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最高裁総一第1551号
裁決書
審査請求人X
処分庁最高裁判所
審査請求人が平成28年9月27日に提起した処分庁による兼職許可申請不許可
処分に係る審査請求(最高裁総一第1701号)について,次のとおり裁決する。
主文
本件審査請求を棄却する。
事案の概要
1 事案の要旨
 本件は,裁判官である審査請求人が,平成28年2月5日付けで,最高裁判所
に対し,裁判所法(以下「法」という。)52条2号の規定に基づき,事業内容を
「共同住宅(私所有5室,妻所有7室)の一括貸付」等として他の職務に従事す
ることの許可を申請したが(以下,同申請を「本件兼職許可申請」という。),同
年7月1日付けで,最高裁判所(以下,本件兼職許可申請に対する処分をした主
体としての最高裁判所を「処分庁」という。)から「許可しない」との処分(以下
「本件不許可処分」という。)を受けたため,これを不服として審査請求をした事
案である。
2 前提となる事実
 以下の事実は,審査関係人の間に争いがなく,又は審査庁に送付された各書面
によって認められる。
 審査請求人は,▲年▲月に判事補,▲年▲月に判事兼簡易裁判所判事にそれ
ぞれ任命され,本件兼職許可申請当時から現在に至るまで,Pの職にある。
 審査請求人の父は,Q所在の土地(以下「本件土地」という。約60坪)を
賃借し,本件土地上に,いずれも木造2階建てであるアパートと居宅兼アパー
トの2棟の建物(以下,併せて「旧建物」という。)を所有していた。
 審査請求人は,平成8年10月,本件土地を購入した。審査請求人の父は,
平成9年▲月に死亡し,遺産分割協議により,審査請求人の母が旧建物を取得
し,本件土地を審査請求人から無償で借り受けることになった。
 旧建物の居宅部分には,審査請求人の母及び妹が居住し,アパートの管理を
行っていたが,審査請求人の母は平成25年▲月に死亡し,その後,審査請求
人の妹も転居した。その頃までに,旧建物は老朽化によりアパートとして使用
されなくなっており,同人の転居に伴い,旧建物は空き家となった。
 審査請求人は,平成27年9月頃,不動産賃貸事業を営む株式会社Rとの間
で,概要,審査請求人が旧建物を取り壊し,本件土地上に鉄骨造り3階建て,
居室12室(1室当たりの専有面積約22屐砲龍ζ噂斬陝憤焚次嵋楫鏃物」
という。)を新築し,Rに対して30年間,本件建物の居室12室を一括貸付け
するという内容の事業計画に合意した(以下,上記一括貸付けを「本件一括貸
付け」といい,上記事業計画を「本件計画」という。)。
 本件計画において,旧建物の取壊し及び本件建物の新築等に必要となる資金
は約1億3000万円であったところ,当初,審査請求人は上記資金につき,
銀行からの融資額全額を審査請求人自身が債務者となって借り入れた上で,本
件建物の全居室を単独所有し,Rから支払われる賃料の全額を取得することを
予定していた。もっとも,審査請求人は,人事院規則14−8(営利企業の役
員等との兼業)の運用上,貸室10室以上,賃料年額500万円以上の賃貸借
は兼業が許容されないと考えたため,上記の予定を変更して,審査請求人が5
500万円を,審査請求人の妻が7700万円を銀行から借り入れ,審査請求
人は12室中5室を区分所有し,残りの7室は妻が区分所有するものとし,R
からの賃料(年額合計約1100万円)については,審査請求人が年額約46
0万円を,妻が年額約640万円を取得することとした。なお,Rからの上記
賃料は月額にすると約92万円となるところ,審査請求人及び妻(以下「審査
請求人ら」という。)は,同額から借入金の返済額等約49万円を控除した約4
3万円の収入を得ることができるものとされている。
 審査請求人は,平成27年10月,母の遺産分割協議により旧建物を取得し,
同年12月,旧建物を取り壊した。
 審査請求人は,平成28年2月5日付けで,処分庁に対し,法52条2号に
基づき,本件一括貸付けを行うことについて許可を求める旨の申請をした。同
申請に係る許可申請書には,名称欄に「R一括貸付」,事業内容欄に「共同住
宅(私所有5室,妻所有7室)の一括貸付私所有の5室延べ床面積109.
75崛苅隠下識笋拆果明傳横僑粥ィ隠沖崢詑瀘措入の予定(年額)私
458万円程度妻642万円程度」等と記載されていた。
 また,本件兼職許可申請に当たり,審査請求人が上記申請書の「他の職務に
従事する理由」の説明として提出した書面(不動産一括賃貸に関する許可申請
の説明)には,本件計画に至る経緯やその内容のほか,本件建物の新築と本件
一括貸付けを実質的にみれば,審査請求人らのRに対する投資とみることがで
きる旨が記載されていた。
 処分庁は,平成28年7月1日付けで,審査請求人に対し,本件兼職許可申
請について法52条2号の規定による兼職を許可しない旨の処分(本件不許可
処分)をした。
 審査請求人は,平成28年9月27日,本件不許可処分を取り消すとの裁決
を求める旨の本件審査請求をした。
 最高裁判所(以下,本件審査請求を受けた主体としての最高裁判所を「審査
庁」という。)は,平成28年12月28日,本件審査請求の審理手続を担当す
る審理員として,最高裁判所事務総局行政局第二課長及び同局付2名を指名す
るとともに,審理員の事務を総括する者として同第二課長を指定した。
 審理員は,処分庁から弁明書を,審査請求人から反論書の提出を受けた上で,
平成29年3月30日,審査庁に対し,本件兼職許可申請を不許可とすること
が違法又は不当であるとはいえないから,本件審査請求を棄却する旨の裁決が
相当であるとの審理員意見書を提出した。
 審査庁は,平成29年4月14日,最高裁判所行政不服審査委員会に対し,
本件審査請求には理由がないから,裁決により,これを棄却することが相当で
あるとして諮問し(平成29年度諮問第1号),同委員会は,同年9月6日,本
件審査請求は棄却すべきである旨の諮問に係る判断は,妥当であるとの答申を
した(平成29年度答申第1号)。
審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張の要旨
 /該裟禅畤佑繁楫鏃物の入居者との間には契約関係が生じないこと,⊃該
請求人は,毎月の賃料を受領するだけであって,本件建物の管理業務に全く携わ
らないこと,審査請求人が本件建物を利用して賃貸業を行うという実態はなく,
時間的労力的に裁判官の職務に支障を来すような事態は予想されないことから
すると,本件一括貸付けの内容は,法52条3号が禁止する「商業を営み,その
他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと」に該当せず,同条2号の「報酬の
ある他の職務に従事すること」にも該当しないため,本件不許可処分は取り消さ
れるべきである。
2 処分庁の主張の要旨
 本件一括貸付けの内容は,長期間にわたり相当額の賃料収入を得るという目的
で,裁判官としての在任中に,多額の費用を投じて本件建物を新築し,これを一
括貸付けするというものであり,法52条3号が禁止する「金銭上の利益を目的
とする業務を行うこと」に該当するから,同条2号の規定による兼職の許可をす
ることはできない。
理由
1 本件に係る法令等の規定について
 裁判官は,在任中,「最高裁判所の許可のある場合を除いて,報酬のある他の
職務に従事すること」ができず(法52条2号),また,「商業を営み,その他
金銭上の利益を目的とする業務を行うこと」ができない(同条3号)と定めら
れている。
 裁判官が報酬を得て他の職務に従事する場合の法52条2号の規定による最
高裁判所の許可は,その従事しようとする職務が裁判官としての職務の遂行に
支障がないと認められる場合その他同法の精神に反しないと認められる場合
に限り行うと定められている(平成3年12月27日付け人能A第14号高等
裁判所長官等あて最高裁判所事務総長依命通達記第1の1)。
2 本件処分について
 前記前提となる事実によると,/該裟禅畤佑蓮に楫鐡效呂旅愼後,本件土
地を15年以上にわたり,審査請求人の母が所有する旧建物の敷地として無償
で使用させていたが,同人の死亡後,妻と併せて約1億3000万円の費用(審
査請求人の借入れ予定額のみを見ても5500万円に上る。)を投じて,旧建物
を取り壊して賃貸用の共同住宅(本件建物)を新築することとしたこと,⊃
査請求人らが本件一括貸付けにより得る年間賃料額は合計約1100万円に上
り,そのうち審査請求人の年間賃料額は約460万円であるところ,これらか
ら借入金返済額等を控除した後の収入額を見ても,審査請求人らにつき年額合
計500万円を超え,審査請求人の取得分(12分の5)のみでも200万円
を超えることが認められる。
 以上の本件一括貸付けの経緯,態様及び規模等に加え,審査請求人自身も本
件兼職許可申請に当たり,本件建物の新築と本件一括貸付けはRに対する投資
である旨を自認していることによれば,審査請求人が,長期間にわたり相当額
の賃料収入を得るという目的以外に,本件建物を新築する目的や必要性があっ
たとは認められず,本件一括貸付けは,裁判官としての在任中に,多額の借入
金を投じて本件建物を新築し,これを不動産賃貸事業を営む会社に対して一括
して貸し付け,その賃料収入により借入金の返済以上の金銭上の利益を得よう
とするものといわざるを得ないから,審査請求人の主張する点を十分に検討し
ても,法52条3号が禁止する「商業を営み,その他金銭上の利益を目的とす
る業務を行うこと」に当たり,処分庁が同条2号に基づいてこれを許可し得る
ものではないというべきである。
 なお,審査請求人は,本件一括貸付けは人事院規則14−8の規定や趣旨に
反するものではないとも主張する。しかしながら,そもそも,裁判官には同人
事院規則の適用及び準用はなく,また,各自独立して各種の争訟事件を審理し,
法律を解釈適用して,国家としての判断を示すという職務の性質上,裁判官に
は最も公正かつ廉潔であることが求められることから法52条が規定されて
いることに照らせば,同条各号の内容を同人事院規則と同一又は同趣旨に解す
べきものともいえないから,審査請求人の主張は採用することができない。
以上のとおり,本件兼職許可申請を法52条2号に基づき不許可とすること
が違法又は不当であるとはいえない。
3 結論
 したがって,本件審査請求には理由がないから,行政不服審査法45条2項の
規定により,主文のとおり裁決する。
平成29年10月25日
審査庁 最高裁判所
(教示欄)
1 この裁決については,この裁決があったことを知った日の翌日から起算して6
か月以内に,国を被告として(訴訟において国を代表する者は法務大臣となりま
す。),裁決の取消しの訴えを提起することができます。
 ただし,この裁決の取消しの訴えにおいては,不服申立ての対象とした処分が
違法であることを理由として,裁決の取消しを求めることはできません。
 処分の違法を理由とする場合は,この裁決があったことを知った日の翌日から
起算して6か月以内に,国を被告として(訴訟において国を代表する者は法務大
臣となります。),処分の取消しの訴えを提起することができます。
2 上記の期間が経過する前であっても,この裁決があった日の翌日から起算して
1年を経過した場合は,裁決の取消しの訴えや処分の取消しの訴えを提起するこ
とはできなくなります。ただし,正当な理由があるときは,上記の期間やこの裁
決があった日の翌日から起算して1年を経過した後であっても裁決の取消しの訴
えや処分の取消しの訴えを提起することが認められる場合があります。

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