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<元交際相手の両親宅放火>被告女に懲役5年 千葉地裁「一線越えた行為」

 千葉市内の民家で1月、外壁などが焼けた火災で交際していた女性の両親宅に放火したとして現住建造物等放火罪に問われた同市花見川区、無職、大石絵梨紗被告(24)の裁判員裁判で、千葉地裁(市川太志裁判長)は15日、「一線を越えた行為で動機は身勝手」などとして、懲役5年(求刑・同7年)の判決を言い渡した。
 市川裁判長は判決で「交際相手との思い出を消してしまいたい、つらい思いをすっきりさせたいという思いから放火を決意し実行した。ガソリンやガスボンベなど燃焼力の高いものを大量に使用し危険性が高く結果も重大」と指弾した。
 弁護側は「犯行当時の精神状態も冷静な判断ができず追い詰められていた」などとして執行猶予付き判決を求めていたが、「複数の店舗であらかじめ燃料を購入するなど放火の違法性も認識し、冷静な判断ができなかったとは言えない」と退けた。
 判決によると、大石被告は1月9日、女性の両親から結婚を反対され交際を解消。放火すれば自分のつらい気持ちがすっきりするなどと思い込み女性の両親宅に放火を考え、ガスボンベ9本や着火剤、ガソリン約32リットルを購入した。1月11日、午後5時10分ごろ〜同6時20分ごろまでの間、両親宅の外壁などに用意した燃料やガソリンの一部をまきライターで火を付けた新聞紙で放火。同宅の外壁や仏間天井などを焼損させた。
(9/16(土) 11:00 千葉日報)

婚約、破談の末の凶行 「思い出を消したかった」 【性同一性障害女性の放火事件】

 「思い出を消したかった」−。千葉市内で1月、交際相手の女性との別れ話に落胆して女性の実家に放火し、現住建造物等放火の罪に問われた同市花見川区の無職、大石絵梨紗被告(24)に千葉地裁(市川太志裁判長)は15日、懲役5年の有罪判決を言い渡した。子どものころから自らの性に違和感があり、性同一性障害と診断された大石被告。そんな自分を受け入れ、婚約もしたのに告げられた別れ。「頭が真っ白になった」。多くの人命や財産を危険にさらした凶行へと駆り立てた背景は? 防ぐ手立てはなかったのか? 性同一性障害者の理解促進に努める団体の代表にも話を聞いた。(社会部 町香菜美)
◆小学生のころから
 “違和感”は、小学生のころから既にあった。
 「小さいころから男っぽかった。スカートを嫌がり男の子の友達が多かった」と、公判で大石被告の母親は振り返る。
 短髪で、法廷ではTシャツと紺色のジャージー姿。質問にははっきりとした口調で答えた大石被告。「小学生のころから男性といるほうが楽しかった。恋愛対象も女性の方が多かった」。高校のバスケットボール部の知り合いに「同じ人」がいたといい、そこで「性同一性障害」という言葉を知る。
 専門学校を経て、インストラクターとして働いたジムで出会った女性と2014年4月ごろから交際。その後、同居するように。翌年、同居は女性の両親の知るところとなる。女性は両親から「別れた方が良い」と諭されたが、隠れて同居を続けていたという。
 交際1年半後の15年の秋ごろ、大石被告は病院で性同一性障害と診断された。「自分でも分かっていて驚きはなかった」が、「友人、両親への対応に悩んだ。カミングアウトは怖かった。周りの見る目が不安だった」。
 ただ女性からは「自信を持って男性と思っている」と伝えられ、「受け止めてくれていることがうれしかった」。昨年のクリスマスにプロポーズ。女性の承諾をもらい、ペアリングも購入した。
◆「会わせない」
 幸せの絶頂もつかの間、約2週間後に事態は急変する。
 千葉市内のレストランで女性と女性の両親の4人で話し合うことに。店に向かう道中、カップルは互いに「話し合いがうまくいくといいね」と前向きに話していたが、いざ話し合いになると、女性から「交際の解消」を告げられた。
 女性の父親は「周りから祝福されないだろうし、経済面でも一緒にいるのは大変。友人としてやっていったらどうだ」と提案。2人の苦しみを理解したのか涙まで見せる父親に、大石被告はその場でいったん了承した。ところがレストランを出た後、父親から電話で「もう(女性と)会わせない」と伝えられると「頭が真っ白になった」(大石被告)。
 本来、犯行当日は女性と旅行に出かける日だった。女性に「会いたい」などとLINEメッセージを何度も送信したが、女性は「(解消の)気持ちは変わらない」と返信。「良い思い出がよみがえってきて、つらくて自暴自棄になって」自殺まで考えたというが「思い出を消したい。すっきりしたい」。
◆ガソリン32リットル
 話し合いの2日後、複数のホームセンターなどで着火剤とガスボンベ9本を購入。両親宅の外壁などに着火剤と灯油タンク2個に入れた32リットルものガソリンの一部をまき、ライターで火を付けた新聞紙で放火。同宅の外壁や仏間天井などを焼損させた。
 犯行にあたり、女性の両親の不在を確認して火を付けたという。長年住み慣れたわが家を失った両親は、大石被告の親が賠償金として用意した200万円の受け取りを拒否した。
 弁護側は「冷静な判断ができなかった」などと執行猶予付き判決を求めたが、市川裁判長は「一線を越えた行為で動機は身勝手」などとして懲役5年を言い渡した。
◆周りには話せない
 大石被告のような性同一性障害者の結婚は「一般的な男女の関係より若干ハードルが高い」とするのは、性同一性障害への理解を広める活動を展開する浦安市のNPO法人「Medical G Link」の代表、鈴木麻斗さん(28)。4年前に性別適合手術を受け、女性から男性に戸籍を変更した。
 自身もかつて交際相手の両親に性同一性障害を告げたところ「『二度と会うな。あいつは気持ち悪い』と言われ絶縁状態だった」。
 パートナーの両親も“運命”を背負うことになってしまう結婚。「例えば親戚に娘の結婚相手を説明するとき負い目を感じてしまう。頭で分かっていても周りには話せない」
 「絶対にやってはいけない」とする大石被告の犯行について、「やり場のない怒りを吐き出してしまったのではないか」と分析。
 「性同一性障害の理解は周りの支援と自分の『一歩踏み出す力』が大事。(被告人には)自分のセクシュアリティを心から打ち明けられていたのが彼女しかいなかったのではないか」と推測し、「両親などに気兼ねなく話せたら、今回のケースには至らなかったかもしれない」と話した。
 法廷で大石被告の母親は「(性同一性障害を)カミングアウトできず、一人で抱え込んでしまった。気づけなかったのがとても悔しい」と話した。大石被告も「(女性に)本当のことを聞けば良かった。一人で悩まずに相談していれば…」と声を詰まらせた。
◆「支援に感謝」
 11日の最終意見陳述で大石被告は、女性らに対して「怖い気持ちを持たせてしまった。自暴自棄になっていた」と反省。逮捕されてから公判まで「家族や前職の職場の人から手紙などで支えてもらった」と感謝し、「どんな形でも罪を償っていく。この事件のことを毎日考え、一生忘れない」と誓った。
◇性的少数者 同性愛のレズビアンやゲイ、両性愛のバイセクシュアル、心と体の性が一致しない性同一性障害といったトランスジェンダーなど。頭文字をとってLGBTとも言われる。電通が2015年に20〜59歳の約7万人に実施した調査では、7・6%が該当した。自治体による同性パートナーの証明書発行や、企業がLGBT社員を支援するなどの動きも出ている。文部科学省は15年、学校で性的少数者の児童生徒に対し、望む性別の制服着用や、相談体制の整備などきめ細かい対応を求める通知を教育委員会に出した。
(2017年9月16日 22:13 千葉日報)

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