報道等をもとに日本の裁判官の情報を収集、掲載しています。

神戸地裁 震災がれき回収でアスベストによる公務災害認める

 平成7年の阪神・淡路大震災で、がれきの回収にあたった明石市の男性職員が、アスベスト特有のがんを発症して死亡したことをめぐり、遺族が公務員の労災にあたる「公務災害」だと訴えた裁判で、神戸地方裁判所は遺族の訴えを認める判決を言い渡しました。
 訴えを起こしていたのは、明石市の職員で、平成25年にアスベスト特有のがん、中皮腫で亡くなった島谷和則さん(当時49)の遺族です。
 島谷さんは、平成7年に起きた阪神・淡路大震災の直後から、がれきの回収にあたっていて、中皮腫の発症はその際に吸い込んだアスベストが原因だと訴えていました。
 しかし地方公務員災害補償基金が「がれきの回収に従事した期間が短い」などとして、公務災害と認めなかったため、遺族がその判断を取り消すよう裁判で求めていました。
 26日の判決で、神戸地方裁判所の泉薫裁判長は「島谷さんが従事した業務は公務災害の認定基準に相当するとまでは言えないが、アスベストの粉じんを吸い込みうる状況で作業にあたっていて、ほかに発症の原因は見当たらない」などとして、発症との関係性を認定し、公務災害と認めなかった基金の判断を取り消しました。
 原告の弁護団によりますと阪神・淡路大震災の復旧業務にあたった公務員の死亡をめぐり、裁判所がアスベストによる健康被害を認定したのは初めてだということです。
 【原告側 “救済の非常に重要な判断”】
 26日の判決を受けて、島谷和則さんの遺族や代理人の弁護士らが神戸市中央区で会見を開きました。
 島谷さんの妻の弘美さん(57)は「まだ生きたいと願っていた主人の思いを胸に、きょうまで頑張ってきてよかったと思っています。そして、その主人のことを忘れずに一緒にたたかってくれた皆さんに感謝します。この判決がアスベストに暴露する可能性がある仕事に従事する人たちの支えになるのではないでしょうか」と述べました。
 また代理人を務める位田浩弁護士は、26日の判決について、「裁判所は、公務災害として認定される形式的な基準に達していなくても不利益とならないようにと判断した。中皮腫という健康被害はアスベストの暴露によるものなので、仕事でアスベストを扱っていたのならば労災や公務災害として救済されるべきで、非常に重要な判断を示してくれた」と述べました。
 島谷さんと同じ職場で働いていた60代の男性は「震災の時は、神戸市や阪神間でも、私たちと同じようにがれきの撤去作業した人がたくさんいるだろうし、その後に起きた災害でも同じような作業にあたった人はたくさんいただろう。作業にあたる人も作業をさせる人も、がれきの収集にはこれだけのリスクがあるということを、しっかり伝えていきたい。それが島谷さんから私たちに託されたことの1つではないかと考えている」と話しました。
 【被告側 “コメント差し控える”】
 26日の判決について、地方公務員災害補償基金は「内容を確認していないので、コメントは差し控えます」としています。
 【明石市長 “よかった”】
 明石市では、島谷さんが中皮腫を発症したことを重く受け止め、阪神・淡路大震災でがれきの撤去や災害ゴミの収集にあたった職員や元職員は、平成24年から希望すれば年に1回、肺の詳しい検査を受けられるようにしています。
 明石市の泉房穂市長は26日の記者会見で、「明石市の職員の話であり、市として公務災害の手続きに、これまで全面的に協力してきた経緯があり、よかったと思っている」と述べました。
 【専門家 “肺の検査受けてほしい”】
 アスベスト特有のガン、中皮腫の治療が専門の兵庫医科大学の長谷川誠紀 教授は「阪神・淡路大震災が発生した26年前は、まだ大量にアスベストが使用されていて、震災による混乱の中、アスベストの粉じん対策が十分でない状況で作業員たちが働いていた。高濃度のアスベストを含んだ粉じんを長時間にわたって吸入した人は、アスベストの関連疾患に対して非常に大きなリスクがある」と指摘しています。
 さらに、「震災から26年がたってアスベストの関連疾患の潜伏期間が過ぎつつある。震災の記憶は遠くなりがちだが、むしろ、これから健康被害に注意すべき時期になる。震災時には乳児や子どももアスベストを吸入した可能性があり、成長した若者たちがどうなるかについてはデータがほとんどない」と指摘し、当時、被災地で復旧活動にあたった人だけでなく暮らしていた人も、肺の検査を受けてほしいと呼びかけています。
 アスベストは平成18年までに製造や使用が全面的に禁止されているため、長谷川教授は災害時に建物が倒壊しても以前に比べれば飛散するリスクは低くなっているとしたうえで、「災害が起きた際、粉じんが舞うところには行かないよう気をつけ、防じんマスクをつけてほしい」と話しています。
 【アスベストをめぐる動き】
 繊維状の鉱物であるアスベストは、耐熱性や防音性にすぐれ、建材などとして使用されてきましたが、吸い込むと中皮腫や肺がんを引き起こすおそれがあります。
 アスベストをめぐっては平成17年、尼崎市にあった大手機械メーカー「クボタ」の工場周辺で住民の間にアスベストによる健康被害が広がっていたことが発覚しました。
 この「クボタショック」をきっかけに、アスベストの使用は平成18年に全面的に禁止されましたが、それ以前の建物には使われているケースがあり、国は建物を解体する場合などは事前に調査をした上で、飛び散らないよう対策をとるよう義務づけています。
 県内で54万棟の住宅が全壊や半壊などの被害を受けた平成7年の阪神・淡路大震災の当時は、アスベストが広く使われていて、アスベストの健康問題に取り組むNPO「ひょうご労働安全衛生センター」によりますと県内の被災地で活動した作業員や元警察官など少なくとも5人が労災や公務災害と認定されています。
 このためNPOでは、自治体は災害時に備え、日頃からアスベストを使っている建物の把握や防じんマスクの備蓄を進める必要があると指摘しています。
(03月26日 18時29分 NHK)

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