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裁判員10年 裁判官インタビュー(19)「守秘義務の範囲、具体的に説明」千葉地裁木更津支部・藤村香織裁判官(29) 12件担当


(聞き手・滝口亜希、件数は担当した1審裁判員裁判の数)
 −−裁判員制度が21日で施行から10年を迎えました。制度の施行によって、刑事裁判全体に変化はあったと感じますか。変化したとすればどのような点でしょうか。また、裁判官の仕事に変化はありましたか
 「私は、裁判官になって4年目を迎えたところです。裁判員裁判の導入時は19歳で、大学の法学部で法律の勉強を始めようとしていた年齢でした。過去の裁判例などを見ると、変化はあったと思います。一番の変化は、裁判員の方にできるだけ評議していただきやすくするために、量刑の考え方や制度をより詳しく言葉で説明する機会が増えたことです。なぜこういった刑が決まっているのか、刑務所はどんなところか、執行猶予って何だろう、ということを説明する機会が非常に増えました。それを準備するにあたっては、刑の考え方や制度の本質・趣旨に立ち返って検討する機会が増えたので、より説得的に物事を考えようとする癖がついたのかなと感じます」
 −−裁判員の方からもそういった質問は出されますか
 「頻繁にいろいろなことを聞かれます。ニュースで聞いてもスルーしてしまうようなことであっても、いざ刑を決めるとなると、これってなんだろうという疑問がわき出てくるんだと思うんです。『懲役刑って何ですか』『よく仮釈放って聞くけれど、どういうものなのか』などですね。裁判官としても、裁判員裁判でない事件も含めて、刑を決めた理由を説明するときに、より簡潔に、より説得的に書こうという意識は高まっていると思います」
 −−裁判員裁判自体に変化はあったと感じますか
 「私が経験していない時期も含めて、導入当初からを振り返ると、そのつど課題に対処していくために変化はあったなと感じています。たとえば、刺激的な遺体の写真です。実際に負担に感じられた裁判員の方がいたからこそ、いろいろ実際にご負担になられて精神的に病んでしまわれた方がいたからこそ、非常に配慮をするようになりました」
 −−刺激の強い証拠を取り調べる予定の事件では、選任手続きなどで予告をされているのですか
 「はい。必ず説明をしています。当日、証拠調べをする前にも、休憩時間に説明するなどしています。また、検察官からも『今からこういう写真が出ます』との説明があります」
 −−裁判員の方の体調にはどのように目を配っていますか
 「刺激的証拠の取り調べのあるなしにかかわらず、注意して様子を見るようにしています。たとえば、お昼ご飯を一緒にとる際に食欲がなさそうな方がいないか、いつも通りお弁当を食べられているか、というのを見ます。また、一番最初に受けた印象と比べて口数が減っていないか、明らかに眠れていないような顔をしていないかなども気をつけています。やはり、どれだけ元気でも、裁判が終わった後などに緊張の糸がとけてしんどくなることもあるかもしれないので、書記官も含めて目を配っています」
 −−評議で心がけていることはありますか
 「主に2つあります。一つは意見を出しやすくする雰囲気作りを心がけています。初めて来る場で、初めて顔を合わせた人の前で、それも裁判所ということになると、緊張する人が多いので、お昼ご飯を共にしたり、できるだけこちらの情報も開示するようにしています。テレビだと、裁判官は法服を着て静かに座っているというイメージだと思うんですが、こっちから『普段はこういったところにご飯を食べに行っている』と話すなどして、雰囲気作りをするようにしています」
 「もう一つは、裁判員と裁判官の協働を達成するために、できるだけ情報格差のない評議にしたいと思っています。それこそ刑の決め方などはまさに専門的な分野ですが、協働して考えられるように、できるだけ情報を提供し、格差がない状態で意見を出し合えるように心がけています。質問があれば説明をし、質問が出ないときでも、よく質問を受けることについては先取りで説明をしたりしています」
 −−裁判員経験者からは「守秘義務の範囲が分かりづらい」という意見も聞きますが、守秘義務についてはどのタイミングで、どんな説明をされていますか
 「私は、毎日必ず説明をしています。たとえば、法廷での審理しかなかった日であれば『法廷でのやりとりは公開されているので守秘義務の範囲外です』という話をします。毎日説明していくと、だんだん守秘義務の範囲が明確になっていくと思うので、できるだけそのつど、説明するようにしています。評議があった日には『評議の中で裁判官から説明した、刑務所がどんなところかといった一般的な話は、人に話しても大丈夫です』といった説明をします。評議でそれぞれが話した意見や、どうやって結論を導いたか、どういった意見で分かれたか、というのは守秘義務の範囲であることは説明しつつ、できるだけ具体的に話すようにしています」
 −−検察官と弁護人の主張・立証活動への印象と、改善してほしい点があれば教えてください
 「それぞれに尽力していただき、裁判員に分かりやすい立証がされているのは、変化した点だと思います。あえて改善してほしい点を言いますと、裁判所側と検察官、弁護人のイメージの違いが出ることがあります。検察官、弁護人は証拠を事前に見て、主張や証拠の検討を進めた上で公判に臨んでいます。検察官、弁護人が当たり前のように話されることでも、こちら側でうまくイメージできていないことがあります。たとえば(被告などへの)質問の中で『ここは狭い道路ですね』と聞くとします。検察官、弁護人は事前に証拠を見てイメージできているのですが、こちら側は初めて証拠を見ているので、イメージが追いつかず、せっかくの質問なのに『よく分からなかったね』となってしまう例がいくつか散見されました。できるだけ、裁判所側が証拠を見ていないということを意識して、説明し過ぎなくらいでもいいので、イメージがわくように立証していただけるといいなと感じたことはあります」
 −−今後の裁判員裁判に期待される点とご自身の抱負を教えてください
 「国民の皆さまには、刑事裁判に関与していただき、ご負担があると思いますが、その上で、裁判員が良い経験だったと言ってもらえるような裁判を目指したいと思っています。良い経験だったという人が増えることで、地道ではあるんですが、裁判員制度への理解を広げていきたいと思っています。裁判所は怖いところ、という印象がまだあるようです。ただ、『(裁判員裁判は)しんどいけれど良い経験だった』『裁判官や裁判所の職員が思ったよりフレンドリーだった』という感想も聞き、そういうギャップがまだあるなと感じています」
 −−辞退率が上昇し、出席率が低下する傾向にあります
 「すごく難しいところがあって、仕事や育児で離れられない、というのは仕方がないと思うのですが、裁判所としてもできるだけ参加しやすいような日程にしていくという工夫は必要だと思います。長期審理でも、裁判所に来ていただく日を、たとえば週3日にすると、後の2日で仕事に行ける、という人もいるかもしれません。日程はまだ工夫の余地があるのではないかと感じています。私は中学と高校で計3回、話をする機会がありましたが、先生にもぜひ裁判員を経験していただきたいと思っています。けれど激務なこともあって、参加が難しい方もいるようで、ひいては働き方の話にもなりますが、いろいろな方が参加できるよう、職場の理解も得られればと思っています」
 ■藤村香織
 ふじむら・かおり 平成28年広島地裁判事補。31年4月から千葉地裁木更津支部判事補。29歳。
(2019.5.30 17:00 産経新聞)

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