,
その後,保健室で手当てを受けたり,また,最終日には保護者が学校
に呼び出されたりするという状況に至った(前記認定事実⒃ないし
⒅)。そして,中間テスト最終日の同月7日には,被告B1が亡Xが
昼食として持参してきたパンを無断で食べたり,被告A1が亡Xにト
イレで顔面を殴ったり足を蹴るなどし,ここに至り,亡Xは,1学期
に昼食を共にしていたグループと共に昼食をとるなど,被告少年らと
の関係からの離脱ともみられる行動に出るようになった(同⒆)。
それでも,被告少年らは,原告甲や亡Xに死ねと叫ぶなど,亡Xに対
する攻撃が止むことはなく,翌8日土曜日には,被告B1及び被告C
1が前触れなく亡Xの自宅を訪問し,亡Xの部屋に押し入って傍若無
人の態度で振る舞い,亡Xの財布を机の後ろに隠したり,漫画本及び
時計を持ち去ったりするなどし,亡Xが財布や漫画本の返却を求めて
もこれに応じない態度を崩さず,亡Xをひどく困惑させた(前記認定
事実⒇)。翌9日,卓球大会に参加した亡Xは,その帰路,友人に対
し,被告少年らが自宅に来て自宅を荒らされたり,物を取られたりす
ることを危惧する心情を伝え,帰宅後,夕食の準備をする長姉に学校
を休む
このような経過を経て,10月10日の休日に石川県に原告乙及び次
姉と墓参りに行った翌日の同月11日午前8時10分頃,亡Xは自殺
した。
前記認定事実によれば,亡Xの自殺に至るまでの原告ら家族との関わ
りは,以下のとおりである。
亡Xが小学校に在籍していた当時,原告甲による亡Xへの虐待に係る
通告が相談センターにされたことがあるものの,結局,虐待事象が確
認されないまま案件の係属が終結された。亡Xが本件中学校1年生の
頃には,複数回,本件中学校から指導を受けることがあり,その際,
原告甲が亡Xの頭部をたたいて叱り,翌日に亡Xの足に原告甲の懲戒
によって生じたと考えられるあざが確認された(前記認定事実⑴ア)。
亡Xが2年生になってからも,担任の教諭が原告甲に学校内のトラブ
ルを伝えたところ,亡Xが原告甲にたたかれたと申告することがあっ
た。
そして,亡Xが2年生に進級する直前の3月には,原告甲の暴言が原
因で原告乙が自宅を出て原告甲らと別居するようになり(前記認定事
実⑴ア),7月には長姉も自宅を出て原告乙と同居を開始し(同⑵イ
,亡Xは,父親である原告甲及び次姉と自宅で起居を共にし,時
折,母親である原告乙らの別居先を訪れるような生活状況となった。
原告甲は,7月の1学期の三者面談において,亡Xの提出物の管理に
問題があると指摘され,成績が悪かったこともあって,亡Xにコンピ
ューターゲームを禁止し,学習塾に通わせることにしたが,亡Xは,
本件貯金口座から出金してゲーム機等を購入するなどし(前記認定事
,夏休みには,被告Bら宅で宿泊を繰り返したり,祖父母
宅に宿泊したりして,自ら「家出」と称し,自宅にいることを避けて
いた(同⑶)。
そのような中,被告B2及び担任の教諭を介して,亡Xが無断で被告
Bら宅での外泊を繰り返し,USJに出掛けたことが原告甲の知ると
ころとなり,本件貯金口座のキャッシュカードを抜き取ったとの疑惑
も生じたため,原告甲が亡Xを怒鳴り,顔や頭をたたく,体を蹴る,
掃除用具の柄でふくらはぎを数回たたくという懲戒を加え,見かねた
次姉に制止される事態となった(前記認定事実⑸ア)。亡Xは,母方
祖父母宅に避難し,その後,数日間は原告甲とまともに口をきかなく
なり,原告甲が亡Xによる本件貯金口座からの多額の出金を知って被
告A1及び被告B1の関与を疑うようになったため,そのことを亡X

Xに対する言動・対応がより厳しいものとなった。
さらに,亡Xが父方及び母方の祖父母宅で現金を抜き取っていたこと
が判明したため,原告甲が相談機関に相談し,亡Xの発達障害の可能
性を示唆されたことから,亡Xを叱責することを控えつつ,病気の可
能性を伝えたところ,亡Xは,自宅を飛び出して近隣マンションで一
夜を過ごし,翌日,担任の教諭に対し,自宅ではいつも命令されて面
白くないこと,原告甲,長姉及び次姉はいずれも亡Xより立場が上で
あるので逆らえないことなどを話した(前記認定事実⑺)。
そして,10月5日,亡Xと被告A1が殴り合いをしたことから,原
告甲が学校に呼び出され,近隣の商業施設で亡Xが万引きしていたこ
とも判明したが,亡Xを叱責するようなことはなかった(前記認定事
実⒅ウ)。原告甲は,同月7日,亡Xに祖父母宛に反省文を作成させ,
亡Xは,これを同月10日に完成させた(同⒆イ,同,同月
10日の夕食は原告甲及び次姉と一緒にとっており,原告甲への石川
県への墓参りの際なお,墓参りから
の帰路,亡Xは,原告乙から,原告甲と離婚を考えていることを初め
10月11日朝には,亡Xは,午前7時頃,原告甲からテレビの後ろ
に放置されたパンの袋について注意され,亡Xから途中で電話を切っ
たが,午後7時57分頃,再び,原告甲から電話で注意を受けた。そ
して,亡Xは,午前8時10分頃,自殺した。
亡XXは,共通の趣
味であるゲームを通じて親しくなった被告A1及び被告B1との間で
友人関係を形成し,1学期から夏休みを通じてその関係を次第に深め
ていったが,2学期に入ると被告A1及び被告B1が仕掛ける側,
「いじる」側,亡Xが仕掛けられる側,「いじられる」側という関係
が固定化し,これが,被告A1及び被告B1において,亡Xを格下と
位置付ける意識の形成につながり,被告A1及び被告B1のこうした
意識が亡Xに対する暴行などの厳しい対応となって現れるようになり,
行為が更にエスカレートしていったことが認められる。そして,こう
した行為は,それ自体が亡Xに心理的負荷を与えることに加え,被告
A1及び被告B1との友人関係の崩壊と上下関係の構築・固定化に伴
う亡Xの強い孤立感・無価値感の形成に結び付いていったということ
ができる。亡Xは,こうした状況の中,祖母や塾の友人に希死念慮を
示唆,吐露することがあり,その原因は学校に求められることも示唆
していたが,体育祭後は希死念慮を口にすることすらなくなった。1
0月上旬には,亡Xは,被告A1から連日にわたって強く暴行される
ことになり,ここに至り,被告少年らとの関係からの離脱ともみられ
る行動に出たが,その翌日の休日には,被告B1及び被告C1に自宅
に訪問されて強く困惑させられることとなったことから,自宅におい
ても被告少年らとの関係から解放されないとの強い不安感を抱くこと
になり(このことは,翌日に卓球部の友人に述べた心情に顕著に現れ
ている。),長姉への相談からも明らかなとおり,本件中学校への登
校自体を避けられないかを考えるようになっていった。こうした事実
経過の中,亡Xは,3連休が明けた11日朝の登校時刻に自殺したの
であるから,亡Xの自殺の主たる原因は,被告少年らの行為
及びそこから形成された亡Xとの関係性にあったと優に認めることが
できる。
なお,被告A1及び被告B1と亡Xとの関係に変化がみられるよう
になったのは2学期に入ってからであり,亡Xが自殺したのは10月
11日であったことから,僅か1か月余りの間に自殺に至ったことに
なる。青少年の自殺は,長い道程の準備状態を経た後に,何らかの直
接の契機によって生じるとの指摘もある(甲441,乙ハ43)が,
他方で,子どもは,心理社会的な未熟さにより衝動的に行動し,年齢
が低いほど死のうと思ってから決行するまでの時間が短い(甲428,
438),あるいは,このような事案では自殺の条件を加害者側が短
時間で整えるという特徴がある(甲425)との指摘もあり,本件に
おいても被告A1及び被告B1と亡Xとの関係が急激に変化し,亡X
に対する言動が短期間のうちにエスカレートしていったこと,子ども
の場合には,人間関係が家庭と学校を中心とした限られたものになる
ため,その中で問題が起こると,大人とは比較にならないストレスが
生じると指摘されていること(甲409,421,439,乙ニ10)
などを考慮すると,上記の期間の短さが亡Xの自殺の原因を被告少年
行為及びそこから形成された亡Xとの関係性に求めるこ
との支障とはならない。
また,亡Xは,自殺の前日に完成させた父方祖父母に宛てた反省文中
に「それでも,俺には,悪い友達は一人もいない。それだけは,わか
ってほしい。」と記載した(前記認定事実⒆イ)が,これは,被告A
1及び被告B1が亡Xの金銭問題に関与していないことを示すもの,
あるいは,希死念慮の高まりの中で生じたしゅん巡の現れにすぎず,
やはり,亡Xの自殺の主たる要因が被告少年らの前
こから形成された亡Xとの関係性という学校の問題にあったとの前記
判断を左右するものとはいえない。
この点,亡Xの自殺の原因について,被告らは,亡Xの家庭環境が原
因であり,被告少年らとは無関係であると主張する。なるほど,児童
生徒の自殺の原因は,学校問題だけではなく,家庭事情などの多様な
要因が背景にあって,これらの要因が複雑に関連する旨,自殺の危険
の背後には安心感の持てない家庭環境の存在があるとされ,夫婦仲が
悪く緊張感のある家庭では成長過程で受けるはずの愛情を十分に受け
ることができず,過干渉の場合には,愛情が歪んだ形でしか子どもに
届かないことが多く,家庭に居場所を見つけられなくなるところ,そ
のような子どもが困難に直面したときに自殺の危険が高まる旨などが
指摘されているところである(甲409,421,438,乙ニ1
0)。本件においても,Xは,母親で
ある原告乙と別居していた上,厳格な父親である原告甲と立場が上の
姉に逆らえない環境の下で日々の生活を送っており,自殺の前日に母
親である原告乙にいつ戻ってくるのか尋ねたところ,原告甲との離婚
を考えていると告げられたというのであるから,亡Xには,亡Xに安
心感を与える家庭環境が整っておらず,かつ,離婚によって母親不在
という現在の状態が将来にわたって継続する可能性もあることを自殺
の直前に知らされたことになる。その意味で,亡Xの家庭環境がその
自殺の一要因として作用したことは否定できない。
しかしながら,原告甲の懲戒に対して亡Xが自
殺を考えるほど追い込まれるような心情に至っていたという事情はう
かがわれない(原告甲の亡Xに対する懲戒が厳格なものであったこと
は否めないが,亡Xが原告甲の懲戒や過干渉にうとましさ以上の感情
を抱いていたことまではうかがわれない。)。結局のところ,被告少
年らの前Xとの関係性という学
校における問題がなければ,亡Xがあえて自殺に至ったとは到底認め
られず,家庭の問題は,せいぜい,上記の学校における問題を抱える
ようになった亡Xに対し,亡Xの問題を家庭内で受け止めて家庭にお
いて安心感を与えることができず,その自殺を防止できなかったとい
う意味において,亡Xの自殺の一要因として作用したということ以上
のものを見いだすことができない。したがって,亡Xの家庭
環境によって,亡Xの自殺の主たる要因が被告少年らの前
及びそこから形成された亡Xとの関係性という学校の問題にあったと
の前記判断が左右されることはない。
イ被告少年らの共同不法行為の成否(争点⑴)
被告A1及び被告B1は,前記ア説示から明らかなとおり,2学
期以降,亡Xに対する暴行等の個々の行為を通じて心理的負荷を与え
るとともに,これらの行為の積み重ねの中で,亡Xとの間に形成・深
化されていった友人関係を,仕掛ける側と仕掛けられる側,「いじる」
側と「いじられる」側という関係に変容させ,上下関係の構築・固定
化に結び付け,そのような関係性の中で,亡Xを精神的に追い詰める
行動を積み重ねていったのであるから,被告A1及び被告B1の亡X
に対する行為を個別に取り上げて自殺との結び付きにおいて違法な権
利侵害か否かについて評価するのは相当ではなく,これらの行為の積
み重ねが,全体として,亡Xに対し,希死念慮を抱かせるに足りる程
度の孤立感・無価値感を形成させ,さらに,このような関係が今後も
継続するなどの無力感・絶望感を形成させるに足りるものであって,
かつ,各自が,亡Xとの上記のような関係性の下において,他方の行
為の主要部分を相互に認識しながらそのような行為に及んでいたので
あれば,被告A1及び被告B1の一連の行為が,一体として,亡Xが
自殺するという生命侵害との関係において,違法な権利侵害行為に該
当し,かつ,これらの行為を相互の意思関与の下に共同したと評価す
ることができると解される。
そして,
すなわち,被告A1及び被告B1の行為は,こかし合い,首絞め,ズ
ボンずらしなどを亡Xに仕掛けることから始まったが,その後,こか
し合いで亡Xを転倒させた後にその上にまたがって押さえ込んだり,
肩パンをしたり,下着や臀部が露出するまでズボンをずらすなどエス
カレートし,その結果,仕掛ける側と仕掛けられる側,「いじる」側
と「いじられる」側という役割の固定化を生じさせるに至った。そし
て,被告A1及び被告B1は,原告甲の被告A1及び被告B1に対す
る疑念を聞かされた後,遊びという名の下に,亡Xを床に倒して首を
絞めたり,顔面を殴打したり足蹴にしたり,顔面に落書きをするとい
う行為に及ぶようになり,その後間もなく,亡Xを転倒させてその頚
部を踏み付けたり,亡Xのインク芯を切断して亡Xの筆箱等をインク
まみれにしたり,亡Xのスポーツバックにチョークの粉を大量にふり
かけたり,制汗スプレーを亡Xに使い切るまで吹き付けたり,亡Xの
テスト成績カードを破ったりと,友人間のいたずらの域を大きく逸脱
する行為に及ぶようになった。さらに,被告少年らは,体育祭におい
て,亡Xに対し,じゃんけん罰ゲームと称して口にガムテープを貼っ
てその手足を鉢巻きで緊縛したり,すねにガムテープを貼ってはがし
たり,蜂の死骸を食べさせようとしたりするなど,周囲に極めて強烈
な印象を与える内容であり,かつ,他のゲーム参加者との間に著しく
均衡を欠く罰ゲームを亡Xに行った。そして,10月3日から同月5
日及び同月7日には,被告A1が亡Xの顔面を殴打するなどして教諭
らが介入するなどの事態が続き,同月8日に被告B1が被告C1と共
に亡Xの自宅を前触れなく訪問して亡Xの財布を隠したり,漫画本や
時計を持ち去ったりした。
これらの一連の行為の積み重ねは,亡Xに対し,希死念慮を抱かせ
るに足りる程度の孤立感・無価値感を形成させ,さらに,被告少年ら
との関係からの離脱が困難であるとの無力感・絶望感を形成させるに
十分なものであったというべきであるから,これらの一連の行為が,
一体として,亡Xが自殺するという生命侵害との関係において,違法
な権利侵害行為に当たり,かつ,被告A1及び被告B1は,お互いの
亡Xに対する行為の主要部分を十分に認識していたのであるから,こ
れらの行為を相互の意思関与の下に共同したということもできる。こ
れに反する被告A1及び被告B1の主張は到底採用できない。
被告C1の行為についても,上記の亡Xと被告A1及び被告B1の
関係性を前提にして,亡Xに希死念慮を抱かせるに足りる孤立感・無
価値感・無力感・絶望感の形成という観点から,被告A1及び被告B
1と一体となってこれに関与していたといえるのであれば,同様に,
違法な生命侵害行為を被告A1及び被告B1と共同したと評価できる。
この点,前記認定事実によれば,被告C1が亡Xに対して直接した加
害行為は,‖琉藝廚瞭のじゃんけん罰ゲームに参加して亡Xの口に
ガムテープを貼ったり,手足を鉢巻きで緊縛したり,すねにガムテー
プを貼ってはがしたりし,中間テストの最終日に亡X及び原告甲に
死ねと罵倒し,10月8日に亡Xの自宅を被告B1と共に前触れな
く訪問し,亡Xの財布を隠し,漫画本及び時計を持ち去った上,亡X
の返還要求に応じなかったことにとどまり,これ以外には,被告A1
及び被告B1の加害行為をその周囲で傍観していたことがある程度に
すぎない。そうすると,被告C1が,上記の亡Xと被告A1及び被告
B1の関係性を前提にして,亡Xに希死念慮を抱かせるに足りる孤立
感・無価値感・無力感・絶望感の形成という観点から,被告A1及び
被告B1と一体となってこれに関与していたというには足りないとい
うべきである。なるほど,被告C1の上記の行為は,亡Xに被告少
年らとの関係からの離脱が困難であるとの無力感・絶望感を抱かせる
のに決定的な役割を果たしたということができ,亡Xの自殺の引き金
となる直接の契機,ないし,これにつながるものに当たり得るといえ
るにしても,そのことのみをもって,被告C1が亡Xの自殺に至るま
での準備状態の形成について被告A1及び被告B1と同様の役割を果
たしたことまで推認させるものではなく,亡Xが自殺するという生命
侵害との関係において,違法な権利侵害行為に当たるものとまではい
えない。
ウ相当因果関係の有無(争点⑵)
Xに対する加害行為は,一連の行
為の積み重ねにより,亡Xに対し,希死念慮を抱かせるに足りる程度の
孤立感・無価値感を形成させ,さらに,被告少年らとの関係からの離脱
が困難であるとの無力感・絶望感を形成させるに十分なものであり,そ
のような心理状態に至った者が自殺に及ぶことは,一般に予見可能な事
態であるといえるから,亡Xの自殺は通常損害に含まれるというべきで
ある。したがって,被告A1及び被告B1の加害行為と亡Xの自殺との
間には相当因果関係が認められる。
⑵争点⑶(被告少年らの責任能力の有無)及び争点⑷(被告父母らの監督義
務の懈怠の有無等)について
被告A1及び被告B1は,亡Xに対する前記⑴イの加害行為当時,中学校
2年生であり,前記認定事実に係る同人らの言動を踏まえても,自己の行
為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかった(民法712条)と
は認められない。
その場合でも,被告A1の監督義務者である被告A2及び被告A3並びに
被告B1の監督義務者である被告B2に監督義務違反があり(なお,被告
B3については,被告B1に対して監督義務を負うことについての発生原
因事実の主張立証が一切ない。),これと未成年者の不法行為によって生
じた損害との間に相当因果関係を認め得るときには,上記監督義務者らが
民法709条に基づき損害賠償責任を負うが,その監督義務違反は民法8
20条所定の日常的な監督義務の違反では足りず,具体的な結果との関係
で,これを回避すべき監督義務の違反が認められる必要があると解される
(最高裁判所平成18年2月24日第二小法廷判決・裁判集民事219号
541頁参照)。
本件においては,被告A1の人物評上大きな問題は見られず(前記認定事
実⑴イ),被告A3が学校に呼び出されたのは,10月5日に被告A1と
亡Xが殴り合ったことについてのものが2度目であり(なお,1度目は入
学直後の合宿でけんかをした件についてのものであった。),この殴り合
いについて,担任の教諭からけんかであるとの認識が示され,帰宅後,被
告A1に対して,事情を確認した上で,殴るから殴り返せという形で殴る
ことを強要するのは良くない旨説諭したというのであり(同⒅ウ),これ
以外に,被告A2及び被告A3に被告A1の亡Xに対する加害行為や亡X
との関係性を認識する契機があったことについての主張立証はないのであ
るから,被告A2及び被告A3に,被告A1が亡Xに対する前記⑴イの加
害行為に及ばないようにさせることについて,監督義務違反があったと認
めることはできないし,日常的な監督義務違反も認め難い。
次に,被告B2は,被告B1の喫煙の疑いや万引きで本件中学校から呼び
出されたことがあり,その都度,被告B1を万引きした店舗に同行して謝
罪させたり,被告B1が喫煙を否定したので,それを前提にした指導を行
ったものである(前記認定事実⑴ウ)が,結局,被告B1は万引き(同⑷
ウ)や喫煙(同⒇)を続けており,その指導は奏功しなかった。また,被
告B1は,夏休み明けに女子生徒に水筒をぶつけたり,授業を無断欠席し
て,母子で学校から指導を受けたりしたほか,男子生徒の胸部をつねって
負傷させる行為にも及んでおり
被害者が後難をおそれて被告C1のみを加害者として被害申告したため,
被告B1の行為が顕在化することはなかった。),日常的な監督義務が十
分に尽くされていたのかについて,疑問の余地なしとしない。もっとも,
亡Xとの関係においては,亡Xが夏休みに週に数回以上被告Bら宅を訪れ,
週に一,二回は宿泊するという関係になり,一緒にUSJに出掛けるなど,
両者の関係に何らかの問題があったことを被告B2において認識しておら
ず,これについて疑念を抱く契機も存在しなかったというほかない。また,
被告B1の問題行動において暴力的な行為が顕在化したのは,友人に水筒
をぶつけたことのみであり,被告B2において,被告B1が他人に対して
暴力的な行動に出て被害を生じさせることを疑って,そのようなことのな
いように指導を徹底しなければならないような契機までは存在しなかった。
したがって,被告B2に,被告B1が亡Xに対する前記⑴イの加害行為に
及ばないようにさせることについて,監督義務違反があったとまでは認め
られない(なお,被告B1が既に成人していることや,被告B2の記録か
らうかがわれる資力を前提にすると,被告B2に限って具体的な結果との
関係での義務違反が必要との前記原則を緩和する必要性自体乏しい。)。
⑶争点⑸(損害額)及び争点⑹(損害の補填の有無)について
亡Xは,平成▲年▲月▲日生まれで,死亡当時13歳11か月であったか
ら,平成23年賃金センサス産業計・企業規模計・男子労働者・学歴計・
全年齢平均賃金526万7600円を基礎とし,就労可能期間を18歳か
ら67歳まで,生活費控除率を5割とし,中間利息を控除する(18.4
934−3.5460)と,逸失利益の額は3936万8462円となる。
また,亡Xの死亡慰謝料は2000万円,原告らの固有の慰謝料はそれぞ
れ300万円が相当であり,亡Xの葬儀費用に係る原告らの損害は60万
円(原告ら各自30万円ずつ)であると認められる。したがって,原告ら
の損害賠償債権は,亡Xから相続したものを含め,それぞれ,3298万
4231円となる。
他方,原告らは,各自,平成25年10月9日
に災害共済給付金1400万円を,平成27年4月3日に大津市から和解
金650万円の支払を受けたのであるからこれらを原告らの損害から控除
する必要があるが,これらのうち1400万円(災害共済給付金)及び5
29万9289円(和解金)の合計1929万9289円が元本に,残り
の120万0711円(和解金)が遅延損害金に充当されたと解される
(災害共済給付金は填補の対象となる特定の損害と同性質であり,かつ,
相互補完性を有する損害の元本との間で損益相殺的な調整を行うべきであ
り,本件においては,制度の予定するところと異なってその支給が著しく
遅滞したなどの特段の事情も認められない。)。そうすると,原告ら各自
の3298万4231円の損害賠償債権は,平成25年10月9日の災害
給付金の給付により,元本が1898万4231円となるとともに,平成
23年10月12日から平成25年10月9日までの1年363日分の確
定遅延損害金は328万9386円となる。そして,平成27年4月3日
の和解金の支払により,元本が1368万4942円となるとともに,平
成25年10月10日から平成27年4月3日までの1年176日分の確
定遅延損害金は140万6913円となり,同日までの確定遅延損害金合
計469万6299円から和解金のうち遅延損害金充当分120万071
1円を控除すると,その残額は349万5588円となる。
また,弁護士費用は,事案の難易,認容額その他諸般の事情を考慮し,
137万円が相当であると認められる。そして,これについての平成23
年10月12日から平成27年4月3日までの3年174日の確定遅延損
害金は23万8154円となる。
第5結論
以上のとおり,原告らの請求は,被告A1及び被告B1に対し,原告ら各自
について,不法行為に基づく損害賠償金元本1505万4942円及び平成2
3年10月12日から平成27年4月3日までの確定遅延損害金の残金373
万3742円の合計1878万8684円並びに上記元本に対する同月4日か
ら支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由
があるから,その限度で認容し,その余の請求は全て理由がないからこれらを
いずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。なお,事案に鑑み,仮執
行宣言は付さないこととする。
大津地方裁判所民事部
裁判長裁判官 西岡繁靖
裁判官 芝田由平
裁判官 平井美衣瑠

その後

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