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前橋の高齢者連続殺傷で死刑判決 人格障害の影響認めず

 県都・前橋市の住宅街で高齢者三人が殺傷された事件では、裁判員制度が始まった二〇〇九年以降、前橋地裁の裁判員裁判で初めての死刑判決が言い渡された。強盗殺人罪などに問われた土屋和也被告(27)の殺意や計画性、精神的な障害の影響が主な争点だったが、前橋地裁は二十日、求刑通り死刑を言い渡した。裁判員からは死刑を巡り難しい判断を迫られた苦悩が漏れたほか、同種事件が起きないよう教訓を得るべきだとの意見も出た。 (川田篤志)
 鈴木秀行裁判長は判決理由で、殺された小島由枝さん=当時(93)=と川浦種吉さん=当時(81)、重傷を負った川浦さんの妻について、土屋被告が首や胸を包丁で何度も刺している点などから「確定的な殺意があった」と認定した。
 事件後の精神科医による鑑定で、被告は衝動を抑える力が乏しい「パーソナリティー障害」と診断された点を踏まえ、弁護側が障害の影響を主張したが、「障害に由来するパニックにより行為の危険性を認識する能力が低減していたとは考えられない」と退けた。
 これまでの公判で、土屋被告は二歳ごろに両親が離婚し、四歳から中学卒業まで県内の児童養護施設で育ったが、学校や施設でいじめを受けた成育歴が明らかになった。障害の影響などもあり仕事を転々とし、事件前には無職で食料と貯金も底を突き、水や砂糖のみの生活が続いた点も注目された。
 判決では、こうした点を踏まえ「パーソナリティー障害を形成する要因となった不幸な成育歴には被告人だけを責めきれない面があり、同情を禁じ得ない」と言及したが「量刑にあたってそれを過大評価することはできない」と説明した。
 主任弁護人の中田太郎弁護士は取材に「パーソナリティー障害などで弁護側の主張が十分伝わらなかったことは残念」と話し、即日控訴したと表明。判決後の土屋被告について「本人は事態をよく受け止めていない様子だった」と話した。
◆「心が重かった」判決後に裁判員ら
 「死刑選択があり得ると聞き、プレッシャーを感じた」「自宅に帰ってからもずっと考えていた。とても心が重かった…」。判決後、裁判員を務めた六人のうち三人と、補充裁判員の一人の計四人が記者会見に応じ、死刑判決という難しい判断を迫られた苦しい胸の内を明かした。
 四人とも「プレッシャーや責任を感じた」と答える一方で、「人の命を意識するようになり貴重な体験になった」「裁判官の説明やケアもあり、全員で時間をかけてしっかり評議して判断できた」と好意的に受け止める意見が多かった。
 ただ一般市民が死刑判決に関わる現行の裁判員制度については意見が割れた。「悪いことではない」と理解する声もあったが、「民意はくんでほしいが一般人にとっては重すぎる」「人の生き死にを自分たちが決めていいのか」と疑問を呈する意見も出た。
 女性裁判員の一人は、土屋被告の不遇な成育歴を踏まえ、「(幼少期の)愛情が注がれるべき時期に愛情が受けられず、自尊心が育たなかった被告も被害者と言える」と指摘。「寂しさや自尊心がないことが原因で犯罪が増えていることを思うと、これで終わらせてはいけない」と述べ、施設を出た青年のケアを充実させるなど社会全体で対策を打つべきだと主張した。
 補充裁判員の男性も「精神的な障害で悩む若者に手を差し伸べるなど社会のセーフティーネットがあれば、土屋被告も違う人生を歩めたのでは」と問題提起した。
◇思いくんでもらった
 <川浦種吉さんの遺族> 一家の平穏な生活を奪い許すことはできない。私たちの思いをくんでもらった判決。これから墓参りして報告したい。
◇被告は控訴しないで
 <小島由枝さんの遺族> 被告は判決を受け止めて、控訴することなく受け入れてほしい。
◇主張が認められ妥当
 <前橋地検> 検察官の主張が認められたものであり、妥当な判決である。
(2016年7月21日 東京新聞)

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