報道等をもとに日本の裁判官の情報を収集、掲載しています。

乳児4人コンクリ詰め 母親に有罪判決 時効成立認めず 大阪・寝屋川

 大阪府寝屋川市の集合住宅で昨年11月、バケツにコンクリート詰めにされた乳児4人の遺体が見つかった事件で、死体遺棄罪に問われた母親の無職、斉藤真由美被告(53)に対する判決公判が2日、大阪地裁で開かれた。増田啓祐裁判長は「(手元に残しておきたかったという)動機は身勝手。極めて長期間放置した」として懲役3年、執行猶予4年(求刑懲役3年)を言い渡した。
 判決によると、斉藤被告は平成4〜9年、当時の同市内の自宅で、乳児4人の遺体をバケツにコンクリート詰めにし、昨年11月まで葬祭せずに放置した。
 公判で弁護側は「コンクリに詰めた時点で遺棄行為は終わっている」と公訴時効(3年)の成立を主張。これに対し、増田裁判長は「乳児の存在を誰にも知らせず自身の支配下に置き続けた」と指摘して葬祭義務違反という遺棄行為が続いていたとして、時効の成立を認めなかった。
(2018.7.2 17:35 産経WEST)

大阪4乳児遺棄 「遺体放置は身勝手」53歳母に有罪判決

 大阪府寝屋川市の集合住宅で昨年11月、セメント詰めにされた乳児4人の遺体が見つかった事件で、死体遺棄罪に問われた母親の斉藤真由美被告(53)に対し、大阪地裁(増田啓祐裁判長)は2日、「20年以上、金銭的理由などで遺体を放置したのは身勝手だ」として、懲役3年、執行猶予4年(求刑・懲役3年)の判決を言い渡した。
 弁護側は死体遺棄罪の公訴時効(3年)が成立していると主張していた。増田裁判長は、遺体を自宅に置いたまま埋葬しなかったことで遺棄行為が継続していたと判断し、時効は成立していないと結論づけた。
 判決によると、斉藤被告は1992〜97年、当時住んでいたアパートで、死亡した男児2人と女児2人の遺体を4個のバケツに入れ、セメント詰めにして放置。2015年の転居後も自宅内に隠し続けた。【戸上文恵】
(2018年7月2日 19時26分(最終更新 7月2日 19時26分) 毎日新聞)

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平成29(わ)4941  死体遺棄被告事件
主文
被告人を懲役3年に処する。
未決勾留日数中100日をその刑に算入する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1大阪府寝屋川市所在の文化住宅居室で平成4年10月12日頃死亡した男児の
母であり,同児を葬祭する義務があったのに,その頃から平成27年6月10日頃まで
の間は,同居室(当時の被告人方)の押し入れ内において,同日頃から平成29年11
月20日までの間は,同市所在の被告人方押し入れ内において,同児の死体を,円柱
形の蓋付灰色ポリバケツ内にコンクリート詰めにした状態で放置し,
第2前記文化住宅居室で平成7年5月21日頃死亡した男児の母であり,同児を
葬祭する義務があったのに,その頃から平成27年6月10日頃までの間は,同居室
(当時の被告人方)の押し入れ内において,同日頃から平成29年11月20日までの間
は,前記被告人方押し入れ内において,同児の死体を,四角柱形の蓋付灰色ポリバ
ケツ内にコンクリート詰めにした状態で放置し,
第3前記文化住宅居室で平成8年5月10日頃死亡した女児の母であり,同児を
葬祭する義務があったのに,その頃から平成27年6月10日頃までの間は,同居室
(当時の被告人方)の押し入れ内において,同日頃から平成29年11月20日までの間
は,前記被告人方押し入れ内において,同児の死体を,円柱形の蓋付緑色ポリバケ
ツ内にコンクリート詰めにした状態で放置し,
第4前記文化住宅居室で平成9年9月9日頃死亡した女児の母であり,同児を
葬祭する義務があったのに,その頃から平成27年6月10日頃までの間は,同居室
(当時の被告人方)の押し入れ内において,同日頃から平成29年11月20日までの間
は,前記被告人方押し入れ内において,同児の死体を,円柱形の白色蓋付青色ポリ
バケツ内にコンクリート詰めにした状態で放置した。
(証拠の標目)
(省略)
(法令の適用)
1被告人の判示各所為は,いずれも刑法190条に該当するところ,
2以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により,犯情
の最も重い判示第1の罪の刑に法定の加重をし,
3その刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し,
4刑法21条を適用して,未決勾留日数中100日をその刑に算入し,
5情状により刑法25条1項を適用して,この裁判が確定した日から4年間その
刑の執行を猶予し,
6訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して,被告人に負担させ
ないこととする。
(争点に対する判断)
第1争点
検察官は,被告人が,本件四児の死体の放置を開始した頃から平成29年11月20日
まで本件四児の死体を放置した不作為を死体遺棄罪の実行行為として起訴してお
り,その終了時期は平成29年11月20日であるから,公訴時効は完成していない旨主
張する。これに対し,弁護人は,被告人が上記放置行為に先行して,平成4年ない
し平成9年に本件四児の死体をコンクリート詰めにして押し入れに入れるなどした
作為について死体遺棄罪が成立し,この作為によって実行行為は終了し,同罪の違
法性は評価し尽くされているので,その後の放置行為に同罪は成立せず,本件各公
訴提起時点において公訴時効が完成しているから,被告人に対しては免訴判決が言
い渡されるべきである旨主張する。
当裁判所は,本件各公訴提起時点において,公訴時効は完成していないと判断し
たので,以下その理由を説明する。
第2当裁判所の判断
1関係各証拠によれば,以下の事実が認められる。
被告人は,平成3年ないし平成4年頃から平成27年6月10日までの間,判示
文化住宅居室に居住していた。なお,被告人は,文化住宅居室で,内縁の夫や被告
人の実子2名と同居していた期間があった。
被告人は,平成4年10月12日頃,平成7年5月21日頃,平成8年5月10日頃
及び平成9年9月9日頃,文化住宅居室において,判示のとおり,それぞれ,自分
が出産した男児又は女児の死体をタオルや衣類等で包んだ上からポリ袋等で包み,
これをポリバケツ内にコンクリート詰めにするなどした上,同ポリバケツをポリ袋
に入れて文化住宅居室の押し入れ内に放置した。
被告人は,平成27年6月10日頃,文化住宅居室から判示被告人方に転居し,
被告人の実子1名と同居していた。その際,被告人は,同月9日頃,本件四児の死
体が入れられたポリバケツの入ったポリ袋をそれぞれ段ボールに詰めて梱包し,同
月10日,上記段ボール4箱を被告人方押し入れ内に運び込み,同所に放置した。
被告人は,平成29年11月20日,警察官に,本件四児の死体を被告人方に置い
てある旨申告して自首し,同日,警察官は,被告人方において,本件四児の死体の
入ったポリバケツを梱包した段ボール箱4箱を発見した。
被告人は,同日,警察官に申告するまでの間,本件四児を妊娠・出産したこ
とや,本件四児の死体を文化住宅居室や被告人方の押し入れ内で放置していること
を,同居の家族を含めて他人に告げたことはなかったし,これを他人に発見された
形跡もない。
被告人は,平成29年12月27日,判示第3及び第4の女児の死体を遺棄した罪
で,平成30年1月31日,判示第1及び第2の男児の死体を遺棄した罪でそれぞれ公
訴提起された。
2死体遺棄罪の成否について
死体を葬祭すべき義務のある者がその義務に違反して死体を放置したような
場合は,不作為による遺棄として死体遺棄罪の構成要件に該当するところ,死
体の葬祭義務が消滅せず,その義務違反行為が続いている場合には,不作為に
よる遺棄が継続して行われていると解すべきである。
被告人は,本件四児の母親であり,文化住宅居室において本件四児の死亡当
時,他人にその存在を明らかにしていなかったのであるから,その死体を葬祭
すべき義務を負っていたことは明らかである。そして,被告人は,その頃から
平成29年11月20日までの間,被告人の転居に伴い移動させながら,本件四児の
死体を当時の被告人方である文化住宅居室や被告人方の押し入れ内で放置して
いたのであるが,前記1の事実関係によれば,その間,文化住宅居室や被告人
方には,被告人だけでなく,被告人の家族も居住していたものの,被告人が本
件四児を妊娠・出産したことや本件四児の死体が上記のとおり放置されている
ことを知っていたのは被告人のみであり,かつ,それらの死体は,ポリバケツ
内にコンクリート詰めにされて押し入れ内に入れられるという,事情を知らな
い者によって発見されることが想定し難い状態で放置されていたのであるか
ら,同居人ら他人による本件四児の葬祭はおよそ期待できなかったものといえ
る。このように,本件においては,上記放置期間中,本件四児の死体を葬祭す
るか否かは被告人のみに委ねられ,被告人が本件四児の死体をその支配領域下
に置いていたと評価できることに鑑みると,被告人が本件四児の死体を葬祭す
べき義務は消滅しておらず,その義務に違反する行為として,不作為による遺
棄が継続していたというべきである。
これに対し,弁護人は,本件死体遺棄行為の違法性は,本件四児の死体をポ
リバケツに入れてコンクリート詰めにして押し入れに入れるなどした作為によ
り評価し尽くされているので,その後の放置行為に死体遺棄罪は成立しないと
主張する。しかし,本件では,作為によって死体を隠匿等遺棄した者が,その
支配領域を離れた場所に死体を放置した場合と異なり,死体の放置を開始した
後も死体を自らの支配領域下に置き続けているのであるから,死体の放置行為
自体にも,葬祭義務に違反する行為として,当初の隠匿等の行為では評価し尽
せない違法性が認められる。また,弁護人は,死体遺棄罪を継続犯として解釈
すると,永久的に公訴時効が完成しないこととなるというが,一方で,死体の
放置行為に先行する作為による遺棄行為が認定できる場合と認定できない場合
とで公訴時効の起算点等に大きな違いが生じるというのも不合理というべきで
ある。上記弁護人の主張は採用できない。
第3結論
以上のとおり,本件各公訴提起時においては,死体遺棄罪の公訴時効である
3年が経過しておらず,公訴時効が完成していないことは明らかであって,公
訴時効が完成した旨の弁護人の主張を採用することはできない。
(量刑の理由)
被告人は,実子である嬰児4名の死体を,出産してすぐの頃から被告人が自首す
るまでの約20年ないし約25年間という極めて長期間にわたって放置している。被告
人は,本件四児の死体をコンクリートが直接触れないようタオル等で包み,判示第
1の男児については数珠と一緒にポリバケツ内に入れており,被告人なりの一定の
配慮はしているものの,自首するまで本件四児の存在を誰にも告げることなく,本
件四児の死体をポリバケツ内でコンクリート詰めにするなどした状態で,他の荷物
と一緒に押し入れ内で放置していた。以上のような放置期間や態様からすれば,本
件は,死者に対する社会の宗教感情を大きく害する犯行というべきである。被告人
は,本件四児の葬儀を行う金銭的余裕がない,本件四児の死体をそのままの形で残
したいなどと考え,本件各犯行に及んだというが,独りよがりで身勝手な考えとい
うほかない。そうすると,本件の犯情は芳しくない。
他方において,被告人が自首をして,公判廷でも事実関係を認めて反省している
こと,前科前歴がないこと,被告人の帰りを待つ未成年の子がいること等被告人の
ために酌むべき事情も認められる。
そこで,これらの事情を総合考慮し,被告人に対しては,主文の刑に処した上,
その執行を猶予するのが相当と判断した。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑:懲役3年)
平成30年7月12日
大阪地方裁判所第15刑事部
裁判長裁判官 増田啓祐
裁判官 三澤節史
裁判官 新谷真梨

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