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携帯電話のワンセグ、受信料「義務あり」 水戸地裁判決
 ワンセグ放送を受信できる携帯電話を持っていた茨城県高萩市の男性(50)が、NHKに支払った受信料1310円(1カ月分)の返還を求めた訴訟の判決が25日、水戸地裁であった。河田泰常裁判長は男性の訴えを棄却。男性は控訴する考えを明らかにした。
 放送法はテレビなどの受信設備を設置した人はNHKと受信契約を結ばなければならないとしている。男性は、ワンセグが受信できる携帯電話は一定の場所に取り付けるものではないので、受信設備の「設置」ではなく、「携帯」にあたると主張していた。
 判決で河田裁判長は、放送法について「受信設備を使用できる状態におくことをいい、『携帯』の概念も包含する」として、「放送受信契約を締結する義務があった」と訴えを退けた。
 ワンセグ機能付き携帯電話の受信料を巡る訴訟は昨年8月、さいたま地裁が受信料の支払い義務はないとの判断を示していた。高市早苗総務相は同地裁の判決を受け、「携帯受信機も受信契約締結義務の対象と考えている」という見解を示している。
(2017年5月25日20時18分 朝日新聞(比留間陽介))

ワンセグ携帯にNHK受信料契約義務 水戸地裁、司法判断割れる
 ワンセグ付き携帯電話の所有者はNHK受信料の契約義務があるかどうかを争った訴訟の判決で、水戸地裁は25日、契約義務があるとの判断を示し、支払い済みの受信料の返還を求めていた原告男性の請求を棄却した。昨年8月、さいたま地裁が「契約義務はない」との判断を示しており、司法の判断が割れる結果となった。
 放送法64条は「放送を受信することのできる受信設備を設置した者」に対して、契約義務があるとしている。男性は携帯電話を一定の場所に置いておらず、携帯していたにすぎないため、64条の「受信設備を設置した者」に当たらないと主張していた。
 判決理由で河田泰常裁判長は64条の「設置」は「放送を受信することのできる受信設備を使用できる状態におくことをいう」と指摘。「一般的にいう『携帯』の概念をも包含すると解するのが相当」として、男性の主張を退けた。
 さいたま地裁は昨年8月の判決で、64条の「設置」に「携帯」の意味を含めるのは「無理がある」とし、原告の男性市議は携帯電話を携帯しただけで設置者ではなく、契約義務がないとの判断を示した。
 NHK広報局は水戸地裁判決について「妥当な判決と受け止めている」とコメントした。〔共同〕
(2017/5/26 9:15 日経新聞)

ワンセグNHK受信料訴訟、水戸地裁は「所有者に支払い義務」…裁判所の判断割れる
 ワンセグ機能付き携帯電話の所有者に、NHK受信料の支払い義務があるかどうかが争われていた裁判で、水戸地裁(河田泰常裁判長)は5月25日、支払う義務があるとする判決を下した。昨年8月、さいたま地裁であった別の裁判では、ワンセグ携帯を所有しているだけでは、受信料を支払う義務はないとする判決が出ており、裁判所の判断が割れた形だ。
 判決などによると、裁判を起こしたのは、茨城県高萩市に住む50歳の男性。男性はテレビを持っていなかったが、2016年7月、自宅を訪れた徴収員から、ワンセグ携帯の所持を理由に契約を結ばされた。男性は機種変更して、NHKとの契約を解除。NHKの対応に納得がいかないとして、支払った1カ月分の受信料1310円の返還を求めていた。
 裁判の焦点は、昨年のさいたま地裁同様、「受信設備を設置した者」に支払い義務があると規定した放送法64条1項の解釈だ。男性は、携帯電話のワンセグは「設置」ではなく、「携帯」だと主張。しかし、裁判所は「設置」は「受信設備を使用できる状態におくことをいい、一般的にいう『携帯』の概念をも包括すると解するのが相当」と判断した。男性は控訴を検討しているという。
 一方、さいたま地裁の判決では、「設置」に「携帯」の意味を含めることには無理があるとして、設置者ではないとした。NHKが控訴したため、東京高裁で争われており、一審で勝訴した埼玉県朝霞市の大橋昌信市議によると、まだ進行協議の段階。判決が出るのは、NHK受信料についての最高裁判断(年内の見込み)の後になりそうだ。大橋市議によると、NHKを相手にした「ワンセグ裁判」は、自身や今回の水戸地裁のものも含めて、少なくとも5件はあるという。
(弁護士ドットコムニュース)

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平成29年5月25日判決言渡
平成28年(ワ)第615号放送受信料不当利得返還請求事件
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,1310円及びこれに対する平成28年8月29日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,原告が,被告と締結した放送受信契約は錯誤により無効であると主
張して,被告に対し,不当利得に基づき,上記契約に基づいて支払った受信料
1310円及びこれに対する上記支払をした日の翌日から支払済みまで民法所
定の年5分の割合による利息の支払を求める事案である。
1前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に
認められる事実)
⑴当事者
ア原告は,肩書住所地に居住する男性である。
イ被告は,放送法16条によって設立された特殊法人であって,放送法1
5条によれば,公共の福祉のために,あまねく日本全国において受信でき
るように豊かで,かつ,良い放送番組による国内基幹放送(国内放送であ
る基幹放送をいう。)を行うとともに,放送及びその受信の進歩発達に必
要な業務を行い,あわせて国際放送及び協会国際衛星放送を行うことを目
的とするとされている。
⑵原告による放送受信契約の締結及び受信料の支払
ア原告は,平成28年7月14日当時,ワンセグ放送(後記⑶参照)対応
の携帯電話機(以下「本件携帯電話機」という。)を所有していた(なお,
当時,原告は,肩書住所地において,テレビジョン放送の受信を主たる目
的とする受信機を所持していなかった。弁論の全趣旨)。
イ原告は,同日,被告との間で,本件携帯電話機について,放送受信契約
者を原告,放送契約の種別を地上契約とする放送受信契約(以下「本件受
信契約」という。)を締結した(甲2。なお,弁論の全趣旨によれば,本
件携帯電話機は被告の放送を受信することのできる受信設備に当たる。)。
ウ原告は,翌15日,本件携帯電話機の回収及び廃棄を携帯電話販売店に
依頼し(甲5),同年8月1日付けで,被告に対し,放送受信契約解約届
を提出し,本件受信契約を解約した(乙2,弁論の全趣旨)。
エ原告は,同月28日,被告に対し,本件受信契約に基づき,同年7月分
の受信料として1310円を支払った(甲3)。
⑶ワンセグ放送
我が国では,地上デジタル放送の1つのチャンネル当たり6MHzの放送
用帯域が割り当てられているところ,これらの帯域は,更に約430kHz
ずつ13のセグメントと呼ばれる帯域に分割されており,各放送局において,
それぞれ変調方式などを選択して様々な種類の放送をすることができる。
この13のセグメントのうち,ハイビジョン放送(HDTV・高精細度テ
レビジョン放送)では12セグメント,標準の放送(SDTV・標準解像度
テレビジョン放送)では4セグメントを利用して3チャンネル分放送するこ
とができるところ,残りの1セグメントを利用して移動体機器向けの放送が
行われており,「ワンセグ放送」と言われている。
ワンセグ放送は,平成18年4月から主要都市を中心に開始された。(乙
3,4)
2放送法64条1項
放送法64条1項本文は,「協会(被告のこと。以下同じ。)の放送を受信
することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放送の受信についての
契約をしなければならない。」と規定する(以下「本件規定」という。)。
3争点
本件受信契約締結の当時,本件携帯電話機を所有,所持していた原告が,本
件規定にいう「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」と
して,被告との間で放送受信契約を締結する義務を負っていたかどうか
4争点に関する当事者の主張
(原告)
原告は,平成28年7月14日,被告の業務委託先の担当者が,本件携帯
電話機を所有し,所持している者は被告との間で放送受信契約締結義務があ
る旨説明したことから,原告は,それを信頼し,本件受信契約を締結した。
しかし,原告は,本件携帯電話機を一定の場所に置いておらず,携帯してい
たにすぎなかったから,本件規定にいう「協会の放送を受信することのでき
る受信設備を設置した者」に該当せず,放送受信契約締結義務がなかった。
したがって,上記義務があると誤信してした原告の本件受信契約締結の意
思表示は錯誤により無効であるから,本件受信契約に基づき被告に支払った
受信料について不当利得として返還を求める。
(被告)
本件規定にいう「設置」とは,観念的・抽象的に,被告の放送を受信する
ことのできる受信設備を使用できる状態におくことを意味し,一般的にいう
「携帯」の概念を包含する。したがって,本件受信契約締結の当時,本件携
帯電話機を所有し,所持していた原告は,本件規定にいう「協会の放送を受
信することのできる受信設備を設置した者」に該当し,被告との間で放送受
信契約を締結する義務があった。
第3当裁判所の判断
1本件規定の解釈のあり方について
⑴「設置」は,一般的な用語法においては,原告が指摘するとおり,一定の
場所に置くことを意味し,「たずさえ持つこと」又は「身につけて持つこ
と」を意味する「携帯」とは,区別されて用いられている。
⑵もっとも,法令においては,ある文言が,一般用語におけるよりも観念的,
抽象的な意味で用いられ,より広い概念を指す場合がある。
「設置」の語に関しても,放送法以外の他の法令において,一定の場所に
置くことに限らず,より広い概念を指す用例がある。
例えば,電気通信事業法9条1号にいう,電気通信回線設備の「設置」は,
一定の場所に置くことに限らず,より観念的に,通信できるようにされた機
械,器具,線路その他の電気的設備を継続的に管理・支配することであると
解されている(乙17)。
また,電気事業法39条1項は,「事業用電気工作物を設置する者は,事
業用電気工作物を主務省令で定める技術水準に適合するように維持しなけれ
ばならない。」と規定するところ,所轄官庁である経済産業省は,移動させ
て用いるための電気工作物が上記規定にいう「設置」の対象となることを前
提とした通達(平成17・05・20原院第1号「移動用電気工作物の取扱
いについて」)を発している(乙18)。
さらに,株式会社日本政策金融公庫法11条1項1号の規定を受けた同法
別表第一の三には,「政令で定める施設又は設備(車両を含む。以下この表
において同じ。)の設置又は整備」に関する定めがあり,移動体である車両
が「設置」される場合を予定している。
⑶したがって,本件規定にいう「設置」の意義は,直ちに,一般用語と同じ
く一定の場所に置くことであると解釈されるべきであるとはいえず,その成
立経緯や趣旨等を踏まえて判断すべきである。
2本件規定の成立経緯
⑴本件規定と同旨の定めを置いていた放送用私設無線電話規則13条の「施
設」の解釈
ラジオ受信機の設置に関し,無線電信法(大正4年法律第26号)2条6
号の委任を受けた放送用私設無線電話規則(大正14年逓信省令第89号に
よる改正後のもの)13条は,放送の受信を目的とする私設無線電話(ラジ
オ受信機)を「施設」しようとする者は,放送施設者(現在の被告の前身で
ある社団法人日本放送協会)に対する聴取契約書を提出し,所轄官庁の許可
を受けなければならず,その者が,「施設」するラジオ受信機を「携帯使用
する」場合は,その保管場所を聴取契約書に記載しなければならない旨規定
していたところ(乙19,別紙1項),「施設」される無線電話機器には
「携帯使用する」機器も含まれることを前提としていた(昭和23年逓信省
令第1号による改正後においても同様である(乙20,別紙2項)。)。
⑵本件規定の立法過程
無線電信法は,昭和25年に電波法が施行されることに伴って廃止され,
ラジオ受信機の設置者についての規律は,昭和25年6月1日に施行された
放送法(昭和25年法律第132号)32条1項に設けられ,「施設」の語
に代わり「設置」の語が使用されることとなったが(別紙3項⑴),上記立
法に際し,国会で,放送用私設無線電話規則13条にいう「施設」の概念を
変更し,又は,受信設備を「携帯」する者を「受信設備を設置した者」から
除外するといった議論がされた形跡はないこと(弁論の全趣旨),昭和25
年当時,据置き型でない携帯型ラジオが存在していた(乙23,24)こと
からすれば,当時の放送法32条1項の「設置」される受信設備には,携帯
使用するものが含まれていたと解される。
この点,電波監理委員会設置法3条6号により被告に関する事務をつかさ
どるとされた電波監理委員会による認可(当時の放送法32条3項に規定さ
れたものであり,現行の64条3項に相当する。)を受けた被告の放送受信
規約4条は放送用私設無線電話規則を踏襲するように定められ,携帯使用す
るものが受信設備に含まれることを前提にしていること(乙21,別紙3項
⑵),昭和25年2月6日の第7回国会参議院電気通信委員会において,当
時の電波監理長官(電波監理委員会に設置された事務局である電波監理総局
の長(電波監理委員会設置法20条1項,3項))であるAが,放送法案に
関し,「日本放送協会の放送を聴取し得る受信機を持った者は,この協会と
聴取契約を結ばなければならない」旨説明し(乙22・3頁),「設置」と
いう文言について「持った」という観念的な意味で説明していること,国会
衆議院逓信委員会において,参考人として出席した被告の専務理事や経理局
長が,携帯型ラジオ等が受信契約の対象になる旨説明していたこと(乙25
〜28)は上記解釈と整合する。
そうすると,放送法が成立した当時の放送法32条1項にいう「設置」は
「携帯」を含むものとして用いられていたことが明らかである。
⑶本件規定の改正過程
昭和42年法律第94号による放送法32条1項ただし書きの改正により,
ラジオ放送に限り受信することのできる受信設備を設置した者は,受信契約
の対象から除外されたが(別紙5項),その当時,国会で「設置」の意義を
変更する旨の議論は特段されなかった(弁論の全趣旨)。
そして,後記4⑴イのとおり,平成21年法律第22号による改正(以下
「平成21年改正」という。)において「移動受信用地上放送」の定義とし
て,平成22年法律第65号による改正(以下「平成22年改正」とい
う。)において「移動受信用地上基幹放送」の定義として,「設置」の語と
は別に「携帯」の語が放送法に取り入れられ,平成22年改正により放送法
32条1項の規定内容は,64条1項に引き継がれたが(別紙8項),同条
項の「設置」の語の意義を変更する旨の議論は特段されなかった(弁論の全
趣旨)。
⑷以上のとおりであるから,本件規定の成立経緯においては,本件規定にい
う「設置」は,「携帯」を含む概念として取り扱われてきたというべきであ
る。
3本件規定の趣旨
放送法が,実際に視聴しているかどうかとは関係なく,被告の放送を受信す
ることのできる受信設備を設置した者に対して放送受信契約の締結を義務付け,
被告がその者から受信料の支払を受けることを認める(本件規定)一方,被告
に対し,営利を目的とした業務を禁じ,広告放送を禁止して広告料収入の途を
閉ざしているのは(放送法20条4項,83条1項),被告が,あまねく日本
全国において豊かでかつ良い放送番組を提供するために設立された公共的機関
であり(前提事実⑴イ),言論報道機関であることから,その財源は,あまね
く全国に放送することを可能とするものであるとともに,国や広告主の影響を
できるだけ避け自立的に番組編集を行えるものとする必要があることによると
解される。本件規定は,そのような放送を担う被告の維持運営に必要な費用を
国民に公平に負担させることを定めたものであるから,本件規定にいう「設
置」とは,そのような放送を享受しうる状態,すなわち,被告の放送を受信す
ることのできる受信設備を使用できる状態におくことをいうと解することが,
その趣旨に沿う。
他方,受信者の契約締結義務の有無を画する概念である「設置」を「一定の
場所に置く」と解すると,「一定の場所」や「置く」という概念が極めて相対
的であるため,テレビジョン放送の受信を主たる目的とする受信機を所有し,
所持する場合であっても,当該受信機の移動可能性,置かれる場所との接着性
の程度などによって契約締結義務の有無が変わり得る事態を生じさせかねず
(例えば,いわゆるポータブルテレビの場合),上記の本件規定の趣旨に照ら
し,相当でないと解される。
4放送法の他の規定との関係
⑴ア他方で,放送法2条14号は,「移動受信用地上基幹放送」の定義にお
いて,「設置」と「携帯」の語を使い分けている。
すなわち,上記規定によれば,「移動受信用地上基幹放送」とは,「自
動車その他の陸上を移動するものに設置して使用し,又は携帯して使用す
るための受信設備により受信されることを目的とする基幹放送であって,
衛星基幹放送以外のもの」をいう。
イそこで,上記規定の趣旨及び立法経緯を検討する。
放送法には,平成21年改正により,平成23年7月に地上アナログ
テレビジョン放送が終了することに伴って利用されなくなる周波数帯の
うち,VHF帯の一部の周波数帯を利用して,携帯端末向けの新たな放
送(いわゆる携帯端末向けマルチメディア放送)を実現するための規定
が設けられた。その際新設された放送法2条2号の2の6によれば,
「移動受信用地上放送」とは,「自動車その他の陸上を移動するものに
設置して使用し,又は携帯して使用するための受信設備により受信され
ることを目的とする放送であって,人工衛星の無線局以外の無線局によ
り行われるもの」とされた。(乙9,29の1,29の2)
そして,平成22年改正により,放送法2条2号の2の6の規定内容
は,放送法2条14号に引き継がれ,「移動受信用地上放送」から名称
が変更された「移動受信用地上基幹放送」は,上記アのとおり定義され
た(乙30)。
平成21年改正により,「移動受信用地上放送」の規定が新たに設け
られた際,「携帯」の語が初めて放送法に取り入れられたが,平成21
年改正及び平成22年改正に当たり,国会で,上記「移動受信用地上放
送」及び上記「移動受信用地上基幹放送」の定義中の「携帯」の語と受
信契約及び受信料について定める本件規定(平成22年改正前にあって
は32条1項)の「設置」の語との関係について説明や議論がされるこ
とはなかった(弁論の全趣旨)。
ウなお,移動受信用地上基幹放送は,被告が行う業務に含まれていない
(放送法20条参照,2条14号,15号,22号)。
⑵アところで,昭和63年法律第29号による放送法の改正により,「有料
放送」(放送法52条の4第1項前段)の規定が,「契約により,その放
送を受信することのできる受信設備を設置し,当該受信設備による受信に
関し料金を支払う者によって受信されることを目的とし,当該受信設備に
よらなければ受信することができないようにして行われる放送」として新
たに設けられた。
イ平成22年改正により,放送法52条の4第1項前段は,147条1項
前段に改められたが,「有料放送」の定義は,上記アの新設の後,現行の
放送法に至るまで変更されていない。
ウ有料放送の役務を提供する放送事業者であった株式会社mmbiは,放
送法147条1項の「有料基幹放送契約約款」に当たる約款を定めていた
ところ,上記会社が提供する役務である「有料放送サービス」について,
「有料で提供される放送(207.5MHz以上222MHz以下の周波
数の電波を使用する移動受信用地上基幹放送に限り,以下同じとしま
す。)役務であって,有料基幹放送契約を締結した場合にのみ視聴及び利
用等(以下「視聴等」といいます。)が可能となるもの」と定め,「有料
放送」は「移動受信用地上基幹放送」を含むとされていた(乙31)。
⑶上記⑴ア〜ウのとおり,放送法2条14号は,移動受信用地上基幹放送と
いう移動体向け専用の新たな独立した放送の類型を定めるために追加された
規定であり,固定受信を前提とした地上デジタル放送に付随させて同放送と
一体的に普及を図っていたワンセグ放送(地上基幹放送の1つである。)と
は異なり,被告の業務に含まれていない放送類型に関する規定である。他方,
放送法第3章は,公共の福祉のために,全国あまねく豊かで良い公共放送を
行うことを目的とする(前提事実⑴イ)被告について,その業務及び組織等
に関する規定を置いたものであり,そのうち,本件規定は,そのような放送
を担う被告の維持運営に必要な費用を国民に公平に負担させることを定めた
ものであって,放送法2条14号とはその趣旨及び位置付けを異にするもの
である。したがって,同号が「設置」と「携帯」の語を使い分けているから
といって,本件規定にいう「設置」に「携帯」が含まれないと解する理由は
ない。かえって,上記⑵のとおり,「移動受信用地上基幹放送」に該当する
放送を含む概念である「有料放送」の定義が,平成21年改正によっても,
「設置」と「携帯」の語を使い分ける形に改正されなかったことに照らせば,
放送法において「設置」と「携帯」の語の明確な使い分けがされているとい
うことはできない。
5本件規定の解釈
以上からすれば,本件規定にいう「設置」とは,被告の放送を受信すること
のできる受信設備を使用できる状態におくことをいい,一般的にいう「携帯」
の概念をも包含すると解するのが相当である。なお,受信料について,被告の
維持運営のために被告に徴収権が認められた特殊な負担金と解するとしても,
上記判断を左右しない。
6結論
したがって,本件受信契約締結の当時,本件携帯電話機を所有し,所持して
いた原告は,本件規定にいう「協会の放送を受信することのできる受信設備を
設置した者」に該当し,被告との間で放送受信契約を締結する義務があった。
そうすると,本件受信契約締結の当時,放送受信契約締結義務の有無につい
て原告に誤信があったとはいえず,原告の錯誤無効の主張は,採用することが
できない。
よって,そのほかの点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がな
い。
第4結語
以上の次第で,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
水戸地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官 河田泰常
裁判官 松本奈保?
裁判官 竝木信明?
(別紙)
1放送用私設無線電話規則13条(大正14年逓信省令第89号による改正後,
昭和23年逓信省令第1号による改正前のもの。乙19)
放送事項ノ聽取ヲ目的トスル私設無線電話…ヲ施設セムトスル者ハ左ノ各號
ノ事項ヲ記載シタル願書及別ニ告示スル所ニ依リ放送施設者ニ對スル聽取契約
書ヲ差出シ所轄逓信局長ノ許可ヲ受クヘシ
一機器装置場所府縣郡市町村字番地(何方又ハ何建物何號室等)
移動體ニ装置スル場合ハ其ノ名稱又ハ番號及平常ノ繋留,
格納其ノ他ノ場所
携帯使用スル場合ハ平常ノ保管場所
(以下省略)
2放送用私設無線電話規則13条(昭和23年逓信省令第1号による改正後の
もの。乙20)
放送事項ノ聽取ヲ目的トスル私設無線電話…ヲ施設セムトスル者ハ一施設毎
ニ左ノ各号ノ事項ヲ記載シタル施設許可願書ヲ通信官署ニ差出シ所轄逓信局長
ノ許可ヲ受クヘシ
一出願者住所氏名
二機器装置場所携帯使用ノモノニ在リテハ其ノ保管場所
3⑴放送法32条1項(昭和25年法律第132号による制定後,昭和27年
法律第200号による改正前のもの)
協会の標準放送(535キロサイクルから1605キロサイクルまでの周
波数を使用する放送をいう。)を受信することのできる受信設備を設置した
者は,協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。但し,
放送の受信を目的としない受信設備を設置した者については,この限りでな
い。
⑵放送法立法当時の被告の放送受信規約4条(乙21)
受信設備を設置した者は,遅滞なく左の事項を記載した放送受信契約書
(様式第一号)を,別表の区分による協会の放送局又は支局(以下所轄局と
いう。)に差し出さなければならない。
一受信契約者住所・氏名・職業
二受信設備設置場所(携帯使用のものはその保管場所)
三使用方法(携帯使用かどうか)
四受信設備の種別
4放送法32条1項(昭和27年法律第200号による改正後,昭和42年法
律第94号による改正前のもの)
協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放
送の受信についての契約をしなければならない。但し,放送の受信を目的とし
ない受信設備を設置した者については,この限りでない。
5放送法32条1項(昭和42年法律第94号による改正後,昭和62年法律
第56号による改正前のもの)
協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放
送の受信についての契約をしなければならない。ただし,放送の受信を目的と
しない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であって,テレ
ビジョン放送に該当しないものをいう。)に限り受信することのできる受信設
備のみを設置した者については,この限りでない。
6放送法32条1項(昭和62年法律第56号による改正後,昭和63年法律
第29号による改正前のもの)
協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放
送の受信についての契約をしなければならない。ただし,放送の受信を目的と
しない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であってテレビ
ジョン放送に該当しないもの及び超短波文字多重放送をいう。)に限り受信す
ることのできる受信設備のみを設置した者については,この限りでない。
7放送法32条1項(昭和63年法律第29号による改正後,平成22年改正
前のもの)
協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放
送の受信についての契約をしなければならない。ただし,放送の受信を目的と
しない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であって,テレ
ビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。)若しくは多重放送に限
り受信することのできる受信設備のみを設置した者については,この限りでな
い。
8放送法64条1項(平成22年改正後のもの)
協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放
送の受信についての契約をしなければならない。ただし,放送の受信を目的と
しない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であって,テレ
ビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。126条1項において同
じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した
者については,この限りでない。

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