報道等をもとに日本の裁判官の情報を収集、掲載しています。

看護師連れ去り28歳男に懲役4年判決

 静岡県藤枝市で看護師の内山茉由子(まゆこ)さん=当時(29)=の遺体が見つかった事件で、内山さんを連れ去って監禁したとして、営利目的略取罪などに問われた住所不定、無職の伊藤基樹(もとき)被告(28)の判決公判が20日、静岡地裁浜松支部で開かれ、山田直之裁判長は懲役4年(求刑懲役7年)の実刑判決を言い渡した。
 山田裁判長は10時間にわたって拘束し監禁したことや、車内で主導役とされた男=当時(39)、自殺=に口封じのために屈辱的な姿を撮影されたことなどを挙げ、「その間に被害者が負った精神的、肉体的苦痛は極めて重大だ」と強調。男から「人さらい」の仕事を告げられた上で犯行に加担したことから「犯意は強固で酌量の余地はない」と非難した。
 一方で、量刑については別件で取り調べを受けた際に自ら犯行への関与を打ち明けたことなどを情状し、検察の求刑は「重きに過ぎる」と懲役4年が相当とした。
 判決によると、伊藤被告は報酬を受け取る目的で、主導役とされた男や、鈴木充被告(43)=死体遺棄や営利目的略取などの罪で公判中=と共謀し、5月26日夕に浜松市のフィットネスクラブ駐車場で内山さんを車に押し込み、車ごと拉致。県内を連れ回し、27日未明まで腕を結束バンドで縛るなどして監禁した。
 遺体は6月9日、藤枝市の山林の土中から見つかった。伊藤、鈴木両被告は殺人容疑で再逮捕されたが、静岡地検が不起訴処分とした。主導役とされた男は新潟市内で自殺しているのが見つかり、殺人容疑などで書類送検された後、不起訴処分となった。
(2018.12.20 11:44 産経新聞)

静岡・看護師遺棄 被告関与、厳しく指摘 地裁浜松支部判決 「酌量の余地ない」 /静岡

 浜松市の女性看護師が連れ去られ、6月に藤枝市の山中で遺体が見つかった事件で、営利目的略取と逮捕監禁の罪に問われた住所不定、無職、伊藤基樹被告(28)は20日、懲役4年(求刑・懲役7年)の判決を地裁浜松支部で言い渡された。事件を主導したとみられる男(当時39歳)が自殺したこともあり、逮捕・起訴された2人がいずれも女性の死亡について刑事責任を問われないケースとなったが、山田直之裁判長は、伊藤被告の関与について、厳しい指摘の言葉を並べた。【古川幸奈】
 「被告人を懲役4年に処する」。山田裁判長が主文を読み上げた直後、椅子に腰掛けた伊藤被告はうつむき、両手で顔を覆ってこするような仕草を見せた。坊主頭にし、上下紺色のジャージー姿。終始表情は変えず、判決理由に耳を傾けた。
 判決によると、伊藤被告は、自殺した男によるインターネット掲示板の「サクッと稼ぎましょう!」という書き込みを見て「人さらい」の運転手役を引き受けた。伊藤被告は5月26日午後6時20分ごろ、浜松市内の駐車場で鈴木充被告(43)=死体遺棄罪などで公判中=と女性の車に乗り込み、体を押さえ込むなどの暴行を加え、約10時間にわたって車内に監禁した。
 伊藤被告の立場について、山田裁判長は「犯行に不可欠な役割を担った」と指摘し、「犯意は強固で動機に酌量の余地はない」と述べた。
 伊藤被告は連れ去りの翌27日早朝に浜松市内でいったん車を降り、鈴木被告と運転を交代したとされる。その後に再び合流した際の状況について、伊藤被告は公判で「車内に女性はいなかった。解放されたと思った」などと供述し、検察官に連れ去った詳しい目的などを聞かれた際には「分からない」などと繰り返し述べていた。
 山田裁判長は判決で、こうした点に触れて「長時間監禁を続けたあげく、女性を車内に残したまま犯行から離脱した。身勝手かつ無責任」と述べた。一方で、自ら警察に犯行を告白し反省の態度などを示していることなどを挙げ、減軽の理由を説明した。
 言い渡し後、伊藤被告は小さな声で、「ありがとうございました」と弁護士に声をかけ退廷した。
(2018年12月21日 毎日新聞)

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平成30(わ)231  営利略取,逮捕監禁
平成30年12月日宣告
平成30年(わ)第231号
主文
被告人を懲役4年に処する。
未決勾留日数中1日をその刑に算入する。
理由
【罪となるべき事実】
被告人は,A及びB(平成30年6月日死亡)と共謀の上,被害者(当時29
歳)を営利の目的で略取し,逮捕監禁しようと考え,平成30年月26日午後6時
21分頃,浜松市a区b町c番d号パチンコ店「C」北側駐車場において,被害者が
同所に駐車中の普通乗用自動車の運転席に乗車するや被告人及びAがそれぞれ同車
の運転席及び助手席から乗り込み,被害者を押さえ込むなどの暴行を加え,被害者を
被告人らの支配下に置くとともに逮捕し,同日午後6時22分頃,同車を発進させ,
その頃から同月27日午前4時分頃までの間,同所から静岡県掛川市,静岡市等
を経て浜松市a区ef丁目g番h号Dビル東側路上まで走行させ,その間,被害者の
身体を押さえ込み,あるいは被害者の両上肢を結束バンドで縛るなどし,被害者を同
車から脱出することが著しく困難な状態に置き,もって被害者を営利の目的で略取す
るとともに不法に逮捕監禁した。
【証拠の標目】
省略
【法令の適用】
罰条
営利略取の点刑法60条,2条
逮捕監禁の点包括して刑法60条,2条
科刑上の一罪の処理刑法4条1項前段,条(1個の行為が2個の罪名に
触れる場合であるから,1罪として重い営利略取罪の刑で
処断)
未決勾留日数の算入刑法21条
訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書
【量刑の理由】
本件は,被告人が,B及びAと共謀の上,営利の目的で,平成30年月26日の
夕刻,駐車場において,自動車に乗り込んだ被害者を車ごと連れ去り,約時間に
わたり車中で監禁したという営利略取,逮捕監禁の事案である。被告人は,同年6月
8日,別件で警察官から取調べを受けた際,自ら進んで本件犯行を打ち明け,Aは,
同月11日,自ら警察署に出頭したが,Bは,同月日,捜査機関に逮捕される前
に死亡した。なお,被害者は,同月9日,山中から遺体で発見されたが,被害者死亡
の事実は本件の訴因には含まれていない。
以上を前提に,以下,本件の量刑要素について検討する。
まず,犯行全体の悪質性についてみると,本件は,インターネットの匿名掲示板に
おけるBの呼びかけに応じ,それまで見ず知らずであった被告人らが集まり,互いに
偽名を名乗り合うなどしながら共同して犯罪を実行したものであり,捜査機関による
追跡を困難にする匿名性の高い犯行といえる。そして,被告人らは,あらかじめ,役
割分担を謀議し,対象者の拘束に用いる結束バンド,「下見用」「実行用」などの複数
の服装,変装用のかつら,帽子,軍手を用意した上,別の駐車場において予行演習を
するなどして本件を敢行したものであり,周到に準備された計画性の高い犯行であっ
たといえる。被告人らが対象者として被害者を選んだ経緯については,本件の首謀者
とみられるBが死亡したため不明な点も残るが,被告人らとは縁もゆかりもない若い
女性を標的にした無差別的な犯行と考えられ,社会に与えた不安感等の悪影響は極め
て大きい。被害者は,夕刻の未だ明るい時間帯に,判示のパチンコ店に併設されてい
るスポーツジムから出てきて,多数の自動車が駐車され,しばしば客も行き来する駐
車場に駐車していた自分の自動車に乗り込んだところを,突然助手席側から乗り込ん
できたAに体を押さえ込まれ,運転席側から乗り込んできた被告人に勝手に自動車を
発進させられ,自動車ごと連れ去られた。そのような経緯において,被害者に落ち度
はもとより,被害の誘因となるような不注意も全く認められない。そして,被害者は,
監禁当初,「助けて」「殺さないで」と繰り返し述べたり,足を動かして暴れたりして
必死の抵抗をしたものの,ほどなく自動車に乗り込んできたBから結束バンドで両手
首を拘束されるなどして抵抗できない状態にさせられた。その後,被害者は,約
時間もの長時間にわたり,一度も車外に出ることなく,Bから,口封じのためとして
屈辱的な姿態を撮影されたり,後部座席の足元に横臥させられるなどして,監禁状態
を継続されたものであるから,本件の態様は誠に悪質というほかない。その間に被害
者の味わった恐怖は著しいものであり,被害者が負った肉体的,精神的苦痛は極めて
重大であったと考えられ,被害者の遺族が峻烈な処罰感情と憤りをあらわにしている
ことも至極当然のことである。犯行後の情状をみても,被告人が離脱後再合流した同
年月27日午後時頃以降,被告人らは,犯行に使用した衣服や自動車内にあった
被害者の荷物等を投棄して証拠隠滅を図るなどした上で解散しており,その後,被告
人及びAが犯行を自供した経緯を踏まえても,事後情状は芳しくないというべきであ
る。
次に,被告人に固有の事情についてみると,被告人は,自動車に乗り込もうとする
被害者をAとともに追尾し,Aが助手席側から自動車に乗り込んで被害者を押さえ込
んでいる間に,運転席側から自動車に乗り込んで自動車を発車させ,そのまま,約1
0時間にわたり,Bの指示に従って自動車を運転するという犯行に不可欠の役割を担
っている。被告人は,Bから「人さらい」の仕事と告げられた上で,報酬目的で運転
手役を引き受けることを決意し,本件犯行に加担したものであるから,その犯意は強
固であり,動機に酌量の余地はない。そして,被告人は,Bから質問をするなと言わ
れていたため,略取後に被害者がどのような扱いを受けるかについては尋ねなかった
などと述べるが,長時間にわたって監禁行為を続けた挙げ句,未だ解放されない被害
者を車内に残したまま,同日午前4時分頃,漫然と運転をAと交代し,犯行から
離脱したというのであるから,身勝手かつ無責任な経緯というほかない。また,被告
人は,犯行後,Bと連絡がつかなくなったことなどから,実際に報酬を受け取ること
ができなかったものであるが,Bから犯行前後の飲食代等の提供を受けるなどしてお
り,全く利益を得ていないものではない。
以上の事情を考慮すると,本件犯行は同種事案の中でも重い部類に属するといわざ
るを得ず,被告人が,犯行の首謀者ではなく,犯行を主導したわけでもないことに照
らしても,相当期間の懲役刑の実刑を科すべき事案というべきである(もっとも,検
察官の求刑は,従前の同種事案の量刑傾向からすると,重きに過ぎると考える。)。
その上で,被告人が,前記のとおり,自ら進んで捜査機関に本件犯行を打ち明け,
その後も犯行を認めて反省の態度を示していることなどの弁護人が主張する事情も
踏まえ,主文の刑期が相当であると判断した。
(求刑−懲役7年)
平成30年12月日
静岡地方裁判所浜松支部刑事部
裁判長裁判官 山田直之
   裁判官 横江麻里子
   裁判官 村島裕美

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