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飲酒ひき逃げ死で実刑判決 32歳男に札幌地裁

 札幌市の国道で3月、車で男性をはねて死亡させ、飲酒運転の発覚を免れるため逃走しさらに飲酒したとして、自動車運転処罰法違反(過失致死アルコール等影響発覚免脱)と道交法違反(ひき逃げ)の罪に問われた建設作業員、佐々木司被告(32)=同市白石区=に、札幌地裁(坂田正史裁判官)は20日、懲役4年(求刑懲役5年)の判決を言い渡した。
 検察側は論告で「規範意識が極めて希薄で再犯の恐れは大きい。逃げ得を許さないために重い刑罰で臨む必要性が高い」と指摘。弁護側は事実関係を認めた上で、事故後に酒を飲んだのは飲酒運転の発覚を免れるためではないと主張していた。
 起訴状によると3月5日、酒を飲んで車を運転し、同市白石区の国道12号を横断していた近くの会社員、有賀健一さん=当時(40)=をはねて死亡させた上、飲酒運転の発覚を免れるために逃走、自宅でさらに飲酒したとしている。
(2018.7.20 11:51 iZa)

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平成30年7月20日宣告平成30年(わ)第196号
過失運転致死アルコール等影響発覚免脱,道路交通法違反被告事件
主文
被告人を懲役4年に処する。
未決勾留日数中60日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1平成30年3月5日午前0時57分頃,普通乗用自動車を運転し,札幌市a
区内の信号機により交通整理の行われている交差点を対面信号機の表示する青色
信号に従ってb区方面からc区方面に向かい時速約60kmで直進するに当たり,
運転開始前に飲んだ酒の影響により,前方注視及び運転操作に支障が生じるおそ
れがある状態で同車を運転し,もってアルコールの影響により正常な運転に支障
が生じるおそれがある状態で自動車を運転し,その際,同交差点直進方向出口に
は横断歩道が設けられていたのであるから,前方左右を注視し,同横断歩道上を
横断する歩行者等の有無及びその安全を確認しつつ進行すべき自動車運転上の注
意義務があるのにこれを怠り,前方左右を注視せず,同横断歩道上を横断する歩
行者等の有無及びその安全確認不十分のまま漫然前記速度で進行した過失により,
折から同横断歩道上を信号に従わないで右方から左方に向かい歩行してきたA(当
時40歳)に気付かず,同人に自車左前部を衝突させて路上に転倒させ,よって,
同人に頭蓋骨骨折等の傷害を負わせ,その頃,同所において,同人を前記傷害に
基づく外傷性ショックにより死亡させ,さらに,同日午前0時57分頃から同日
午前7時52分頃までの間の約6時間55分間にわたり,その運転の時のアルコ
ールの影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で,事故現場から逃走し
て同市b区内のB方等で過ごすなどした上,その間,同市a区内の被告人方にお
いて,更にアルコールを摂取し,もってアルコールの影響の有無又は程度が発覚
することを免れるべき行為をし,
第2同日午前0時57分頃,前記交差点において,前記車両を運転中,前記のと
おり,Aに傷害を負わせる交通事故を起こし,もって自己の運転に起因して人に
傷害を負わせたのに,直ちに車両の運転を停止して,同人を救護する等必要な措
置を講じず,かつ,その事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を,直ちに
最寄りの警察署の警察官に報告しなかった。
(事実認定の補足説明)
1判示第1の事実に関し,被告人は,事故後に自宅でアルコール飲料を飲んだ
のは,アルコールの影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的によるもので
はないと供述している。また,弁護人も,帰宅後の被告人の行為は,アルコールの
影響の有無等に影響を与えるものではないなどとして,過失運転致死アルコール等
影響発覚免脱罪の実行行為には該当しない旨を主張している。そこで,判示のとお
り認定した理由を補足して説明する。
2関係証拠によれば,以下の事実が認められる(以下,月日の記載は平成30
年のそれを指す。)。
被告人は,3月4日午後8時48分頃,自宅(同市a区内)から車で付近の
コンビニエンスストアC(同市a区内)に赴き,空のチューハイ1缶を携えて入店
し,これをごみ箱に捨てた後,午後8時49分頃,500ミリリットルのチューハ
イ1缶を購入した。その後,友人のB宅に車で向かい,午後9時24分頃,同人宅
付近のコンビニエンスストアD(同市b区内)に立ち寄って350ミリリットルの
発泡酒4缶と500ミリリットルのチューハイ1缶等を購入した。
B宅(同市b区内)付近に到着した被告人は,マンションの駐車場に車をと
め,手にしたチューハイ(500ミリリットル缶)を飲みながらエレベーターに乗
り,同日午後9時30分頃同人宅に着いた。被告人は,同人宅で,少なくとも,エ
レベーター内で飲んでいた500ミリリットルのチューハイのほかに別のチューハ
イ1缶(500ミリリットル)を飲んだ。
被告人は,同日午後10時30分過ぎ頃からしばらく眠った後,同人宅を後
にし,車で自宅に向かう途中である翌5日午前0時57分頃,本件事故を引き起こ
した。被告人は,被害者との衝突後いったん車両を停止させたがすぐに発進させた。
被告人は,Bに電話をかけ,事故を起こしたかもしれないと言うと,同人か
ら家に来るよう言われた。被告人は帰宅した後,同日午前1時6分頃,自宅付近の
コンビニエンスストアCに行き,タクシーを呼んでほしい旨店員に頼んだが断られ,
タクシー会社の電話番号を教えてもらって,電話でタクシーを呼び,午前1時35
分頃,B宅を再び訪れてほどなく寝入った。被告人は,午前6時54分頃,同人宅
からタクシーで帰宅した。
その後被告人は,自宅で500ミリリットルのチューハイ1缶と350ミリ
リットルのチューハイ1缶を飲んだ上,被疑者及び被疑車両が浮上しておらずその
捜査が行われていた同日午前7時52分頃,a警察署に電話をかけ,本件事故を起
こしたのは自分かもしれない旨通報し,午前8時14分頃,自宅に臨場した警察官
に対し,あいまいながらも,自身が犯人である旨述べた。
なお,同日午前8時57分頃,飲酒検知の結果,被告人の身体から呼気1リ
ットル当たり0.53ミリグラムのアルコールが検出された。被告人は,午後10
時23分頃逮捕されたが,午後11時48分頃,飲酒検知の結果,呼気1リットル
当たり0.67ミリグラムのアルコールが検出された。
3帰宅後の飲酒行為がアルコールの影響の有無等の発覚免脱行為に当たるかど
うかについて
本件事故では,被告人は,歩行していた被害者の存在に気付くことなく,時
速約60kmで進行して自車を衝突させ,それにより被害者を約24.5mにわた
り跳ね飛ばしたものである。こういった事故状況から認められる被告人の注意力の
低さに加え,後に検討するような事故以前の被告人の飲酒や酒酔いの状況等からす
ると,被告人が,相当酒に酔い,アルコールの影響によりその走行中に正常な運転
に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転して本件事故を引き起こしたこと
は間違いないというべきである。そうすると,被告人が,3月5日午前6時54分
頃に帰宅してから午前7時52分頃に警察官に通報するまでの間に,更に飲酒する
などし事故からの経過時間が最長7時間程度の範囲にある
ことなどからして,事故当時のアルコールの影響に関する証拠の収集・保全を妨げ
る危険性があるものとして,本罪の発覚免脱行為に当たると解される。
ア弁護人は,被告人が3月4日午後9時30分頃から遅くとも午後11時頃
まで飲酒をし,かつその量は500ミリリットルのチューハイ2缶であったという
前提に立った場合,ウィドマーク計算法によると,翌5日午前5時10分頃の時点
で被告人の血中アルコール濃度が0になっていた可能性があるから,その後の時間
帯となる帰宅後の被告人の飲酒行為は,本罪の実行行為には当たらない旨主張して
いる。
イしかし,弁護人指摘のような計算法による推定の結果,特定の時点でアルコ
ールが体内に残存しなくなっていた可能性があるといった事情だけで,その後の行
為が本罪の発覚免脱行為に当たる余地がなくなると解するのは,本罪が,アルコー
ル等の影響の有無等が発覚することを現実に免れたことではなく,あくまで,その
発覚を困難にするような行為をしたことを成立要件としていて,いわゆる結果犯で
はなく抽象的危険犯であると解されることと整合しない。このような本罪の性質か
らすると,例えば,特定の時点で体内にアルコールが残存しており,その証拠を収
集・保全して事故当時のアルコールの有無又は程度を明らかにしようとする捜査が
可能である相応の蓋然性があるような状況下で行われた行為については,なお本罪
の発覚免脱行為に当たり得ると解すべきである。
弁護人の主張は,本罪の解釈に関わる部分について賛同することができず,採用
できない。
ウ以上のような点を措くとしても,被告人は,3月4日午後8時49分頃にコ
ンビニエンスストアCでチュ
酔った状態にあって,それより前の段階から飲酒をしていたものと認められる。そ
うすると,弁護人の主張は,同日の被告人の飲酒時間や量に関する前提が過少なも
のとなっていることとなるから,そうした点でも採用できない。
付言すると,関係証拠によれば,被告人は,3月4日午後8時49分頃にコンビ
ニエンスストアCでチューハイを購入した際,足元がふらついたり代
金支払の際に小銭を床に落としたりするなどし,また,B宅マンションを訪れてエ
レベーターに乗った際も,足元をふらつかせて壁にもたれかかり,終
始落ち着きなく体を前後左右に動かすなどしていたことが認められる。また,Bの
供述によれば,被告人は,B宅に来た同日午後9時30分頃,体を縦
に揺らし,テンションが高く,若干ろれつが回らず,だるそうに会話をするなど酔
っ払っている状態であったというのであり,こういった事故前の被告人の挙動等に
は,これらの時間帯の前からの飲酒による酔いの影響があらわれていたものと認め
られる。特に,コンビニエンスストアCでチューハイを購入した頃すでに,被告人
に酒に酔った挙動等が見られたことは,同店を訪れる前にすでに相応の量の飲酒を
していたことの証左にほかならない。さらには,被告人は,500ミリリットルの
チューハイ1缶を手に持ってコンビニエンスストアCに入店しごみ箱にこれを捨て
たことが認められるが,この点も,被告人がそれ以前から飲酒をして
酒に酔っていたという認定に無理なく符合する行動といえる(被告人の公判供述に
は,上記チューハイ1缶は,直前に飲んでいたものではない旨述べるところがある
が,次に検討するとおり,被告人は,3月4日の行動等に関しては広い範囲で記憶
を有していないことなどからして,その供述は信用できない。)。
次に,関係証拠によれば,被告人は,3月4日夜にコンビニエンスストアCに立
ち寄る以前の行動については,広い範囲で記憶を有していないことが認められる(捜
査段階でも,B宅マンションのエレベーター内で飲酒をしていたこと,本件事故の
状況・原因や衝突直後にいったん停車したことなど,記憶や印象にとどまりやすい
と考えられる行動の多くについても,あいまいな供述をしていた上,当初は事故前
には飲酒をしていないと述べていたなど,飲酒の量や時間帯に関する部分も変遷が
大きく,かなり不安定な内容となっていて,こういった時間帯の行動等について記
憶を有してなかったことを強くうかがわせている。)。このような記憶の大幅な欠
落の仕方それ自体も,被告人が3月4日夜コンビニエンスストアCに来店した頃ま
でに相当程度酒に酔っていたことを指し示しているというべきである。なお,被告
人は,公判廷では,3月4日午後8時頃までの間に飲酒していたことを否定する一
方,改めて問われると,その点は覚えていないとも述べるに至っており,その供述
は全体として,先の認定を妨げるものではないと考えられる。
このように,被告人は,3月4日夜コンビニエンスストアCに来店した頃までに,
それまでの飲酒の影響ですでに酒に酔っていたものと認められる。弁護人の上記主
張は,このような事情が前提として考慮されていないという点でも,採用できない。
以上から,被告人の帰宅後の飲酒行為は,アルコールの影響の有無等の発覚
免脱行為に当たると認められる。
4アルコールの影響の有無等が発覚することを免れる目的が認められるかどう
かについて
本罪が,アルコール等の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的と
いう行為者の主観的事情を犯罪成立要件として定めているのは,本罪の成立を,そ
のような意図や動機を特に確定的又は積極的に有しているような場合に限定する趣
旨ではないと解することができる。この点,被告人は,相当酒に酔い,アルコール
の影響により正常な運転に支障が生じるおそれのある状態で自動車を運転して本件
事故を引き起こした後,遅くとも約7時間のうちに500ミリリットルのチューハ
という以上,
その行為のもつ性質・意味にも照らせば,特段の事情のない限り,被告人には,本
罪がいうアルコールの影響の有無等が発覚することを免れる目的があったものと十
分推認されるというべきである。
被告人は,現実を受け入れられず,あるいは,自首しようとする気持ちを強くす
るために飲酒に及んだと供述している。しかし,被告人がしたように相当量のアル
コールを摂取すれば,事故当時のアルコールの保有量等の特定に困難を来たすおそ
れがあることは常識に照らして容易に想定可能である以上,そういった意図等がな
かったとは考え難い。また,被告人が述べる自宅で飲酒に及んだ際の心境は,本罪
がいう発覚免脱目的と特に矛盾するわけではなく,両立するような関係にあると考
えられるから,その供述は先の推認を妨げるわけではないということができる。
以上から,被告人には,アルコールの影響の有無等が発覚することを免れる目的
があったものと認められる。
なお本件公訴事実は,本罪が成立するアルコールの影響の有無等の発覚免脱
行為の時間を,被告人が本件事故を起こした3月5日午前0時57分頃から警察官
が自宅に臨場した午前8時14分頃までの間(約7時間17分間)として特定して
いる。しかし,被告人は,同日午前7時52分頃には,自ら警察署に電話をかけて
本件の犯人は自分かもしれない旨通報しており),それ以後は,ほどな
く警察官が被告人宅を訪れるなど被告人に対する捜査が開始されることが当然見込
まれたのであるから(現に警察官は,通報から約22分後に被告人宅に臨場してい
る。),そのような状況にあった被告人が単に自宅にとどまっていたにすぎないこ
とについても,本罪が予定する発覚免脱目的を認めるのは困難というべきである。
そうすると,被告人について本罪が成立する発覚免脱行為の終期は,公訴事実に
あるような警察官が被告人宅に臨場した時刻(3月5日午前8時14分頃)ではな
く,それに先立ち,被告人が,自身が犯人かもしれない旨通報した同日午前7時5
2分頃と認定するにとどめるのが相当である。
5結論
以上から,判示第1のとおり過失運転致死アルコール等影響発覚免脱の事実を認
定した。
(累犯前科)
1前科等
平成23年11月4日札幌地方裁判所宣告覚せい剤取締法違反の罪により
懲役2年平成25年10月14日刑執行終了
平成26年11月4日釧路地方裁判所宣告終了後に犯した道路
交通法違反の罪により懲役3月平成27年2月26日刑執行終了
2証拠

(法令の適用)
罰条
第1の行為自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する
法律4条
第2の行為のうち
救護義務違反の点道路交通法117条2項,1項,72条1項前段
報告義務違反の点道路交通法119条1項10号,72条1項後段
科刑上一罪の処理第2につき刑法54条1項前段,10条(重い救護義務違
反の罪の刑で処断)
刑種の選択第2につき懲役刑を選択
累犯加重刑法59条,56条1項,57条(いずれも3犯の加重)
併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(重い第1の罪の刑
に刑法14条2項の制限内で法定の加重)
未決勾留日数の算入刑法21条
訴訟費用刑訴法181条1項ただし書(不負担)
(量刑の理由)
1被告人は,飲酒の上,正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車
を運転し,横断歩道上を歩行中の被害者に気付くことなく自車を強く衝突させて跳
ね飛ばし,死亡するに至らしめたものである。その運転の態様は,人の生命,身体
の安全に対する危険が生じ得ることをかえりみないもので,実に悪質である。もと
より結果も重大というほかない。被害者は,信号に従わないで横断歩道上を歩行し
ていたものと認められるが,被告人の運転行為それ自体の危険性,悪質さに照らせ
ば,量刑判断に当たり,その点を大きく考慮するのは相当ではない。
被告人は,法が定める被害者の救護義務や警察官に対する報告義務をも怠って現
場から立ち去ったばかりか,帰り着いた自宅で更に相当量のチューハイを飲むなど,
事故当時のアルコールの影響の発覚を免れるべき行為にも出ており,一層厳しい非
難に値する。
被告人は,平成18年以降服役前科4犯を有し,道路交通法違反の罪による直近
刑の執行終了から約3年で犯行に及んでいることをも併せ考えると,本件の情状は
相当重い。遺族は,被害者を失った深い悲しみと厳しい処罰感情をあらわしている。
2以上のほか,被告人は,本件の犯人が明らかになっていなかった段階で,警
察官に対し,自らが犯人であるという趣旨の通報をしており,刑法上の自首が成立
すること,公判廷でも反省と謝罪の態度を示していること,本件による経済的損害
については,任意保険の適用により補填される見通しであることも認められる。
3そこで,これらの事情をも考慮して,被告人に対しては,主文の刑をもって
臨むのが相当であると判断した。
(求刑懲役5年)
平成30年7月20日
札幌地方裁判所刑事第3部
裁判官 坂田正史

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