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令和1(行ケ)2  選挙無効請求事件
令和元年10月24日  札幌高等裁判所  棄却
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求の趣旨
令和元年7月21日に行われた参議院(選挙区選出)議員選挙の北海道選挙
区における選挙を無効とする。
第2事案の概要等
1事案の概要
本件は,令和元年7月21日施行の参議院議員通常選挙(以下「本件選挙」
という。)について,北海道選挙区の選挙人である原告が,公職選挙法14条
1項,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定(以下,数次
の改正の前後を通じ,平成6年法律第2号による改正前の別表第2を含め,「定
数配分規定」という。)について,人口比例に基づいて定数配分をしておらず,
憲法56条2項,1条,前文1項1文冒頭に基づく人口比例選挙の要求に反し
無効であるから,これに基づき施行された本件選挙の北海道選挙区における選
挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟である。
2前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によ
り容易に認められる事実)
(1)本件選挙
ア本件選挙は,令和元年7月21日,平成30年法律第75号(以下「平
成30年改正法」という。)による公職選挙法の改正(以下「平成30年
改正」という。)後の定数配分規定に従って施行された。〔当事者間に争
いがない〕
イ原告は,本件選挙における北海道選挙区の選挙人である。〔当事者間に
争いがない〕
ウ本件選挙当日の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の較差は,
選挙人数が最少である福井県選挙区を1とした場合,最多である宮城県選
挙区は3.002(以下,概数で「3.00」と表記する。また,以下,
較差に関する数値は,全て概数である。)であった。〔乙1の1〕
(2)参議院の選挙制度の改正の経緯
参議院議員選挙法(昭和22年法律第11号)は,参議院議員の選挙につ
いて,参議院議員250人を全国選出議員100人と地方選出議員150人
とに区分し,全国選出議員については,全都道府県の区域を通じて選出され
るものとする一方,地方選出議員については,その選挙区及び各選挙区にお
ける議員定数を別表で定め,都道府県を単位とする選挙区において選出され
るものとした。そして,選挙区ごとの議員定数については,憲法が参議院議
員につき3年ごとにその半数を改選すると定めていることに応じて,各選挙
区を通じその選出議員の半数が改選されることとなるように配慮し,定数を
偶数として最小2人を配分する方針の下に,各選挙区の人口に比例する形で,
2〜8人の偶数の議員定数を配分した。昭和25年に制定された公職選挙法
の定数配分規定は,上記の参議院議員選挙法の議員定数配分規定をそのまま
引き継いでおり,その後に沖縄県選挙区の議員定数2人が付加されたほかは,
平成6年法律第47号による公職選挙法の改正(以下「平成6年改正」とい
う。)まで,上記定数配分規定に変更はなかった。なお,昭和57年法律第
81号による公職選挙法の改正(以下「昭和57年改正」という。)により,
参議院議員252人は各政党等の得票に比例して選出される比例代表選出議
員100人と都道府県選出議員152人とに区分されることになったが,こ
の選挙区選出議員は,従来の地方選出議員の名称が変更されたものにすぎな
い。その後,平成12年法律第118号による公職選挙法の改正(以下「平
成12年改正」という。)により,参議院議員の総定数が242人とされ,
比例代表選出議員96人及び選挙区選出議員146人とされた。さらに,平
成30年改正により,参議院議員の総定数が248人とされ,比例代表選出
議員100人及び選挙区選出議員148人とされた。〔乙2,乙3,弁論の
全趣旨〕
(3)選挙区間の選挙人数の較差及び最高裁判所大法廷判決の推移
ア参議院議員選挙法制定当時,選挙区間における議員1人当たりの人口の
最大較差(以下,各立法当時の「選挙区間の最大較差」というときは,こ
の人口の最大較差をいう。)は,2.62倍であったが,人口変動により
次第に拡大を続け,平成4年に施行された参議院議員通常選挙(以下,単
に「通常選挙」といい,この通常選挙を「平成4年選挙」という。)当時,
選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差(以下,各選挙当
時の「選挙区間の最大較差」というときは,この選挙人数の最大較差をい
う。)が6.59倍に達した後,平成6年改正における7選挙区の定数を
8増8減する措置により,平成2年10月実施の国勢調査結果による人口
に基づく選挙区間の最大較差は4.81倍に縮小した。その後,平成12
年改正における3選挙区の定数を6減する措置及び平成18年法律第52
号による公職選挙法の改正(以下「平成18年改正」という。)における
4選挙区の定数を4増4減する措置の前後を通じて,平成7年から平成1
9年までに施行された各通常選挙当時の選挙区間の最大較差は5倍前後で
推移した。〔乙2〜4,弁論の全趣旨〕
イ最高裁判所大法廷は,定数配分規定の合憲性に関し,最高裁昭和54年
(行ツ)第65号同58年4月27日大法廷判決・民集37巻3号345
頁において,後記第3の1の基本的な判断枠組みを示した後,平成4年選
挙について,違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態が生
じていた旨判示したが(最高裁平成6年(行ツ)第59号同8年9月11
日大法廷判決・民集50巻8号2283頁),平成6年改正後の定数配分
規定の下で施行された2回の通常選挙については,上記の状態に至ってい
たとはいえない旨判示した(最高裁平成9年(行ツ)第104号同10年
9月2日大法廷判決・民集52巻6号1373頁,最高裁平成11年(行
ツ)第241号同12年9月6日大法廷判決・民集54巻7号1997頁)。
その後,平成12年改正後の定数配分規定の下で施行された2回の通常選
挙及び平成18年改正後の定数配分規定の下で平成19年に施行された通
常選挙のいずれについても,最高裁判所大法廷は,上記の状態に至ってい
たか否かにつき明示的に判示することなく,結論において当該各定数配分
規定が憲法に違反するに至っていたとはいえない旨の判断を示した(最高
裁平成15年(行ツ)第24号同16年1月14日大法廷判決・民集58
巻1号56頁,最高裁平成17年(行ツ)第247号同18年10月4日
大法廷判決・民集60巻8号2696頁,最高裁平成20年(行ツ)第2
09号同21年9月30日大法廷判決・民集63巻7号1520頁)。も
っとも,上掲最高裁平成18年10月4日大法廷判決においては,投票価
値の平等の重要性を考慮すると投票価値の不平等の是正について国会にお
ける不断の努力が望まれる旨の,上掲最高裁平成21年9月30日大法廷
判決においては,当時の較差が投票価値の平等という観点からはなお大き
な不平等が存する状態であって,選挙区間における投票価値の較差の縮小
を図るためには現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となる旨の指
摘がそれぞれされるなど,選挙区間の最大較差が5倍前後で常態化する中
で,較差の状況について投票価値の平等の観点から実質的にはより厳格な
評価がされるようになっていた。〔乙2,弁論の全趣旨〕
ウ平成22年7月11日,選挙区間の最大較差が5.00倍の状況におい
て施行された通常選挙(以下「平成22年選挙」という。)につき,最高
裁平成23年(行ツ)第51号同24年10月17日大法廷判決・民集6
6巻10号3357頁(以下「平成24年大法廷判決」という。)は,結
論において同選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとは
いえないとしたものの,長年にわたる制度及び社会状況の変化を踏まえ,
参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退
してよいと解すべき理由は見いだし難く,都道府県が政治的に一つのまと
まりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年間にもわたり投票
価値の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものと
はいえなくなっており,都道府県間の人口較差の拡大が続き,総定数を増
やす方法を採ることにも制約がある中で,都道府県を各選挙区の単位とす
る仕組みを維持しながら投票価値の平等の要求に応えていくことはもはや
著しく困難な状況に至っているなどとし,それにもかかわらず平成18年
改正後は投票価値の大きな不平等がある状態の解消に向けた法改正が行わ
れることのないまま平成22年選挙に至ったことなどの事情を総合考慮す
ると,同選挙当時の最大較差が示す選挙区間における投票価値の不均衡は,
違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに,
都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき
形で改めるなど,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法
的措置を講じ,できるだけ速やかに違憲の問題が生ずる上記の不平等状態
を解消する必要がある旨を指摘した。〔甲5,乙4,弁論の全趣旨〕
エ平成24年大法廷判決の言渡し後,平成24年11月16日に公職選挙
法の一部を改正する法律案が成立し(平成24年法律第94号。以下「平
成24年改正法」という。),同月26日に施行された(以下,同法によ
る改正後,平成27年法律第60号による改正前の定数配分規定を「平成
24年定数配分規定」という。)。平成24年改正法の内容は,平成25
年7月に施行される通常選挙に向けた改正として選挙区選出議員について
4選挙区で定数を4増4減するものであり,その附則には,平成28年に
施行される通常選挙に向けて,選挙制度の抜本的な見直しについて引き続
き検討を行い,結論を得るものとする旨の規定が置かれていた。
平成25年7月21日,平成24年定数配分規定の下での初めての通常
選挙が施行された(以下「平成25年選挙」という。)。同選挙当時の選
挙区間の最大較差は4.77倍であった。〔乙2〜4,弁論の全趣旨〕
オ平成25年選挙につき,最高裁平成26年(行ツ)第155号,第15
6号同年11月26日大法廷判決・民集68巻9号1363頁(以下「平
成26年大法廷判決」という。)は,平成24年大法廷判決の判断に沿っ
て,平成24年改正法による前記4増4減の措置は,都道府県を各選挙区
の単位とする選挙制度の仕組みを維持して一部の選挙区の定数を増減する
にとどまり,現に選挙区間の最大較差については上記改正の前後を通じて
なお5倍前後の水準が続いていたから,投票価値の不均衡について違憲の
問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態を解消するには足りない
ものであったといわざるを得ず,したがって,平成24年改正法による上
記の措置を経た後も,選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が
生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに,都道府県を
単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改める
などの具体的な改正案の検討と集約が着実に進められ,できるだけ速やか
に,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によっ
て上記の不平等状態が解消される必要がある旨を指摘した。〔甲7,弁論
の全趣旨〕
カ平成27年7月28日,公職選挙法の一部を改正する法律案が成立し(平
成27年法律第60号。以下「平成27年改正法」という。),同年11
月5日に施行された(以下,同法による改正後の定数配分規定を「平成2
7年定数配分規定」という。)。平成27年改正法は,選挙区選出議員の
選挙区及び定数について,鳥取県及び島根県,徳島県及び高知県をそれぞ
れ合区して定数2人の選挙区とするとともに,3選挙区の定数を2人ずつ
減員し,5選挙区の定数を2人ずつ増員することなどを内容としており,
その附則7条には,平成31年(令和元年)に行われる通常選挙に向けて,
参議院の在り方を踏まえて,選挙区間における議員1人当たりの人口の較
差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討
を行い,必ず結論を得るものとするとの規定が置かれていた。
平成28年7月10日,平成27年定数配分規定の下での初めての通常
選挙が施行された(以下「平成28年選挙」という。)。同選挙当時の選
挙区間の最大較差は3.08倍であった。〔乙4,5の1,弁論の全趣旨〕
キ平成28年選挙につき,最高裁平成29年(行ツ)第47号同年9月2
7日付け大法廷判決・民集71巻7号1139頁(以下「平成29年大法
廷判決」という。)は,平成27年改正法について,従前の改正と異なり
参議院の創設以来初めて合区を行ったことにより,平成25年選挙当時ま
で数十年間にわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差が,平成
28年選挙当時には3.08倍にまで縮小するに至っていること,また,
その附則において,次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しに
ついて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨を定めていることなどの事情
を総合すれば,平成28年選挙当時,選挙区間の投票価値の不均衡は,違
憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとはいえない旨判示し
た。〔甲9〕
ク平成29年2月,参議院の組織及び運営に関する諸問題を調査検討する
ため,各会派代表による参議院改革協議会が設置され,さらに,同年4月,
同協議会の下に,参議院選挙制度改革について集中的に調査検討を進める
ために,各会派代表による「選挙制度に関する専門委員会」が設置された。
同専門委員会では,同年5月〜平成30年4月にかけて参議院の選挙制度
に関する協議が行われ,特に選挙制度の枠組みについては,ブロック選挙
区制や奇数配当の可否,連記制の導入等が議論された。同専門委員会は,
同年5月7日,意見を取りまとめた報告書を同協議会に提出した。
同協議会において,自由民主党から,〇乙脹〜挙区選出議員の定数を
2人増加して148人とした上で,二人を埼玉県に配分してその改選定数
を4人とし,選挙区間の人口に基づく最大較差を2.985倍とするとと
もに,∋乙脹“耄秣緝汁出議員の定数を4人増加して100人とし,比
例代表選挙において,名簿にあらかじめ順位を付する拘束式の特定枠を設
けることができる制度を導入することなどを内容とする制度の提案が提示
され,同年6月8日,同協議会において,同提案を参議院議長に報告する
ことが了承された。
その後,同提案と同内容の自由民主党・こころ及び無所属クラブによる
法律案(以下「自民党案」という。)のほか,全国を11の区域に分けて
大選挙区制を採用する公明党案など7会派から5法律案が発議され,いず
れも「参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会」に付託さ
れ,同年7月6日以降,質疑が行われ,同月11日,同特別委員会におい
て,自民党案が多数をもって可決すべきものと決定された。その際,自由
民主党及び公明党から,「今後の参議院選挙制度改革については,憲法の
趣旨にのっとり,参議院の役割及び在り方を踏まえ引き続き検討を行うこ
と」の実現に努めること等を内容とする附帯決議が提案され,同附帯決議
も多数をもって可決された。
平成30年7月18日,自民党案に係る平成30年改正法が成立し,同
年10月25日に施行された。平成30年改正の結果,平成27年実施の
国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は1対2.985と
なった。〔乙6〜16(枝番があるものは枝番も含む。),弁論の全趣旨〕
(4)平成28年選挙における鳥取・島根選挙区,徳島・高知選挙区の動向及び
合区解消を求める決議等
ア平成28年選挙において,初めて合区となった鳥取・島根選挙区でそれ
ぞれ地元の候補を支持する有権者の投票傾向が表れた。
イ鳥取・島根選挙区,徳島・高知選挙区において,島根県を除く3県では
過去最低の投票率を記録した。
ウ4県のうち,地元の候補がいなかった高知県では,無効票が,平成25
年選挙と比べ,5割近く増え,約1万8000票となった。〔ア〜ウにつ
き,乙18の8〕
エ上記ア〜ウを踏まえ,平成28年選挙後,平成30年改正までの間,全
国市長会,全国知事会,全国市議会議長会,全国町村長大会及び町村議会
議長全国大会は,合区の解消を求める決議をした。〔乙23の1〜3,乙
24の3,乙25の3・4,乙26の2・3〕
3争点
本件定数配分規定の合憲性
4原告の主張
(1)憲法56条2項,1条,前文1項1文冒頭は,人口比例選挙を要求してい
る。すなわち,憲法は,主権を有する国民が,人口比例選挙で選出された国
会議員を通じて,出席議員の過半数で両議院の議事を決定するという方法で,
主権を行使することを定めている。非人口比例選挙の場合には,国民の半数
未満から選出されたにすぎない国会議員が主権を行使し得ることになり,国
民が主権を有するとの憲法の規範に反することになる。
本件選挙における1票の投票価値の最大較差は,平成30年9月時点で1
対2.984倍であり,本件選挙は人口比例選挙ではない。
したがって,本件選挙は,憲法56条2項,1条,前文1項1文冒頭に違
反し無効である。
(2)人口比例選挙における選挙区割りは,技術的観点からみて,合理的に実施
可能な限度で行えば足りる。そして,その選挙区割りによる投票価値の平等
からの乖離が合理的であることの立証責任は被告にあるが,被告はその立証
ができていない。また,選挙区を都道府県単位とすることは憲法上の要請で
はないから,都道府県単位の選挙区割りをすることは合理性を欠いている。
(3)平成29年大法廷判決は,平成27年改正法が附則7条において投票価値
の較差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意を示していることを理
由に,平成28年選挙が違憲状態にないと判断している。しかし,その後成
立した平成30年改正法は,選挙制度の抜本的見直しをしておらず,投票価
値の較差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意が欠如している。
したがって,平成29年大法廷判決の判断基準に従えば,本件選挙は違憲
状態である。
(4)昭和22年〜平成17年の間に,衆議院の多数意見と参議院の多数意見が
異なったことが15回あるが,そのいずれについても,参議院の多数意見に
従った法案の修正等がされている。このように,参議院は,衆議院とともに
国権の最高機関として適切に民意を国政に反映する責務を負っているから,
参議院の通常選挙の投票価値の較差が衆議院の小選挙区選挙の投票価値の較
差に劣後する場合には,憲法の投票価値の平等の要求に反し違憲である。
そして,本件選挙における投票価値の最大較差は,平成29年の衆議院の
小選挙区選挙の投票価値の最大較差に劣後しているから,違憲である。
(5)定数配分規定が違憲状態であると判断された場合には,憲法98条1項に
より当該選挙を無効とすべきである。較差是正のための合理的期間が未経過
であることを理由に違憲状態の選挙を合憲とすることは,憲法98条1項に
違反する。
また,通常選挙を無効としても,参議院の定足数は満たされており,社会
的混乱が生じることはないから,違憲状態の選挙については,事情判決では
なく,選挙無効判決をすべきである。
5被告の主張
(1)原告の主張(1)〜(5)は,いずれも争う。
憲法56条2項,1条,前文1項1文が人口比例選挙を要求しているとの
原告の主張は,独自の見解にすぎない。
(2)憲法は投票価値の平等を要求しているが,選挙制度の仕組みの決定につい
ては国会に広範な裁量が認められているから,投票価値の平等は,国会が正
当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和
的に実現されるべきである。
憲法が二院制を採用した趣旨,参議院議員の選挙制度における技術的制約
等に照らすと,定数配分規定が違憲と評価されるのは,参議院の独自性その
他の政策的目的ないし理由を考慮しても,投票価値の平等の見地からみて違
憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じており,かつ,当該選挙ま
での期間内にその是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超える場
合に限られる。
(3)平成27年改正により投票価値の不平等は解消され,平成29年大法廷判
決も平成28年選挙について,違憲状態にあるとはいえないと判示した。そ
の後,平成30年改正により,最大較差は平成28年選挙当時よりもさらに
縮小している。
都道府県を構成する住民の意見を集約的に国政に反映させることができる
ような定数配分規定を定めることは,国会において正当に考慮することがで
きる政策的目的ないし理由になる。
また,立法府においては,都道府県等の意見を踏まえて,選挙制度の仕組
みを定めることも求められる。平成27年改正後,平成30年改正直前に至
るまで,都道府県等から合区導入の弊害を指摘し,合区解消を求める意見が
提出されていた。
立法府では,参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会の附
帯決議として,平成30年改正後も選挙制度改革に向けた検討を継続する決
意を表明しており,過去にあった大きな較差を生じさせない配慮をしている。
以上のほか,参議院議員については,半数が改選されるため定数の偶数配
分が求められるなどの技術的制約があること等を併せ考慮すると,本件選挙
当時,投票価値の不均衡が違憲状態であったとはいえない。
(4)平成29年大法廷判決は,平成28年選挙について,違憲状態にないと判
断した。本件選挙は,平成29年大法廷判決,更に平成30年改正後初めて
の通常選挙であり,最大較差も平成28年選挙当時から縮小していたことな
どを踏まえると,国会において,本件選挙までの間に投票価値の不均衡が違
憲状態に至っていたことを認識し得たとはいえない。
したがって,仮に本件選挙当時,投票価値の不均衡が違憲状態であったと
しても,本件選挙までの期間内に本件定数配分規定を改正しなかったことが
国会の裁量権の限界を超えるものとはいえない。
第3当裁判所の判断
1定数配分規定の合憲性の判断枠組み
憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の
投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解され
る。しかしながら,憲法は,国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映
させるために選挙制度をどのような制度にするかの決定を国会の裁量に委ねて
いるから,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準
となるものではなく,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ない
し理由との関連において調和的に実現されるべきである。それゆえ,国会が具
体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有する限り,それによ
って投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても,憲法に
違反するとはいえない。
憲法が二院制を採用し衆議院と参議院の権限及び議員の任期等に差異を設け
ている趣旨は,それぞれの議院に特色のある機能を発揮させることによって,
国会を公正かつ効果的に国民を代表する機関たらしめようとするところにある
と解される。参議院議員の選挙制度の仕組みは,このような観点から,参議院
議員について,全国選出議員(昭和57年改正後は比例代表選出議員)と地方
選出議員(同改正後は選挙区選出議員)に分け,前者については全国(全都道
府県)の区域を通じて選挙するものとし,後者については都道府県を各選挙区
の単位とした。昭和22年の参議院議員選挙法及び昭和25年の公職選挙法の
制定当時において,このような選挙制度の仕組みを定めたことが,国会の有す
る裁量権の合理的な行使の範囲を超えるものであったということはできない。
しかしながら,社会的,経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口変
動の結果,上記の仕組みの下で投票価値の著しい不平等が生じ,かつ,それが
相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが,
国会の裁量権の限界を超えると判断される場合には,当該定数配分規定が憲法
に違反するに至るものと解するのが相当である(平成29年大法廷判決参照)。
この点について,原告は,憲法56条2項,1条,前文1項1文が人口比例
選挙を保障している旨主張する。しかし,憲法が要求している投票価値の平等
は,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連に
おいて調和的に実現されるべきものであって,投票価値の平等のみが選挙制度
の仕組みを決定する唯一,絶対の基準になるとまでは解されない。したがって,
この点に関する原告の主張は認められない。
また,原告は,定数配分規定が違憲状態であると判断された場合には,直ち
に当該選挙を無効とすべきであり,較差是正のための合理的期間が未経過であ
ることを理由に当該選挙を合憲とすることはできない旨主張する。しかし,三
権分立制度の下では,裁判所は,選挙について違憲状態であると判断したとし
ても,それに代わる選挙制度を定めることはできず,憲法適合性に関する一定
の判断を示すことができるにとどまる。裁判所が指摘した違憲状態の是正は国
会の立法によらざるを得ず,その是正の方法について国会は広範な裁量を有し
ている。そのため,国会による違憲状態の是正には一定の期間を要することに
なっても,それは,憲法が三権分立制度を定めている以上,やむを得ない。し
たがって,この点に関する原告の主張は認められない。
2本件定数配分規定の合憲性
前記1の判断枠組みに従って,本件選挙当時の本件定数配分規定の合憲性を検
討する。
(1)投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至ってい
るか否か
ア憲法は,二院制の下で,一定の事項について衆議院の優越を認める反面,
参議院議員につき任期を6年の長期とし,解散もなく,選挙は3年ごとにそ
の半数について行うことを定めている(46条等)。その趣旨は,立法を始
めとする多くの事柄について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与えつつ,
参議院議員の任期をより長期とすること等によって,多角的かつ長期的な視
点からの民意を反映させ,衆議院との権限の抑制,均衡を図り,国政の運営
の安定性,継続性を確保しようとしたものと解される。そして,いかなる具
体的な選挙制度によって,上記の憲法の趣旨を実現し,投票価値の平等の要
請と調和させていくかは,二院制の下における参議院の性格や機能及び衆議
院との異同をどのように位置付け,これをそれぞれの選挙制度にいかに反映
させていくかという点を含め,国会の合理的な裁量に委ねられていると解す
べきである(平成29年大法廷判決参照)。
イそこで,本件定数配分規定の合憲性を検討するに当たって,まず,選挙制
度の構築について国会が有する裁量の具体的な内容を検討する。
憲法が国会の構成について二院制を採用し,衆議院と参議院の権限及び議
員の任期等に差異を設けている趣旨に鑑みれば,二院制の下での参議院の在
り方や役割を踏まえ,参議院議員につき衆議院議員とは異なる選挙制度を採
用し,国民各層の多様な意見を反映させて,参議院に衆議院と異なる独自の
機能を発揮させようとすることも,選挙制度の仕組みを定めるに当たって国
会に委ねられた裁量権の合理的行使として是認し得ると考えられる。そして,
具体的な選挙制度の仕組みを決定するに当たり,一定の地域の住民の意思を
集約的に反映させるという意義ないし機能を加味する観点から,政治的に一
つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を一つの要素とし
て考慮すること自体が否定されるべきとはいえず,投票価値の平等の要請と
の調和が保たれる限りにおいて,このような要素を踏まえた選挙制度を構築
することが直ちに国会の合理的な裁量を超えるものとは解されない(平成2
9年大法廷判決参照)。
なお,この点について,原告は,昭和22年〜平成17年の間に,衆議院
の多数意見と参議院の多数意見が異なったことが15回あり,そのいずれに
ついても,参議院の多数意見に従った法案の修正等がされていることを踏ま
えると,参議院の通常選挙の投票価値の較差が衆議院の小選挙区選挙の投票
価値の較差に劣後する場合には,直ちに違憲である旨主張し,本件選挙にお
ける投票価値の最大較差(前記前提事実(1)ウ)が,平成29年の衆議院の小
選挙区選挙の投票価値の最大較差(1.979〔最高裁判所平成30年(行
ツ)第153号平成30年12月19日大法廷判決・民集72巻6号124
0頁〕)よりも大きいことがうかがわれる。しかし,参議院と衆議院とでは,
その権限や選挙制度等が異なっているから,選挙制度を構築する際に国会が
正当に考慮することのできる要素も当然に異なる。そうすると,単に参議院
の通常選挙の投票価値の較差が衆議院の小選挙区選挙の投票価値の較差に劣
後していることのみをもって直ちに違憲であるということはできず,衆議院
の小選挙区選挙の投票価値の較差に劣後していたとしても,他の政策的目的
ないし理由を考慮した結果,なお,国会の有する裁量権の合理的な行使の範
囲を超えない場合もあり得る。したがって,この点に関する原告の主張は認
められない。
ウもっとも,政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や
実体等を踏まえた選挙制度を構築することが直ちに国会の合理的な裁量を超
えるものとは解されないとしても,次のような参議院の役割等を考慮すべき
である。すなわち,参議院と衆議院が,いずれも政党に重きを置いた選挙制
度を旨とする改正が行われている上,都道府県又はそれを細分化した地域を
選挙区とする選挙と,より広範な地域を選挙の単位とする比例代表選挙との
組合せという類似した選出方法が採られ,その結果として同質的な選挙制度
となっている。このような選挙制度の変遷とともに,急速に変化する社会の
情勢の下で,議員の長い任期を背景に国政の運営における参議院の役割がこ
れまでにも増して大きくなってきているということができる。これに加えて,
衆議院については,この間の改正を通じて,投票価値の平等の要請に対する
制度的な配慮として,選挙区間の人口較差が2倍未満となることを基本とす
る旨の区割りの基準が定められていることにも照らすと,参議院についても,
二院制を定めている憲法の趣旨との調和の下に,更に適切に民意が反映され
るよう投票価値の平等の要請について十分に配慮することが求められる。こ
のような参議院の役割等に照らすと,参議院は,衆議院とともに国権の最高
機関として適切に民意を国政に反映する機関としての責務を負っていること
は明らかであるから,参議院議員の選挙であること自体から,直ちに投票価
値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見出し難い(平成26年大
法廷判決,平成29年大法廷判決参照)。
エ以上を踏まえて,本件選挙について,投票価値の不均衡が著しい不平等状
態に至っているかを検討する。
前記前提事実(3)アのとおり,参議院議員選挙法制定当時,選挙区間におけ
る議員1人当たりの人口の最大較差は2.62倍であったが,その後,人口
の変動により,都道府県間の人口較差が著しく拡大したことに伴って,長年
にわたって選挙区間の最大較差が拡大した状態が継続していた。しかし,都
道府県を選挙区の単位としなければならないという憲法上の要請はなく,参
議院が国政において果たしている役割に照らすと,前記ウのとおり,参議院
の選挙であること自体から,直ちに投票価値の平等が後退してよいと解すべ
き理由は見出し難い。確かに,一定の地域の住民の意思を集約的に国政に反
映させるために,政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意
義や実体等を一つの要素として考慮することは否定すべきでないが,このよ
うな要素は,投票価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて,考慮
することが許されるべきと解される。
そして,本件選挙当時の選挙区間の最大較差は3.00倍に達している。
本件選挙において,このような較差が生じた主な原因は,平成27年改正に
より合区の対象とされた選挙区を除いて都道府県を各選挙区の単位とする仕
組みが原則とされていることにあるといえる。しかし,投票価値の平等の要
請が憲法上の要請であるのに対して,都道府県を通常選挙の選挙区の単位と
すべきことは憲法上の要請ではないことからすると,平成24年大法廷判決
及び平成26年大法廷判決が説示するとおり,都道府県を選挙区の単位とす
る仕組み自体の見直しが必要であるというべきであり,本件選挙の時点にお
いて,そのような仕組み自体の見直しがされているとは評価できず,3.0
0倍に達している最大較差を正当化すべき政策的目的ないし理由は認められ
ない。
以上を考慮すると,本件選挙当時における投票価値の不均衡は,違憲の問
題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていると認められる。
オこの点について,被告は,本件選挙の前回選挙である平成28年選挙につ
いて,平成29年大法廷判決が違憲状態にあるとはいえないと判示している
こと,本件選挙当時の最大較差は平成30年改正により平成28年選挙当時
よりも更に縮小していることを指摘し,本件選挙当時,投票価値の不均衡が
違憲状態であったとはいえない旨主張する。
この点について,平成29年大法廷判決は,平成27年改正により長年に
わたって継続してきた投票価値の不均衡が是正されたことのほか,平成27
年改正法が,その附則において,本件選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直
しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨を定めていること等の事情
を総合して,定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないと判
示した。平成29年大法廷判決が,定数配分規定を合憲と判断した理由のう
ち,平成27年改正法の附則において,選挙制度の抜本的な見直しについて
必ず結論を得る旨が定められていた点についてみると,平成27年改正法施
行後になされた選挙制度の見直しは,前記前提事実(3)クの平成30年改正に
とどまっている。平成30年改正は,選挙区間の較差是正を目指したもので
はあるものの,抜本的見直しと評価できるものとはいえず,本件選挙の時点
において,今後,投票価値の較差が縮小に向かうと期待できる客観的状況が
あるとはいえない。そうすると,平成29年大法廷判決が3.08倍の最大
較差について合憲と判示し,その後,較差が縮小しているとしても,それを
もって本件選挙当時の最大較差を正当化できるものではない。
また,被告は,立法府においては,都道府県等の意見を踏まえて,選挙制
度の仕組みを定めることも求められると主張し,平成27年改正後,平成3
0年改正直前に至るまで,都道府県等から合区導入の弊害を指摘し,合区解
消を求める意見が提出されていたと指摘する。
この点,平成28年選挙において,合区となった選挙区において,合区に
伴う副作用とも解釈し得る現象があり,全国市長会や全国知事会等の団体が
合区解消を求める決議をしたことが認められる(前記前提事実(4))。
しかし,これらの事実は,投票価値の不均衡解消の困難性を示す事実とし
て,後記(2)において考慮し得る事項であるとしても,投票価値の最大較差を
正当化し得る事情あるいは今後,投票価値の較差が縮小に向かうと期待でき
る客観的状況に当たるとはいえない。
したがって,これらの点に関する被告の主張は認められない。
(2)違憲状態が本件選挙までの期間内に是正されなかったことが国会の裁量権の
限界を超えているか否か
ア定数配分規定の違憲状態が本件選挙までの期間内に是正されなかったこと
が国会の裁量権の限界を超えているか否かを検討するに当たっては,憲法の
規定する三権分立制度の下における司法権と立法権の関係に照らすと,単に
期間の長短のみならず,是正のために採るべき措置の内容,そのために検討
を要する事項,実際に必要となる手続や作業等の諸般の事情を総合考慮して,
国会における是正の実現に向けた取組が司法の判断の趣旨を踏まえた裁量権
の行使の在り方として相当なものであったといえるか否かという観点に立っ
て評価すべきものと解される(平成26年大法廷判決)。
イ以上を踏まえて,本件選挙について検討する。
通常選挙における投票価値の不均衡については,平成29年大法廷判決に
おいて,平成27年改正法の附則において,本件選挙に向けて選挙制度の抜
本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨を定めているこ
と等の事情を総合して,定数配分規定が憲法に違反するに至っているとはい
えない旨が判断されている。そうすると,国会は,平成29年大法廷判決が
言い渡された平成29年9月27日の時点において,定数配分規定は合憲で
はあるものの,本件選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて結論を
得る必要があることを認識し得た。
そして,選挙制度の抜本的な見直しを図るためには,これまで長年にわた
って都道府県を単位とする選挙区が設定されていたものを変更する必要があ
る。このような選挙制度の見直しを実現するに当たっては,都道府県を単位
とする選挙制度の見直しに対する反対意見も多いこと,都道府県を単位とす
る選挙制度が憲法上の要請ではないとしても,各都道府県の住民の意思を集
約的に国政に反映させる必要性は大きいというべきであり,都道府県を単位
とする選挙区を採らない場合に,これに代わる選挙制度を構築することは容
易ではなく,拙速な見直しがされた場合には民主主義の実現に弊害が生じ得
ることを考慮すると,選挙制度の見直しのための手続や作業には相応の時間
を要するといえる。
実際,前記(1)オにおいても説示したとおり,平成28年選挙において,合
区となった選挙区において,合区に伴う副作用とも解釈し得る現象があり,
全国市長会や全国知事会等の団体が合区解消を求める決議をしたことが認め
られる(前記認定事実(4))。これらの事実は,選挙制度の見直しのための手
続や作業には相応の時間を要することを具体的にうかがわせるということが
できる。
また,国会は,平成29年大法廷判決の言渡し後も,選挙制度の見直しに
ついて議論を続け,抜本的な見直しとまでは評価できないものの,平成30
年改正法を成立させ,選挙区間の較差を是正するとともに,平成30年改正
法の審議の過程において,参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別
委員会において,今後の参議院選挙制度改革については,憲法の趣旨にのっ
とり,参議院の役割及び在り方を踏まえ引き続き検討を行うことの実現に努
めること等を内容とする附帯決議が可決されており,国会は,引き続き選挙
制度の見直しの必要性があることを認識していると認められる。
以上によれば,本件選挙は,違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい
不平等状態の下で施行されたものではあるが,投票価値の不均衡について合
憲状態であると判断された平成29年大法廷判決から約1年10か月の間に,
不十分ではあるが平成30年改正による選挙制度の見直しがなされているこ
と,都道府県単位の選挙区に代わる選挙制度の構築は容易ではないことを考
慮すると,国会における是正の実現に向けた取組が国会の裁量権の行使の在
り方として相当なものでなかったということはできず,本件選挙までの間に
抜本的な選挙制度の見直しがなされなかったことをもって国会の裁量権の限
界を超えるものということはできない。そして,この判断は,本件選挙にお
ける投票価値の最大較差(前記前提事実(1)ウ)が,平成29年の衆議院の小
選挙区選挙の投票価値の最大較差に劣後することを加味して考慮しても,左
右されない。
3まとめ
以上によれば,)楫鐐挙の時点において,本件定数配分規定の下での投票
価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っており,
違憲状態であったと認められるが,違憲状態が本件選挙までの期間内に是正
されなかったことが国会の裁量権の限界を超えているとはいえず,本件定数配
分規定が憲法に違反するとは認められない。
したがって,本件定数配分規定に基づいて施行された本件選挙の北海道選挙
区における選挙は無効ではない。
第4結論
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判
決する。
札幌高等裁判所第3民事部
裁判長裁判官 冨田一彦
裁判官 目代真理
裁判官 宮純一郎

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