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平成29(ワ)429  地位確認等請求事件 平成31年2月13日  札幌地方裁判所
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1原告が,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2被告は,原告に対し,平成29年4月1日から本判決の確定に至るまで,毎
月21日限り,月額38万00円の割合による金員及びこれに対する各支
払日の翌日から支払済みまで年分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,被告が設置し,運営するa大学(以下「被告大学」という。)の特
別任用教員(以下「特任教員」という。)として雇用する旨の有期労働契約(以
下「本件労働契約」という。)を被告と締結し,6回にわたって本件労働契約
を更新された後,平成29年3月31日をもってその更新を拒絶された原告が,
同拒絶は労働契約法19条2号に違反すると主張して,被告に対し,労働契約
上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,同年4月1日から
本判決の確定に至るまで,毎月21日限り,賃金月額38万00円及びこ
れに対する各支払日の翌日から支払済みまで民法所定の年分の割合による遅
延損害金の支払を求めた事案である。
1前提事実
⑴当事者
ア原告は,平成22年4月1日から平成年3月31日までの間は被告
大学の外国語学部α語学科の,同年4月1日から平成29年3月31日ま
での間は被告大学の地域共創学群(以下「本件学群」という。)のうちα
語専攻の,専任教員である特任教員(被告大学の勤務を本務とし,期間を
定めて任用される専任の教員をいう。)かつ准教授として勤務していた者
である(甲1〜6,8,,37,42,乙7)。
イ被告は,被告大学を設置,運営する学校法人であり,外国語学部を始め
とする学部を設置していたが,組織改編により,本件学群への一学群化
を行い,平成年4月1日から本件学群内にα語専攻を設置した。
被告は,被告大学の一学群化に伴い,平成24年6月19日,教育職員
免許法施行規則21条に基づき,文部科学大臣に対し,「a大学の教員の
免許状授与の所要資格を得させるための課程認定申請書」(以下「本件申
請書」という。)を提出し,同大臣から,条件付き(書類不備等を理由と
するもの)で,申請に係る課程が教職課程(以下,被告大学の教職課程を
「本件教職課程」という。)として適当であることの認定を受けた(乙1
3の1・2)。
⑵被告における特任教員の雇用期間に関する規程
「学校法人a大学特別任用教員規程」(以下「本件規程」という。)
は,特任教員について,その雇用期間を1年以内としつつ,必要により,
年を限度として更新することができると規定していた(甲,27
0,乙7〔各2条,4条〕)。
本件規程はその後改正され,平成26年2月日に施行された改正
後の本件規程で
定を維持しつつ,特別に必要とする理由がある場合には,理事会の議決
により,雇用期間の更新限度を9年までとすることができることとされ
た(甲9,,29,乙8,16〔4条〕,17)。
イ本件規程は,改正の前後を通じ,特任教員が,教授会,委員会等の大学
運営に携わらず,教育上の業務に従事するものとし,教育推進上必要な場
合に,学生募集,入学試験,学生の就職活動に係る支援等,担当授業科目
以外の教育運営に関する業務を分担することがある旨規定している(甲1
0,乙8,16〔各条〕)。
⑶本件労働契約の締結及び更新の状況等
ア原告は,平成22年4月1日,被告との間で,雇用期間を1年間とし,
被告大学の外国語学部α語学科の特任教員かつ准教授として雇用する旨の
本件労働契約を締結した。その後,本件労働契約は,平成26年度(各年
度は,その年の4月1日から翌年の3月31日までである。以下同じ。)
まで1年ごとに更新された。
イ原告は,本件規程の改正を踏まえて平成26年3月19日に実施された
説明会(以下「本件説明会」という。)や,平成27年3月日に実施さ
れた懇談(以下「本件懇談」という。)において,被告の理事として,労
務,人事及び財務を担当していた甲(以下「甲理事」という。)と協議す
るなどした上で,同月31日,雇用期間を平成27年4月1日から平成2
8年3月31日まで(平成27年度)の1年間とすること,雇用期間満了
30日前までに原告から解約の意思表示がないときは,雇用期間をその後
1年間更新するものとし,その後の雇用を保証するものではないことが記
載された契約書(甲6。以下「本件契約書」という。)に押印して,被告
との間において,本件労働契約を更新した。
原告は,本件労働契約に基づき,被告から,毎月21日(ただし,当日
が土曜日,日曜日,国が定める祝日又は休日の場合はその前日)に,賃金
として,月額38万00円の支払を受けていた。
ウ被告は,平成27年11月9日,原告に対し,本件契約書において本件
労働契約を更新しないことが合意されていたとして,平成29年3月31
日をもって本件労働契約を終了させる旨の予告通知をした。
エ原告は,平成28年3月1日までに,被告に対し,本件労働契約を解約
する旨の意思表示をすることはなく,その結果,本件労働契約は平成28
年度まで更新された。
オ原告は,平成29年2月17日付けの文書をもって,被告に対し,本件
労働契約の更新を申し入れたが,被告は,同月24日付けの文書をもって,
原告に対し,同申入れには応じられない旨通知した。
(以上のアないしオにつき,甲1〜6,8,13,14,21,33,4
2,4〜47,90,91,277,乙27,証人甲〔6,14頁〕)
2争点及びこれに関する当事者の主張
本件の争点は,原告が,本件労働契約の雇用期間満了時(平成29年3月3
1日)において,本件労働契約の更新を期待することについて合理的な理由が
あるか否か(労働契約法19条2号該当性)である。
⑴原告の主張
アはじめに
原告が本件労働契約の更新を期待することについて合理的な理由がある
ことを基礎付ける事情としては,【事情 朮正後の本件規程において,
特任教員の雇用期間が最大9年に延長されたこと,【事情◆枷鏐陲,本
件申請書に,原告を専任教員として記載したこと,【事情】他の特任教
員につき,雇用期間満了後も雇用形態を変えて労働契約が継続されていた
こと,【事情ぁ杆狭陲,特任教員としての業務を超えた内容の業務を担
当していたこと,【事情ァ枷鏐霏Δ,原告に対し,雇用継続を期待させ
る言動をしたことのつが挙げられるため,これらの事情に沿って主張を
整理する。
イ事情,砲弔い
甲理事は,平成26年3月19日に実施された本件説明会において,本
件規程の改正により,それまでは最長年であった特任教員の雇用の年限
が最長9年となったことを説明したため,原告が,少なくともあと年(9
年−4年〔本件労働契約が締結された平成22年4月1日からの経過年
数〕),すなわち平成31年3月31日までは,あるいは,あと9年,す
なわち平成3年3月31日までは,本件労働契約が更新されると期待す
ることにつき,合理的な理由があった。
ウ事情△砲弔い
教職課程を担当する専任教員は,対象となる学科等の教育課程の編成に
参画し,学生の教職指導を担当するなど,当該学科等の教職課程の運営に
主導的に関与する者でなければならないとされているところ,被告は,平
成年4月1日の本件学群の新設に伴う文部科学大臣に対する教職課程
の認定申請(平成24年6月19日申請)に際し,本件申請書に,原告の
了解を得て,原告をα語科目の専任教員として記載した。
そして,全ての大学は7年以内に1回,文部科学大臣の認証を受けた認
証評価機関による認証評価を受けなければならず,被告大学に対する認証
評価は平成32年度に予定されていたところ,被告大学は,かかる認証評
価までは,α語科目の教職課程の専任教員を変更することはできないこと
から,原告が,少なくとも平成32年度までは本件労働契約が更新される
と期待することにつき,合理的な理由があった。
また,本件教職課程の認定申請は文部科学大臣に認可されたところ,文
部科学省は,本件教職課程に配置された専任教員の科目適合性を厳格にチ
ェックする方針を採用しており,本件教職課程を担当する専任教員の変更
は予定されていなかったから,原告がα語科目の教職課程の専任教員とさ
れている以上,被告大学にα語専攻が存続する限りは,原告が,本件労働
契約が更新されると期待することにつき,合理的な理由があった。
エ事情について
被告が過去に特任教員として雇用した者の中には,最長年の雇用期間
の満了後も期間の定めのない専任教員として雇用された者が4名(A,Z,
C,D)存在し,特任教員としての任期が複数年延長された者が2名(E,
F)存在する。
また,特任教員としての雇用期間の満了後に,非常勤講師(G,H,I,
J,K),特命教授(L,M,N,O),専門員(P)といった別形態で
再雇用又は委嘱をされて雇用が維持された者が合計名存在する。
このような過去の特任教員の雇用継続の実績に照らすと,原告が,平成
29年度以降も本件労働契約が更新されると期待することにつき,合理的
な理由があった。
オ事情い砲弔い
原告は,平成22年度以降,α語の講義及びゼミナールを含む演習に加
え,α語のネイティブ教員が担当する講義の予習及び質問を受け付けたり,
b訪問及びc大会といった学外行事に参加したり,学内外から講義の視察
を受け入れたり,公開授業を行ったりするなどした。また,α語の教科書
の作成に関与したり,訪問団の受入れを担当したりするなど,本件学群の
α語専攻への貢献を通じて被告大学に貢献した上,多文化コミュニケーシ
ョン学類会議やα語専攻会議等の各種会議への出席を要請され,発言権を
認められるなど,被告大学の校務を分掌した。
このように,原告は,教育上の業務に該当しないα語専攻の行事及び正
課外活動の多くに同行しており,雇用期間の定めのない正規の教員と同じ
内容の業務を担当していた。こうした原告の担当業務内容に照らせば,原
告が,平成29年度以降も本件労働契約が更新されると期待することにつ
き,合理的な理由があった。
カ事情イ砲弔い
被告大学の副学長であったQ(以下「Q副学長」という。)は,平成
22年9月日,懇親会の席上で,原告には将来的にも専任教員にな
っていただきたいと発言し,原告が被告大学で長く働く可能性があるこ
とを示唆した。
被告は,被告大学の平成29年度の入学案内において,原告を本件学
群のα語専攻の担当教員として紹介した。
原告は,平成27年度以降,2度にわたり,被告の理事であるR(以
下「R理事」という。)に対し,雇用が継続されるかを確認し,R理事
は,原告の雇用期間の満了後には,α語専攻を担当する任期付きの助教
を公募することになるが,原告が応募することは可能である,当該助教
が後に専任の准教授になる可能性はある旨を回答した。
原告が平成27年度以降の本件労働契約を更新するに当たり,当初,
被告から提示された契約書案(甲279。以下「本件契約書案」という。)
には,雇用期間の終期を平成29年3月31日までとすることが記載さ
れていたが,その後,被告の事務局との交渉の結果,上記記載が削除さ
れ,「その後の雇用を保証するものではない。」と記載された本件契約
書(甲6)が作成されたことは,平成29年度以降も本件労働契約が更
新される可能性に含みを残すものである。
甲理事は,本件説明会において,本件労働契約の雇用期間が平成29
年3月31日まで延長されると説明したが,その際,雇用期間がそれ以
上延長されることはないとは説明しなかった。
また,甲理事は,原告を含む特任教員に対し,被告としてもいてほし
いと考えている,次のステップにつながるように前向きに議論したいな
どと伝えた。このため,原告は,少なくとも平成29年3月31日まで
は本件労働契約の継続が確定したことは理解したが,同日の到来をもっ
て本件労働契約が終了するとは理解しなかった。
さらに,甲理事は,本件懇談において,改正後の本件規程が特任教員
の雇用期間の上限を9年に変更した理由,その適用条件,雇用期間が9
年に延長される場合の始期等について,原告に対し,誠実な説明をしな
かった。
被告の経営企画室の職員は,平成28年8月17日,原告に対し,平
成29年の創立0周年記念事業の一環として策定した新たなシンボル
マークを付した名刺を作成し,配布するので,必要事項を記入し,返信
するようにという趣旨のメールを送信した。
以上の被告側の言動は,いずれも,原告に対し,平成29年度以降に
おける本件労働契約の更新を期待させるものであり,原告が,平成29
年度以降も本件労働契約が更新されると期待することにつき,合理的な
理由があった。
⑵被告の主張
ア事情,砲弔い
改正後の本件規程は,特別に必要とする場合に,理事会の議決により,
特任教員の雇用期間の上限を9年とすることができるというものであり,
9年間の雇用を無条件に保証するものではない。
また,甲理事は,本件説明会において,原告を含む特任教員に対し,雇
用期間の終期を平成29年3月31日として労働契約が更新されること
を説明した。
そうすると,改正後の本件規程の内容や本件説明会における説明内容か
ら,最長であと9年又は年は本件労働契約が更新されるとの期待が原告
に生じていたなどとはいえない。
イ事情△砲弔い
平成年4月1日に始まる本件教職課程の完成年度(大学が学部を新
設した場合における当該学部に最初に入学した学生が卒業する年度)は平
成28年度(平成29年3月31日まで)であるから,それ以後は原告の
雇用を維持する必要はない。
また,被告大学に対する認証評価は,平成32年度ではなく,平成29
年度に実施されることが予定されていたのであって,原告の主張はその前
提において誤っていることに加え,認証評価が終了するまでの間,教員人
事を固定しなければならないわけではなく,その終了までの間,本件労働
契約を継続しなければならない理由はない。
ウ事情について
特任教員としての雇用期間の満了後に期間の定めのない専任教員とし
て継続的に雇用された者として原告が指摘する4名は,カリキュラム運営
上の観点から必要な人材を確保するための人事選考を経て,期間の定めの
ない教員として雇用されたのであって,原告が期間の定めのない雇用を期
待することの合理的な理由となるものではない。
また,特命教授は,学生募集活動などの特命活動等に寄与できる者に,
学長の特命により特命教授の称号を付与し,これらの特命活動等を委嘱し
たにすぎず,被告と雇用関係にはないし,専門員は,事務職員の一種であ
り,特任教員とは全く異なる立場の者である。そうすると,特任教員とし
ての雇用期間の満了後に特命教授又は専門員として採用された者が存在
することは,原告において,平成29年度以降も本件労働契約が継続する
と期待することとは無関係である。
さらに,特任教員の雇用期間の満了後に非常勤講師の委嘱を受けた者が
いるからといって,原告が平成29年度以降も本件労働契約が継続すると
期待することの合理的な理由となるものではない。
エ事情い砲弔い
α語専攻の開設や開講科目を立案するコーディネーター等,期間の定め
のない教員の中核となる業務は,α語,α文学を専門とする教育職員が交
代で受嘱してきたが,原告は一度もこの業務を担当していない。
また,教授会への出席以外の原告が主張する業務は,有期雇用であるか
無期雇用であるかを問わず,いずれの教員であっても行っているものであ
るし,教授会への出席は,オブザーバーとしての出席が認められていたに
すぎず,大学運営に参画させることを目的としたものではなかったし,出
席するか否かは原告の意思に委ねられ,かつ,議決に加わったわけでもな
かった。
したがって,原告が主張する上記各業務は,いずれも被告大学の運営に
携わる内容のものではなく,原告は教育上あるいは教育推進上の業務を行
っていたにすぎないのであるから,原告が本件労働契約の継続を期待する
ことの合理的な理由となるものではない。
オ事情イ砲弔い
の原告の各主張に対応するものである。)
原告主張の事実は否認する。仮に,Q副学長の発言があったとしても,
それは,挨拶又は奨励の域にとどまり,原告に対し,本件労働契約の継
続への期待を生じさせるものではない。
平成29年度の入学案内に原告を担当教員として掲載したからとい
って,同年度以降の雇用継続を保証するものではないし,原告にその期
待を生じさせるものでもない。そもそも,かかる入学案内を脱稿する平
成28年3月の時点においては,平成29年度の人事が確定していなか
ったため,原告を担当教員として掲載したにすぎない。
原告主張のR理事の回答は,一般論を述べたものにすぎず,原告がα
語専攻を担当する助教になることを確約したものではないことは明ら
かである。
本件契約書中の「その後の雇用を保証するものではない。」という文
言は,その後の雇用が保証されることを否定するという文意であり,原
告に対し,平成29年度以降における本件労働契約の継続に対する期待
を生じさせるものではないことは明らかである。
甲理事は,一般論として,改正後の本件規程によると,最大で9年ま
で雇用が延長される可能性があると伝えたにすぎない。
本件契約書には「その後の雇用を保証するものではない。」と記載さ
れており,原告と被告の間においては,平成29年度以降は本件労働契
約が更新されないことが明確に合意されていた上,原告が,本件説明会
や本件懇談の際に,雇用期間の延長を要望したり,期間の定めのない契
約にするよう要望したりしたことはなかったことからすると,甲理事の
上記発言は,原告に対し,平成29年度以降における本件労働契約の更
新を期待させるものとはいえない。
原告主張の新たな名刺は,被告大学創立0周年の前年である平成2
8年度中から計画され,その当時の在職教職員全員を対象として準備を
進めていたものであり,平成29年度以降に在職する予定の教職員のみ
を対象として作成を進めていたものではなく,このような名刺の作成指
示が,原告に対し,平成29年度以降も本件労働契約が継続するとの期
待を生じさせるものであったとはいえない。
第3当裁判所の判断
1認定事実
⑴認定事実の視点について
原告は,本件の争点(原告が,本件労働契約の雇用期間満了時において,
本件労働契約の更新を期待することについて合理的な理由があるか否か)の
判断の要素として,【事情 朮正後の本件規程において,特任教員の雇用
期間が最大9年に延長されたこと,【事情◆枷鏐陲,本件申請書に,原告
を専任教員として記載したこと,【事情】他の特任教員につき,雇用期間
満了後も雇用形態を変えて労働契約が継続されていたこと,【事情ぁ杆狭
が,特任教員としての業務を超えた内容の業務を担当していたこと,【事情
ァ枷鏐霏Δ,原告に対し,雇用継続を期待させる言動をしたことのつの
事情を挙げるところ,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,上記の事情に
関して,以下の事実が認められる。
⑵本件規程に基づく原告に対する処遇の決定等(事情 きゴ愀検
ア被告の常勤理事会は,平成26年3月7日,本件規程が同年2月日
に改正されたことに伴い,本件労働契約を平成28年度まで更新すること
を可能とする旨の議事を承認した(乙28)。
イ甲理事は,平成26年3月19日,本件説明会を開催し,原告を含む4
名の特任教員に対し,改正後の本件規程に関する説明をした。
甲理事は,原告を含む出席者に対し,改正後の本件規程の内容が記載され
た資料を配布した上で(なお,この資料は本件説明会後に回収された。)被
告大学が本件学群を設置したことに伴い,完成年度である平成28年度まで
は,文部科学省に届け出たカリキュラムを維持する必要性が生じているため,
原告を含む特任教員4名の雇用期間について,従前の本件規程による年間
から更に2年間延長する旨告知した。
このような告知に対し,原告を含む特任教員から,改正後の本件規程に
より,自分たちにつき,9年間は雇用が継続されるのか,反対に,完成年
度の平成28年度末以降は自分たちが不要となるのかという質問がされた
が,甲理事は,被告大学の一学群化に際し,今後もいてほしいと思ったか
らこそ,原告を含む特任教員を被告大学の教員として文部科学省に届け出
て,その後も雇用を継続してきていること,改正後の本件規程が定める特
任教員との労働契約の雇用期間の上限である9年の起算点をいつからにす
るのかについては考えていないことを述べる一方で,これに続けて,今後
新規に採用する教員については特別な場合に9年まで延長するものである
こと,一般に,複数人の教員をまとめて起算点を一律にして9年まで延長
するものではないこと,原告を含む特任教員の雇用継続は完成年度の平成
28年度末,すなわち,平成29年3月31日までを念頭に置いており,
同日までは雇用の継続が確実であるが,労働契約が1年ごとに更新される
以上,2年後,3年後の雇用の継続を約束することはできない旨回答し,
同年4月1日以降も原告ら特任教員の雇用を継続することを予定している
とは説明しなかった。そして,甲理事は,雇用期間が平成28年度末まで
延長されるのであるから,その間に,次のステップにつながるように,特
任教員の人事の在り方について前向きな方向で議論をしてもらいたいとも
述べた。
(甲90,91,238,乙9,証人甲〔〜17頁〕,原告本人〔4,
24〜26,28,31,36,37頁〕)
被告は,平成27年2月日頃,原告を含む特任教員に対し,本件
労働契約の更新に関し,本件契約書案を交付したところ,その2条2項
には,「雇用期間の終期は平成29年3月31日とする。」(以下「本件終
期条項」という。)と記載されていた(甲,278,279,原告本
人〔9頁〕)。
これを受けて,原告を含む特任教員3名は,甲理事に対し,本件終期
条項について説明を求めたところ,甲理事は,同年3月日の本件懇談
において,上記3名に対し,雇用期間は平成29年3月31日までであ
り,それ以降の延長はないと説明した。(甲16,239,乙3,証人甲
〔4,,18頁〕,原告本人〔11頁〕)
本件懇談における甲理事からの説明を聞いた原告を含む特任教員3名
は,被告大学の教職員組合に本件契約書案中の本件終期条項の記載につ
いて相談したところ,同組合は,平成27年3月日頃から,被告と
の間で,本件終期条項の修正を求める交渉を行い,その結果,被告から,
本件終期条項を削除した上で,「雇用期間をその後1年間更新するものと
し,その後の雇用を保証するものではない。」との条項を新たに盛り込む
ことを提案された。上記組合は,同月24日,原告に対し,被告として
は雇用継続に対する過大な期待を持ってもらいたくないという意向があ
る,修正後の条項であれば,平成28年4月1日以降,担当科目が残れ
ば,雇用の必要が生じ,特任教員として通算9年間の雇用や別の専任教
員ポストへの切替え等の可能性があり,不利な提案ではない旨のメール
を送信した。
原告は,同月31日,被告の事務担当者から,「雇用期間の終期は平成
29年3月31日とする。」との本件終期条項が記載された本件契約書案
と「雇用期間をその後1年間更新するものとし,その後の雇用を保証す
るものではない。」との条項が記載された本件契約書の2通を示され,い
ずれかを選択して押印するよう求められ,本件契約書への押印を選択し
た。
(甲6,94〜0,247,279,証人甲〔21,22頁〕,原告
本人〔13〜16頁〕)
⑶本件学群の創設に当たっての原告に対する処遇等(事情関係)
ア平成年4月1日に新設された本件学群においては,α語が語学の選
択科目とされ,原告は,α語の科目の一部を担当することが予定されてい
た(甲37,38)。
被告は,本件学群においても教職課程を設置することを予定していた
ところ,R理事は,平成24年月24日,原告に対し,教職課程の認
定申請に当たり,α語科目のシラバスの作成を依頼し,原告は,これに
従ってシラバスを作成した。
被告は,原告の了解を得て,本件申請書に,原告をα語科目の教職課
程を担当する専任教員として記載し,平成24年6月19日,本件申請
書を文部科学大臣に提出した。
(甲3,36,92,93,乙13の1・2)
文部科学省は,教職課程における専任教員について,認定を受けよう
とする課程を有する学科等に所属し,かつ,当該学科等の教職課程の授
業科目を担当し,教育課程の編成に参画し,学生の教職指導を担当する
など,当該学科等の教職課程の運営に当たり,主導的に関与する者であ
ることを要求している(甲249)。
大学が学部を創設した場合,完成年度(大学が学部を新設した場合に
おける当該学部に最初に入学した学生が卒業する年度)までの間は,当
該学部の創設年度に申請したカリキュラムの内容及び教員による一連の
教育を継続することが求められており,原則として,当該期間中は,当
該カリキュラムの内容及び教員の変更ができない。また,教職課程の認
定は,完成年度までその内容を確実に履行することを前提としているた
め,当該教職課程の初年次の活動が開始するまでは,やむを得ない事由
により専任教員を変更する場合等のとき以外の変更は認められないが,
完成年度までの間に退職が予定されている専任教員については,上記認
定の申請時において,後任者が決まっている場合にはその記載をするこ
ととし,退職等が未定又は後任者が未定の場合には,後に変更届を提出
することとされている。
被告大学においては,平成28年度(平成28年4月1日〜平成29
年3月31日)が,本件学群及び本件教職課程の完成年度となる。
(甲3〔3枚目〕,乙,26)
国公私立の全ての大学は,7年以内に1回,文部科学大臣の認証を受
けた認証評価機関による認証評価を受けなければならず,認証評価は,
各大学の状況が,設置基準等の法令に適合していることの確認,各大学
の自主的・自律的な質保証,向上の取組みの支援,各大学の特色ある教
育研究の進展の支援を目的として実施される。
被告大学においては,平成29年度中(平成29年4月1日〜平成3
0年3月31日)に認証評価が実施された。
(甲0,乙23,24)
⑷特任教員として被告と有期雇用契約を締結した者と被告とのその後の契約
関係等(事情,ゴ愀検
ア被告は,特任教員として被告と有期労働契約を締結した2名の教員(E,
F)について,年の雇用期間経過後も,雇用期間を延長して雇用した(甲
4,6,237,262〜264,266,267,271,証人甲
〔17〜頁〕)。
イ被告は,特任教員として被告と有期労働契約を締結した4名の教員(A,
Z,C,D)について,雇用期間満了後,引き続き,期間の定めのない教
員として採用した(甲49〜3,7,8,237,266,267,
証人乙〔6頁〕)。
ウ被告は,特任教員として被告と有期労働契約を締結した名の教員(L,
P,M,O,N)について,特命教授又は専門員という地位で,被告の職員
としての地位を維持した。
このうち,特命教授は,被告大学学長が候補者を選定し,常勤理事会の
議決を経て,学長が委嘱することによって被告の職員となる者であり,被
告と雇用関係にあるものではない。また,専門員は,被告の事務職員とし
て勤務する者である。
(甲1,2,4,6,7,237,262〜268,271)
エ被告は,特任教員として被告と有期労働契約を締結した名の教員(G,
H,I,J,K)について,雇用期間満了により退職扱いとした上で,更
に非常勤講師として採用した(甲48〜4,6,8,271,証人
乙〔1頁〕)。
オ被告は,α語を母国語とする非常勤講師2名(S,T)について,平成
29年4月以降も引き続き非常勤講師として委嘱した(甲228,22
9,証人乙〔8,9頁〕)。
カ原告と同時期に被告大学に勤務していた特任教員3名(U,V,W)のう
ちU及びVは平成28年3月31日に,Wは平成29年3月31日に,いず
れも被告を退職した(証人甲〔31頁〕,原告本人〔37頁〕)。
⑸原告の被告大学における活動等(事情ご愀検
ア原告は,被告大学において,α語の講義及びゼミナールを担当したこと
に加え,α語の講義及びゼミナール等で使用する教材を編集,作成すると
ともに,c大会の審査員及びdにおけるα語講師を務め,eの文化交流リ
ーダー養成講座事業及びfの講師として講演を行い,また,αからの訪問
団の受入れを担当するなどしたほか,被告大学及び他大学の学生並びに一
般社会人らが参加するα語合宿,学外宿泊研修に引率教員又は講師として
参加した。
また,原告は,被告大学の本件学群α語専攻の入学試験の面接に関わっ
たこともあった。
(甲33,34,9,69,70,84,8,88,168,177,
178,181,183,189,191,証人乙〔24頁〕,証人甲〔2
9頁〕,原告本人〔〜22頁〕)。
イ原告は,被告大学が本件学群を創設する前後を通じて,被告大学の外国
語学部の教授会にオブザーバーとして出席し,α語学科会議にも出席した
(甲24,1〜1,3〜166)。
そのほか,原告は,α語専攻ミーティングに出席し,乙教授と短期研修
の実施についての協議検討をするなどし,また,多文化コミュニケーショ
ン学類会議や外国語学系会議にも出席した。学類会議においては,学類の
教育や教育課程の編成に関することなどを,学系会議においては,教員の
研究や教員の人事の検討に関することなどを審議することとされているが,
いずれも特任教員は構成員から除かれている。(甲37,169〜176,
184〜187,192〜221,乙21,22)
⑹平成29年度以降の原告に対する処遇の予定等(事情ゴ愀検
ア被告大学の経営企画室の職員は,平成28年8月17日,原告を含む教
育職員全員に対し,被告大学が平成29年に創立0周年となることの記
念事業の一環として,新たなシンボルマークを付した名刺を作成するため,
必要事項を記入したシートの返信を依頼する旨のメールを送信し,これに
対し,原告は,同月日,自己の氏名,メールアドレス等の必要事項を
記入したシートを返信した(甲39,乙11の1・2)。
被告大学において,平成28年月24日頃,「17年度α語
専攻開設授業科目一覧」と題する書面(以下「本件一覧」という。)が作
成された。
原告は,本件一覧において,平成28年度の担当教員欄には,α語入
門機Ν兇鮹甘する専任教員の欄に記載されていたが,平成29年度の
担当教員欄には,α語入門機Ν教擇哘訴験惺崙稗造鮹甘する兼任教員
の欄に記載されていた。
また,平成29年度の入学者を募集する被告大学の入学案内にも,原
告がα語科目の担当教員として記載されていた。
(甲38,227)
被告大学の学生支援オフィスの職員は,平成28年月日,原
告に対し,乙教授から,原告が平成29年度以降も非常勤講師として講
義を担当することを聞いたとして,必要書類の提出を依頼した(乙4)。
乙教授は,平成28年月31日,被告大学学長に対し,原告の履
歴書,教育研究業績書とともに非常勤講師委嘱理由書を提出し,平成2
9年4月1日以降も,原告にα語専攻の科目であるα語入門機Ν供う
文学講読B等について,非常勤講師として学生指導を委嘱したい旨の申
入れをしたが,被告はこれを拒絶した。
Q副学長は,平成28年11月19日,乙教授に対してメールを送信
し,特任教員を非常勤講師に切り替えにくい理由として,雇用の固定化
の問題があるとした上で,特任教員を非常勤講師として雇用すると,当
該教員が被告大学の教育に不可欠の人材であることの傍証を積み上げる
ことになり,当該教員と被告との間の労働契約を打止めにすることがか
なり困難になる可能性があり,被告としては,当該教員が特任教員であ
る間に一度区切りをつけようとしていると推測される旨記載した。
(甲32〜34,274,乙,証人乙〔8,9,11,12,頁〕,
原告本人〔19,頁〕)
その後,被告は,X助教にα語入門機Ν兇鮹甘させることとし,平
成29年1月27日,乙教授に対し,時間割の再調整を依頼した(甲2
30)。
ウR理事は,平成27年月24日,被告大学の教授であったY(以下
「Y教授」という。)を介して原告に対し,原告の本件労働契約の期間が満
了した後,助教を新規に公募する可能性があり,助教は,初めは任期付き
ではあるものの,その後専任の准教授になる可能性が十分あること,かか
る公募に対して原告が応募することは可能であることを伝えた(甲27)。
2争点(原告が,本件労働契約の雇用期間満了時において,本件労働契約の更
新を期待することについて合理的な理由があるか否か)に対する判断
⑴改正後の本件規程の内容及び本件説明会における甲理事の説明内容につい
て(事情 きゴ愀検
ア前提事実⑵アのとおり,改正後の本件規程4条は,特任教員の雇用期間
を無条件に9年間とするものではなく,特別に当該教員の雇用を継続する
必要があり,かつ,理事会の議決がある場合には,雇用期間を最大9年間
まで更新することができる旨を規定しているにすぎないから,改正後の本
件規程によって,直ちに9年間の雇用継続への期待が生じるとはいえない。
また,認定事実⑵イのとおり,甲理事は,本件説明会において,原告
を含む特任教員4名に対し,従前の本件規程による年間に加えて更に
2年間は雇用期間を延長し,平成28年度末までは確実に雇用する旨説
明したが,平成29年度以降の雇用継続については,労働契約が1年ご
とに更新される以上,2年後,3年後の雇用の継続を約束することはで
きないと述べ,改正後の本件規程による労働契約の上限期間である9年
間は雇用が継続されることになるとの説明は一切していない。
もっとも,認定事実⑵イのとおり,甲理事は,本件説明会において,
平成29年度以降は本件労働契約が更新されないと説明したわけではな
く,また,原告を含む特任教員4名に対し,被告大学の一学群化に際し,
今後もいてほしいと思ったからこそ,原告を含む特任教員を被告大学の
教員として文部科学省に届け出て,その後も雇用を継続してきたこと,
次のステップにつながるように,特任教員の人事の在り方について前向
きな方向で議論をしてもらいたいことに言及している。
確かに,甲理事は,被告の人事を担当していた理事であるから,この
ような言及は,原告を含めた特任教員の平成29年度以降の雇用継続に
つき一定の含みを残すものということができる。
しかしながら,本件説明会が実施された平成26年3月19日の時点
で,原告は,希望さえすれば,少なくとも約3年後の平成28年度末ま
では雇用されることが確定していたところ,甲理事は,本件説明会から
3年以上も後の平成29年度以降の本件労働契約の更新については,現
時点では何の約束もできないが,なお議論の余地がないわけではなく,
本件説明会後の検討に委ねたいという意味で,原告を含む特任教員の例
においても,前向きな方向で議論をしてもらいたいと述べたにすぎない
といえる。
したがって,甲理事の発言は,平成29年度以降も本件労働契約が更
新されるか否かは,更新時期が近づいたら,そのときの状況に応じ,改
正後の本件規程4条の要件を満たす場合であるか否かを判断した上で決
定するという程度の期待を持たせるものにすぎず,原告が平成29年度
以降も本件労働契約が更新されると期待することの合理的な理由となる
とはいえない。
これに対し,原告は,本件説明会において,甲理事が,改正後の本件
規程に基づく雇用期間の上限について年から9年に変更すると述べた
のみで,特別の必要性や理事会の議決といった要件の説明がなかったこ
と,上限である9年間の起算点について考えていない旨説明したことか
ら,9年間は無条件に本件労働契約が更新されると期待した旨供述する
(原告本人〔7,36,37頁〕)。
確かに,甲理事は,9年の起算点をどの時点とするかは考えていない
旨発言しているところではある(認定事実⑵イ)。しかしながら,甲理事
は,かかる発言の直後に,新規採用者については特別な場合に9年まで
延長する,複数人の教員をまとめて起算点を一律にして9年まで延長す
るものではないとも発言していることに加え,原告を含む本件説明会の
出席者に対し,改正後の本件規程が記載された資料を配布し,原告もそ
れに目を通し,その内容を認識した上で,甲理事の説明を聞いていたも
のである(認定事実⑵イ)。
このような甲理事の一連の言動からすると,原告が供述する甲理事の
発言内容は,本件説明会の出席者の雇用期間を無条件に9年間とするこ
とを前提にしたものであると認めることはできない。
ウ以上によれば,改正後の本件規程の内容及び本件説明会における甲理事
の説明内容は,原告に対し,平成29年度以降の本件労働契約の更新を期
待させることの合理的な理由となるものではない。
なお,原告は,本件規程の改正手続が不適正である旨種々主張するが,
本件規程の改正手続の適正性は,原告に対し,合理的理由をもって,平成
29年度以降も本件労働契約が更新されるとの期待を生じさせたか否かの
判断とは無関係なものであって,上記結論を左右しない。
⑵本件契約書案及び本件契約書における本件労働契約の終期の記載をめぐる
交渉について(事情ゴ愀検
ア本件契約書案中の本件終期条項と本件契約書に盛り込まれたその修正条
)を比較すると,契約期間の終期を明示する部
分が削除されているものの,それでもなお,平成27年度の本件労働契約
に関して同年3月31日に交わされた本件契約書には,本件労働契約に係
る従前の契約書にはなかった条項である「雇用期間をその後1年間更新す
るものとし,その後の雇用を保証するものではない。」との条項が含まれて
いるところ,この条項中,「その後1年間」とは,平成28年度の1年間を
意味するものと解釈されるから,平成29年度以降の本件労働契約の更新
は約束されていないことが明示されているということができる。
そして,甲理事は,平成27年度における本件労働契約の更新に先立ち,
同年3月日に実施された本件懇談において,原告を含む特任教員に対し,
雇用期間は平成29年3月31日までであり,それ以降の延長,すなわち
契約期間の更新はない
被告は,原告を含む特任教員から相談を受けた被告大学の教職員組合との
間における交渉を経て,本件終期条項を本件契約書記載の文言に修正して
いるところ,そのことについて,同組合は,原告に対し,雇用継続に対す
る過大な期待を原告に持ってほしくないという意向が被告にはある旨指
摘している(認定事実⑵ウ)。
このような本件契約書案中の本件終期条項が修正されるまでの経緯及び
上記指摘からすれば,被告は,平成29年度以降の本件労働契約の更新を
保証する趣旨で本件終期条項を修正したものではなく,むしろ,平成29
年度以降の本件労働契約の更新は期待できるものではないことを原告に
示し,原告もそのことは認識した上で本件契約書を交わしたというべきで
ある。
これらからすれば,本件終期条項の修正に関する交渉がされた結果,本
件終期条項が削除されて,本件契約書が交わされたことをもって,原告が
平成29年度以降の本件労働契約の更新を期待することの合理的な理由
となるものではない。
イ原告は,甲理事が,本件懇談において,特任教員の雇用期間の上限が9
年間となる場合の適用条件等について明確な説明をせず,曖昧な説明に終
始した旨主張するが,原告主張に係る事実を認めるに足りる証拠は一切な
く,この点に関する原告の主張は採用できない。
ウ以上によれば,本件懇談を含む本件契約書案及び本件契約書における本
件労働契約の終期の記載をめぐる交渉は,原告が平成29年度以降の本件
労働契約の更新を期待することの合理的な理由となるものではない。
⑶被告が本件教職課程に係る本件申請書に原告を専任教員として記載したこ
とについて(事情関係)
アα語
科目のみならず,本件教職課程においても,α語科目を担当していたとこ
ろ,新設される学部及び認可を受けた教職課程においては,その完成年度
までの間,教員を変更することは原則として許されなかったものの,本件
学群及び本件教職課程の完成年度は平成28年度であるから,平成29年
4月1日以降は,本件学群及び本件教職課程の教員を変更することが可能
となる。
これによれば,本件教職課程に係る本件申請書に原告が専任教員として
記載されたとしても,原告において,本件労働契約が更新されることを合
理的な理由をもって期待することができるのは,平成28年度までという
ことになり,原告が,平成29年度以降において本件労働契約の更新を期
待することの合理的な理由となるものではない。
イまた,原告は,本件学群及び本件教職課程に基づく被告大学の運用が開
始された平成年度(前提事実⑴イ)から起算して7年後に認証評価が
実施されるから,少なくとも平成32年度まで本件労働契約が更新される
ことを合理的な理由をもって期待できた旨主張する。
しかしながら,被告大学における認証評価の実施時期は平成29年度で
認証評価の
目的は,各大学の状況が,設置基準等の法令に適合していることの確認,
各大学の自主的・自律的な質保証,向上の取組みの支援,各大学の特色あ
る教育研究の進展の支援にあり担当教員の固定が求め
られているものではないことからすれば,認証評価時まで担当教員の雇用
を継続しなければならない合理的な理由は見出し難く,原告の上記主張は
採用できない。
⑷他の特任教員と被告との労働契約の継続状況について(事情4愀検
ア認定事実⑷アによれば,被告に特任教員として雇用された教員が,契約
期間の上限である年間を超えて雇用継続されている事例も認められる。
しかしながら,他の教員が雇用継続されたのは,当該教員の教育指導状
況等の個別事情を踏まえた判断に基づくものであり,そのような個別事情
を度外視して,他の教員が雇用継続されたという結果のみをもって,原告
が平成29年度以降における本件労働契約の更新を期待することの合理
的な理由となるものではない。
イそのほか,認定事実⑷イないしエによれば,被告の特任教員として雇用
された教員で,契約形態を変えて被告と労働契約を締結した者が存在する
ものの,このような教員の存在は,原告に対し,特任教員としての地位で
本件労働契約が更新されることの期待をそもそも生じさせるものではな
く,これらの事実を原告のかかる期待を基礎付ける事実と考えるべきでは
ない。
ウ以上によれば,他の特任教員の雇用継続状況は,原告が平成29年度以
降の本件労働契約の更新を期待する合理的な理由となるものではない。
⑸原告が被告大学において担当していた業務について(事情ご愀検
ア原告は,被告大学において,特任教員が行うべき業務,すなわち教育上
の業務及び担当授業科目以外の教育運営に関する事務とはいえないもの
も担当してきた旨主張し,具体的には,α語合宿や学外宿泊研修の引率を
したり,c大会の審査員やdにおけるα語研修の講師を務めたり,一般市
民が参加する講座等で講演を行ったり,講義等で使用する教材を作成した
りしたことを挙げ,確かに原告がその主張するような業務を担当していた
ことは認められる(認定事実⑸ア)。
しかしながら,これらの業務のうち,被告大学の学生が参加する企画に
ついての関与や使用教材の作成については,被告大学のα語学科又はα語
専攻の教員としての職務又はこれに付随するものと評価できるし,その他
のものについても,被告大学が業務命令を発するなどして原告に対して任
意の協力を求める以上のことをしたとも認められず,また,これらの業務
を担当すれば,本件労働契約を更新する旨の提案を被告から受けたとも認
められない。
そうすると,これらの業務を担当することにより,将来,その功績が認
められて,本件労働契約が更新されるとの主観的な期待を原告が抱いたと
しても,そのような期待は,労働契約法19条2号にいう合理的な理由の
ある期待ということはできないというべきである。
イまた,原告は,認定事実⑸イのとおり,各種の会議及びミーティングに
出席しているが,教授会への参加は,オブザーバーとしてのものであり,
学類会議や学系会議への出席も,それが義務付けられていたと認めるに足
りる証拠はなく,その他の会議やミーティングについても同様である。そ
うすると,原告がこれらの会議及びミーティングに出席していたことから,
原告が,特任教員として今後も被告大学の教育体制に関与していくことが
予定されていたと認めることはできず,これらの会議及びミーティングへ
の出席の事実をもって,原告が平成29年度以降の本件労働契約の更新を
期待することの合理的な理由となるものではない。
ウ以上によれば,原告が認定事実⑸アのとおりの業務を担当し,同イのと
おりの会議等に出席したことは,原告が平成29年度以降の本件労働契約
の更新を期待することの合理的な理由となるものではない。
⑹被告大学職員による本件労働契約継続に関連する言動について(事情ゴ
係)
ア原告は,被告側による種々の言動により,平成29年度以降も本件労働
契約が継続することを期待しており,そのことには合理的理由があった旨
主張する。そのような言動として,原告は,既に説示したもの以外に,
Q副学長の発言,被告大学の入学案内に原告の氏名が記載されたこと,
R理事が助教の公募等に関する回答をしたこと,じ狭陲平成29年に
おける被告大学創立0周年を記念した名刺の作成についての連絡を受
けたことを挙げるので,以下,これらについて検討する。
イ。冑学長の発言について
原告は,平成22年9月日における講演会後の懇親会において,Q
副学長から,被告大学の専任教員となってもらい,α語学科の未来を担っ
てもらいたい旨の言葉をかけられたことを,平成29年度以降の本件労働
契約の更新に対する期待の一事情として主張し,原告もこれに沿う供述を
する(原告本人〔32頁〕)。
しかしながら,まず,Q副学長がこのような発言をしたとの原告の上記
供述を裏付ける客観的証拠はない。また,仮に,原告が供述するとおりの
Q副学長の発言があったとしても,それは本件労働契約が締結された約半
年後の時点のものである上,上記⑴及び⑵で説示したとおり,平成26年
3月以降における本件労働契約の継続に関する原告と被告の間のやり取り
の内容が,最終的には平成29年度以降の本件労働契約の継続が保証でき
るものではないとの被告の意向を示したものであったことからすれば,原
告主張に係るQ副学長の上記発言が,原告に対して,平成29年度以降に
おける本件労働契約の更新についての期待を生じさせるものということは
できないというべきである。
ウ被告大学の入学案内に原告の氏名が記載されたことについて
認定事実⑹イのとおり,平成29年4月の入学者を募集するための被
告大学の入学案内に原告の氏名が記載されているが,これは,同案内作成
時点における教員構成に基づいて作成されるものである上,学生募集のた
めの資料にすぎず,かかる入学案内に原告の氏名が記載されているとして
も,そのことから,被告が本件労働契約を平成29年度においても更新す
ることを公的に表示したものということはできず,この記載は,原告が,
平成29年度以降において本件労働契約の更新を期待することの合理的
な理由となるものではない。
エR理事が助教の公募等に関する回答をしたことについて
認定事実⑹ウのとおり,R理事がY教授を通じて原告に対して伝達した
内容(甲27)は,助教から専任の准教授に昇格する可能性があり,助教
の公募に対して原告が応募することは可能であることを述べるにとどま
り,原告が助教として雇用されることの確実性についてまでは言及されて
いない。そもそも,助教としての採用は,特任教員としての本件労働契約
の更新とは全く異なる新たな雇用契約の締結を前提とするものであって,
本件労働契約の更新に対する期待に結び付くものではないというべきで
ある。
オじ狭陲平成29年における被告大学創立0周年を記念した名刺の作
成についての連絡を受けたことについて
認定事実⑹アのとおり,原告は,平成29年に被告大学が創立0周年
となることを記念したシンボルマークの入った名刺の作成に関する連絡を
受けているが,かかる連絡は,被告大学の経営企画室が平成28年8月1
7日時点で被告大学の教育職員であった者全員に対してされた事務的な連
絡であり,平成29年度以降も被告大学に勤務する予定の有無を判断して
送信されたものではない。
これによれば,かかる連絡は,原告が,平成29年度以降の本件労働契
約の更新を期待することの合理的な理由となるものではない。
カその他の言動について
本件一覧の平成29年度担当教員欄には,原告は「兼任」と記載されて
おり,他方,平成28年度担当教員欄には,原告は「専任」として記載さ
しかしながら,そもそも,特任教員は専任教員であるから(前提事実⑴
ア),本件一覧の記載は,原告が,平成29年度以降の本件労働契約の更新
を期待することの合理的な理由となるものではない。
キ小括
以上によれば,被告側による本件労働契約の継続に関連する言動は,原
告が,平成29年度以降において本件労働契約の更新を期待することの合
理的な理由となるものではない。
⑺原告の本件労働契約の継続に対する期待について
ア上記⑴から⑹で検討してきたこれらの事情は,いずれも,原告が,平成
29年度以降も本件労働契約が更新されると期待することにつき合理的
な理由があると評価するには足りない。
イこのほか,原告は,特任教員でなくとも,雇用形態を変えて被告に雇用
されると期待していた旨主張するが,労働契約継続の前後において雇用形
態が異なる以上,原告と被告の間における特任教員としての本件労働契約
が更新されることを合理的な理由をもって期待させるものではなく,原告
の主張は採用できない。
なお,原告は,被告が,原告を非常勤講師としても雇用しないとした理
由は,原告と被告の間の労働契約が期間の定めのないものに転換すること
を阻止するためであり,このような扱いは,労働契約法18条1項の適用
を潜脱することになる旨をも主張する。
確かに,原告とほぼ同時期に非常勤講師の委嘱を申し出た2名の教員は,
いずれも被告に非常勤講師として採用されたが,原告は非常勤講師として
しかしながら,いかなる者を非常勤講師として採用するかは,被告の判
断に委ねられる事項である。
また,Q副学長は,雇用の固定化を防止するため,原告を非常勤講師と
しても採用できない旨のメールを送信しているが,他
方で,教育研究の活性化及び高度化のため,教員の流動性を高めることが
要請されている現状(乙14)にも鑑みれば,労働契約法18条1項によ
り,期間の定めのない教員としての雇用義務が被告に生じる前の段階で,
当該教員の雇用継続を打ち切ることも,被告の採用の自由の範囲内に属す
る判断として尊重されるべきである。その上で,原告が従前担当していた
科目を,X助教という別の教員を採用し,X助教に担当させること(認定
ウ以上のとおりであって,事情,覆い鍬イ鮓鎚未法いつ,総合的に検討
しても,原告が,本件労働契約の契約期間満了時である平成29年3月3
1日の時点において,本件労働契約の更新を期待することについて合理的
な理由があったということはできない。
第4結論
以上によれば,被告が平成29年度以降において本件労働契約を更新しなか
ったことは,労働契約法19条2号に違反するものではなく,原告と被告との
間の本件労働契約が継続していることを前提とする賃金の支払請求も理由がな
い。そうすると,原告の請求はいずれも理由がないから,これを棄却すべきこ
ととなる。
よって,主文のとおり判決する。
札幌地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官 武部知子
裁判官 向井宣人
裁判官 臼倉尭史

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