報道等をもとに日本の裁判官の情報を収集、掲載しています。

原発自主避難者への賠償 二審はほぼ半額に 大阪高裁  休業損害期間を短縮

 2011年3月の東京電力福島第1原子力発電所の事故後、福島県から京都市に自主避難した元会社経営の男性と家族が「仕事を失い、うつ病になった」として、東電に計約1億8千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が27日、大阪高裁であった。佐村浩之裁判長は東電に対し男性と妻へ計約3千万円の支払いを命じた一審判決を変更し、賠償額を約1600万円に減額した。
 判決理由で佐村裁判長は、国の自主避難者への賠償指針に従えば、原告たちの避難に合理性が認められる期間は男性は11年10月末、妊娠中だった妻と子供は12年8月末までと認定した。
 その上で、男性が発症したうつ病について、事故との因果関係が認められるのは治療開始から約2年後の13年11月までと判断。一審判決が15年11月まで認めた男性の就労不能期間を短縮し、休業損害の賠償を大幅に減額した。
 原告側弁護人は「放射線の健康リスクを軽視した不当な判決だ」と批判。東京電力ホールディングスは「判決内容を確認し、対応を検討する」としている。
(2017/10/27 18:20 日経新聞)

原発自主避難でうつ病に 2審も東電に賠償命じるも減額

 東京電力福島第一原子力発電所の事故で、福島から京都などに自主避難した男性がうつ病になり仕事もできなくなったとして家族とともに訴えた裁判で、大阪高等裁判所は1審に続いて病気と事故との関係を認めたうえで「差別など事故に帰因しないストレスもあった」として、東京電力に対し1審よりも少ないおよそ1600万円の賠償を命じました。
 福島県に住んでいた40代の男性の一家5人は、原発事故のあと京都市などに自主避難し、その後、うつ病になって仕事もできなくなったとして、東京電力に賠償を求めました。
 1審の京都地方裁判所は「自主避難のストレスが体調の悪化につながった」として、東京電力におよそ3000万円の支払いを命じていました。
 27日の2審の判決で大阪高等裁判所の佐村浩之裁判長は「自主避難によって強いストレスにさらされ2年余りの間、うつ病で働くことができなかった」として1審に続いて病気と事故の関係を認めました。そのうえで「病気が悪化したのは差別や避難の長期化など事故に帰因しえないストレスもあった」として、1審よりも少ないおよそ1600万円の賠償を命じました。
 判決のあと、原告の代理人の井戸謙一弁護士は「避難生活で受けたストレスには東京電力に責任がないものもあるというのは極めて不当な判決だ。家族も電話で『絶望した』と言っていた。男性らは経済的に困っており、上告できるかはわからない」と話していました。
 東京電力「判決内容確認のうえ 対応検討」
 判決について東京電力は「原発事故によって福島県民をはじめ多くの人にご迷惑とご心配をおかけし心からおわびします。今後、判決内容を確認したうえで対応を検討します」としています。
(10月27日 18時50分 NHK)

原発自主避難の賠償、二審で半減 原告「絶望した」

 東京電力福島第一原発の事故後、避難指示がなかった福島県郡山市内から自主避難した元会社経営者の40代男性と妻子が、東電に休業補償や慰謝料など計約1億8千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が27日、大阪高裁(佐村浩之裁判長)であった。高裁は、一審が東電の賠償責任を認めた判断を維持した一方、賠償額を約3千万円から1615万円に半減させた。
 飲食店運営会社を経営していた男性は2011年3月の事故後、妊娠中の妻と子ども2人と県外へ避難。その後、京都市で生活し始めた。一審・京都地裁は、男性が代表取締役を辞めざるを得なかったことや、避難後にうつ病と診断されたことは原発事故が一因だと認定。東電に計3046万円を支払うよう命じた。
 高裁での賠償額半減は、事故がなかった場合に男性が受け取れたはずの報酬額と、うつ病で働くことができなかった期間とを、それぞれ減らして認定したのが主な要因だ。
 地裁は男性の過去の報酬額をもとに得られたはずの月額報酬を76万円と算出し、うつ病による就労不能期間は事故から15年11月までとした。だが、高裁は「会社の経営は必ずしも安定的でなく従前と同水準の報酬を得られたとは認めがたい」と述べ、月額45万円が相当とした。さらに「うつ病が回復する期間は2年以内が95%」などとする東電側の主張を採用し、就労不能期間を13年11月までに前倒しした。
 自主的な避難に対する慰謝料も一審判断から減額した。高裁は「男性は当初、11年秋か年内に帰るつもりだった」と指摘し、男性については11年10月末、妻子は翌12年8月末までしか自主避難の合理性は認められないと判断した。
 原告代理人の井戸謙一弁護士は「低線量被曝(ひばく)の危険が指摘される中、年間20ミリシーベルトでも親が被曝を避けることの合理性を判断してもらいたかったが、主張が退けられた。男性の妻は『裁判所に絶望した』と話していた。極めて不当な判決だ」と述べた。
 原発事故をめぐっては、避難者らが東電や国を相手に少なくとも全国21の裁判所(原告約1万2千人)で集団訴訟を起こしている。全国の原発避難者訴訟を支援する「原発事故全国弁護団連絡会」の代表世話人・米倉勉弁護士は「被害の実態に目を向けず、仮定や統計をもとに損害額を減少させた判決で非常に問題がある。他の避難者訴訟の先例になるべきではない」と批判した。(釆沢嘉高)
(10/27(金) 22:24 朝日新聞)

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大阪高等裁判所平成28年(ネ)第899号 損害賠償請求控訴事件、仮執行の原状回復及び損害賠償を命ずる裁判の申立事件

主文
11審被告の控訴に基づき,原判決中1審原告A及び1審原告Bに関する
部分を次のとおり変更する。
1審被告は,1審原告Aに対し,1358万7325円及びうち12
20万2863円に対する平成25年8月29日から支払済みまで年5
分の割合による金員を支払え。
1審被告は,1審原告Bに対し,257万1160円及びこれに対す
る平成25年8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支
払え。
1審原告A及び1審原告Bのその余の請求をいずれも棄却する。
21審原告らの各控訴をいずれも棄却する。
31審原告Aは,1審被告に対し,1155万6231円及びこれに対
する平成28年3月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を
支払え。
1審原告Bは,1審被告に対し,434万3329円及びこれに対す
る平成28年3月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支
払え。
1審被告のその余の申立てを棄却する。
4訴訟費用(前項の裁判に関する費用を含む。)は,第1,2審を通じて,
1審原告Aに生じた費用と1審被告に生じた費用の60分の37を8分し,
その7を1審原告Aの負担とし,その余を1審被告の負担とし,1審原告
Bに生じた費用と1審被告に生じた費用の60分の16を20分し,その
19を1審原告Bの負担とし,その余を1審被告の負担とし,1審原告C
に生じた費用と1審被告に生じた費用の60分の4を1審原告Cの負担と
し,1審原告Dに生じた費用と1審被告に生じた費用の60分の2を1審
原告Dの負担とし,1審原告Eに生じた費用と1審被告に生じた費用の6
0分の1を1審原告Eの負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
11審原告ら(控訴の趣旨)
原判決を次のとおり変更する。
1審被告は,1審原告Aに対し,1億1609万5185円及びうち67
57万1263円に対する平成25年8月29日から,うち4030万39
62円に対する平成23年3月12日から各支払済みまで年5分の割合によ
る金員を支払え。
1審被告は,1審原告Bに対し,4823万3014円及びうち3300
万円に対する平成25年8月29日から,うち1180万円に対する平成2
3年3月12日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
1審被告は,1審原告Cに対し,1163万7671円及びうち1100
万円に対する平成25年8月29日から支払済みまで年5分の割合による金
員を支払え。
1審被告は,1審原告Dに対し,545万8846円及びこれに対する平
成25年8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
1審被告は,1審原告Eに対し,298万6146円及びこれに対する平
成25年8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は,第1,2審とも1審被告の負担とする。
仮執行宣言
21審被告(控訴の趣旨及び民訴法260条2項による裁判を求める申立て)
原判決中1審被告敗訴部分を取り消す。
上記部分につき,1審原告A及び1審原告Bの請求をいずれも棄却する。
1審原告Aは,1審被告に対し,2671万4494円及びこれに対する
平成28年3月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
1審原告Bは,1審被告に対し,724万5487円及びこれに対する平
成28年3月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は,第1,2審とも1審原告A及び1審原告Bの負担とする。
第2事案の概要
11審原告らは,福島第一原子力発電所(以下「本件原発」という。)を設
置・運営する1審被告に対し,平成23年3月11日に発生した本件原発にお
ける事故(以下「本件事故」という。)のために,1審原告Eを除く1審原告
らは当時居住していた福島県郡山市から自主避難せざるを得なくなり,1審原
告Aが精神疾患に罹患したことで,1審原告らは精神的苦痛を被った,1審原
告A及び1審原告Bは就労ができなくなったなどと主張して,原子力損害の賠
償に関する法律(以下「原賠法」という。)3条1項本文に基づき,1審原告
Aが損害合計1億1609万5185円(弁護士費用900万円及び遅延損害
金の一部821万9960円を含む。)及びうち6757万1263円に対す
る平成25年8月29日から,うち4030万3962円に対する平成23年
3月12日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,
1審原告Bが4823万3014円(弁護士費用300万円及び遅延損害金の
一部343万3014円を含む。)及びうち3300万円に対する平成25年
8月29日から,うち1180万円に対する平成23年3月12日から各支払
済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,1審原告Cが1163
万7671円(弁護士費用100万円及び遅延損害金の一部63万7671円
を含む。)及びうち1100万円に対する平成25年8月29日から支払済み
まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,1審原告Dが545万88
46円(慰謝料500万円及び弁護士費用50万円の合計額に既払金の一部を
充当した残額)及びこれに対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割
合による遅延損害金を,1審原告Eが298万6146円(慰謝料300万円
及び弁護士費用30万円の合計額に既払金の一部を充当した残額)及びこれに
対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,そ
れぞれ支払うよう求めた。
原審は,1審原告Aの請求を,2401万8026円及びうち2148万6
111円に対する平成25年8月29日から支払済みまで年5分の割合による
遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余を棄却し,1審原告Bの請求
を,644万8809円及びうち631万円に対する同日から支払済みまで年
5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余を棄却し,
1審原告C,1審原告D及び1審原告Eの請求をいずれも棄却した。
そこで,1審原告らは,いずれも控訴を提起し,1審被告は,1審原告A及
び1審原告Bに対する控訴を提起するとともに,原判決の仮執行の宣言に基づ
く債権差押命令の執行を受けて,平成28年3月25日,1審原告Aに267
1万4494円を,1審原告Bに724万5487円をそれぞれ支払っている
として,民訴法260条2項に基づき,原状回復及び損害賠償として,1審原
告A対し,2671万4494円及びこれに対する同月26日から支払済みま
で民法所定の年5分の割合による損害金の支払を,1審原告Bに対し,724
万5487円及びこれに対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合
による損害金の支払をそれぞれ求めた。
2基礎となる事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,原判決を次のとお
り補正し,後記3として「当審における当事者の補充主張」を付加するほか,
原判決の「事実及び理由」第2の2から4まで(原判決4頁23行目から30
頁10行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決4頁26行目から5頁1行目にかけての「株式会社F」を「F株式
会社」に改める。
原判決5頁5行目の「結婚」を「婚姻」に改める。
原判決8頁17行目の次に改行して「平成27年12月25日,1審原告
らは,芦屋の住居から盛岡市a丁目b番c号に転居した。」を加える。
原判決10頁26行目の「8万円」の次に「(精神的損害等に対する賠
償)」を加え,「これらの者以外の者に対しては」を「対象者を限定せず」
に改める。
原判決11頁1行目の「4万円」の次に「(追加的費用等に対する賠償)」
を加える。
原判決12頁2行目の「以下のとおり」の次に「合計831万3593円」
を加える。
原判決13頁13行目から14行目にかけての「起業しようとしたものの,
その見通しが立たず,また,同市で」を削除する。
原判決13頁16行目の文頭から21行目の「時間を要すること,」まで
を削除する。
原判決13頁25行目から14頁2行目までを削除する。
原判決17頁20行目の「原告らが,」から23行目の「であるから,」
までを削除する。
原判決19頁23行目の「や起業」を削除する。
原判決21頁23行目の「基準額を」から25行目の末尾までを「基準額
を月額120万円,平成23年3月から原審口頭弁論終結日である平成27
年11月10日までを就労不能期間として,本件事故に伴う休業損害676
0万円が認められるべきである。」に改める。
原判決22頁2行目の「G」の次に「(以下「G」ということもある。)」
を加える。
原判決25頁1行目の「40万円」の前に「月額」を加える。
原判決25頁2行目の「休業損害」の次に「2180万円」を加える。
原判決25頁5行目の「イ記載の主張」を「ウ記載の主張」に改める。
原判決25頁19行目の「ア記載のとおり」を「イ記載のとおり」に改め
る。
3当審における当事者の補充主張
1審原告ら
ア争点1(1審原告Aが支出した自主避難に伴う費用は,本件事故と相当
因果関係のある損害に当たるか)について
1審原告らは,1審原告Aが金沢市においても京都市においても共に
避難してきた従業員を含めて皆で起業しようと考えてそのための努力を
してきた旨の従前の主張を改める。1審原告Aは,自主避難を実行した
後,遅くとも平成23年4月以降今後の身の振り方について次のように
考えていた。
a当時9歳であった1審原告C,2歳であった1審原告D及び妊婦で
あった1審原告Bを,当分,郡山市に帰還させることはできない。
b自分としては,Hを再開し,Fを再建したい。
c当分は,妻子を避難先に残して,自分一人が郡山市に帰ることはで
きない。
d第三子の出産が無事終わり,避難先での生活が落ち着いた段階で,
自分一人が郡山市に帰ってFの業務に復帰し,家族とは二重生活をす
る。
原判決は,科学的知見等に照らせば年間20mSvを下回る被ばくが健
康に被害を与えるものと認めることは困難といわざるを得ない旨説示し,
年間20mSvを下回る長期低線量被ばくによる健康リスクの立証責任を
1審原告らに負わせ,これが積極的に認められない限り,年間20mSv
を下回った地域からの自主避難者については自主避難を続ける合理性が
ないとするが,問題は,長期低線量被ばくの健康リスクについて様々な
考え方が錯綜している中で「自主避難者が自主避難を続けるという選択
をしてきたことが不合理と評価できるか否か」なのであって,これは,
帰還した場合に子供たちが受ける健康被害のリスクの有無,程度,解明
度(現代の科学がどこまで明らかにしているか)を中心に,やり直しの
できない子育てという営みに従事している親の立場に立ち,他の自主避
難者の動向等も勘案して総合的に判断すべきものである。
イ争点3(1審原告Aの休業損害は,本件事故と相当因果関係のある損害
に当たるか)について
避難を理由として就労不能損害が発生するのは,避難先で新しい収入
の方策が見付かるまでの期間又は通常であれば避難先で新しい収入の方
策が見付かるであろうと考えられる期間と解すべきであって,原子力損
害賠償紛争解決センターによる和解仲介手続において,和解が成立した
ケースにおける就労不能損害は6か月間とするものが最も多い(乙57)
ことにもかんがみると,通常の就労不能期間は6か月程度と考えるのが
相当である。
したがって,1審原告Aについては,平成23年7月までは通常の就
労不能期間として,同年8月からは精神疾患を理由として,就労不能損
害が発生したというべきである。
原判決は,本件送金,錬討傍属する金員を1審原告Aが避難先にお
いて管理するために行われた送金であり,本件送金△覆い鍬イ錬運蓋
告らの避難先での生活費等の資金に充てる目的で行われた送金であり,
本件送金Δ錬運蓋狭陦舛裡任らの借入れであると認定したが,本件送
金イ1審原告Aの借入金であることは甲C44ないし46から明らか
であって,1審原告Aは,平成28年4月12日Gに670万円を,同
月21日同社に50万円をそれぞれ送金しており(甲A33),これら
は,本件送金サ擇哭Δ紡个垢詈峇圓任△襦また,甲A34からも,本
件送金,覆い鍬い同社の金銭の管理換えであることは明らかであるが,
そもそも,同社の実情に応じて,1審原告A,1審原告B及びIは,平
成23年4月以降の役員報酬の支給を辞退したのであるから,別途,1
審原告らの避難先での生活費等の資金に充てる目的で行われた送金を受
けることなどあり得ないし,同社の代表取締役に就任する際に上記役員
報酬を支払えないことを通告したGが上記目的で送金することもあり得
ない。
1審被告
ア争点1(1審原告Aが支出した自主避難に伴う費用は,本件事故と相当
因果関係のある損害に当たるか)について
後記ウのとおりの郡山市内の放射線量や自主避難の状況等に照らすと,
自主避難の合理的期間は,1審原告Aについて平成23年4月22日頃ま
で,1審原告Bについて同年12月末まで,その余の1審原告らについて
平成24年8月末までと解するのが相当である。
イ争点2(1審原告Aが支出した通院に伴う費用は,本件事故と相当因果
関係のある損害に当たるか)及び3(1審原告Aの休業損害は,本件事故
と相当因果関係のある損害に当たるか)について
原判決は,J医師作成の診断書(甲A5)及びK医師作成の診断書
(甲A7)を根拠に1審原告Aが不眠症及びうつ病に罹患した旨認定し
ているが,上記両医師の診断経過は全く不明で,適式な診断基準に従っ
た問診や検査が行われた形跡は全くうかがわれない上,上記両医師は精
神科医ではないにもかかわらず,上記各診断書では,1審原告Aの症状
について自主避難に起因すると断定的に記載されるとともに就労できな
い旨記載されており,1審原告Aの主訴及び説明を漫然と受け入れて作
成されたことが明らかであって,その記載内容の医学的信用性・妥当性
には大きな疑問があるから,上記各診断書は,上記認定の医学的根拠資
料とはなり得ない。
また,原判決は,L医師作成のカルテ,回答書及び陳述書(甲A9,
10,15,17,24)に基づき,今なお1審原告Aにうつ病の症状
が残存し,就労不能状態にあると認定しているが,同医師は高齢を理由
に証人尋問を拒否している上,同医師作成のカルテ及び陳述書について
も著しく信頼性を欠くものとなっている(乙93)から,同医師の意見
に基づき,罹患の有無及び就労不能状態の有無について認定することは
相当でない。
仮に1審原告Aのうつ病又はこれに類する症状の罹患が認められる余
地があるとしても,うつ病については,一般に治療開始から6か月以内
にリハビリ勤務を含めた職場復帰が可能となり,9割以上が治療開始か
ら2年以内に治癒(症状固定)になるとされている。原判決は,L医師
の意見に基づき,本件事故から4年半以上が経過した時点においても,
1審原告Aにうつ病の症状が残存しているだけでなく,それにより就労
不能状態にあると認定しているが,明らかに常識外の判断であって,誤
りである。
ウ争点5(本件事故と相当因果関係のある1審原告らの慰謝料額)につい

本件事故による政府の避難指示等の対象区域とされなかった区域である
郡山市内においては,空間放射線量は年間20mSvを大きく下回っている
ことに照らしても,生活を送る上で支障のない水準であり,実際に大多数
の住民が自主避難を選択していないという事実関係の下では,本件事故に
よる放射線の影響を懸念して,本件事故発生直後の時期において自主避難
を選択することに合理性が認められるとしても,そのような合理性が認め
られる期間には自ずと合理的な限度があると解される。そして,本件事故
から1か月以上が経過した平成23年4月22日には,本件原発から20
〜30匏内の屋内待避指示が解除され,緊急時避難準備区域に指定され
るなど本件事故の状況も落ち着きを見せており,また,新聞報道等におい
ても,避難指示等の対象区域外において生活に問題はない旨の情報が提供
されており,そのような情報も広く周知される状況に至っていると認めら
れることにかんがみても,大人の場合には同日頃までをもって,本件事故
と相当因果関係のある精神的苦痛の賠償期間と解するのが合理的である。
原判決は,1審原告A及び1審原告Bに対し,本件事故と相当因果関係
のある精神的損害(1審原告Aにつき疾患に罹患したことによる苦痛を除
いた慰謝料)として各100万円の損害額を認定しているが,本件事故に
よる放射線の客観的なリスクは1審原告らに対して具体的な健康被害や影
響を及ぼす程度のものではなく,そのような情報は広く周知されており,
実際に大多数の郡山市の住民は自主避難をしていないことなどの事情を踏
まえれば,本件事故に起因する放射線被ばくによって,直ちに1審原告ら
の具体的な法的に保護された権利利益が侵害されているとまではいえない
が,他方,本件事故後の状況の下で,客観的リスクに基礎付けられている
とはいえないものの,一定の期間において不安を感じ,それに基づく行動
を採ることは合理的でないとはいえないことを重視して,中間指針追補等
においては,かかる不安に基づく日常生活阻害に係る慰謝料を賠償するこ
ととしているものであり,大人である1審原告Aに対する8万円,平成2
3年8月11日まで妊婦であった1審原告Bに対する40万円の精神的損
害等の各賠償額には合理性がある。
エ争点7(本件事故が1審原告Aの精神疾患に寄与した度合)について
原判決が1審原告Aの精神疾患罹患による通院費用,精神的損害及び休
業損害を認めているのは失当であるが,仮に何らかの休業損害等が認めら
れるとしても,避難終了(平成23年4月1日)から約半年後にうつ病の
診断を受けていることなどの事情を踏まえると,本件事故による寄与度は
原判決が認定する4割を更に下回るものとされるべきである。
第3当裁判所の判断
11審原告らの生活歴等及びFの事業等
原判決を次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」第3の1(原
判決30頁12行目から32頁17行目まで)記載のとおりであるから,これ
を引用する。
原判決30頁12行目の「22,」の次に「29,」を加える。
原判決30頁12行目から13行目にかけての「52」の次に「,枝番が
ある場合は個別に表記しない限り全てを含む。以下同じ。1審原告A」を加
える。
原判決30頁17行目の「結婚」を「婚姻」に改める。
原判決31頁2行目の「原告A」を「I」に改める。
原判決31頁5行目及び6行目を「京都市への転居後も,Iは,起業すべ
くコンビニ経営の準備を進め,dの住居から転居後,コンビニ経営を始める
ことになった。」に改める。
原判決32頁7行目の「4月18日」を「4月1日」に改める。
2争点1(1審原告Aが支出した自主避難に伴う費用は,本件事故と相当因果
関係のある損害に当たるか)について
認定事実
原判決を次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」第3の2
(原判決32頁20行目から40頁16行目まで)記載のとおりであるから,
これを引用する。
ア原判決32頁26行目の「2件」を「2軒」に改める。
イ原判決33頁4行目の「終息」を「収束」に改める。
ウ原判決34頁21行目の「事故」の前に「原発」を加える。
エ原判決34頁26行目から35頁1行目にかけての「600万人」を
「500万人」に改める。
オ原判決35頁13行目の「小児の甲状腺被ばく調査」の次に「等」を加
える。
カ原判決38頁7行目及び13行目の「本件検査」の次にいずれも「(先
行検査)」を加える。
キ原判決38頁14行目の次に改行して「また,平成28年12月31日
現在の本件検査(本格検査)の結果によると,小児甲状腺がんの悪性ない
し悪性疑いとされた者は69名である(甲B141の1)。」を加える。
ク原判決39頁21行目の「福島県郡山市」の次に「の郡山合同庁舎3階
(屋外)」を加える。
ケ原判決39頁24行目末尾に「なお,郡山合同庁舎東側入口付近に設置
されたモニタリングポストの測定値が毎時3.8μSvを下回るようになっ
たのは,同月25日午前9時以降である(乙8)。」を加える。
判断
原判決を次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」第3の2の
からまで(原判決40頁17行目から46頁4行目まで)記載のとおり
であるから,これを引用する。
ア原判決40頁19行目の「新規事業」の前に「Iが」を加える。
イ原判決40頁20行目から21行目にかけての「起業するには」の前に
「同人が」を加える。
ウ原判決41頁7行目の文頭から9行目の「しかし,」までを削除する。
エ原判決41頁14行目の「金沢市での起業」の前に「Iの」を加える。
オ原判決42頁19行目の「被告が,」から22行目の「できる。」まで
を次のとおりに改める。
「1審被告は,本件事故発生当時に自主避難等対象区域に生活の本拠とし
ての住居があった者等を対象にして,一定の賠償を行う方針を示し,1審
原告C,1審原告D及び1審原告Eに対しそれぞれ60万円(対象期間平
成23年3月11日から同年12月31日まで)と12万円(8万円につ
き対象期間平成24年1月1日から同年8月31日まで)を賠償した(基
礎となる事実ウ,)こと,平成23年,24年当時は,上記1審原告
ら3名の年齢に照らし,同人らの自主避難には保護者の付添いが必要であ
ったこと,自主避難当初1審原告Bは妊娠中で出産後一定期間が経過する
までは同人のみで子らの監護をするのは困難であったこと,1審原告Aは
自主避難の当初第三子出生後平成23年秋か同年内には郡山市に帰るつも
りであった(1審原告A)ことなどからすると,1審原告Aについては平
成23年10月31日までの間,その余の1審原告らについては平成24
年8月31日までの間,自主避難を続けることに合理性を認めることがで
きる(なお,原審において,1審原告ら全員について平成24年8月31
日まで自主避難を続けることの合理性を1審被告が争っていなかったとし
ても,自主避難の認められる合理的期間は法的評価であるから,自白は成
立しない。)。」
カ原判決43頁18行目の次に改行して次のとおり加える。
「ウ1審原告らは,自主避難の合理性の問題は,長期低線量被ばくの健康リ
スクについて様々な考え方が錯綜している中で「自主避難者が自主避難を
続けるという選択をしてきたことが不合理と評価できるか否か」なのであ
って,これは,帰還した場合に子供たちが受ける健康被害のリスクの有無,
程度,解明度(現代の科学がどこまで明らかにしているか)を中心に,や
り直しのできない子育てという営みに従事している親の立場に立ち,他の
自主避難者の動向等も勘案して総合的に判断すべきものである旨主張する。
しかし,当審において提出された証拠を含めて検討しても,年間20m
Svを下回る被ばくが健康に被害を与えるものと認めるには足りないから,
本件事故後の郡山市内の放射線量に1審原告らが危惧感を有していたとし
ても,年間20mSvを下回るようになった後において自主避難の合理性を
認めることは,放射線の危険性に関する一般的な理解の状況をはじめとす
る諸事情を考慮しても,困難であるというべきであって,1審原告らの自
主避難に合理性が肯定される期間は前記アのとおりと認めるのが相当であ
る。低線量被ばくの危険性を肯定する考え方があるとしても,これが諸説
の中で占める位置その他の状況にかんがみると,そのような考え方の存在
から直ちに1審原告らの不安に合理性を認めることはできず,1審原告ら
の上記主張は採用することができない。」
キ原判決44頁23行目の「平成24年8月31日」の前に「1審原告A
を除く1審原告らが」を加える。
ク原判決45頁2行目の「損害に当たる」の次に「(ただし,1審原告A
が1審被告に請求し得る額は,同人自身の自主避難に合理性の認められる
期間や1審原告Eの出生時期を考慮して,後記のとおりとなる。)」を加
える。
ケ原判決45頁16行目の「88万円」から17行目の「55万円」まで
を「8万円(同年10月の家賃)を8で除し,5を乗じた額である5万円
と,80万円(同年11月から平成24年8月までの家賃)を8で除し,
4を乗じた額である40万円」に改める。
コ原判決45頁18行目の「78万4777円」を「68万4777円」
に改める。
サ原判決46頁4行目の「133万4155円」を「123万4155円」
に改める。
3争点2(1審原告Aが支出した通院に伴う費用は,本件事故と相当因果関係
のある損害に当たるか)について
認定事実
原判決を次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」第3の3
(原判決46頁7行目から51頁12行目まで)記載のとおりであるから,
これを引用する。
ア原判決46頁7行目の「5ないし7」を「5ないし8」に改める。
イ原判決46頁24行目の「11月28日」を「11月18日」に改める。
ウ原判決47頁2行目の「現在に至るまで」を「平成27年6月頃まで」
に改める。
エ原判決48頁10行目の「甲」の次に「A23,」を加える。
オ原判決48頁13行目の「,24」を削除する。
カ原判決49頁23行目の「易怒性」を「易刺激性」に改める。
判断
原判決を次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」第3の3の
からまで(原判決51頁13行目から54頁16行目まで)記載のとお
りであるから,これを引用する。
ア原判決52頁24行目から25行目にかけての「改善傾向がみられるも
のの,現在においても抑うつ状態が継続していること」を「その後,平成
27年6月頃まで抑うつ状態が継続していたこと」に改める。
イ原判決52頁25行目の次に改行して次のとおり加える。
「1審被告は,J医師作成の診断書(甲A5)に疑問を呈するが,1審原
告Aは,不眠を訴えて平成23年5月2日に受診した後,J医師から処方
された睡眠導入剤を必要に応じて服用していた(乙115,1審原告A)
ことに照らすと,同医師が精神科の専門医でないとしても,1審原告Aを
不眠症と診断した部分について上記診断書の信用性が否定されるものでは
ない。また,1審被告は,K医師作成の診断書(甲A7)にも疑問を呈す
るが,1審原告Bは,同年8月頃には1審原告Aが1日中部屋に閉じこも
るようになるなど様子がおかしくなったことを感じ,1審原告Eが誕生し
たのに1審原告Aが喜びを示さなかったことから,同年9月27日,1審
原告AをK内科医院で受診させた(甲C35,1審原告A)こと,1審原
告Aは,同年11月18日,M病院を受診し,その後,L医師から精神疾
患の治療を受けるようになったことに照らすと,K医師が精神科の専門医
でないとしても,1審原告Aをうつ病及び不眠症と診断した部分について
上記診断書の信用性が否定されるものではない。さらに,1審被告は,L
医師作成のカルテ,回答書及び陳述書(甲A9,10,15,17,24)
にも疑問を呈するが,1審原告Aに対し,PTSDと診断した部分につい
ては採用し難いものの,不眠,不安を伴う抑うつ状態が継
続しているとした部分については,1審原告Aの供述に照らしても,その
信用性を否定すべき事情は見いだし難い。」
ウ原判決53頁3行目の「従前と異なる仕事に従事せざるを得なくなった
こと,」を削除する。
エ原判決53頁8行目から9行目にかけての「本件事故」から10行目の
「見受けられないこと,」までを削除する。
オ原判決53頁16行目の「本件事故が」を「本件事故による自主避難が」
に改める。
カ原判決53頁18行目の次に改行して次のとおり加える。
「ウただし,上記イで指摘した事情に加えて,うつ病について,薬物が奏功
する場合には,ゝ淦期から症状が安定するまでの期間としては91%が
治療開始から3か月以内,医学的なリハビリテーション療法としてのリ
ハビリ勤務を含めた職場復帰が可能となるまでの期間としては88%が治
療開始から6か月以内,4袷瓦焚麌や復職を含む症状固定までの期間と
しては治療開始から1年以内が79%,2年以内が95%とする報告があ
る(乙101,102)ことに,前記2のとおり,1審原告Aが自主避
難を続けることに合理性を認めることのできる期間は平成23年10月3
1日までであること,平成24年10月頃までには同居していた従業員等
とは全て別居し,それ以降は1審原告ら家族のみの生活になり,他人との
共同生活に伴うストレスは消滅していること等を考慮すると,精神疾患に
対する治療をM病院で開始した平成23年11月18日から約2年間経過
した平成25年11月30日までを本件事故と相当因果関係のあるうつ病
の治療期間と認めるのが相当である。」
キ原判決54頁1行目の「31万8610円に限り」を「31万8610
円のうち,平成25年11月30日までの治療に係る費用合計21万11
80円(平成23年9月27日1360円(甲C17),同年11月18
日から平成25年3月4日まで13万3900円(甲C18),同月18
日から同年11月25日まで7万5920円(甲A23の1から15ま
で))に限り」に改める。
ク原判決54頁11行目の「前記ア,イ記載のとおり,」を削除する。
ケ原判決54頁12行目から13行目にかけての「平成23年5月2日か
ら平成26年3月17日までの間,合計57回通院していること」を「平
成23年5月2日から平成25年11月25日までの間,合計53回通院
していること」に改める。
コ原判決54頁15行目の「通院に伴う費用」の次に「等」を加える。
サ原判決54頁16行目の「128万8610円」を「118万1180
円」に改める。
4争点3(1審原告Aの休業損害は,本件事故と相当因果関係のある損害に当
たるか)について
認定事実
原判決を次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」第3の4
(原判決54頁19行目から56頁14行目まで)記載のとおりであるから,
これを引用する。
ア原判決54頁19行目の「19,」の次に「20,」を加える。
イ原判決54頁20行目の「52,54」を「52ないし56」に改め,
「D1,」の次に「2,」を加える。
ウ原判決56頁1行目の「同年10月」を「平成23年9月」に改める。
エ原判決56頁3行目の「11,」の次に「19,20,」を加える。
オ原判決56頁11行目の「39」の次に「,1審原告A」を加える。
本件事故による減収の有無及び額
上記の事実によれば,1審原告Aは,本件事故発生前にはFから一定の
役員報酬の支払を受けていたが,本件事故のため自主避難をして郡山市に戻
る見通しが立たなくなったため,同社の代表取締役を退いて今後役員報酬を
受領しないこととしたことが認められ,本件地震及び本件事故後の混乱の下,
同社は,Nの営業が廃止され,Hの営業も停止している状況で,1審原告A
自身が従前と同様の指揮をとることも不可能になっていたのであるから,上
記判断はやむを得ないものといえる。
そうすると,自主避難をせずに郡山市においてFの代表取締役を続けてい
れば1審原告Aが役員報酬を受領していた蓋然性が認められれば,それは本
件事故による逸失利益と認められることになる。
そして,上記のとおり,平成22年6月1日から平成23年2月28日
までの間,Fから,1審原告Aは総額1080万円(月額120万円),1
審原告Bは総額360万円(月額40万円)の支給を受けていたところ,1
審原告Aに代わって同社の代表取締役に就任したGは,同年6月上旬にHの
店舗を移転して規模を縮小した上で営業を再開したものの,当初は役員報酬
を受け取れず,同年11月頃から月額60万円の役員報酬を受け取るように
なり,平成26年8月頃には月額80万円を受け取っていたが,平成27年
1月末にはHの営業を廃止するに至った(甲A39,C33,乙151)こ
とに照らすと,Fの営業は必ずしも安定的なものではなかったものとみられ,
1審原告Aが代表取締役を続けていたとしても,従前と同水準の役員報酬を
得られたとは認め難い(なお,上記店舗の移転や営業規模の縮小が本件事故
によるものであることを認めるに足りる証拠はない。)から,1審原告Aが
得られたであろう役員報酬も控え目にみざるを得ず,本件事故と相当因果関
係のある減収は,1審原告Aについて月額45万円と認めるのが相当である
(本件事故前の役員報酬に同社の利益配当に相当する分が含まれていたとし
ても上記判断を左右しない。)。
1審被告は,1審原告Aの減収は,本件事故と関係のないHの再開遅延や
フロア規模の縮小というFの経営判断によるものであって,本件事故との相
当因果関係はない旨主張するが,1審原告Aは,本件事故による自主避難の
ため,同社の業務について従前と同様の指揮をとることが不可能になったの
であるから,上記のとおり,役員報酬を得られなくなったことを前提としつ
つ,Fの営業状態を考慮して逸失利益を算定するのが相当である。
就労不能期間
1審原告Aは,平成23年5月2日,J医師に不眠症と診断され,同医師
作成の診断書(甲A5)中には「東日本震災と福島原発事故のため精神的に
不安定な状態が続いており,会社経営は当分の間不可能と判断します」との
記載があるが,1審原告Aは,同月の時点で就労が難しいというほどではな
く,同年6月頃まではFの取引先から同人のほうにかかってくるクレームの
電話に対応していた旨供述していることに照らし,上記記載は採用すること
ができず,他に同年7月頃までの間に1審原告Aが精神疾患のため就労不能
状態にあったことを認めるに足りる証拠はない。しかし,本件事故による自
主避難者に対し避難先で短期間のうちに就労することを期待するのは困難で
あって,1審原告Aが同月まで就労していなかったことは自主避難者として
やむを得ないというべきである。
そして,前記のとおり,1審原告Bは平成23年8月頃には1審原告Aが
1日中部屋に閉じこもるようになるなど様子がおかしくなったことを感じた
ことから,同年9月27日,1審原告AをK内科医院で受診させていること
からすると,1審原告Aは,同年8月以降,うつ病の症状により就労不能状
態にあったと認めるのが相当であるから,本件事故発生日から本件事故と相
当因果関係のあるうつ病の治療期間である平成25年11月30日までを本
件事故と相当因果関係のある1審原告Aの就労不能期間と認めるのが相当で
ある。
F等からの送金
ア1審被告は,本件事故後,1審原告AはFから合計800万8809円
(本件送金,覆い鍬ァ法ぃ任ら合計650万円(本件送金Α砲鮗け取
っており,これらの金員は同社からの報酬又はこれと同視すべきものであ
って,休業損害から控除されるべきである旨主張する。
イしかし,証拠(甲C33,36,37,39,49から52まで)及び
弁論の全趣旨によれば,本件事故直後,Fの従業員のうち郡山市に残った
経理担当のOから,同社の金銭を管理する責任を負えないとの申出があっ
たので,1審原告Aが管理することとしてOに本件送金,鬚気擦燭海函
同社の代表取締役がGに交代した後も,同人がH再開に向けての作業で手
一杯であったため,同社の金銭の管理だけは1審原告Aが引き受けること
になり,本件送金△覆い鍬い行われたこと,1審原告Aは,本件送金
ないしい涼罎ら,同社の経費を支払ったり,営業資金等として,GやP
に送金を行ったりした(原判決第3の4イ)ことを認めることができ
る。
また,証拠(甲A33,甲C44から46まで)及び弁論の全趣旨によ
れば,本件送金イ錬討ら1審原告Aに対する貸付金,本件送金Δ錬任
ら1審原告Aに対する貸付金であり,1審原告Aは,本件送金サ擇哭Δ
対する返還の趣旨で,平成28年4月12日Gに670万円を,同月21
日同社に50万円をそれぞれ送金していることを認めることができる。
ウ上記イの認定を覆し,本件送金,覆い鍬Δ涼罎法ぃ討ら1審原告Aに
対する報酬又はこれと同視すべき金員が含まれていることを認めるに足り
る証拠はないから,上記アの主張は採用することができない。
以上によれば,本件事故と相当因果関係のある1審原告Aの休業損害は,
月額45万円を基準額とし,平成23年3月から平成25年11月までを期
間として算出した1485万円と認められる。
5争点4(1審原告Bの休業損害は,本件事故と相当因果関係のある損害に当
たるか)について
原判決を次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」第3の5(原
判決59頁11行目から60頁7行目まで)記載のとおりであるから,これを
引用する。
原判決59頁12行目から17行目までを次のとおりに改める。
「1審原告Bも,1審原告Aと同様の事情で,本件事故による自主避難のた
めにFの取締役としての職務を遂行し得なくなったというべきであるが,前
記4の事情を考慮すると,1審原告Bの本件事故と相当因果関係のある減
収は月額15万円と認めるのが相当である。」
原判決60頁6行目の「月額40万円」を「月額15万円」に改める。
原判決60頁7行目の「720万円」を「270万円」に改める。
6争点5(本件事故と相当因果関係のある1審原告らの慰謝料額)について
原判決を次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」第3の6(原
判決60頁9行目から61頁9行目まで)記載のとおりであるから,これを引
用する。
原判決60頁12行目の「平成24年8月31日」を「平成23年10月
31日」に改める。
原判決60頁15行目の「100万円」を「25万円」に改める。
原判決60頁24行目の「100万円」を「55万円」に改める。
原判決61頁9行目の次に改行して次のとおり加える。
「1審被告は,本件事故による放射線の客観的なリスクは1審原告らに対し
て具体的な健康被害や影響を及ぼす程度のものではないが,中間指針追補等
においては,放射線の影響に対する不安に基づく日常生活阻害に係る慰謝料
を賠償することとしているものであり,1審原告Aに対する8万円,平成2
3年8月11日まで妊婦であった1審原告Bに対する40万円の精神的損害
等の各賠償額には合理性がある旨主張する。しかし,自主避難の合理的期間
は,1審被告が主張するように,1審原告Aにつき平成23年4月22日頃
まで,1審原告Bにつき同年12月31日までではなく,1審原告Aにつき
同年10月31日まで,1審原告Bにつき平成24年8月31日までと解す
べきである上,放射線の客観的リスクや本件事故に起因する放射線被ばくに
よって1審原告らの具体的な法的に保護された権利利益が侵害されているか
どうかが慰謝料額の算定において考慮すべき事情であるとしても,考慮要素
はそれらのみにとどまるものではなく,1審原告らの自主避難の経緯や避難
先での生活状況等諸般の事情をも考慮すべきであるから,上記主張は採用す
ることができない。」
7争点6(1審原告Aの放射能測定費用は,本件事故と相当因果関係のある損
害に当たるか)について
原判決61頁15行目の冒頭に「郡山市における空間線量については,前記
2オのとおり測定結果が公表されているから,これに加えて住居付近の空間
線量を測定する必要は乏しい上,」を加え,「自主避難としての合理性が認め
られるのは」の次に「,1審原告Aにつき平成23年10月31日まで,その
余の1審原告らにつき」を加えるほか,原判決の「事実及び理由」第3の7
(原判決61頁12行目から19行目まで)記載のとおりであるから,これを
引用する。
8争点7(本件事故が1審原告Aの精神疾患に寄与した度合)について
原判決を次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」第3の8(原
判決61頁21行目から62頁15行目まで)記載のとおりであるから,これ
を引用する。
原判決61頁24行目の「京都市への転居,」から26行目の「ストレス」
までを「金沢市での差別的視線,京都市への転居,自主避難の長期継続等に
伴う本件事故に帰因し得ない様々なストレス」に改める。
原判決62頁5行目の「前記の原告Aの通院に伴う費用」から8行目の末
尾までを「前記の1審原告Aの通院に伴う費用等118万1180円と休業
損害1485万円を40%減じ,また,1審原告Bについても1審原告Aの
罹患が就労不能の一因であり,慰謝料の算定要素ともなっていることにかん
がみ,その休業損害270万円と慰謝料55万円を20%減ずるのが相当で
ある。」に改める。
原判決62頁15行目の次に改行して次のとおり加える。
「1審被告は,避難終了(平成23年4月1日)から約半年後にうつ病の診
断を受けていることなどの事情を踏まえると,1審原告Aの精神疾患罹患に
対する本件事故の寄与度は原判決が認定する4割を更に下回るものとされる
べきであるとも主張するが,前記のとおり,1審原告Aにつき自主避難の合
理性が認められる期間は平成23年10月31日までである上,1審原告A
は,同年4月頃から不眠や精神の不調を訴えるようになり,同年8月頃には
1日中部屋に閉じこもるようになるなどの行動が見られているものであって,
上記期間中の避難生活との関連性を認め得るストレスが主な原因となって1
審原告Aは精神疾患を発症したと認められるから,これに対する本件事故の
るのが相当であって,上記主張は採
用することができない。」
9争点8(本件事故と相当因果関係のある損害は,中間指針追補により示され
た損害に限られるか)について
原判決の「事実及び理由」第3の9(原判決62頁18行目から63頁1行
目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。
101審原告A及び1審原告Bの損害額について
以上によれば,本件事故により1審原告A及び1審原告Bに生じた損害は
次のとおりとなる。
ア1審原告A
自主避難に伴う費用123万4155円
通院に伴う費用等70万8708円
休業損害891万0000円
慰謝料(通院慰謝料を除く)25万0000円
弁護士費用110万0000円
合計1220万2863円
イ1審原告B
休業損害216万0000円
慰謝料44万0000円
弁護士費用26万0000円
合計286万0000円
原判決第2の2のとおり,1審被告は,平成25年7月19日,1審原
告Aに対し8万円を,1審原告Bに対し60万円を,同年8月28日,1審
原告A及び1審原告Bに対し各4万円をそれぞれ賠償金として支払っている。
そこで,1審原告Aについて,損害金合計1220万2863円に対する
平成23年3月12日から平成25年8月28日まで民法所定の年5分の割
合による遅延損害金150万4462円に12万円(8万円+4万円)を充
当すると,残額は138万4462円になるから,1審被告は,1審原告A
に対し,1358万7325円及びうち1220万2863円に対する同月
29日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負うこ
とになる。また,1審原告Bについて,60万円を損害金合計286万円に
対する平成23年3月12日から平成25年7月19日まで民法所定の年5
分の割合による遅延損害金33万6931円と元金のうち26万3069円
に充当し,4万円を259万6931円に対する同月20日から同年8月2
8日まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金1万4229円と元金の
うち2万5771円に充当すると,1審被告は,1審原告Bに対し,257
万1160円及びこれに対する同月29日から支払済みまで年5分の割合に
よる遅延損害金の支払義務を負うことになる。
111審被告の民訴法260条2項による裁判を求める申立てについて
証拠(乙116,117)及び弁論の全趣旨によれば,1審原告A及び1審
原告Bは,いずれも仮執行の宣言が付された原判決に基づき債権差押命令を得
て,その第三債務者である株式会社三井住友銀行から,平成28年3月25日,
1審原告Aにつき2671万4494円(損害賠償金2401万8026円,
遅延損害金268万9694円,仮執行手続費用6774円),1審原告Bに
つき724万5487円(損害賠償金644万8809円,遅延損害金78万
9904円,仮執行手続費用6774円)を取り立てたことが認められる。
そして,当裁判所が認容した平成28年3月25日における損害賠償額は,
1審原告Aにつき1515万8263円(1220万2863円+138万4
462円+157万0938円(平成25年8月29日から平成28年3月2
5日までの遅延損害金)),1審原告Bにつき290万2158円(257万
1160円+33万0998円(平成25年8月29日から平成28年3月2
5日までの遅延損害金))であるから,1審被告に対し,原状回復として,1
審原告Aは,2671万4494円と1515万8263円の差額である11
55万6231円及びこれに対する平成28年3月26日から支払済みまで民
法所定の年5分の割合による損害金を,1審原告Bは,724万5487円と
290万2158円の差額である434万3329円及びこれに対する同日か
ら支払済みまで民法所定の年5分の割合による損害金を,それぞれ支払うべき
義務がある。
第4結論
よって,1審被告の控訴は一部理由があるからその限度において原判決を主
文のとおり変更し,1審原告らの各控訴はいずれも理由がないから棄却し,1
審被告の民訴法260条2項による裁判を求める申立ては上記変更の限度で理
由があるから認容し,その余の申立ては理由がないから棄却することとして,
主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第1民事部
裁判長裁判官 佐村浩之
裁判官 大野正男
裁判官 井田宏

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