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昨年の衆院選、一票の格差1.98倍「合憲」 札幌高裁

 「一票の格差」が最大で1・98倍だった昨年10月の衆院選を巡って、「選挙区で投票の価値が異なるのは憲法違反だ」として、北海道内の12選挙区の有権者が選挙の無効を求めた訴訟の判決が6日、札幌高裁であった。竹内純一裁判長は「合憲」と判断した。
 昨年の衆院選をめぐり、弁護士グループが全国14の高裁・支部に提訴している。この日までに判決があった計9件は全て「合憲」となった。
 一票の格差をめぐっては、最大格差が2倍超となった2009、12、14年の衆院選について、最高裁はいずれも「違憲状態」と判断。国会は昨年、小選挙区の定数を「0増6減」させる法律を成立させ、19都道府県の97選挙区で区割りが見直された。この結果、14年衆院選で最大2・13倍だった格差は同1・98倍に縮小した。
(2/6(火) 13:39 朝日新聞)

1票の格差 東京、札幌も「合憲」 「2倍未満が実現」

 「1票の格差」が最大1.98倍になった2017年の衆院選は投票価値の平等を求める憲法に反するとして、弁護士グループが選挙無効を求めた訴訟の判決で、札幌高裁(竹内純一裁判長)と東京高裁(大段亨裁判長)は6日、ともに小選挙区の区割りを「合憲」と判断し、請求を棄却した。原告側はいずれも上告する。
 二つの弁護士グループが全国14の高裁・高裁支部に起こした計16件の訴訟は、今回の2判決により10件連続で合憲となった。
 提訴していたのは、札幌が升永英俊弁護士、東京が山口邦明弁護士の各グループ。札幌では北海道の全12選挙区、東京では東京都と神奈川県の計6選挙区の選挙無効を求めた。
 今回、札幌高裁の竹内裁判長はアダムズ方式の導入を評価した上で、2倍未満とした区割りについて「憲法が要求する投票価値の平等を最大限尊重している」などと述べた。判決後、升永弁護士は「格差が2倍以上ではないから合憲という非常に不条理な判決だ」と語った。
 東京高裁の大段裁判長は「最大格差を2倍未満とする結果が実現されている」と評価。判決後、山口弁護士は「米国では可能な限り1対1を目指すとされている。2倍という線引きに合理性があるのか。最高裁で徹底的に戦いたい」と話した。【澤俊太郎、近松仁太郎】
高裁での「合憲」 初めて過半数に
 2017年の衆院選を巡る1票の格差訴訟は全16件のうち10件が「合憲」となり、升永弁護士のグループが全国一斉提訴を始めた09年の衆院選以降、初めて高裁段階での合憲判断が過半数となった。いずれも上告される見通しで、今後出される6件の判断も踏まえ、最高裁が判断を示すことになる。
 1票の格差訴訟は、越山康弁護士(故人)と山口弁護士らのグループが1960年代に始めた。09年以降は升永弁護士らのグループが全国の高裁で一斉提訴を続け、以後6回の国政選挙に関する高裁判決では、いずれの選挙についても「違憲」と「違憲状態」の合計が過半数を占めた。
 今回、各高裁は、94年に施行された衆院選挙区画定審議会設置法が定める「格差は2倍未満」が初めて実現された点を評価した。また、近年の最高裁判決が格差拡大の主因とみていた47都道府県に1議席を割り振る「1人別枠方式」についても、選挙前の区割り改定によって「実質的に解決された」(名古屋高裁金沢支部)などと指摘した。
 只野雅人・一橋大教授(憲法学)は各高裁の判決について「格差2倍以上の選挙区がゼロになった点に加え、国会がアダムズ方式導入を決めたことについて、将来にわたり2倍を超えない具体的な仕組みができたと評価したのだろう。格差2倍未満を維持できない『仕組み』を問題視してきた最高裁の趣旨に沿う判断だ」と理解を示した。【伊藤直孝】
(2018年2月6日 22時28分(最終更新 2月6日 22時28分) 毎日新聞)

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平成29(行ケ)1  選挙無効請求
主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求の趣旨
1平成29年10月22日に行われた衆議院(小選挙区選出)議員選挙の北海
道第1区ないし第12区における選挙をいずれも無効とする。
2訴訟費用は被告の負担とする。
第2事案の概要
1本件は,平成29年10月22日施行の衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」
という。)について,北海道第1区ないし第12区の選挙人である原告らが,衆
議院小選挙区選出議員の選挙(以下「小選挙区選挙」という。)の選挙区割りに
関する公職選挙法の規定は憲法に違反し無効であるから,これに基づき施行さ
れた本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であるなどと主張して提起し
た選挙無効訴訟である。
2前提事実
(1)当事者等(争いがない)
原告Aは本件選挙の北海道第1区の,同Bは同第2区の,同Cは同第3区
の,同Dは同第4区の,同Eは同第5区の,同Fは同第6区の,同Gは同第
7区の,同Hは同第8区の,同Iは同第9区の,同Jは同第10区の,同K
は同第11区の,同Lは同第12区の各選挙人である。
(2)本件選挙(争いがない)
本件選挙は,平成29年法律第58号(以下「平成29年改正法」という。)
による改正後の公職選挙法13条1項及び別表第1(以下「本件区割規定」
といい,これによる選挙区割りを「本件選挙区割り」という。)の下で施行さ
れた。
本件選挙区割りの下において,平成27年実施の簡易国勢調査(以下「平
成27年簡易国勢調査」という。)の結果によれば,選挙区間の人口の最大較
差は人口が最も少ない鳥取県第2区と人口が最も多い神奈川県第16区との
間で1対1.956(以下,較差に関する数値は概数である。),鳥取県第2
区と原告らがそれぞれ所属する北海道第1区ないし第12区との間で1対1.
100ないし1.937であり,較差が2倍以上となっている選挙区は0だ
った。
また,本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は,選挙人数
の最も少ない鳥取県第1区と選挙人数の最も多い東京都第13区との間で1
対1.979,鳥取県第1区と原告らがそれぞれ所属する北海道第1区ない
し第12区との間で1対1.112ないし1.965であり,較差が2倍以
上となっている選挙区は0だった。
(3)選挙区割りの変遷等(弁論の全趣旨及び顕著な事実)
ア旧区画審設置法3条等
平成6年1月に公職選挙法の一部を改正する法律(平成6年法律第2号)
と同時に成立した衆議院議員選挙区画定審議会設置法(以下,後記の改正
の前後を通じて「区画審設置法」という。)によれば,衆議院議員選挙区
画定審議会(以下「区画審」という。)は,衆議院小選挙区選出議員の選
挙区の改定に関し,調査審議し,必要があると認めるときは,その改定案
を作成して内閣総理大臣に勧告するものとされている(同法2条)。平成
24年法律第95号(以下「平成24年改正法」という。)による改正前
の区画審設置法3条(以下「旧区画審設置法3条」という。)は,上記の
選挙区の区割りの基準(以下,後記の改正の前後を通じて「区割基準」と
いう。)につき,。厩爐砲いて,上記の改定案を作成するに当たっては,
各選挙区の人口の均衡を図り,各選挙区の人口のうち,その最も多いもの
を最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを
基本とし,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行
わなければならないものと定めるとともに,■温爐砲いて,各都道府県
の区域内の選挙区の数は,各都道府県にあらかじめ1を配当することとし
(以下,このことを「1人別枠方式」という。),この1に,小選挙区選出
議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例し
て各都道府県に配当した数を加えた数とすると定めていた(以下,この区
割基準を「旧区割基準」という。)。
イ平成21年選挙及び平成23年大法廷判決
区画審は,平成12年10月に実施された国勢調査(以下「平成12年
国勢調査」という。)の結果に基づき,平成13年12月,衆議院小選挙
区選出議員の選挙区割りを策定した改定案を作成して内閣総理大臣に勧
告し,これを受けて,平成14年7月,その勧告どおり選挙区割りの改定
を行うことなどを内容とする公職選挙法の一部を改正する法律(平成14
年法律第95号)が成立した。平成21年8月30日施行の衆議院議員総
選挙(以下「平成21年選挙」という。)の小選挙区選挙は,同法により
改定された選挙区割り(以下「旧選挙区割り」という。)の下で施行され
たものである(以下,平成21年選挙に係る衆議院小選挙区選出議員の選
挙区を定めた上記改正後(平成24年改正法による改正前)の公職選挙法
13条1項及び別表第1を併せて「旧区割規定」という。)。
上記改定の結果,旧選挙区割りの下において,平成12年国勢調査の結
果によれば,選挙区間の人口の最大較差は1対2.064であり,高知県
第1区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は9選挙区であった。
また,平成21年選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は,1
対2.304であり,高知県第3区と比べて較差が2倍以上となっている
選挙区は45選挙区であった。
このような状況の下で旧選挙区割りに基づいて施行された平成21年選
挙について,最高裁平成22年(行ツ)第207号同23年3月23日大
法廷判決・民集65巻2号755頁(以下「平成23年大法廷判決」とい
う。)は,選挙区の改定案の作成に当たり,選挙区間の人口の最大較差が
2倍未満になるように区割りをすることを基本とすべきものとする旧区
画審設置法3条1項の定めは,投票価値の平等の要請に配慮した合理的な
基準を定めたものであると評価する一方,平成21年選挙時において,選
挙区間の投票価値の較差が上記のとおり拡大していたのは,各都道府県に
あらかじめ1の選挙区数を割り当てる同条2項の1人別枠方式がその主
要な要因となっていたことが明らかであり,かつ,人口の少ない地方にお
ける定数の急激な減少への配慮等の視点から導入された1人別枠方式は
既に立法時の合理性が失われていたものというべきであるから,旧区割基
準のうち1人別枠方式に係る部分及び旧区割基準に従って改定された旧
区割規定の定める旧選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する
状態に至っていたと判示した。そして,同判決は,これらの状態につき憲
法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,旧
区割基準を定めた旧区画審設置法3条の規定及び旧区割規定が憲法14
条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で,
事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に上記の状態を解
消するために,できるだけ速やかに旧区割基準中の1人別枠方式を廃止し,
旧区画審設置法3条1項の趣旨に沿って旧区割規定を改正するなど,投票
価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があると判示した。
ウ平成24年改正法
その後,旧区画審設置法3条2項の削除及びいわゆる0増5減(各都道
府県の選挙区数を増やすことなく議員1人当たりの人口の少ない5県の
各選挙区数をそれぞれ1減ずることをいう。以下同じ。)を内容とする平
成24年改正法が,同年11月16日に成立した。平成24年改正法は,
附則において,上記0増5減を前提に,区画審が選挙区間の人口の較差が
2倍未満となるように選挙区割りを改める改定案の勧告を公布日から6
か月以内に行い,政府がその勧告に基づいて速やかに法制上の措置を講ず
べき旨を定めた。上記の改正により,1人別枠方式を定めた旧区画審設置
法3条2項が削除され,同条1項が同改正後の区画審設置法3条(以下「新
区画審設置法3条」という。)となり,同条においては前記ア,隆霆爐
みが区割基準として定められている(以下,この区割基準を「新区割基準」
という。)。
エ平成24年選挙
平成24年改正法の成立と同日に衆議院が解散され,その1か月後の平
成24年12月16日に衆議院議員総選挙(以下「平成24年選挙」とい
う。)が施行されたが,同選挙までに新たな選挙区割りを定めることは時
間的に不可能であったため,同選挙は平成21年選挙と同様に旧区割規定
及びこれに基づく旧選挙区割りの下で施行されることとなった。
オ平成25年改正法
平成24年改正法の成立後,同法の附則の規定に従って区画審による審
議が行われ,平成25年3月28日,区画審は,内閣総理大臣に対し,選
挙区割りの改定案の勧告を行った。この改定案は,平成24年改正法の附
則の規定に基づき,各都道府県の選挙区数の0増5減を前提に,選挙区間
の人口の較差が2倍未満となるように17都県の42選挙区において区
割りを改めることを内容とするものであった。
上記勧告を受けて,平成25年6月24日,平成24年改正法の一部を
改正する法律案が平成25年法律第68号(以下「平成25年改正法」と
いう。)として成立した。平成25年改正法は同月28日に公布されて施
行され,同法による改正後の平成24年改正法中の上記0増5減及びこれ
を踏まえた区画審の上記改定案に基づく選挙区割りの改定を内容とする
公職選挙法の改正規定は平成25年7月28日から施行されており,この
改正により,各都道府県の選挙区数の0増5減とともに上記改定案のとお
りの選挙区割りの改定が行われた(以下,上記改正後の公職選挙法13条
1項及び別表第1を併せて「新区割規定」といい,新区割規定に基づく上
記改定後の選挙区割りを「新選挙区割り」という。)。
上記改定の結果,新選挙区割りの下において,平成22年10月1日を
調査時とする国勢調査(以下「平成22年国勢調査」という。)の結果に
よれば,選挙区間の人口の最大較差は1対1.998となるものとされた
が,平成25年3月31日現在及び平成26年1月1日現在の各住民基本
台帳に基づいて総務省が試算した選挙区間の人口の最大較差はそれぞれ
1対2.097及び1対2.109であり,上記試算において較差が2倍
以上となっている選挙区はそれぞれ9選挙区及び14選挙区であった。
カ平成25年大法廷判決
平成24年改正法が成立した日の衆議院解散により施行された平成24
年選挙につき,最高裁平成25年(行ツ)第209号,第210号,第2
11号同年11月20日大法廷判決・民集67巻8号1503頁(以下「平
成25年大法廷判決」という。)は,同選挙時において旧区割規定の定め
る旧選挙区割りは平成21年選挙時と同様に憲法の投票価値の平等の要
求に反する状態にあったものではあるが,前記ウのような平成24年選挙
までの間の国会における是正の実現に向けた取組が平成23年大法廷判
決の趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものでなかったとは
いえないから,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかっ
たとはいえず,旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するも
のということはできないとした上で,国会においては今後も新区画審設置
法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられて
いく必要があると判示した。
キ平成26年選挙及び平成27年大法廷判決
平成26年11月21日の衆議院解散に伴い,同年12月14日,前記
0増5減の措置による改定を経た新選挙区割りの下において衆議院議員
総選挙(以下「平成26年選挙」という。)が施行された。平成26年選
挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.129であり,
較差が2倍以上となっている選挙区は13であった。
このような状況において新選挙区割りの下で施行された平成26年選挙
について,最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷
判決・民集69巻7号2035頁(以下「平成27年大法廷判決」といい,
平成23年大法廷判決及び平成25年大法廷判決と併せて「平成27年大
法廷判決等」という。)は,新選挙区割りは,新区画審設置法3条の趣旨
に沿ったものということができず,なお憲法の投票価値の平等の要求に反
する状態にあったといわざるを得ないが,前記ウ及びオのような国会にお
ける是正の実現に向けた取組が平成23年大法廷判決及び平成25年大
法廷判決の趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものでなかっ
たとはいえないから,憲法上要求される合理的期間内における是正がされ
なかったとはいえず,新区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反
するものということはできないとした上で,国会においては今後も新区画
審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続け
られていく必要があると判示した。
ク平成28年改正法
衆議院に議長の諮問機関として設けられた,学識経験者,マスコミ関係
者,元最高裁判所判事等を委員とする「衆議院選挙制度に関する調査会」
の答申を受けて,平成28年5月20日,区画審設置法及び公職選挙法の
一部を改正する法律(平成28年法律第49号。以下「平成28年改正法」
という。また,平成24年改正法,平成25年改正法,平成28年改正法
及び平成29年改正法による改正を併せて「平成29年改正等」という。)
が成立した。
平成28年改正法は,/袈莢菴垣瀉嵋。馨鬘厩爐髻ざ莢菴海小選挙区
選挙の選挙区の改定に関して改定案を作成するに際しては,平成32年以
降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づいて,各選挙区間の
人口の最大較差が2倍以上にならないようにすることとし(新区画設置法
3条にあった「を基本」とするとの文言は削除されている。),行政区画,
地勢,交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないも
のと改めること(以下「現区画審設置法3条1項」といい,この区割基準
を「本件区割基準」という。),⊇圧脹ゝ聴の定数を10人(小選挙区選
出議員6人,比例代表選出議員4人)削減すること,6莢菴海蓮な神2
7年簡易国勢調査の結果に基づいて,各選挙区の人口に関し,将来の見込
人口を踏まえ,平成32年までの5年間を通じて較差2倍未満となるよう
な区割りの改定案の作成及び勧告を行い,政府は,同勧告に基づき,速や
かに,必要な法制上の措置を講ずるものとすること,ぞ選挙区選挙の定
数6減の対象県について,平成27年簡易国勢調査に基づき,アダムズ方
式(各都道府県の人口を一定の数値で除し,それぞれの商の整数に小数点
以下を切り上げて得られた数の合計数が小選挙区選挙の定数と一致する
ように行う方式)により都道府県別定数を計算した場合に減員対象となる
都道府県のうち,議員1人当たり人口の最も少ない都道府県から順に6県
とすることなどを内容とするものであった(0増6減(各都道府県の選挙
区数を増やすことなく議員1人当たりの人口の少ない6県の各選挙区数
をそれぞれ1減ずることをいう。以下同じ。))。
ケ平成29年改正法
平成28年改正法の成立後,同法の附則の規定に従って区画審による審
議が行われ,平成29年4月19日,区画審は,内閣総理大臣に対し,選
挙区割りの改定案の勧告を行った(以下「本件勧告」という。)。
この改正案は,0増6減を前提に平成27年簡易国勢調査に基づく選挙
区間の人口の最大較差を2倍未満(1.956倍),平成32年見込人口
に基づく選挙区間の人口の最大較差も2倍未満(1.999倍)となるよ
うに19都道府県の97選挙区において選挙区割りを改めることを内容
とするものである。
本件勧告を受けて,平成29年6月9日,区画審設置法及び公職選挙法
の一部を改正する法律の一部を改正する法律(平成29年改正法)が成立
した。平成29年改正法は同月16日に公布されて施行され,同法による
改正後の平成28年改正法中の上記0増6減及びこれを踏まえた本件勧
告に基づく選挙区割りの改定を内容とする公職選挙法の改正規定は平成
29年7月16日から施行された。
平成29年改正法により,平成27年簡易国勢調査に基づく選挙区間の
人口の最大較差は1.956倍,各都道府県間の1人当たりの人口の最大
較差も1.844倍となり,平成32年見込人口においても,選挙区間の
人口の最大較差は1.999倍となった。
3原告らの主張
(1)本件選挙区割りが憲法に違反していることについて
ア憲法56条2項,1条,前文第1文は,両議院の出席議員の過半数が必
ず主権者(国民)の過半数から選出されることを要求しており,これを実
現するためには,国会議員の選挙を人口に比例する選挙区割りによって実
現すること(人口比例選挙)が必要不可欠である。
この点,アメリカ合衆国のペンシルバニア州,ニューメキシコ州及びフ
ロリダ州の連邦下院議員選挙の選挙区割りは最大1人の較差しか認めて
いない(甲6の1及び2,甲16,17)。イギリスでは,約1.1倍ま
での較差しか認められていない。日本でも,選挙区間の人口較差を均一化
しようと誠実に努力すれば,較差は最大1.00008倍まで圧縮するこ
とが可能である(甲19)。
国会は,投票価値の平等を害するような内容の選挙区割りを行うような
立法裁量権を有しない。
したがって,選挙区間の人口に最大1.956倍もの較差を生じさせる
本件選挙区割りは,人口比例選挙を保障した憲法に違反するものである。
イ本件選挙区割りのうち,0増6減の対象とならなかった41都道府県に
おいては,平成27年大法廷判決等において憲法の投票価値の平等の要求
に反するとされた1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項が削除
された後の新区割基準又は本件区割基準に基づいた定数の再配分が行わ
れていない。なお,平成22年国勢調査に基づいて全面的に議席の再配分
をした場合,上記0増6減の他に7増7減(12都県)が必要になるが,
そのような再配分が行われた場合に配分されるべき定数とは異なる定数
配分が残ったままである。
すなわち,上記41都道府県又は12都県においては,未だ1人別枠方
式が廃止されていないというべきである。都道府県間において投票価値の
不平等を生じさせることに合理性はなく,本件選挙区割りは憲法に違反し
ている。
ウ選挙区割りが,投票価値の平等から乖離している場合,被告においてそ
の乖離が合理的であることを立証すべきであって,係る立証がない場合,
当該選挙区割りは憲法に違反するものというべきである。
(2)本件選挙区割りが憲法違反である以上,合理的期間内に是正がなされたか
否かを問うまでもなく,憲法違反と判断すべきことについて
ア憲法98条1項は,憲法に違反する国務に関するその他の行為を無効と
する。選挙も国務に関する行為であるから,憲法に反する本件選挙区割り
に基づいて実施された本件選挙は,合理的期間内に是正がなされたか否か
を問うまでもなく,当然に無効とすべきである。
イ仮に憲法上合理的期間内における是正がなされなかった場合に本件選挙
区割りが憲法の規定に違反するに至っているとされるとしても,既に合理
的期間は経過している。
すなわち,本件選挙区割りのうち,0増6減の対象とならなかった41
都道府県又は12都県における選挙区割りについて,1人別枠方式を定め
た旧区画審設置法3条2項が削除された後の新区割基準又は本件区割基
準に基づいた定数の再配分が行われておらず,憲法の投票価値の平等の要
求に反する状態にあることを,国会が認識し得たのは,平成23年大法廷
判決の言渡しがされた平成23年3月23日である。
にもかかわらず,国会は,6年半以上が経過してなされた本件選挙時に
おいても,上記定数の再配分を行っていないから,憲法上要求される合理
的期間における是正がなされなかったものというべきである。
(3)本件選挙を無効とすべきことについて
本件選挙を無効として,小選挙区選出議員が資格を喪失したとしても,他
に比例代表選出議員がいることなどから,社会的混乱が生じることはあり得
ない。
4被告の主張
(1)本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていな
いことについて
ア選挙制度の決定は国会の広範な裁量に委ねられており,投票価値の平等
は,選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準となるものではない。選挙区
間の最大較差が2倍未満となる区割規定の定める選挙区割りは,国会にお
いて通常考慮し得る諸般の要素を斟酌した,一般に合理性を有するもので
ある。
イ平成27年大法廷判決等の趣旨に沿って選挙区間の最大較差を2倍未満
とすること等を内容とする平成29年改正等が行われたことにより,その
後の選挙区割りは投票価値の平等の要求に反する状態にあるとはいえな
い。
平成29年改正法等は,投票価値の平等の要請を国会が正当に考慮でき
る政策的要素との関連において調和的に実現したものであって,十分な合
理性を有するものである。
(2)憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえない
ことについて
仮に本件選挙区割りが投票価値の平等の要求に反する状態にあると判断さ
れたとしても,平成29年改正等は,平成27年大法廷判決等の趣旨を踏ま
えた立法裁量権の行使として相当なものであり,国会において,本件区割規
定の定める本件選挙区割りが違憲状態にあるとは全く認識できない状態にあ
ったから,本件区割規定の定める本件選挙区割りが憲法の規定に違反するに
至っているということはできない。
(3)本件選挙を無効とすべき旨の原告らの主張について
争う。
第3当裁判所の判断
1憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば投票価値の平等を要求しているも
のと解される。他方,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する絶対の
基準ではなく,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由
との関連において調和的に実現されるべきものであるところ,国会の両議院の
議員の選挙については,憲法上,議員の定数,選挙区,投票の方法その他選挙
に関する事項は法律で定めるべきものとされ(憲法43条2項,47条),選挙
制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。
衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用さ
れる場合には,選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに
際して,憲法上,議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保
たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべ
きであるが,それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮すること
が許容されているものと解されるのであって,具体的な選挙区を定めるに当た
っては,都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位と
して,地域の面積,人口密度,住民構成,交通事情,地理的状況などの諸要素
を考慮しつつ,国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに,投票
価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところ
である。したがって,このような選挙制度の合憲性は,これらの諸事情を総合
的に考慮した上でなお,国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有する
といえるか否かによって判断されることになり,国会がかかる選挙制度の仕組
みについて具体的に定めたところが,上記のような憲法上の要請に反するため,
上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是認することが
できない場合に,初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきであ
る。
以上は,衆議院議員の選挙に関する最高裁昭和49年(行ツ)第75号同5
1年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁以降の累次の最高裁大法
廷判決の趣旨とするところである(上掲最高裁昭和51年4月14日大法廷判
決,最高裁昭和56年(行ツ)第57号同58年11月7日大法廷判決・民集
37巻9号1243頁,最高裁昭和59年(行ツ)第339号同60年7月1
7日大法廷判決・民集39巻5号1100頁,最高裁平成3年(行ツ)第11
1号同5年1月20日大法廷判決・民集47巻1号67頁,最高裁平成11年
(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁,最
高裁平成11年(行ツ)第35号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8
号1704頁,最高裁平成18年(行ツ)第176号同19年6月13日大法
廷判決・民集61巻4号1617頁,平成27年大法廷判決等参照)。
この点,原告らは,憲法56条2項,1条,前文第1文をもとに,国会議員
の選挙を人口に比例する選挙区割りによって実現することが必要不可欠であり,
国会は,投票価値の平等を害するような内容の選挙区割りを行う立法裁量権を
有しない旨を主張する。しかしながら,投票価値の平等が選挙制度の仕組みを
定めるに当たっての唯一,絶対的な基準であるかのような主張は,上記累次の
最高裁大法廷判決の趣旨に反するものであって,採用することができない。
また,原告らは,都道府県間において投票価値の不平等を生じさせることに
合理性はない旨を主張する。しかしながら,国会において考慮することが許容
される合理性を有する要素を考慮した結果,都道府県間において投票価値の不
平等が生じたとしても,それは,国会に与えられた裁量権の行使として合理性
を有するといい得るのであって,都道府県間に投票価値の不平等を生じさせる
ことは合理性がない旨の原告らの上記主張は採用することができない。
2上記の見地に立って,本件選挙当時の本件区割規定及びこれに基づく本件選
挙区割りの合憲性について検討する。
(1)前記1のとおり,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを定めるに当たっ
ての唯一,絶対的な基準ではなく,国会としては,他の政策的要素をも考慮
してその仕組みを定め得る。そして,これらの政策的要素のそれぞれをどの
程度考慮し,これを具体的決定にどこまで反映させることができるかについ
ては,もとより厳密に一定された客観的基準が存在するわけのものではない
から,結局は,国会の具体的に決定したところがその裁量権の合理的な行使
として是認されるかどうかによって決するほかない(上掲最高裁昭和51年
4月14日大法廷判決参照)。
しかしながら,選挙区間における選挙人数ないし人口の較差が2倍に達し,
あるいはそれを超えることになったときは,実質的に1人1票の原則を破っ
て,1人が2票,あるいはそれ以上の投票権を有するのと同じことになるか
ら,原則として,投票価値の平等を侵害するものというべきである。殊に,
前提事実(3)クのとおり,新区画審設置法3条が,選挙区間の人口の較差が2
倍以上にならないこと「を基本」としていたものを,「を基本」の文言を削除
する形で現区画審設置法3条1項を改めた平成28年改正法の趣旨からする
と,選挙区間の人口の較差が2倍以上になったときは,投票価値の平等を侵
害することになるというべきである。
(2)他方,現区画審設置法3条1項は,前提事実(3)クのとおり,区画審が小選
挙区選挙の選挙区の改定に関して改定案を作成するに際しては,平成32年
以降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づいて,各選挙区間の
人口の最大較差が2倍以上にならないようにすることとし,行政区画,地勢,
交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないものと定め
ている(本件区割基準)。
現区画審設置法3条1項は,平成23年大法廷判決が「投票価値の平等に
配慮した合理的な基準」とし,平成25年大法廷判決及び平成27年大法廷
判決が「新区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備」を求めた新区
画審設置法3条を,上記(1)のとおり,さらに投票価値の平等に配慮する形で
改正したものである。現区画審設置法3条1項所定の本件区割基準は,憲法
が要求する投票価値の平等を最大限尊重しつつ,上記諸般の事情にも一定程
度配慮した合理的な基準というべきである。
したがって,本件区割基準に従って改定された本件区割規定の定める本件
選挙区割りは,国会が一般的に合理性を有するとは認められない要素を殊更
に考慮して作成されたなどの特段の事情がない限り,投票価値の平等との関
係において国会の裁量の範囲を逸脱するものということはできないから,憲
法14条1項等の憲法の規定に違反するものと認めることはできない。
(3)この点,原告らは,本件選挙区割りのうち,0増6減の対象とならなかっ
た41都道府県又は12都県においては,新区割基準又は本件区割基準に基
づいた定数の再配分が行われていないから,平成27年大法廷判決等におい
て合理性が失われている旨を判示した1人別枠方式が未だ廃止されていない
というべきであり,本件選挙区割りは憲法に違反している旨を主張する。
確かに,本件選挙区割りのうち,0増5減(平成24年改正法及び平成2
5年改正法)並びに0増6減(平成28年改正法)の対象とならなかった3
6都道府県においては,結果として,旧区割基準に従った定数配分のままで
あり,平成22年国勢調査に基づいて,アダムズ方式に従って全面的に議席
の再分配をした場合,さらに12都県において議席の再分配が必要とされる
(乙10〔21頁〕参照)。
しかしながら,現区画審設置法には1人別枠方式を定めた規定はなく,1
人別枠方式が未だ廃止されていないということはできない。
また,1人別枠方式は,各都道府県への定数配分の段階で,既に各都道府
県間の投票価値にほぼ2倍の最大較差を生じさせ,これが,選挙区間の投票
価値の較差を生じさせる主要な要因となっていたものであるが(平成23年
大法廷判決参照),前提事実(3)ケのとおり,1人別枠方式を前提としない本
件選挙区割りの下において,各都道府県間の議員1人当たりの人口の最大較
差は1.844倍となっており,1人別枠方式の持つ問題点が残存していた
ということもできない。
よって,原告らの上記主張は採用することができない。
(4)その他,国会が一般に合理性を有すると認められない要素を殊更に考慮し
て本件選挙区割りが作成されたなどと認めるに足りる特段の事情は存しない
から,本件区割基準に従って改定された本件区割規定の定める本件選挙区割
りは,投票価値の平等との関係において国会の裁量の範囲を逸脱するという
ことはできず,憲法14条1項等の憲法の規定に違反すると認めることはで
きない。
3以上の検討結果によれば,本件区割規定及びこれに従って改定された本件区
割規定の定める本件選挙区割りが憲法の規定に違反すると認めることはできな
いから,本件選挙が無効であるということはできない。
第4結論
よって,原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文
のとおり判決する。
札幌高等裁判所第3民事部
裁判長裁判官 竹内純一
裁判官 睫攵仝
裁判官 小原一人

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