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希少ウサギ巡る訴え却下 保護団体の原告適格認めず
 北海道新得町の佐幌岳(1060メートル)でのスキー場開発で、準絶滅危惧種のエゾナキウサギの生息地が失われるとして、自然保護団体のメンバーらが国や北海道に対し、国有林の使用や開発許可処分の無効確認を求めた訴訟で、札幌地裁(内野俊夫裁判長)は22日、原告側の訴える資格(原告適格)を認めず、訴えを却下した。
 原告は、法人格のない自然保護団体「十勝自然保護協会」のメンバーら。佐幌岳のエゾナキウサギ生息地は道内の主要生息地2カ所を結ぶ中間にあり、開発でそれぞれが孤立し、種の絶滅を招く恐れがあると主張していた。国側は、原告適格がないとして争っていた。
(2017年5月22日 16時04分 東京新聞)

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主文
1本件各訴えのうち,十勝西部森林管理署東大雪支署長がした国有林
野の使用許可処分の無効確認を求めるもの及び北海道知事がした特定
の開発行為の許可処分の無効確認を求めるものをいずれも却下する。
2原告らのその余の訴えに係る請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,補助参加によって生じたものを含め,原告らの連帯負
担とする。
事実及び理由
第1請求
1甲事件
十勝西部森林管理署東大雪支署長(以下「東大雪支署長」という。)が平成
24年5月30日付けで甲乙事件被告補助参加人X株式会社(以下「X社」
という。)に対してした国有林野の使用許可処分が無効であることを確認す
る。
甲事件被告国(以下「被告国」という。)は,原告ら各自に対し,50万
円及びこれに対する平成27年8月14日から支払済みまで年5分の割合に
よる金員を支払え。
2乙事件
北海道知事が平成24年6月5日付けでX社に対してした北海道自然
環境等保全条例(昭和48年北海道条例第64号。以下「自然環境保全条例」
という。)30条1項の規定による特定の開発行為の許可処分が無効である
ことを確認する。
乙事件被告北海道(以下「被告北海道」という。)は,原告ら各自に対し,
50万円及びこれに対する平成27年8月13日から支払済みまで年5分の
割合による金員を支払え。
第2事案の概要
北海道上川郡新得町でリゾート事業を営んでいるX社は,同町ほか所在の佐
幌岳の北斜面の国有林野に新たなスキー場の建設をすることを内容とするスキ
ー場開発事業を計画し,東大雪支署長から,平成24年5月30日付けで,国
有財産法18条6項の規定による国有林野の使用許可処分(以下「本件使用許
可」という。)を,北海道知事から,同年6月5日付けで,自然環境保全条例
30条1項の規定による特定の開発行為(スキー場の建設)の許可処分(以下
「本件開発行為許可」といい,同許可と本件使用許可とを併せて「本件各許
可」という。)を,それぞれ受けた。本件は,十勝地方の自然環境の保護活動
をその目的とする権利能力なき社団である原告協会,エゾナキウサギ(以下
「ナキウサギ」という。)の研究者である原告A,ナキウサギの保護活動をそ
の目的とする組織の代表者である原告Bが,佐幌岳の北斜面の国有林野はナキ
ウサギの重要な生息地であるところ,上記のスキー場の建設によって,その重
要な生息地が破壊されるのであり,本件各許可は「生物の多様性に関する条
約」(平成5年条約第9号。以下「生物多様性条約」という。)に違反する違
法かつ無効なものであると主張し,東大雪支署長の所属する国及び北海道知事
の所属する北海道を被告として,本件各許可の無効確認を求めるとともに,併
せて,国家賠償法1条1項の規定により,被告らそれぞれに対し,50万円の
国家賠償(慰謝料)及びこれに対する訴えの追加的変更申立書の送達の日の翌
日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める
事案である。
1法令の定め
本件に関係する法令の定めは別紙関係法令の定めのとおりである。
2前提事実
当事者等
ア原告協会は,昭和46年に設立された自然保護団体であり,十勝地方の
自然環境の保護活動をしてきたものである。原告協会は,法人格を有しな
いが,普通会員及び賛助会員から成り,規約を設け,年1回の定期総会の
ほか臨時総会を開催し,総会において理事を選出し,理事の互選により共
同代表及び事務局長を選任している。原告協会の活動内容は,毎月開催さ
れる理事会で決定される。原告協会の経費は,会費及び寄付金ほかによっ
て賄われており,各会計年度の予算及び決算は,総会の議決を経て定めら
れる。(甲3ないし5)
原告Aは,原告協会の事務局長であり,昭和48年,C大学を卒業した
後,北海道河東郡D町のE博物館に学芸員として勤務し,ナキウサギを研
究してきたものである。
原告Bは,平成8年に設立されたナキウサギの保護活動をする組織であ
る「Fくらぶ」の代表者である。原告Bは,国際自然保護連合の種の保存
委員会のウサギ専門部会に所属している。
イ東大雪支署長は,本件使用許可の対象たる国有林野(被告国の平成26
年2月14日付け準備書面添付の図面に示された土地のうち赤枠で囲まれ
た部分。以下「本件国有林野」という。)の貸付及び使用に関する事務を
処理する権限を有する者である。本件国有林野は,十勝森林計画区に属す
る。本件使用許可の当時,本件国有林野は,国有財産中の行政財産のうち,
平成24年法律第42号による改正前の国有財産法3条2項4号の企業用
財産であり,同改正前の国有林野の管理経営に関する法律(以下「国有林
野管理経営法」という。)2条1号の国有林野(国の所有に属する森林原
野であって,国において森林経営の用に供し,又は供するものと決定し,
国有財産法3条2項4号の企業用財産となっているもの)であった。本件
国有林野は,その有する機能のうち第一に発揮すべき機能により,国有林
野管理経営規程(平成11年農林水産省訓令第2号)3条3項の「森林と
人との共生林」(生態系としての森林の重要性を踏まえた生物多様性の保
全又は森林とのふれあいを通じた森林と人間との共生を図る観点から,生
活環境保全又は保健文化機能の発揮を第一とすべき国有林野)に分類され,
その中の,主に森林とのふれあいを通じた森林と人間との共生を図る等生
活環境保全機能及び保健文化機能を第一に発揮すべき「森林空間利用タイ
プ」(国有林野管理経営規程5条1項2号)のうち,自然景観,森林の保
健・文化・教育的利用の現況及び将来の見通し,地域の要請等を勘案して,
国民の保健・文化・教育的利用に供する施設又は森林の整備を特に積極的
に行うことが適当と認められる「レクリエーションの森」(国有林野管理
経営規程13条5項)の野外スポーツ地域に選定され(その選定理由は,
山岳,森林,河川等,四季折々の自然美を有し,自然探勝,登山,スキー
等,四季を通じたレクリエーションの場としての利用に供するためという
ものであった。),管理されていた(乙イ3,4)。本件国有林野は,昭和
62年2月9日62林野業二第27号林野庁長官通知(乙イ5)により,
森林空間総合利用整備事業の対象地である森林空間総合利用地域の候補地
に選定され,平成5年3月31日,本件国有林野についての森林空間総合
利用地域管理経営方針書(乙イ6)の作成,林野庁長官の承認を経て,森
林空間総合利用地域に指定された。
ウ北海道知事は,自然環境保全条例30条1項の規定による特定の開発行
為の許可の処分権限を有する者である。本件開発行為許可の対象たる特定
の開発行為の対象地(乙ロ17の図面に示された土地のうち朱線で囲まれ
た部分。以下「本件開発行為地」という。)は,十勝総合振興局の管轄に
属する。なお,自然環境保全条例30条は,森林法,砂防法,地すべり等
防止法,都市計画法,宅地造成等規制法等による規制が及ばない開発行為
のうち一定のものを,北海道が規制するものである。
佐幌岳の北斜面のスキー場開発事業
X社は,上川郡新得町で,十勝・北海道サホロリゾート事業を営んでおり,
その一環として,同町ほか所在の佐幌岳の斜面で,サホロスキー場を管理運
営しているところ,同スキー場の雪不足ほかの気候条件,スキー客の年齢構
成や嗜好の変化,スキー合宿の増加等に対応する必要があることから,佐幌
岳の北斜面の国有林野に新たなスキー場の建設をすることを内容とするスキ
ー場開発事業を計画した(乙イ23)。
株式会社Y及び株式会社Z(以下「Y社ら」という。)は,平成3年4月
18日,北海道知事に対し,北海道環境影響評価条例(昭和53年北海道条
例第29号)の規定により,サホロリゾート事業の前身である狩勝高原サホ
ロリゾート開発事業に係る環境影響評価書を送付した(X社は,Y社らから,
その事業を引き継いだものである。)。北海道知事は,平成3年9月12日,
北海道環境影響評価審議会に対し,同環境影響評価書について諮問し(乙ロ
6),平成4年3月13日,同審議会から,答申を受けた(乙ロ7)上,同
月31日,同環境影響評価書についての審査意見書を公表した(乙ロ3)と
ころ,その意見書には,事業を進めるに当たり特に配慮すべき事項として,
ナキウサギについては,事業予定地域周辺にその供給源となる生息地がある
可能性があるため,今後も調査を実施するとともに,その生息地に影響を与
えることのないように努めることという附帯意見が付されていた。Y社らは,
同年4月,上記の環境影響評価書の修正版を送付したところ,その環境影響
評価書は,自然環境の保全の措置として,ナキウサギに関し,事業の実施に
当たり,詳細な調査を行い,生息場所である「ガレ場」を存続させるなど,
その生息地に影響を与えないよう配慮を行うとしていた(乙ロ4)。X社は,
平成22年,佐幌岳の北斜面の開発行為の在り方に関する調査報告書(以下
「在り方調査報告書」という。)を提出し,上記の附帯意見を尊重する意向
を表明した(甲59,67,乙イ34,乙ロ5)。
本件開発行為許可に係る申請
X社は,平成22年7月29日,北海道知事に対し,自然環境保全条例3
0条1項の特定の開発行為の許可の申請をするのに先立ち,事前審査の申出
をした(乙ロ9)。北海道知事は,平成23年3月2日,X社に対し,事前
審査の結果の通知をした(乙ロ10)。
X社は,平成23年3月28日,北海道知事に対し,上川郡新得町所在の
国有林野十勝西部森林管理署東大雪支署管内2053林班内87.56㏊(
本件開発行為地)でのスキー場の建設について,自然環境保全条例30条1
項の特定の開発行為の許可の申請をした(乙ロ11)。十勝総合振興局長は,
同月30日,新得町長に対し,上記申請について意見聴取をした(乙ロ1
5)。新得町長は,同年4月11日,北海道知事に対し,上記申請について
異存はない旨の回答をした(乙ロ16)。北海道知事は,同年5月18日,
北海道特定開発行為審査会に対し,上記申請について諮問をした(乙ロ1
2)。同審査会は,審査及び現地調査の上,同年7月29日,北海道知事に
対し,上記申請は許可を相当とする旨の答申をした(乙ロ13)。北海道土
地・水対策連絡協議会幹事会は,同年5月26日,上記申請についての協議
をしたところ,特に意見はなかった。
本件使用許可
X社は,平成24年3月12日,東大雪支署長に対し,上川郡新得町所在
の国有林野十勝西部森林管理署東大雪支署管内2053林班い1林小班ほか
30.1136㏊(本件国有林野)について,国有財産法18条6項の行政
財産の目的外使用許可の申請をした(乙イ22ないし30)。東大雪支署長
は,同申請が昭和54年3月15日54林野管第96号林野庁長官通知,昭
和42年4月18日42林野政第738号林野庁長官通知ほか(乙イ7ない
し12,33)が定める審査基準に適合するものであると判断し,平成24
年5月30日,X社に対し,同項の規定により,本件国有林野について,用
途を森林レクリエーション事業(サホロリゾート北斜面コース敷,リフト敷
ほか)と,使用許可期間を同月31日から平成26年6月30日までと,そ
れぞれ定めて,国有林野の目的外使用許可処分(本件使用許可)をした(甲
1,乙イ19,31,32)。
本件開発行為許可
北海道知事は,上記⑶の申請の審査を行った結果,同申請に係る特定の開
発行為が自然環境保全条例30条3項及び北海道自然環境等保全条例施行規
則(以下「自然環境保全規則」という。)39条に定める許可基準並びに自
然環境保全規則40条の技術的細目に適合するものであると判断し,平成2
4年6月5日,X社に対し,自然環境保全条例30条1項の規定により,上
記のスキー場の建設について,特定の開発行為の許可処分(本件開発行為
許可)をした。(甲2)
本件各訴え等の提起
原告らは,平成25年10月17日,被告国及び被告北海道に対する本件
各訴えをX社に対する開発行為(スキー場の建設)の差止めの訴えと併合提
起した。X社に対する訴えは,その後,民事通常事件として立件された(当
庁平成26年(ワ)第1558号)。(顕著な事実)
3争点
本件の争点は,本件各訴えの適否,具体的には,原告らの原告適格の有
無,すなわち,原告らは本件各許可の無効の確認を求めるにつき法律上の利益
を有する者(行政事件訴訟法36条)であるか否か,本件各許可の適否,
具体的には,本件各許可は生物多様性条約に違反する違法かつ無効な処分であ
るか否か,本件各許可の国家賠償法上の違法の有無である。
4当事者の主張
原告らの主張
ア原告らは本件各訴えの原告適格を有すること
原告A及び原告Bは,本件各許可により佐幌岳のナキウサギの生息に重
大な影響が生ずることによって,生物多様性条約により保全される良好な
自然環境を享受する利益や学問研究の自由を侵害されたものであり,原告
協会は,本件各許可によって良好な自然環境を享受する利益等を侵害され
た会員の利害を代表する(後記)。原告らは,良好な自然環境を享受す
る利益を背景として,本件各許可の手続で意見を述べ,佐幌岳の自然環境
の保全に関与する手続上の権利ないし利益を有するところ,本件各許可に
よってそれを侵害されたものである(後記及び)。本件各許可の根拠
法規である国有財産法18条6項及び自然環境保全条例30条1項の各規
定や,関係法令である国有林野管理経営法とそれにより定められた管理経
営計画等,北海道生物の多様性の保全等に関する条例(平成25年北海道
条例第9号。以下「生物多様性条例」という。),北海道環境影響評価条
例(平成10年北海道条例第42号。以下「環境影響評価条例」とい
う。)を,生物多様性条約及びそのガイドラインを踏まえて解釈(間接適
用)すると,上記の権利ないし利益は,法律上保護されたものであり,か
つ,一般的公益の中に吸収解消することができず,原告らの個別的利益と
して保護されたものである。原告らは,本件各許可の無効の確認を求める
につき法律上の利益を有する者である。
原告らの自然環境を享受する利益とその侵害
小田急線高架化事業に関する平成17年の最高裁判所大法廷判決は,
事業地の周辺地域の住民について,生活環境上の被害が生ずるおそれが
あることを根拠に,原告適格を肯定したところ,自然環境は,人の生存
を支える,より基本的な環境であるから,自然環境上の被害が生ずるお
それがある場合も,原告適格が肯定されなければならない。生物多様性
条約は,生物多様性の侵害が,生物としての人の生存に影響するにとど
まらず,人間社会にも重大な影響を与えることを明らかにしている。そ
の前文は,生物多様性が,生物としての人だけでなく,人間社会にも重
要な価値を有すること,つまり,自然環境の悪化は,人の生存だけでな
く,社会経済上,科学上,文化教育上,レクリエーション上,芸術上の
価値にも,重大な被害を引き起こすことを明らかにしている。
ナキウサギは,シベリア等に生息するキタナキウサギの亜種であり,
北海道中央部の山岳地帯を中心とする限られた地域に分散して生息して
いる。ナキウサギは,平成24年,環境省により準絶滅危惧種に選定さ
れた。環境省は,その理由として,生息地が狭く,存続基盤が脆弱であ
ることに加えて,近年標高が低い地域で個体数が減少している可能性が
示唆されていることを挙げた。北海道も,平成3年の野生動物の分布等
の実態調査の報告で,ナキウサギは地史的,生態的側面だけからみても
学術的に貴重な動物であるとし,その保護の重要性を強調している。こ
のようなナキウサギの希少性に加えて,佐幌岳は,ナキウサギの主要な
生息地である大雪山系と日高山脈との中間に位置し,遺伝子の交流を確
保する重要な個体群の生息地である。佐幌岳の生息地が本件各許可に係
るスキー場の建設によって破壊されると,生物多様性に回復し難い重大
な影響が生ずる。そのことが,原告らが生存する自然環境への重大な侵
害行為であり,原告らが生活する社会に重大な悪影響を及ぼすことは明
らかである。つまり,本件各許可に係るスキー場の建設によって,原告
らが有する社会経済上,科学上,文化教育上,レクリエーション上,芸
術上の利益が侵害され,人としての進化及び生命保持の機構が侵害され
る。この利益は,抽象的なものでも,反射的なものでもなく,現在の科
学的知見では解明することができないにすぎない。自然環境の破壊は,
人の生存への直接的な侵害行為であり,生物多様性条約が,生物多様性
から人類が享受する利益を明記した上,各締約国がこの利益を保全すべ
きことを定めていることからすると,各締約国が自然環境の保全をする
結果,国民が反射的に利益を享受するものではない。
原告協会は,佐幌岳に関し,20年以上にわたり,自然環境の保護活
動をし,北海道の自然環境の保護に重要な役割を担ってきた。佐幌岳の
北斜面の開発は,原告協会の存在価値を脅かす。原告Aは,20年以上
にわたり,ナキウサギの研究に携わり,佐幌岳の生息地が北海道のナキ
ウサギの生息にとって重大な意味を有することを明らかにした。本件各
許可に係るスキー場の建設によって佐幌岳の生息地が消滅することは,
原告Aの研究を左右する。これは,原告Aの学問研究の自由を侵害し,
原告Aの自己実現の機会を奪い,原告Aの人格権を侵害するものである。
原告Bは,「Fくらぶ」の代表者として,18年にわたり,ナキウサギ
の保護活動をし,ナキウサギの保護及び生息地の保全に尽力してきた。
佐幌岳の生息地の保全は,北海道のナキウサギ全体に関わる問題であり,
原告Bにとって,重大な関心事である。近時,開発や地球温暖化によっ
て,世界的にナキウサギの生息地の減少が問題となっており,ナキウサ
ギの保護は地球的規模の課題である。ナキウサギは,氷河期に大陸から
渡来したところ,移動ルートや生態の変化などの解明は地史的に重要で
ある。ナキウサギの個体群の変動やその遺伝子的つながりも解明されて
おらず,それらは,保全生物学の観点から重要である。原告Bは,この
ようなナキウサギの地史的,生態的な面での学術的重要性から,ナキウ
サギの個体群と生息地を今あるまま後世に残したいと考えている。本件
各許可に係るスキー場の建設によって,原告Bは,自己実現の機会を奪
われ,人格権が侵害されるほか,学問研究の自由が侵害されるものであ
る。
本件使用許可に係る原告らの手続上の利益とその侵害
原告らは,国有林野管理経営法により定められた地域管理経営計画に
定める地域の意見として,本件使用許可の手続で意見を述べ,佐幌岳の
自然環境の保全に関与する手続上の権利ないし利益を有する。その権利
ないし利益は,本件使用許可の根拠法規である国有財産法18条6項の
規定や,関係法令である国有林野管理経営法とそれにより定められた管
理経営計画等により,原告らの個別的利益として法律上保護されたもの
であるところ,本件使用許可は,それを侵害した。すなわち,原告適格
の有無に関しては,生物多様性条約が国内法の解釈指針として間接適用
される。国有林野に関する同項の用途及び目的は,国有林野管理経営法
とそれにより定められた基本計画,地域管理経営計画によって定められ
るところ,国有林野の管理経営に関する基本計画は,国有林野の管理経
営に当たり,生物多様性の保全を含め,期待される役割を十分果たせる
ように森林の健全性を維持確保するとする。本件国有林野は,「森林と
人との共生林」であるところ,十勝森林計画区の第3次地域管理経営計
画は,「森林と人との共生林」について,地域の意見を踏まえて選定目
的に応じた適切な管理経営を行うとするのであり,地域の意見を踏まえ
ることを適切な管理経営の手続としている。生物多様性条約8条のガイ
ドラインであるエコシステムアプローチによれば,地域の意見を踏まえ
るとは,重要な利害関係者である地域社会や科学的知識,地域の固有の
知識を有する者を関与させることを意味するのであり,本件使用許可に
ついては原告らがこれに当たる。原告らは,地域管理経営計画に定める
地域の意見として,本件使用許可の手続で意見を述べ,佐幌岳の自然環
境の保全に関与する手続上の権利ないし利益を有するのであって,この
ことは,生物多様性条約13条の公衆のための教育及び啓発に係るCE
PA(対話・意思疎通,教育,参加及び啓発)実践原則が,生物多様性
の保全には様々な利害団体と対話し協働しなければならないとし,CE
PAのツールキットが,生物多様性の保全には,NGO,科学者,地域
に根付いたグループ等のサポートが必要であるとすることや,生物多様
性条約14条1項が,環境影響評価の手続に公衆を参加させるものとす
ることからも導かれる。
本件開発行為許可に係る原告らの手続上の利益とその侵害
原告らは,環境影響評価条例に定める道民の意見として,本件開発行
為許可の手続で意見を述べ,佐幌岳の自然環境の保全に関与する手続上
の権利ないし利益を有する。その権利ないし利益は,本件開発行為許可
の根拠法規である自然環境保全条例30条1項の規定や,関係法令であ
る生物多様性条例及び環境影響評価条例により,原告らの個別的利益と
して法律上保護されたものであるところ,本件開発行為許可は,それを
侵害した。すなわち,自然環境保全条例は,自然環境が無秩序に破壊さ
れることを防止し,その適正な保全を総合的に推進することによって,
道民の健康で文化的な生活の確保に寄与することをも目的とし(1条),
道民が自然環境の保全に積極的に参加することを義務付ける(2条)と
ころ,これは,道民に対し,地域の自然環境の保全のために適正な措置
がとられるように手続に参加する権利ないし利益を認めるものである。
生物多様性条約8条のガイドラインであるエコシステムアプローチによ
れば,原告らは,本件開発行為許可の手続で意見を述べ,佐幌岳の自然
環境の保全に関与する手続上の権利ないし利益を有するのであって,こ
のことは,生物多様性条例1条及び6条が,道民や民間団体が生物多様
性の保全の取組を行うように努力する義務を定めるほか,被告北海道が
実施する生物多様性に関する施策に道民が協力参加する義務をも謳って
いることや,環境影響評価条例も,道民に対し,環境保全についての配
慮が適正にされるように努める義務を課し(3条),意見書の提出を認
めている(8条)こと,生物多様性条約14条1項が,環境影響評価の
手続に公衆を参加させるものとすることからも導かれる。
イ本件各許可は違法かつ無効な処分であること
本件各許可は,生物多様性条約に違反する違法かつ無効な処分である。
生物多様性条約の内容及び効力
生物多様性条約は,1992年(平成4年),リオデジャネイロで開
催された国連環境開発会議で署名が開始され,1993年(平成5年)
に発効した。生物多様性条約は,地球的規模で野生生物の生息地や生態
系,種そのものが消滅している現状に鑑みて,野生生物の個々の種等を
保護するのではなく,生物多様性自体を保護したものであり,種の(種
間の)多様性のほか,種内の遺伝子の多様性をも保護する。
我が国は,条約をそのまま国内法として一般的に受容する一般的受容
方式の中の自動受容方式を採用していることから,条約は,公布により,
そのまま国内法的効力を生じ,国内法化のため,法律の制定の手続を経
ることを要しない。もっとも,個別の条約の規定が何らの措置をも要す
ることなく国内法として直接適用されるかについては更なる検討を要す
るところ,条約の規定が明確であれば,国内法として直接適用されると
解される。「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」の文言
との比較や,同条約に関するオーストラリアの判例によれば,生物多様
性条約の規定は明確であるから,国内法として直接適用される。
本件各許可が生物多様性条約に違反すること
生物多様性条約上,国及び都道府県は,生物多様性の保全の措置をと
らない裁量を付与されているものでなく,同措置をとる義務を課されて
いるから,国等が生物多様性の保全の措置をとらなければ,生物多様性
条約に違反する。生物多様性条約の直接適用により,国民が国等に対し,
生物多様性条約8条及び9条に定める措置をとることを求める具体的請
求権を有するとは解されないが,国等が生物多様性の保全の措置をとら
ず,かえって,生物多様性の破壊をする場合,国民は,裁判所に救済を
求めることができると解される。
ナキウサギは,我が国では北海道だけに生息している。その生息地と
しては,大雪山系,日高山脈等が知られ,岩が積み重なったガレ場(岩
塊地)のみを生息場所とする。佐幌岳の生息地は,昭和62年,原告A
によって発見され,その後の研究によって,大雪山系の生息地と日高山
脈の生息地を結び,双方のナキウサギの遺伝子の交流を維持する重要な
役割を果たしていることが推測された。X社のスキー場開発は,ナキウ
サギの生息地を造成するものであり,それを消滅させる。このことは,
佐幌岳のナキウサギの絶滅を意味し,将来的には,大雪山系及び日高山
脈のナキウサギが絶滅する可能性も否定することができない。本件各許
可は,このような開発行為を可能とするものであるから,生物多様性の
保全の措置をとることを義務付ける生物多様性条約に違反する違法かつ
無効な処分である。
生物多様性条約の間接適用と本件使用許可の違法
本件国有林野は,森林と人との共生林であるところ,森林と人との共
生林とは,「生態系としての森林の重要性を踏まえた生物多様性の保全
又は森林とのふれあいを通じた森林と人間との共生を図る観点から,生
活環境保全又は保健文化機能の発揮を第一とすべき国有林野」であり,
その管理経営の考え方は,「野生生物の生息・生育する森林の保護・整
備,森林浴や自然観察等の保健・文化・教育的な活動の場の整備,自然
景観の維持等」である。このように,本件国有林野の用途及び目的は,
生物多様性の保全であり,野生生物の生息生育する森林の保護整備であ
るところ,本件国有林野は,北海道知事の審査意見書に付された附帯意
見でナキウサギの生息地の存在の可能性が指摘されているのであるから,
東大雪支署長は,1995年(平成7年)に採択されたモントリオール
プロセスにより,自らナキウサギの調査をしなければならなかった。し
かし,東大雪支署長は,本件使用許可が本件国有林野の用途又は目的で
ある生物多様性の保全を妨げることについて,自ら調査をすることなく,
X社が杜撰な調査により作成した在り方調査報告書のみに基づいて,本
件使用許可をしたのであり,本件使用許可は違法である。
生物多様性条約の間接適用と本件開発行為許可の違法
本件開発行為許可の根拠法規である自然環境保全条例30条3項1号
は,「特定の開発行為をする土地の区域に所在する森林が,当該区域及
びその周辺の地域の環境の保全上必要な限度において,適正に保全され
るように措置されていること」を許可基準にしているところ,ここにい
う環境には自然環境が含まれ,むしろ,自然環境保全条例の目的によれ
ば,この環境は第一義的には自然環境を意味するものと解される。上記
の環境に生活環境が上乗せされているのは,開発行為に当たっては,土
地の改変が行われることが多いことから,土砂災害や水質汚濁などの生
活環境が破壊されることがあり得るためであるにすぎない。特定の開発
行為では,自然環境の保全に努めなければならないところ,被告北海道
は,モントリオールプロセスや北海道知事の審査意見書に付された附帯
意見を踏まえて,自ら調査をすることなく,X社が杜撰な調査により作
成した在り方調査報告書のみに基づいて,本件開発行為許可をしたので
あり,本件開発行為許可は違法である。
ウ国家賠償請求について
公務員の違法な公権力の行使
原告らは,佐幌岳のナキウサギの生息に重大な利害を有する。佐幌岳
の生息地は,大雪山系の生息地と日高山脈の生息地との遺伝子交流の要
であり,その生息地の破壊をすることは,原告らのナキウサギ研究とい
う学問研究の自由に対する重大な侵害行為となる。原告らは,生物多様
性条約により保全される自然環境の中で生活する利益を有するところ,
佐幌岳の生息地の破壊をすることは,この利益に対する重大な侵害行為
となる。X社は,本件開発行為地でスキー場の建設を進めており,この
ままでは,ナキウサギの生息地が破壊される。このスキー場の建設は本
件各許可によって惹起されたものであり,本件各許可は国家賠償法1条
1項の公務員の違法な公権力の行使に該当する。
原告らの損害
原告らが上記の違法行為によって被った精神的苦痛に対する慰謝料と
しては50万円が相当である。
被告国の主張
ア本件使用許可に係る訴えが不適法であること
原告らは,本件使用許可の無効の確認を求めるにつき法律上の利益を有
する者でなく,本件使用許可の無効の確認を求める訴えの原告適格を有し
ない。本件各訴えのうち,本件使用許可の無効の確認を求めるものは,不
適法である。
国有林野の目的外使用許可制度の概要
国有林野を貸し付け,又は使用させる場合,国有財産法の特則である
国有林野管理経営法7条の規定により,契約の締結によって使用させる
が,当該国有林野がレクリエーションの森施設の用に供されるときは,
昭和54年3月15日54林野管第96号林野庁長官通知第2の3によ
り,国有財産法18条6項の使用許可によって使用させる。同通達及び
昭和42年4月18日42林野政第738号林野庁長官通知は,その使
用許可の審査基準として,a使用許可施設がレクリエーションの森管
理経営方針書に適合すること,b事業の遂行が確実であり,妥当であ
ること,c使用許可施設が周辺の環境及び景観に及ぼす影響,d利
用計画が開発行為を伴う場合,森林法10条の2の許可基準を満たすこ
と等を定めている。
本件国有林野の用途及び目的
国有財産法18条6項の行政財産の目的外使用許可は,当該行政財産
の用途又は目的を妨げない限度において,することができるところ,国
有林野の用途及び目的は,国有林野の管理経営の目標である,国土の保
全その他国有林野の有する公益的機能の維持増進を図ること等にあると
解され,その内容は,次の基本計画,地域管理経営計画等によって,具
体化されている。すなわち,基本計画は,各国有林野を,重点的に発揮
させるべき機能によって「森林と人との共生林」等に類型化した上,機
能類型ごとの管理経営の考え方に即し,森林計画区ごとの自然的特性等
を勘案して,適切な施業を推進するとしている。基本計画は,森林が生
物多様性の保全の重要な要素であることを踏まえ,生物多様性等の期待
される役割を十分果たせるように森林の健全性を維持確保する取組が重
要になるとする。基本計画は,「森林と人との共生林」のうち,自然景
観,森林の保健・文化・教育的利用の現況及び将来の見通し,地域の要
請等を勘案して,国民の保健・文化・教育的利用に供する施設又は森林
の整備を特に積極的に行うことが適当と認められる国有林野を「レクリ
エーションの森」として選定し,広く国民に開かれた利用に供すること
により,森林とのふれあいを通じた豊かな国民生活の実現に資するもの
とする。北海道森林管理局長は,平成21年3月30日,十勝森林計画
区について第3次地域管理経営計画及び第3次国有林野施業実施計画を
定めたところ,本件国有林野は,「森林と人との共生林」中の「森林空
間利用タイプ」のうち「レクリエーションの森」に選定された。
原告らは法律上保護された利益を有しないこと
上記及びを前提に,原告らの原告適格について検討すると,本件
使用許可の根拠法規から,法律上保護された利益を抽出することはでき
ない。国有財産法の目的は,国民全体の利益と密接に関係する国有財産
の管理を適切に行うことにある。特に,行政財産は,国がその事務を遂
行するための物的要素であるから,常に良好な状態で維持保存され,本
来の目的のために効率的に利用されなければならない。上記のとおり,
本件国有林野は,国民の保健・文化・教育的利用に積極的に供する森林
であり,既存の各種施設の整備拡充を図り,総合的なレクリエーション
の場とすることを目標とするものである。このような国有財産法の目的,
本件国有林野の用途及び目的に照らすならば,本件使用許可で考慮され
るのは,本件国有林野の良好な維持保存であり,その機能の十全な発揮
である。本件国有林野の機能は一般的公益そのものであって,それに,
地域住民や森林の利用者が,生息又は生育する動植物による自然環境を
享受したり,スポーツその他の活動を通じて自然とふれあうことによる
利益が含まれるとしても,それは広く国民が享受し得る利益であり,こ
こから,一般的公益にとどまらない,個々人の利益を抽出することはで
きない。行政財産の目的外使用許可の審査基準を具体化した上記の通
達等にも個々人の利益を考慮する定めは存在しないのであり,一般的公
益にとどまらない,個々人の利益を抽出することはできない。
原告らの主張について
原告らは,地域管理経営計画の「地域の意見を踏まえ」という記載を,
生物多様性条約8条のガイドラインを指針として解釈し,法律上保護さ
れた利益を有すると主張するところ,国有林野の用途及び目的が公益的
機能の維持増進を図ること等であることは,上記のとおりであり,そ
の中に生物多様性の保全も含まれるものの,それは,公益的機能の一つ
にすぎない。ある国有林野にいかなる機能を優先的に発揮させるかの判
断は,行政庁の広範な裁量に委ねられるのであり,その判断に当たり,
地域の意見を踏まえるものとされているとしても,それをもって,特定
の人に具体的な権利ないし利益を付与したものとみることはできず,そ
こに見出される利益は反射的利益にすぎない。そして,このことは,生
物多様性条約8条を踏まえても異なるものでない。同条は,締約国に対
し,その国内に居住する原住民等の生物資源に関する伝統的知識等を尊
重することを奨励するものであるところ,地域管理経営計画は,国有林
野の公益的機能の維持増進を図ること等を目的とするものであるから,
地域の意見を踏まえるのも,公益目的の実現の手段にほかならないので
あり,地域の意見とは,上記の伝統的知識等ではなく,住民の意見を意
味するものである。両者は,その趣旨目的を異にし,生物多様性条約8
条のガイドラインを地域管理経営計画の文言の解釈指針とすることはで
きない。生物多様性条約8条は,主権事項に関する規定であることから,
国内法令に従うことに加えて,可能な限り,かつ,適当な場合とされ,
義務規定から努力規定に緩和されているのであり,我が国が生物多様性
の保全を国有林野の公益的機能の一つと位置付け,特定の人に具体的な
権利ないし利益を付与しなかったとしても生物多様性条約に違反するこ
ととなるものではない。
イ本件使用許可が適法な処分であること
本件使用許可は,国有財産法18条6項の処分要件を満たしており,ま
た,生物多様性条約に違反するものではない。
X社の申請が許可基準に適合すること
本件使用許可は,使用許可施設であるスキー場が既存の管理経営方針,
地域管理経営計画と整合すること,X社による事業遂行の確実性や妥当
性,使用許可施設やその開発行為による周辺への影響について,X社が
提出した申請書に添付された事業計画書等に基づいて審査し,併せて,
上記の事業計画書で,本件開発行為許可に係る環境影響評価の手続で北
海道知事の審査意見書に付された附帯意見を引用し,ナキウサギの生息
環境の保全に配慮するものとしていることを確認した上,されたもので
ある。東大雪支署長は,X社の在り方調査報告書のみに基づいて,使用
許可施設であるスキー場が本件国有林野の用途又は目的を妨げないと判
断したものではない。
本件使用許可が生物多様性条約に違反するものでないこと
原告らは,本件使用許可が生物多様性条約に違反すると主張する。し
かし,条約が,国内法による具体化を待たずに,そのままの形で国内法
として直接に,特定の法律関係に係る国内裁判所の判断根拠として適用
し得るものとなるには,その作成,実施の過程の事情に照らして,一定
の権利義務を定め,直接に国内裁判所で適用可能なものにする締約国の
意思が確認され(主観的要件),当該条約の規定において,一定の権利
義務が明白,確定的,完全かつ詳細に定められ,その内容を具体化する
法令を待つまでもなく,国内的に適用可能であること(客観的要件)を
要するところ,生物多様性条約は,この要件のいずれをも欠き,自動執
行力を有しない。原告らの上記主張はその前提を欠く。
本件使用許可は環境の保全に配慮していること
国有林野の管理経営の基本計画等には,生物多様性の保全が謳われて
いるのであり,国有林野の管理経営に当たっては,貴重な自然環境の保
全を図るとともに,個別事業の実施に際し,自然環境への配慮に努める
必要がある。北海道森林管理局は,原生的な天然林を保護林として保全
するほか,シマフクロウ等の希少な野生動植物の生息生育環境の向上に
取り組み,また,国有林野で一定規模の開発行為をする者に対し,当該
開発行為による国有林野の管理経営への影響とその在り方を明らかにす
る調査を実施させている。X社の在り方調査報告書は,現地調査ではナ
キウサギの生息痕跡を確認することができなかったとしつつ,長期的に
は個体の再入り込みも考えられることから,事業の実施に当たっては,
山腹のガレ場を積極的に存続させ,生息可能環境の保全に配慮した事業
実施に努めるとしているのであり,その事業計画にも,その趣旨が反映
されている。使用許可施設であるスキー場の建設は,ナキウサギの生息
地の破壊をするものではない。
ウ国家賠償請求について
本件使用許可が国家賠償法上違法であるか否かは,本件使用許可が,公
務員が個別の国民に対して負う職務上の義務に違反したか否かで判断され
るところ,無限に認められる学問研究の対象の全てについて,その存続を
他者に要求する権利を憲法が保障しているとは考えられないし,また,原
告らが主張する,生物多様性条約により保全される自然環境の中で生活す
る利益は,原告らの固有の利益として保護されているものではなく,反射
的利益にすぎないから,本件使用許可が,公務員が個別の国民に対して負
う職務上の義務に違反したということはできない。本件使用許可が国家賠
償法上違法なものであるということはできず,原告らの被告国に対する国
家賠償請求は理由がない。
⑶被告北海道の主張
ア本件開発行為許可に係る訴えが不適法であること
原告らは,本件開発行為許可の無効の確認を求めるにつき法律上の利益
を有する者でなく,本件開発行為許可の無効の確認を求める訴えの原告適
格を有しない。本件各訴えのうち,本件開発行為許可の無効の確認を求め
るものは,不適法である。
自然環境保全条例が保護する利益
自然環境保全条例の目的は,自然環境保全法その他の法令と相まって
自然環境の適正な保全を総合的に推進することと,国土の無秩序な開発
を防止することによって道民の健康で文化的な生活の確保に寄与するこ
とである。自然環境保全条例は,北海道知事に対し,自然環境の保全を
図るための基本方針を定めることを義務付け,自然環境の保全が特に重
要な区域を自然環境保全地域に指定し,同地域に関する保全計画で当該
地域の自然環境の保全に関する基本的な事項を定めるものとする。自然
環境保全条例が保護する利益は,自然環境の適正な保全を総合的に推進
し,道民全体の健康で文化的な生活の確保に寄与することであり,これ
らの不特定多数の者の具体的利益は専ら一般的公益の中に吸収解消され
ている。自然環境保全条例には,不特定多数の者の具体的利益を,専ら
一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の
個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むことが読み取れる
規定が存在しない。原告らの主張に係る,生物多様性条約により保全さ
れる自然環境を享受する利益は,一般的公益の中に吸収解消されるべき
不特定多数の者の利益そのものであり,自然環境保全条例が,原告らの
個別的利益をも保護すべきものとする趣旨を含むものでないことは明ら
かである。特定の開発行為の許可基準によれば,同許可で考慮され,規
制によって保護される利益は,環境の保全や災害の防止といった一般的
公益であり,原告らの主張に係る利益は,自然環境保全条例により特定
の開発行為を規制することによる反射的利益にすぎない。
原告らの主張について
自然環境保全条例の目的規定(1条)等は,一般的な責務を課したも
のにすぎず,それによって具体的な利益が基礎付けられるものでない。
生物多様性条例は,平成25年10月1日に施行された条例であるし,
環境影響評価条例の道民意見書の提出の規定も,同日に施行されたもの
であるから,それ以前にされた本件開発行為許可との関係で,関係法令
となるものでない。生物多様性条約8条は,締約国に対し,可能な限り,
かつ,適当な場合,自国の国内法令に従い,生物多様性の保全に関して
原住民等の伝統的知識等を尊重すること等を求めているにすぎないので
あり,同条から,個別的利益が導かれるものではないから,同条の趣旨
を踏まえて解釈しても,自然環境保全条例によって,原告らに対し,個
別的利益が保護されていると解することはできない。
仮に,原告らが主張する,自然環境を享受する利益や,ナキウサギの
調査研究をする利益が,自然環境保全条例によって保護された利益であ
るとしても,本件開発行為地から直線距離で約40厠イ譴討い覯賄豬
上士幌町や,更に遠隔にある札幌市中央区に居住する原告らが法律上保
護された利益を有しないことは明らかである。
イ本件開発行為許可が適法な処分であること
本件開発行為許可は,自然環境保全条例に定める許可基準に適合してお
り,また,生物多様性条約に違反するものではない。
X社の申請が許可基準に適合すること
北海道知事が自然環境保全条例に基づいて定めた基本方針は,自然環
境保全条例30条1項1号の許可基準の規制の趣旨が地域住民の生活環
境及び水源のかん養の確保にあるとするところ,自然環境保全条例8条
が関係者の所有権その他の財産権の尊重を特に規定していること,同許
可が公共の福祉の観点から私人の権利行使を制限する警察許可の性格を
有することからすると,同号の許可基準は限定的に解すべきである。北
海道知事は,同号の許可基準を,地域住民の生活環境及び水源のかん養
を旨として運用しなければならず,それ以外の事由を理由に同号の許可
基準への適合性の有無を判断することは許されない。貴重な動植物が生
息ないし生育する環境の悪化のおそれがないことは,自然環境保全条例
全体からは保護されるべきであるが,特定の開発行為の許可基準とはな
らない。北海道知事は,本件開発行為許可に当たり,地域住民の生活環
境の保全及び水源のかん養と重なり合う限度で,自然環境の保全を考慮
したものであり,自然環境の保全は反射的効果によって確保されている。
また,特定の開発行為の許可基準は,特定の動物の生息実態を明らかに
することを事業者に求め,又は北海道知事が自ら調査をする趣旨を含む
ものでない。北海道知事は,本件開発行為許可に当たり,X社の在り方
調査報告書の真偽を判定したものでない。
本件開発行為許可が生物多様性条約に違反するものでないこと
原告らは,本件開発行為許可が生物多様性条約に違反すると主張する
が,条約が自動執行力を有するには,一定の権利義務を定め,直接に国
内で執行可能なものにするという締約国の意思を確認することができる
こと,当該条約自体で,一定の権利義務が明白,確定的,完全かつ詳細
に定められ,その内容を具体化する法令を待つまでもなく,国内的に適
用可能であることを要するところ,生物多様性条約は,この要件のいず
れをも欠き,自動執行力を有しない。原告らの上記主張はその前提を欠
く。また,原告らは,本件開発行為許可に係るスキー場の建設がナキウ
サギの生息地の破壊をするとするが,X社は,スキーコースに係る樹木
を選択的に伐採するものであり,開発区域内のガレ場を積極的に存続さ
せ,ナキウサギの生息可能環境の保全に配慮した事業実施に努めるとし
ているのであるから,仮に開発区域内にナキウサギが生息しているとし
ても,ナキウサギの生息地の破壊をするものでない。
ウ国家賠償請求について
原告らは,生物多様性条約により保全される自然環境を享受する利益,
ナキウサギの研究という学問研究の自由が侵害されたと主張するが,これ
らの利益は,原告らの個別的利益として保護されたものでなく,自然環境
保全条例が特定の開発行為を規制していることによる反射的利益にすぎな
いから,原告らに損害が発生したということはできない。原告らの被告北
海道に対する国家賠償請求は理由がない。
第3当裁判所の判断
1無効確認の訴えの原告適格
行政事件訴訟法36条は,無効等確認の訴えの原告適格について,「無効等
確認の訴えは,当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある
者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有す
る者(中略)に限り,提起することができる」と規定するところ,ここに当該
処分の無効の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者とは,行政事件訴訟
法9条1項の当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者と同一
であって,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害さ
れ又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。当該処分を定めた行政法規
が,不特定多数の者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにと
どめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものと
する趣旨を含むものと解される場合,このような利益もここにいう法律上保護
された利益に当たり,当該処分によりこのような利益を侵害され又は必然的に
侵害されるおそれのある者は,当該処分の無効を前提とする現在の法律関係に
関する訴えによって目的を達することができないもの(すなわち,行政事件訴
訟法36条の補充性の要件を満たすもの)であれば,当該処分の無効確認の訴
えの原告適格を有する。そして,行政事件訴訟法9条2項の規定によれば,裁
判所が処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判
断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによること
なく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の
内容及び性質をも考慮することとなるところ,上記の法令の趣旨及び目的を考
慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその
趣旨及び目的をも参酌することとなり,また,上記の利益の内容及び性質を考
慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に
害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度を
も勘案することとなる。(以上につき,最高裁判所平成16年(行ヒ)第114
号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁参照)
上記の見地に立って,原告らが本件各許可の無効の確認の訴えの原告適格を
有するか否かについて検討する。
2本件使用許可の無効の確認の訴えの原告適格
処分の効果の観点からの法律上保護された利益の侵害の有無
本件使用許可は,国有財産法18条6項の規定により,行政財産である本
件国有林野についてされた目的外使用許可であり,本件国有林野について,
その許可の申請をしたX社のために,スキー場の施設の敷地等として排他的
に使用する権原を設定するものであるから,その性質は特許であると考える
ことができるところ,原告らは,本件国有林野について目的外使用許可の申
請をするなどX社と競願の関係にあったもの等でなく,本件使用許可の効果
により自己の権利ないし利益に何らの影響も受けたものでないのであり,本
件使用許可の効果の観点から,原告らが本件使用許可により自己の権利若し
くは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある
者であるということはできない。
なお,原告らは,本件使用許可によって学問研究の自由を侵害されたと主
張するが,本件使用許可がされたことによって,原告らが,ナキウサギの調
査研究等をすることを禁止若しくは制限されたものでなく,また,ナキウサ
ギの調査研究等をすることが事実上困難になったものでもないから,本件使
用許可によって学問研究の自由を侵害されたということはできない。原告ら
の上記主張は採用することができない。
処分要件の観点からの法律上保護された利益の侵害の有無
次に,処分要件の観点から,原告らが本件使用許可により自己の権利若し
くは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある
者であるということができるか否かについて検討する。
ア行政財産の目的外使用許可の処分要件
行政財産は,その用途又は目的を妨げない限度において,その使用又は
収益を許可することができる(国有財産法18条6項)ものであるから,
行政財産の目的外使用許可の処分要件は,申請に係る使用又は収益が当該
行政財産の用途又は目的を妨げないことである。また,申請に係る使用又
は収益が当該行政財産の用途又は目的を妨げないときであっても,行政財
産の管理者は,国有財産法の趣旨目的,当該行政財産が国有林野である場
合には国有林野管理経営法の趣旨目的等を勘案した裁量判断として使用又
は収益の許可をしないことが相当であれば,行政財産の目的外使用許可を
しないことができるものと解するのが相当である。
イ本件国有林野の用途及び目的
本件使用許可の当時,本件国有林野が,北海道森林管理局長が定めた十
勝森林計画区の第3次地域管理経営計画(乙イ3)及び第3次国有林野施
業実施計画(乙イ4)により,その有する機能によって,国有林野管理経
営規程3条3項の「森林と人との共生林」に分類され,その中の「森林空
間利用タイプ」(国有林野管理経営規程5条1項2号)のうち「レクリエ
ーションの森」(国有林野管理経営規程13条5項)の野外スポーツ地域
に選定されていたことは,前提事実イのとおりである。
国有林野管理経営規程(乙イ2)は,3条3項で,「森林と人との
共生林」は,生態系としての森林の重要性を踏まえた生物多様性の保全又
は森林とのふれあいを通じた森林と人間との共生を図る観点から,生活環
境保全又は保健文化機能の発揮を第一とすべき国有林野をいうと,5
条1項2号で,「森林と人との共生林」については,主に原生的な森林生
態系の維持等自然環境の保全を図ることを第一に発揮すべき「自然維持タ
イプ」と,主に森林とのふれあいを通じた森林と人間との共生を図る等生
活環境保全機能及び保健文化機能を第一に発揮すべき「森林空間利用タイ
プ」の2つに区分して定めるものとすると,それぞれ定めた上,13
条5項で,「レクリエーションの森」は,「森林空間利用タイプ」のうち,
自然景観,森林の保健・文化・教育的利用の現況及び将来の見通し,地域
の要請等を勘案して,国民の保健・文化・教育的利用に供する施設又は森
林の整備を特に積極的に行うことが適当と認められる国有林野を選定する
ものとすると定め,また,同条3項で,「保護林」は,「自然維持タ
イプ」のうち,動植物の生息又は生育状況,地域の要請等を勘案して,原
生的な森林生態系から成る自然環境の維持,動植物の保護,遺伝資源の保
存,施業及び管理技術の発展等に特に資することを目的として管理を行う
ことが適当と認められる国有林野を選定するものとすると定めている。そ
うすると,上記の「森林と人との共生林」の中の「森林空間利用タイプ」
のうち「レクリエーションの森」である本件国有林野は,生態系とし
ての森林の重要性を踏まえた生物多様性の保全又は森林とのふれあいを通
じた森林と人間との共生を図る観点から生活環境保全又は保健文化機能の
発揮を第一とすべき国有林野の中でも,主に原生的な森林生態系の維
持等自然環境の保全を図ることを第一に発揮すべき国有林野ではなく,主
に森林とのふれあいを通じた森林と人間との共生を図る等生活環境保全機
能及び保健文化機能を第一に発揮すべき国有林野であり,そのうち,
国民の保健・文化・教育的な利用に供する施設又は森林の整備を特に積極
的に行うことが適当と認められる国有林野であることとなるのであって,
本件国有林野は,その管理経営に当たり,主に森林とのふれあいを通じた
森林と人間との共生を図る観点から,国民の保健・文化・教育的な利用に
供する施設の敷地等として,生活環境の保全に係る公益的機能及び国民の
保健・文化・教育的な利用に係る公益的機能を第一に発揮させるべき国有
林野であり,主に生物多様性の保全を図る観点から,希少な野生動植物が
生息ないし生育する森林として,自然環境の保全に係る公益的機能を第一
に発揮させるべき国有林野でないこととなる。
しかし,国有林野が有する公益的機能は,国土の保全,水源のかん養に
係る機能のほか,地球温暖化の防止,生物多様性の保全といった自然環境
の保全に係る機能,森林環境教育の推進,国民と自然とのふれあいの場の
提供といった国民の保健・文化・教育的な利用に係る機能など多岐にわた
る諸要素から構成される,多面的な性格のものである(乙イ1)から,あ
る国有林野が,生活環境の保全に係る公益的機能及び国民の保健・文化・
教育的な利用に係る公益的機能を第一に発揮させるべきものであるからと
いって,自然環境の保全に係る公益的機能を発揮させることを要しなくな
るものではなく,むしろ,そのような国有林野であっても,なお,その特
性に応じた自然環境の保全に係る公益的機能を発揮させることを要し,当
該国有林野を国民の保健・文化・教育的な利用に供する上で,休養施設や,
スポーツ・レクリエーション施設,教養文化施設等の整備が行われる場合,
当該施設との調和を図りつつ,その特性に応じた自然環境の保全に係る公
益的機能を発揮させることを要する。このことに加え,本件国有林野の自
然的特性として,本件使用許可の当時,本件国有林野に,現実にナキ
ウサギが生息していたことが,確認されているとはいい難いものの,
平成4年3月に北海道知事が公表した,事業者作成の環境影響評価書につ
いての審査意見書に付された附帯意見では,事業予定地域周辺にナキウサ
ギの供給源となる生息地が存在する可能性が指摘され,その生息地に影響
を与えることのないように努めることが求められており(乙ロ3),
平成22年にX社が提出した,佐幌岳の北斜面の開発行為の在り方に関す
る在り方調査報告書でも,本件開発行為地にナキウサギが生息し得る可能
性があるガレ場が存在することが指摘され,少なくとも将来的にはナキウ
サギが生息する可能性があることは否定することができないものとされて
いたこと(甲59,67,乙イ34,乙ロ5)をも併せ考えれば,本件使
用許可の当時,本件国有林野は,その管理経営に当たり,生物多様性の保
全を図る観点から,ナキウサギが生息する可能性がある森林として,自然
環境の保全に係る公益的機能をも発揮させるべき国有林野であったという
ことができるのであり,本件国有林野の用途及び目的には生物多様性の保
全を図る観点から自然環境の保全に係る公益的機能を発揮させることが含
まれていたというべきである。
ウ原告らの個別的利益の有無
上記ア及びイによれば,本件使用許可の当時,本件国有林野の目的外使
用許可の処分要件には,申請に係る使用又は収益が生物多様性の保全を図
る観点から本件国有林野に自然環境の保全に係る公益的機能を発揮させる
ことを妨げないことが含まれていたこととなるのであり,本件使用許可の
当時,本件国有林野の目的外使用許可の申請に対する許否の判断において
は,当該申請に係る使用又は収益が生物多様性の保全を図る観点から本件
国有林野に自然環境の保全に係る公益的機能を発揮させることを妨げない
か否かが考慮されるべきものとされていたということができる。そして,
そうであるとすると,本件使用許可の当時,生物多様性の保全を図る観点
から本件国有林野に自然環境の保全に係る公益的機能を発揮させることに
よって確保される,生物多様性が保全された良好な自然環境を享受する利
益が,不特定多数の者の利益としては,国有財産法18条6項の規定によ
り保護すべきものとされていたと解することができるのであり,本件使用
許可が,東大雪支署長が上記の処分要件の判断を誤った違法なものである
ならば,これにより不特定多数の者が有する生物多様性が保全された良好
な自然環境を享受する利益が侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあ
ることとなる。しかし,本件使用許可を定めた行政法規が,この不特定多
数の者の利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが
帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を
含むものと解することはできないのであって,上記の利益は(自己の)法
律上保護された利益に当たるものでない。何故ならば,国有林野事業は,
国土の保全その他国有林野の有する公益的機能の維持増進を図ること等を
目標とするものである(乙イ1)ところ,生物多様性が保全された良好な
自然環境を享受する利益は,不特定多数の者が等しく享受することができ
る内容及び性質を有するものであり,その利益を享受する主体の外延に何
らの限定も付すことができないことからすると,専ら一般的公益の中に吸
収解消させるにとどめるべき不特定多数の者の具体的利益ないし一般的公
益そのものであると考えることができるのであって,生物多様性の保全を
図る観点から本件国有林野に自然環境の保全に係る公益的機能を発揮させ
ることによって確保され,原告らがそれぞれ享受する利益は,生物多様性
の保全が図られることによって良好な自然環境が保全されることによる反
射的利益にほかならないものであるからである。
原告らは,良好な自然環境を享受する利益を背景として,本件使用許可
の手続で意見を述べ,佐幌岳の自然環境の保全に関与する手続上の権利な
いし利益を有すると主張するところ,確かに,十勝森林計画区の第3次地
域管理経営計画の中には,「レクリエーションの森」として選定された国
有林野について,「地域の意見等を踏まえて,選定目的に応じた適切な管
理経営を行うものとする」とする部分がある。しかし,生物多様性が保全
された良好な自然環境を享受する利益が専ら一般的公益の中に吸収解消さ
せるにとどめるべき不特定多数の者の具体的利益ないし一般的公益そのも
のであることは,上記のとおりであり,そのことからするならば,地域管
理経営計画が地域の意見等を踏まえることとしているのは,それによって,
国有林野の管理経営を選定目的に応じた,より適切なものとし,国有林野
の公益的機能を充実させ,より高度に発揮させるためであると解されるの
であり,それが,地域の住民等に対し,手続上の権利ないし個別的利益を
付与し,これを法律上保護すべきものとする趣旨を含むものと解すること
はできない。そして,このことは,原告らの指摘に係る生物多様性条約の
規定及びそのガイドライン等を踏まえてみても,異なるものでない。生物
多様性条約は,生物多様性の保全の措置等について,締約国は,可能な限
り,かつ,適当な場合には,各条に掲げられた措置をとるものとする(8
条,9条,14条)ところ,これは,生物多様性の保全の措置等の前提と
なる社会経済の状況,国民の意識が締約国ごとに異なることから,各条に
掲げられた措置をとるか否か,措置をとる場合にはその時期についての判
断を当該締約国の広範な裁量に委ね,締約国が自国の状況に応じ,適切な
範囲で生物多様性の保全の措置等をとることとしたものであると解される
が,併せて,各条に掲げられた措置をとるに当たり,その具体的な内容を
どのようなものにするかについての判断も,当該締約国の広範な裁量に委
ねられているものと解するのが相当である。生物多様性条約は,生物多様
性の保全の措置に地域の住民等の意見を反映させるに当たり,当該地域の
住民等に対し,手続上の権利ないし個別的利益を付与するか否かについて
の判断を,当該締約国の裁量に委ねているのであり,生物多様性条約の規
定等を踏まえてみても,地域管理経営計画が地域の意見等を踏まえること
としているのが,地域の住民等に対し,手続上の権利ないし個別的利益を
付与し,これを法律上保護すべきものとする趣旨を含むものと解すること
はできない。原告らの上記主張は採用することができない。
原告らは,小田急線高架化事業に関する平成17年の最高裁判所大法廷
判決が,事業地の周辺地域の住民について,生活環境上の被害が生ずるお
それがあることを根拠に,原告適格を肯定したことを指摘する。しかし,
都市計画事業に伴う騒音,振動等によって,上記の住民に対し,健康又は
生活環境に係る著しい被害を直接及ぼすことが,当該住民個人の身体の安
全に対する侵害に準ずるものであるとみることができることによれば,都
市計画事業の認可がその根拠となる法令に違反してされた場合に害される
こととなる利益は,その内容及び性質上,それを専ら一般的公益の中に吸
収解消させるにとどめることが困難であるのに対して,生物多様性が保全
された良好な自然環境を享受する利益が専ら一般的公益の中に吸収解消さ
せるにとどめるべき不特定多数の者の具体的利益ないし一般的公益そのも
のであることからすれば,本件使用許可を定めた行政法規が,この利益を
専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人
の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むものと解す
ることはできないことは,上記のとおりである。本件は上記の判例と事案
を異にする。原告らの上記主張は採用することができない。
エ本件使用許可の処分要件の観点から,原告らが本件使用許可により自己
の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害される
おそれのある者であるということはできない。
⑶原告らは,本件使用許可の無効の確認を求めるにつき法律上の利益を有す
る者であるということができない。無効確認の訴えが,当該処分により損害
を受けるおそれのある者その他当該処分の無効の確認を求めるにつき法律上
の利益を有する者に限り,提起することができるものであることは,上記1
のとおりであるところ,原告らは,本件使用許可の無効確認の訴えの原告適
格を有するものであるということができないのであり,本件各訴えのうち,
本件使用許可の無効確認を求めるものは不適法な訴えであるといわなければ
ならない。
3本件開発行為許可の無効の確認の訴えの原告適格
処分の効果の観点からの法律上保護された利益の侵害の有無
本件開発行為許可は,自然環境保全条例30条1項1号の規定により,特
定の開発行為である本件開発行為地でのスキー場の建設についてされた特定
の開発行為の許可であり,同スキー場の建設について,その許可の申請をし
たX社のために,特定の開発行為の禁止を個別的に解除するものであるから,
その性質は警察許可であると考えることができるところ,原告らは,本件開
発行為許可の効果により自己の権利ないし利益に何らの影響も受けたもので
ないのであり,本件開発行為許可の効果の観点から,原告らが本件開発行為
許可により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的
に侵害されるおそれのある者であるということはできない。
なお,原告らは,本件開発行為許可によって学問研究の自由を侵害された
と主張するが,同主張は採用することができないことは,上記2と同様で
ある。
処分要件の観点からの法律上保護された利益の侵害の有無
次に,処分要件の観点から,原告らが本件開発行為許可により自己の権利
若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれの
ある者であるということができるか否かについて検討する。
ア特定の開発行為の許可の処分要件
昭和49年4月1日から施行された自然環境保全条例の30条3項1号
の規定は,特定の開発行為の許可基準として,特定の開発行為をする土地
の区域に所在する森林が,当該区域及びその周辺の地域の環境の保全上又
は水源のかん養上必要な限度において,適正に保全されるように措置され
ていることを掲げているところ,同号及び同条4項の規定による自然環境
保全規則別表の技術的細目1の森林に関する事項の中には,自然環境の保
全という文言は用いられていない。しかし,自然環境保全条例が,自
然環境保全法その他の法令と相まって,自然環境の適正な保全を総合的に
推進するとともに,国土の無秩序な開発を防止し,もって道民の健康で文
化的な生活の確保に寄与することを目的とするものである(1条)ことに
加えて,平成25年4月1日から施行された生物多様性条例が,北海
道環境基本条例(平成8年北海道条例第37号)3条の基本理念にのっと
り,生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策を総合的かつ計画
的に推進し,もって人と自然とが共生する豊かな環境の実現を図り,現在
及び将来の世代の道民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的
とするものであり(1条),生物多様性の保全は,野生動植物の種の保存
等が図られるとともに,多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じ
て保全されることを旨として行われなければならないとする(3条1項)
ことにもよれば,自然環境保全条例30条3項1号の「環境の保全」には,
生活環境の保全のみならず,自然環境の保全が含まれるものと解するのが
相当であり,特定の開発行為の許可の処分要件には,生物多様性の保全を
図る観点から当該特定の開発行為をする土地の区域に所在する森林が当該
区域及びその周辺の地域の自然環境の保全上必要な限度において適正に保
全されるように措置されていることが含まれるというべきである(自然環
境保全条例と生物多様性条例との関係について,自然環境保全法は,国,
地方公共団体,事業者及び国民に対し,環境基本法3条から5条までに定
める基本理念にのっとり,自然環境の適正な保全が図られるように,それ
ぞれの立場において努める責務を課す(2条)ところ,北海道環境基本条
例3条1項から3項までは,環境基本法3条から5条までに定める基本理
念と同様の趣旨の基本理念を定めるのであり,生物多様性条例は自然環境
保全条例と目的を共通にする関係法令であるということができる。また,
生物多様性条例が施行されたのが本件使用許可の後である平成25年4月
1日であることは,上記のとおりであるが,北海道希少野生動植物の保護
に関する条例(平成13年北海道条例第4号。以下「旧条例」という。)
の規定により定められていた希少野生動植物保護基本方針や生物多様性条
例附則2項の規定による旧条例の廃止の際現に旧条例の規定によりされて
いた許可などは,旧条例の廃止後も,生物多様性条例の規定により定めら
れた希少野生動植物種保護基本方針や生物多様性条例の規定の許可などと
みなされ(生物多様性条例附則4項ないし7項),その効力が維持された
のであり,生物多様性条例の施行前においても,その前身である旧条例の
規定により,生物多様性の保全を図る観点から自然環境の保全が図られて
いたということができる。)。
なお,特定の開発行為の許可は,行政財産の目的外使用許可と異なり,
本来自由に行うことができる特定の開発行為を,社会公共の秩序を維持す
るという警察目的から一般的に禁止した上,申請により,その禁止を個別
的に解除する警察許可であるから,北海道知事は,特定の開発行為の許可
の申請が許可要件を満たす場合,特定の開発行為の許可をしないことはで
きないものと解される。
イ原告らの個別的利益の有無
特定の開発行為の許可の処分要件には,生物多様性の保全を図る観点か
ら当該特定の開発行為をする土地の区域に所在する森林が当該区域及びそ
の周辺の地域の自然環境の保全上必要な限度において適正に保全されるよ
うに措置されていることが含まれるというべきであることは,上記アのと
おりであり,特定の開発行為の許可の申請に対する許否の判断においては,
生物多様性の保全を図る観点から当該特定の開発行為をする土地の区域に
所在する森林が当該区域及びその周辺の地域の自然環境の保全上必要な限
度において適正に保全されるように措置されているか否かが考慮されるべ
きものとされているということができる。そして,そうであるとすると,
生物多様性の保全を図る観点から当該特定の開発行為をする土地の区域に
所在する森林が当該区域及びその周辺の地域の自然環境の保全上必要な限
度において適正に保全されるように措置されていることによって確保され
る,生物多様性が保全された良好な自然環境を享受する利益が,不特定多
数の者の利益としては,自然環境保全条例30条3項1号の規定により保
護すべきものとされていると解することができるのであり,本件開発行為
許可が,北海道知事が上記の処分要件の判断を誤った違法なものであるな
らば,これにより不特定多数の者が有する生物多様性が保全された良好な
自然環境を享受する利益が侵害され又は必然的に侵害されるおそれがある
こととなる。しかし,本件開発行為許可を定めた行政法規が,この不特定
多数の者の利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それ
が帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨
を含むものと解することはできないのであって,上記の利益は(自己の)
法律上保護された利益に当たるものでない。何故ならば,自然環境保全条
例の目的が,自然環境の適正な保全を総合的に推進するとともに,国土の
無秩序な開発を防止し,もって道民の健康で文化的な生活の確保に寄与す
ることであることは,上記アのとおりであり,特定の開発行為の許可制
度は,その目的を達成するための施策の一環として行われるものであると
ころ,生物多様性が保全された良好な自然環境を享受する利益が専ら一般
的公益の中に吸収解消させるにとどめるべき不特定多数の者の具体的利益
ないし一般的公益そのものであると考えることができることは,上記2
ウのとおりであって,生物多様性の保全を図る観点から当該特定の開発行
為をする土地の区域に所在する森林が当該区域及びその周辺の地域の自然
環境の保全上必要な限度において適正に保全されるように措置されている
ことによって確保され,原告らがそれぞれ享受する利益は,生物多様性の
保全が図られることによって良好な自然環境が保全されることによる反射
的利益にほかならないものであるからである。
原告らは,良好な自然環境を享受する利益を背景として,本件開発行為
許可の手続で意見を述べ,佐幌岳の自然環境の保全に関与する手続上の権
利ないし利益を有すると主張するところ,確かに,環境影響評価条例は,
道民が,事業者が対象事業に係る環境影響評価を行う方法について作成し
た環境影響評価方法書について環境保全の見地からの意見を有するときは,
事業者に対し,意見書の提出により,これを述べることができるものとし
ている(8条)。しかし,環境影響評価条例が道民に意見を述べる機会を
付与しているのが,道民に対し,手続上の権利ないし個別的利益を付与し,
これを法律上保護すべきものとする趣旨を含むものと解することはできな
いのであり(小田急線高架化事業に関する平成17年の最高裁判所大法廷
判決は,東京都環境影響評価条例の規定の趣旨目的を,都市計画事業の認
可に関する都市計画法の規定の趣旨目的を解釈する上で参酌したものであ
り,同条例の規定が,事業地の周辺地域の住民に対し,手続上の権利ない
し個別的利益を付与し,これを法律上保護すべきものとする趣旨を含むも
のと解したものではない。),このことは,原告らの指摘に係る生物多様
性条約の規定及びそのガイドライン等を踏まえてみても,異なるものでな
い。生物多様性条約は,生物多様性の保全の措置に地域の住民等の意見を
反映させるに当たり,当該地域の住民等に対し,手続上の権利ないし個別
的利益を付与するか否かについての判断を,当該締約国の裁量に委ねてい
るのであり,生物多様性条約の規定等を踏まえてみても,環境影響評価条
例が道民に意見を述べる機会を付与しているのが,道民に対し,手続上の
権利ないし個別的利益を付与し,これを法律上保護すべきものとする趣旨
を含むものと解することはできないことは,上記2ウと同様である。原
告らの上記主張は採用することができない。
原告らは,小田急線高架化事業に関する平成17年の最高裁判所大法廷
判決が,事業地の周辺地域の住民について,生活環境上の被害が生ずるお
それがあることを根拠に,原告適格を肯定したことを指摘するが,同主張
は採用することができないことは,上記2ウと同様である。
ウ本件開発行為許可の処分要件の観点から,原告らが本件開発行為許可に
より自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵
害されるおそれのある者であるということはできない。
⑶原告らは,本件開発行為許可の無効の確認を求めるにつき法律上の利益を
有する者であるということができない。無効確認の訴えが,当該処分により
損害を受けるおそれのある者その他当該処分の無効の確認を求めるにつき法
律上の利益を有する者に限り,提起することができるものであることは,上
記1のとおりであるところ,原告らは,本件開発行為許可の無効確認の訴え
の原告適格を有するものであるということができないのであり,本件各訴え
のうち,本件開発行為許可の無効確認を求めるものは不適法な訴えであると
いわなければならない。
4国家賠償請求について
原告らが本件各許可によって学問研究の自由を侵害されたということはでき
ないことは,上記2及び3のとおりであり,また,生物多様性が保全され
た良好な自然環境を享受する利益が専ら一般的公益の中に吸収解消させるにと
どめるべき不特定多数の者の具体的利益ないし一般的公益そのものであると考
えることができ,原告らがそれぞれ享受する利益は生物多様性の保全が図られ
ることによって良好な自然環境が保全されることによる反射的利益にほかなら
ないものであることは,上記2ウ及び3イのとおりであるところ,そのこ
とによれば,被告国又は被告北海道の公権力の行使に当たる公務員が,本件各
許可を行うについて,違法に原告らに損害を加えたと認めることはできないの
であり,国家賠償請求に係る原告らの主張は採用することができない。
第4結論
よって,本件各訴えのうち,本件使用許可の無効確認を求めるもの及び本件
開発行為許可の無効確認を求めるものは,いずれも不適法であるから,これを
却下することとし,原告らのその余の訴えに係る国家賠償請求は,いずれも理
由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴
訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項ただし書,66条を適用して,主文
のとおり判決する。
札幌地方裁判所民事第1部
裁判長裁判官 内野俊夫
裁判官 剱持亮
裁判官 中川希?
関係法令の定め
1自然環境保全条例の定め(乙ロ1)
1条(目的)
この条例は,自然環境保全法その他の法令と相まって,自然環境の適正な保
全を総合的に推進するとともに,国土の無秩序な開発を防止し,もって道民の
健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。
2条(道等の責務)
道,事業者及び道民は,北海道環境基本条例3条に定める基本理念にのっと
り,自然環境の適正な保全が図られるように,それぞれの立場において努めな
ければならない。(1項。2項及び3項は省略)
8条(財産権の尊重及び他の公益との調整)
自然環境の保全に当たっては,関係者の所有権その他の財産権を尊重すると
ともに,国土の保全その他の公益との調整に留意しなければならない。
13条(自然環境保全基本方針)
知事は,自然環境の保全を図るための基本方針を定めなければならない。(1
項。2項ないし5項は省略)
30条(特定の開発行為の許可)
ア次に掲げる行為で規則で定めるもの(以下「特定の開発行為」という。)
は,知事の許可を受けなければ,してはならない。(1項)
スキー場の建設(1号)
(2号ないし5号は省略)
イ(2項は省略)
ウ知事は,1項の許可の申請があった場合において,当該申請に係る特定の
開発行為が次の各号に掲げる基準に適合しないと認めるときは,許可をして
はならない。(3項)
特定の開発行為をする土地の区域に所在する森林が,当該区域及びその
周辺の地域の環境の保全上又は水源のかん養上必要な限度において,適正
に保全されるように措置されていること。(1号)
特定の開発行為をする土地が,地盤の軟弱な土地,がけ崩れ,土砂の流
出又は出水のおそれが多い土地その他これらに類する土地であるときは,
地盤の改良,擁壁の設置等安全上必要な措置が講ぜられていること。(2
号)
特定の開発行為をする土地の区域及びその周辺の地域の道路,河川,水
路その他の公共施設等が,環境の保全上,災害の防止上又は通行の安全上
支障がないような規模及び構造で適当に配置されるように措置されている
こと。(3号)
申請者に当該特定の開発行為を行うために必要な資力及び信用があるこ
と。(4号)
工事施行者に当該特定の開発行為に関する工事を完成させるために必要
な能力があること。(5号)
前各号に定めるもののほか,規則で定める基準に適合していること。(6
号)
エ前項各号に掲げる基準を適用するについて必要な技術的細目は,規則で定
める。(4項)
オ知事は,1項の許可の申請があったときは,速やかに,許可又は不許可の
処分をしなければならない。(5項)
カ前項の処分をするには,文書をもって当該申請者に通知しなければならな
い。(6項)
キ知事は,5項の処分をしようとするときは,あらかじめ,関係市町村長の
意見をきかなければならない。この場合において,当該処分に係る特定の開
発行為が規則で定めるものであるときは,併せて,北海道特定開発行為審査
会の意見をきかなければならない。(7項)
ク(8項は省略)
2自然環境保全規則の定め(乙ロ2)
35条(特定の開発行為)
条例30条1項の規則で定める行為は,1㏊以上の一団の土地について行わ
れるものとする。
39条(許可の基準)
条例30条3項6号の規則で定める基準は,次に掲げるものとする。
ア開発区域内の土地又は当該土地にある工作物につき,当該特定の開発行為
の施行の妨げとなる権利を有する者の同意を得ていること。(1号)
イ開発区域内の施設設備が接続する公共施設の管理者の同意を得,かつ,当
該特定の開発行為又は当該特定の開発行為に関する工事により設置される公
共施設を管理することとなる者と協議を了していること。(2号)
ウ(3号は省略)
40条(技術的細目)
条例30条4項の規定による技術的細目は,別表のとおりとする。
41条(特定の開発行為に係る審査会の意見)
条例30条7項の規則で定める特定の開発行為は,20㏊以上の一団の土地
について行われるものとする。
別表(40条関係)
ア森林に関する事項(1)
一般的事項()
a特定の開発行為の目的及び次に掲げる事項を勘案して,当該特定の開
発行為をする土地の区域(以下「開発区域」という。)における植物の
生育を確保する上で必要な樹木の保存,表土の保全その他必要な措置が
講ぜられていること。(ア)
開発区域の規模,形状及び周辺の状況()
開発区域内の土地の地形及び地盤の性質()
b開発区域内に次のいずれかに該当する箇所がある場合には,当該箇所
に樹林地が存置されていること。(イ)
崩壊又は地すべりのおそれのある箇所()
傾斜度が25度以上の箇所であって,その斜面が概ね25m以上連
続するもの()
植生の回復が困難な樹林地()
c水源地等の周囲には,適切に樹林地が存置されていること。(ウ)
d開発区域内における無立木地のうち必要があるものについては,植樹
その他植生の回復に必要な植栽等が計画的に講ぜられるように措置され
ていること。(エ)
個別的事項()
aスキー場(ア)
開発区域内の樹林は,その伐採を最小限にとどめるとともに,原則
として,開発区域の面積の40%以上の面積(災害の保全又は環境の
保全上特に必要がある場合は,それに相応する面積)の土地が樹林地
として配置されていること。()
土砂の崩壊,浸食,雪崩等の災害の生ずるおそれのあるところは,
樹林が原状のまま保存されていること。()
皆伐する箇所にあっては,笹,低木,下草等の地被を存置し,でき
る限り表土の改変を行わないこと。()
整地を行った箇所は,地形,土壌,自然植生等の条件を考慮の上,
植栽等の緑化措置が講ぜられていること。()
開発区域の内周辺には,概ね20m以上の樹林帯が配置されている
こと。()
b工場用地(イ)(省略)
イ地盤及び擁壁に関する事項等(3ないし7)(省略)

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