報道等をもとに日本の裁判官の情報を収集、掲載しています。

川遊び小3男児死亡で2人有罪=3人は無罪、市職員と団体−佐賀地裁
 佐賀県伊万里市で2010年7月、同市と地域づくりの民間団体が共催したキャンプに参加した、市立小3年の男児=当時(8)=が川で溺れて死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われた当時の同市観光課の職員だった多賀桜被告(48)ら市側の3人と、共催した団体の2人の判決が29日、佐賀地裁であった。吉井広幸裁判長は多賀被告に罰金40万円(求刑罰金80万円)、団体の当時の監査役幸松伝司被告(64)に罰金70万円(同罰金100万円)を言い渡した。
 判決によると、10年7月24日、監視態勢を整えないまま、男児17人の川遊びを開始し、鷲尾光四朗君を水死させた。
 同市元職員で当時の観光課長だった池田博志被告(62)ら市側の2人と、団体の元代表、鴨川幸司被告(60)については、無罪とした。
 吉井裁判長は、幸松被告について、参加スタッフ全員で監視に当たるという予定を変更し、スタッフを分散させたのに、必要な安全対策を講じなかったと指摘。多賀被告についても、監視態勢の変更を事前に知っていたとした。
 池田被告らについては、予定が変更されたことについて相談を受けていないなど、過失責任を問うことはできないと結論付けた。
(2017/05/29-18:59 時事ドットコム)

川遊びで小学生死亡 3人無罪2人有罪の判決 佐賀
 7年前、佐賀県伊万里市などが開いたキャンプで、川遊びをしていた小学3年生の男の子が死亡した事故をめぐり、業務上過失致死の罪に問われた5人のうち、当時の市の課長など3人について、佐賀地方裁判所は、キャンプを主導する立場にあったとは言えないなどとして無罪を言い渡しました。一方、2人については罰金の有罪判決を言い渡しました。
 平成22年7月、佐賀県伊万里市や民間団体などで作る協議会が市内で夏休みのキャンプを開いた際、川遊びをしていた小学3年生の鷲尾光四朗くん(当時8)が溺れて死亡しました。
 この事故で、いずれも当時の市の観光課長や協議会の副会長など合わせて5人が業務上過失致死の罪に問われ、これまでの裁判で5人とも「事故は予測できなかった」などとして無罪を主張していました。
 29日の判決で佐賀地方裁判所の吉井広幸裁判長は、元観光課長と元副会長ら3人について、キャンプを主導する立場にあったとは言えないなどとして無罪を言い渡しました。一方で、「主導すべき立場だったのに、監視態勢を整えないまま川遊びをさせた」などとして、協議会の64歳の元幹事長に罰金70万円、市の48歳の職員に罰金40万円の有罪判決をそれぞれ言い渡しました。
 判決について、亡くなった鷲尾光四朗くんの父親の達彦さんは弁護士を通じて、「複雑な気持ちはあるが、5人の道義的責任はみな同じだと思います。遺族の喪失感は一生ぬぐえないことに変わりはありません」というコメントを出しました。
(5月29日 22時00分 NHK)

主催団体側元幹部に無罪 男児死亡キャンプ事故で佐賀地裁
 佐賀県伊万里市で平成22年、市などが主催したキャンプの川遊び中に小学3年の男児=当時(8)=が溺死した事故で、業務上過失致死罪に問われた主催団体側の元幹部2人の判決で、佐賀地裁(吉井広幸裁判長)は29日、代表の鴨川幸司被告(60)を無罪とした。代表補佐の幸松伝司被告(64)は罰金70万円。求刑はいずれも罰金100万円だった。
 2人は「事故は予測できなかった」と無罪を主張。検察側は「監視態勢など具体的な事故防止策をしていなかった」と指摘していた。
 判決理由で吉井裁判長は、幸松被告が中心的な立場でキャンプを計画立案したと指摘。「事故当日に予定を変更し、参加児童のうち、男子だけを先に川へ誘導する分散行動を取ったことで、監視態勢が不十分になった」と述べ、被告の注意義務違反を認めた。一方、鴨川被告は幸松被告を補佐する立場にとどまり、予定変更も知らなかったとし「過失責任を問うことはできない」と判断した。
 2人は22年7月に市観光課が事務局となったキャンプで川遊びをした際、安全管理を怠り、男児を溺死させたとして、起訴された。この事故では当時の市観光課長ら市側3人も同罪に問われている。
(2017.5.29 13:10 産経WEST)

キャンプ中に男児水死、主催者側1人に無罪 佐賀地裁
 佐賀県伊万里市の志佐川で2010年7月、キャンプに参加した小学3年の男児(当時8)が水死した事故で、業務上過失致死罪に問われた主催者側2人の判決が29日、佐賀地裁であった。吉井広幸裁判長は、このうち伊万里グリーン・ツーリズム推進協議会の鴨川幸司・元副会長(60)に無罪(求刑罰金100万円)を言い渡した。
 吉井裁判長は「(元副会長は)監視、救助態勢が整わないまま水遊びが開始されたことについて、何ら関与しておらず、過失責任は問えない」と理由を述べた。当時の協議会幹事長、幸松伝司(つたし)被告(64)については、罰金70万円(求刑罰金100万円)の有罪判決を言い渡した。
 事故をめぐっては佐賀地検が14年、協議会の事務局長だった事故当時の市観光課長ら5人を業務上過失致死罪で在宅起訴した。元課長ら3人の判決は29日午後に言い渡される。
(2017年5月29日13時12分 朝日新聞(上山崎雅泰))

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平成29年5月29日宣告
平成26年(わ)第3号業務上過失致死被告事件
主文
被告人Eを罰金40万円に処する。
被告人Eにおいてその罰金を完納することができないときは,金5
000円を1日に換算した期間,同被告人を労役場に留置する。
訴訟費用はこれを5分し,その1を被告人Eの負担とする。
被告人C及び被告人Dはいずれも無罪。
理由
(罪となるべき事実)
被告人Eは,z市k部L課F1係員であり,同課に設置され,公募による農村
生活ないし自然体験イベント等を開催しているF協議会に関する業務の主査兼同
協議会の事務局員の地位にあったものである。被告人Eは,平成22年7月24
日,同協議会事務局と上記と同様の自然体験イベント等を行っているG倶楽部(以
下「本件倶楽部」という。)が同日から同月25日の日程で共同開催した小学3
年から中学3年までの児童を対象とする公募による「Hキャンプ」と称する体験
イベント(以下「本件キャンプ」という。)のプログラムの一環として,佐賀県伊
万里市a町bc番地d所在の「J」南南東約700m先のj川において児童らに
川遊びをさせる業務に従事していた。本件キャンプへの参加児童は小学3年から
6年までの児童22名であって,その遊泳能力には個人差があり,予測困難な行
動に出るおそれもあった上,川遊び予定場所はj川の流れに沿った距離にして9
0mを超え,右に湾曲するなどしている流域であったため,川への入水場所であ
るスロープから川遊び予定場所の下流域を見渡すことは困難であるばかりか,水
深が2mを超える場所があるなどの自然の河川であったのであるから,適切な監
視態勢や溺れた場合の救助態勢が整わない状態で児童らを同所及びその付近で遊
ばせるなどすれば,児童らがj川に入水し,水流に流されて深みにはまるなどし
て溺水する危険があった。被告人Eは,川遊び予定場所で以前に実施された同様
の体験イベントにおける川遊びにスタッフとして参加した経験などから,そのよ
うに溺水する危険があることを知っていた上,本件キャンプの企画・立案段階に
おいて,同協議会事務局側担当者として,本件倶楽部の実質的な代表補佐の地位
にあったB等と協議する中で,川遊びに際しては例年どおり本件キャンプに参加
する成人スタッフ全員で川遊びをする児童らが溺水しないように監視することを
確認した上,上司である被告人Cや被告人Dらに対し,本件キャンプは同倶楽部
の主導の下で行われるものであり,川遊びについても同倶楽部の成人スタッフの
指示に従って行動するものである旨を説明するなどしていた。ところが,Bは,
本件キャンプ当日である同月24日,本件川遊びプログラムを開始するに際し,
成人スタッフらと参加児童22名全員で前記「J」から川遊び予定場所に移動し,
成人スタッフ全員で監視に当たるという予定を変更し,自らは川遊び場所には移
動せず,他の成人スタッフの一部と男子児童ら17名だけを先に川遊び場所へ移
動させることにしのであり,被告人Eも,被告人Dなどを通じてBがそのような
変更をしたことを知ったのであるから,被告人Eは,男子児童らに付き添って川
遊び予定場所に移動する成人スタッフに対し,監視,救助態勢が整うまでは児童
らが前記j川に入水しないよう監視を指示するなどして児童らが溺水しないよう
に成人スタッフによる監視態勢を整えた上で上記川遊びプログラムを開始すべき
業務上の注意義務があった。それにもかかわらず,被告人Eは,これを怠り,男
子児童らに付き添って川遊び予定場所に移動する成人スタッフに対して上記指示
をするなどして監視態勢を整えることをしないまま,Bによる予定の変更に従い,
Bから男子児童ら17名だけを先に川遊び場所へ移動させるよう指示を受けた被
告人Dらに対し,その指示に従うよう指示して他の成人スタッフの一部と男子児
童ら17名だけを先に川遊び場所へ移動させて本件川遊びのプログラムを開始し
た。この過失により,児童らの1人I(当時8歳)をj川に入水させ,同日午後
3時55分頃,同河川において,同人を溺水させ,よって,同月27日午前9時
38分頃,長崎県大村市ef丁目g番地h所在のi病院において,同人を低酸素性
脳症により死亡させたものである。
(事実認定の補足説明並びに被告人C及び被告人Dの無罪の理由)
1当裁判所は,被告人Eに対する予備的訴因は認められるものの,被告人らに
対する主位的訴因及び被告人C及び被告人Dに対する予備的訴因はいずれも認
められず,被告人C及び被告人Dはいずれも無罪であると判断したので,その
理由を説明する。
2被告人らに対する主位的訴因及び被告人C及び被告人Dに対する予備的訴因
別紙のとおり
3前提事実
関係各証拠によれば,本件の事実経過について,概ね次の事実が認められる。
本件倶楽部は,平成6年頃,伊万里市a町b(以下「b」という。)地区の
活性化等を目的とし,古代米「黒米」の栽培及びこれを原料とした加工品の
開発促進や都市住民との交流を図るためのイベント開催等の事業を行うこと
を目的としてb地区に居住する住民らが構成員となって設立された団体であ
る。本件倶楽部は,当初はz市役所とは関係なく,独自に黒米の栽培,収穫,
料理等を行うイベント「農業体験スクール」などの企画運営を行っていたが,
平成12年頃から,独自の企画のほかに,z市からの打診を受け,z市役所
と連携して様々な企画を催行するようになった。
z市は,平成16年頃から,当時のk部m課n係が所管となって,地産地
消事業の一つとして,都市部の参加者を募り,z市内の農村部で地元の農産
物を収穫してその料理を試食して貰うという「H2」と称する体験イベント
等を各地区の受入れ団体と連携して実施することとし,本件倶楽部と一緒に
行ってきた体験イベントも,その企画の一部として取り込まれることになっ
た。
本件倶楽部は,平成12年頃から,Aが代表者を務め,Bが監査役に就任
していたが,Aが会社勤めのために日中に連絡を取りづらいということから,
上記体験イベントの企画立案等に関するz市側の担当者との連絡や打合せは
専ら,z市役所の隣にあるz市Oに勤務していたBが内線電話を使用したり,
同市役所を直接訪れたりして行っていた。
被告人Eはz市の職員であり,平成17年4月頃から,同市k部m課n係
員として,グリーン・ツーリズム,すなわち,都市部の住民を対象とした農
山漁村における自然,文化,人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動を行う
事業等に関する事務を担当し,z市側の担当者として,本件倶楽部との間で,
上記「H2」に関する企画立案等のやり取りや打合せを全て行っていた。
z市は,平成19年度から,本件倶楽部と共同して,「H2」の夏休み特別
企画として「H1キャンプ」と称する都市部の小学4年から中学3年の児童
を対象にしたb地区における農家への民泊を伴う農村交流を目的とする体験
イベントを開催するようになったところ,この体験イベントには,公募に応
じた小学1年から中学生の児童が参加すると共に,本件倶楽部側のAやB,
被告人Eも主催者側の成人スタッフとして参加して児童らを引率した。
この体験イベントでは,プログラムの一つとして,伊万里市a町bc番地
d所在の「J」(以下「J」という。)南南東約700m先のj川での参加児
童らによる川遊びが行われた。この川遊び場所は,川の流れに沿って90m
を超える距離があり,下流方向に向かって右に湾曲する形状になっているた
め,入水場所であるスロープから川遊び場所の下流域を見渡すことが困難な
状態になっていた上,下流側には水の流れる岩盤がスライダー状になってい
る部分があり,その出口部分から流水が流れ落ちる場所の数m先には水深2
mを超える場所がある流域が続いていた。
この年のH1キャンプの各種プログラムは,基本的には地元団体である本
件倶楽部が中心となり,z市側からスタッフとして参加した者は,本件倶楽
部の成人スタッフの指示に従う形で進められた模様であり,中核プログラム
の1つである川遊びについては,食事の後片付け等のため,「J」に残り,後
から現場に行ったEを除き,「J」から川遊び場所へは成人スタッフと参加児
童全員で移動し,本件倶楽部の会員であり,救命救急士の資格を有するPが
中心となって堤防の上で全員が準備運動をした上で,監視に当たる成人スタ
ッフを各所に配置してから児童らを入水させて行われた。なお,この川遊び
の最中,z市側から参加した職員のQは,児童が溺水する危険を察し,上記
スライダー状になった部分の出口付近に立ち,その下流にある深みのある流
域に児童らが立ち入らないように監視していた。
平成20年度も,前年に引き続き「H1キャンプ」が行われたところ,小
学2年から中学生の児童約17名がこれに参加し,本件倶楽部側のAやB,
z市側の被告人Eも前年同様成人スタッフとして参加し,児童らを引率した。
このイベントでも,プログラムの1つとして上記と同じ場所で,同様の方
法により川遊びが行われたが,同19年度とは異なり,Qは参加しておらず,
上記のように児童らの足が届かない深みのある流域も川遊びの場所となった。
その場所では,児童らは遊泳したり,数mの高さがある護岸ブロックの上か
ら川面に飛び込んだりするなどしていたが,その周辺には本件倶楽部の成人
スタッフ数名が配置について,児童らの行動を監視していた。
平成21年3月30日,グリーン・ツーリズムに関する事業を推進するた
め,z市内の各団体が個々に実施してきたグリーン・ツーリズム事業の窓口
を一本化し,対外的な受入れなどの仕組みづくりの効率化を図ると共に,z
市内の各団体の連携を深め,地域一体となって同事業に取り組み,その充実
を図るための官民共同による団体として,F協議会(以下「本件協議会」と
いう。)が設立され,本件倶楽部も本件協議会の会員となった。
本件協議会の事務処理は,z市k部m課に置かれた事務局によって行われ
ていたが,協議会が行うグリーンツーリズム事業の企画立案等は,協議会事
務局と会員が協議して行っていた。
このような中で,平成21年度も,平成19年度及び同20年度に実施さ
れた例に倣ってH1キャンプが企画され,上記同様の川遊びのプログラムも
予定されていたが,天候不順により中止された。
平成22年4月1日,z市の組織改編に伴い,同市k部にL課が新設され
ると共に,同課にF係が新設され,これに伴い,本件協議会も同課に移管さ
れてその事務局も同課内に置かれることになった。
被告人Cは,同日,同課課長に就任するのに伴い本件協議会の事務局長と
なり,被告人Dも,同日,同課副課長兼F1係長に就任するのに伴い本件協
議会の事務局員となった。被告人Eも,同日から同課F1係員となり,本件
協議会に関する事務,グリーンツーリズム体験交流の推進に関する事務等に
関し主査を務めると共に,本件協議会事務局の事務局員を務めることになっ
た。
このような中で,被告人Eは,同年5月頃までに,本件倶楽部等と調整を
進めながら,本件キャンプの実施を含む「H2」の平成22年度の年間計画
案を作成し,同月14日,本件協議会の幹事会において,その承認を得た。
その後,被告人Eは,Bとの間で,電話で本件キャンプについて打合せを
行い,被告人Bの提案により,従前行っていたプログラムであるモクズガニ
漁は取りやめることにしたが,川遊び(以下「本件川遊び」という。)を含む
従前とほぼ同様の本件キャンプのプログラムを決定し,同年6月10日頃,
これを記載したチラシを添付した「開催伺い」を起案し,被告人C及び被告
人Dの決裁を受けた。
なお,被告人Eは,その間の同年5月18日頃,市役所を訪れたb地区の
R区長から,本件キャンプの際に行う川遊びで児童らが溺れたりする可能性
があるので救助用の浮き輪を用意したらどうかという提案を受け,その後,
被告人Cと協議した上でSの忘れ物の浮き輪を準備することにすると共に,
被告人Cの指示により,参加児童への指示を明確に伝えるためにホイッスル
を準備することとした。
被告人EとAやBは,同年7月7日,b公民館において,上記R区長と共
に本件キャンプについて打合せを行った。その際,被告人EからB,Aらに
本件キャンプのプログラムの内容を記載した上記チラシが交付され,本件キ
ャンプのプログラムの内容について種々話合いがなされたところ,Bの提案
により,従前行っていたカブトムシ捕りをプログラムから外すことが決まり,
本件川遊びに関しては,Bから事前に確認した川の水量の報告を受けて,例
年どおり,被告人E,A及びBを含む成人スタッフが全員で児童らの監視に
当たる計画で川遊びを実施することが確認された。
本件協議会が本件キャンプに参加する児童の募集を行ったところ,被害児
童を含む小学3年から6年の児童22名(うち,小学3年は6名,男子児童
17名,女子児童5名)の参加が決まり,被告人EはBに対し,同年7月1
5日頃,電話で参加児童が22名であることを伝えた。
また,同月中旬頃までに,本件キャンプに参加する本件協議会側の成人ス
タッフとして,被告人Eのほか,被告人C,被告人D,z市役所k部L課観
光係のT及び同課F1係嘱託職員のUの参加が決まった。
なお,平成19年に実施されたのH1キャンプについては,z市からは,
m課課長,担当者である被告人E及び上記Qなどが,平成20年に実施され
たH1キャンプについてはm課課長及び被告人Eなどしか参加していなかっ
たが,本件キャンプに関しては,人手が足りないので参加して欲しいという
被告人Eからの求めに応じて,被告人Cの参加が決まり,他の成人スタッフ
については,被告人Eの手伝って欲しいとの依頼や,被告人Cの「L課がで
きたのでL課みんなで参加しよう」といった提案を受けて参加が決まったも
のである。
A及びBは,平成22年7月21日,本件倶楽部の会員らを集め,会員ら
に対し,被告人Eから渡された本件キャンプのパンフレットを配布して各プ
ログラムの内容を説明し,本件川遊びの時の監視員を募ったところ,P,V,
W及びXの4名が参加することが決定した。このうち,PとVは過去に川遊
びプログラムに参加したことがあったが,WとXは今回が初めての参加であ
ったところ,AとBは,例年どおりの方法で児童らに川遊びをさせれば大丈
夫などと考えており,上記成人スタッフらに対し「子供を監視してほしい」
などと指示をしたのみであった。
被告人Eは,同年7月22日頃,Bと電話で打合せを行い,本件協議会側
の成人スタッフの役割分担表を作成したことなどを伝え,Bからは,本件倶
楽部側から参加する成人スタッフが6,7名であることを確認した上で,B
に対し,「地元主導でお願いします。」などと伝えた。
被告人E,被告人C及び被告人Dは,同年7月23日,z市k部L課にお
いて,本件キャンプに参加するT及びUと共に,本件キャンプの打合せを行
った。なお,祭りに参加していた被告人Dは,10分ほど遅れて出席した。
その打合せの中で,被告人Eは,同人が作成した「危険ポイントは…川遊び
中,苔のついた岩を歩いているときの転倒や深いところで溺れる可能性があ
るので,目を離さないようにお願いします」などと注意事項が記載された役
割分担表と当日のタイムスケジュールを配布すると共に,本件協議会側の成
人スタッフの本件キャンプへの係り方に関しては,現地では地元の本件倶楽
部の成人スタッフが主体となるのでサブ的に動いて欲しいこと,本件川遊び
の際には,地元の本件倶楽部の成人スタッフが監視に就くので,その指示に
従って配置に就き,地元の人と一緒に児童らを見て欲しいこと,Tには滑っ
て下るスライダー状になった場所で監視について欲しいので水着を持ってき
て貰いたいこと,川には車で全員が行くこと,深みがあって児童が溺れたり
する危険があるので,児童から目を離さないようにして欲しいことなどを伝
えた。
本件キャンプは,本件協議会側が参加児童を引率して現地である「J」に
到着するのが遅れたため,同年7月24日午前10時10分頃,予定時刻よ
り約10分遅れで開始された。
同日午後のプログラムは,午後1時30分から,班別に分かれた児童らが
地元の民家を回って夕食の食材を分けてもらう「おすそ分け大作戦」,午後3
時から,「J」でアイスクリームを食べる「おやつタイム」,午後3時30分
からj川での本件川遊びとなっていたが,「おすそ分け大作戦」の終了が遅れ,
同日午後3時を過ぎてから,「おやつタイム」となったため,川遊びを開始時
刻どおりに始めるのが困難な状況になりつつあった。
このような中で,Aは,本件キャンプの前日夜遅くまで夏祭りに参加し,
当日も早朝から本件キャンプの準備である草刈り作業をして睡眠不足であっ
たため,「J」の事務室で椅子に座って休んでいたところ,いつの間にか眠っ
てしまっていた。
Bは,同日午後3時30分過ぎ頃,先にアイスクリームを食べ終わった男
子児童らが次のプログラムである本件川遊びに気が向き,水着に着替えたり,
走り回ってはしゃいだりし始める一方,女子児童らは,まだアイスクリーム
を食べており,また,「男子児童らがいるところでは着替えたくない」などと
言い出したため,男子児童らから先に川遊びの場所に連れて行くこととし,
Pに対し,「J」の玄関付近で被告人Dの運転する市役所の車を本件川遊びの
予定場所(以下「本件川遊び場所」という。)まで案内するように指示し,こ
れには全員が乗り切れないので先に男子児童らを連れて行き,被告人Dが車
で女子児童らを迎えに戻る際に迂回路を案内することなどを指示した上,そ
の場にいた被告人D,T及びUに対しても,先導するPの後を追って,男子
児童らを先に連れて行くよう指示した。
被告人Dは,これを受け,被告人Eに対し,男子児童らを先に連れて行っ
ていいのか尋ねたところ,被告人Eは本件倶楽部の成人スタッフに確認の上,
被告人Dに対し,男子児童らを先に連れて行き女子児童らを迎えに来るよう
に言った。また,Uも,被告人Eに対し,なぜ別々に行くのかを尋ねたとこ
ろ,被告人Eから,女子児童らは事情があって遅れる旨の説明を受けた。そ
こで,被告人DはT及びUと共に,男子児童らを被告人Dが運転する10人
乗りワゴン車と,Tが運転する8人乗りワゴン車に分乗させ,Pが運転する
車の後を追随して,被告人D運転のワゴン車,T運転のワゴン車の順に「J」
を出発し,本件川遊び場所へ向かった。
被告人Cは,その頃,「J」で休んでいたが,気が付くと被告人D運転のワ
ゴン車とT運転のワゴン車が出発するところであったため,慌てて外に出た
ところ,その場には被告人EとUだけが残っており,被告人EからPが児童
らの乗ったワゴン車を先導しているとの説明を受けた。被告人Cは,男子児
童らだけを先に川遊びの場所に連れていくという上記やり取りを知らず,誰
からも説明を受けなかったため,児童らと本件倶楽部の成人スタッフは全員,
j川に向けて出発したと思い,被告人Eに準備していた浮き輪が車に積載さ
れていることを確認し,被告人Eからホイッスルを受け取った上,待ってい
たUをその車に乗せ,上記2台のワゴン車の後を追ってj川へ向かった。
その後,Bは,「J」にまだAがいることを確認し,さらに,本件川遊び場
所にあるスライダー状の部分の出口先にある深みの手前に張ろうと考えてい
たロープを自宅から持ってくることを忘れていたため,これを取りに自宅に
戻った。また,Vも,岩場で滑って遊ぶための肥料袋を取りに自宅に帰った。
その一方で,XとWは,j川には向かわず,女子児童らと共に「J」にとど
まった。
被告人Dは,本件川遊び場所付近で男子児童らを車から降ろした後,「J」
に残してきた女子児童5名を連れに行くため,Pの案内でワゴン車を運転し
てその場所を後にした。そして,上記2台のワゴン車から降りてその場に残
された被害児童を含む男子児童らは,本件倶楽部側の成人スタッフも,本件
協議会側の成人スタッフも誰一人として川遊びの状況を監視していない状況
の下でj川に入り始めた。
被告人Cは,Pや被告人Dらに若干遅れて本件川遊び場所に到着し,児童
らが川に入っていくのに気付いたが,男子児童らは本件倶楽部の成人スタッ
フらに引率されていると思っており,自分は浮き輪を膨らませないといけな
いと考えていたため,自動車から浮き輪などを降ろし,入水場所であるスロ
ープ付近で,T及びUと共に浮き輪を膨らませようとし,その途中で,児童
らの声が聞こえなくなったことに気づいて,下流の方に行ってみたが,本件
川遊びをする場所を確認しただけで,元の場所に戻り再び浮き輪を膨らませ
ようとしていた。
同日午後3時55分頃,被害児童が溺水した。その頃,Bはロープを準備
して自宅から本件川遊び場所に向かう途中であり,被告人Eは,「J」内ある
いはj川に向かう途中で,女子児童らと一緒にビデオ撮影するなどしていた。
また,Aは,「J」で目を覚ました後,マイクロバスを運転して一人で本件川
遊び場所へ向かったが,Aが本件川遊び場所に着いたのは,被害児童が溺水
した後であった。
4主位的訴因の検討
以上の事実経過を前提に,まず,主位的訴因の当否について検討する。
弁護人らも種々指摘しているとおり,主位的訴因に関しては検討すべきが点
が少なからず認められるところであるが,主位的訴因の核心部分である注意義
務及び過失行為の内容如何について検討する。主位的訴因の掲げる注意義務は,
結論的には「児童らが溺水するのを未然に防止すべき注意義務」とされている
要請し,川遊びの際には児童らにライフジャケットを着用させた上,児童らの
監視態勢や危険指導の方法,児童らの引率から入水させるまでの手順等の実施
計画を策定し,被告人ら
れをしない場合には川遊びをする範囲を深みのない場所に限定した上,児童ら
の監視態勢や危険指導の方法,児童らの引率から入水させるまでの手順等の実
これもしない場合には川遊びの中止を決定・協議すべきであったこととされ,
これらの手段・方法を採らずに溺水防止の注意義務に違反した過失行為として
又は
は「川遊びの中止について協
議しなかった」こととされていると解される。そこで,以下においては,まず,

検察官は,本件川遊び場所は大人でも足が届かない程深い場所が広範囲に
わたって存在する危険な場所であり,参加した小学校低学年の児童らが想定
外の行動に出ることが間々あることは経験則上明らかであること,本件キャ
ンプに参加した成人スタッフの過半数は初参加者であり,参加スタッフの中
には川の体験活動の専門家や水難救助の専門的な知識・能力を有している者
はいなかったこと,本件キャンプ開始前にライフジャケットを準備して児童
らに着用させることは可能であったことなどを根拠として,被告人らは,児
童らが溺水するのを未然に防止するため,児童らに着用させるライフジャケ
ットを準備し,本件川遊びの際にはこれを児童らに着用させることとし,そ
れができないのであれば,本件川遊びの場所を深みのない場所に限定した上
で,本件川遊びの際の監視態勢,児童らに対する事前の危険指導の方法,児
童らの引率から入水までの手順等を定めた実施計画を策定させ,これを成人
スタッフ全員に周知させるべきであったなどと主張する。そして,これに沿
う証人Y及び同Zの公判供述などがある。
しかしながら,検察官の主張する過失の訴因構成に賛同することはできな
い。本件における過失を考えるに当たっては,被害児童死亡の時点から時間
軸を遡っていき,死亡に最も近接した時点における具体的な注意義務の内実
如何を検討するのが相当である。
これに従って検討すると,前記認定のとおり,被告人EはB及びAと協議
の上,本件川遊びを例年通りの方法で行うこととし,成人スタッフ及び児童
らが全員で移動して成人スタッフ全員で川遊びをする児童の監視に当たる
ということを決めていたことが認められる。本件において予定されていた上
記のような本件川遊びの実施計画は周到なものではなく,やや漠然としたも
のであったことは否めないものの,平成19年度及び同20年度に実施され
たH1キャンプにおいては,いずれも川遊び場所への移動は,被告人E以外
の成人スタッフ全員と参加児童全員で行い,参加児童らに準備運動をさせ,
成人スタッフによる監視態勢を採った上で,児童らを入水させており,平成
19年度は,川遊び場所は児童らの足が届かない深みの手前までに限定され,
平成20年度は,その深みのある場所も川遊びの場所になり,そこで泳いだ
り,護岸ブロックの上から川面に飛び降りたりする児童もいた。その際,ラ
イフジャケットが準備・着用されていなかったのはもとより,成人スタッフ
の中に水難救助の専門的な教育を受けた者はいなかったものの,成人スタッ
フら数名がその付近に立って,監視及び救助態勢を採っており,いずれの川
遊びにおいても児童らが溺水するなどの事故は生じていない。本件川遊び場
所にはスライダー状の部分の出口先に水深の深い箇所があるなど,溺水事故
が発生する相応の危険性があったことは明らかであるが,そこで川遊びをす
れば相当高度の確率で溺水事故が発生する程の危険性があったとはいえな
いと思われる。もっとも,本件キャンプに参加したのは小学3年の児童が6
名,4年が6名,5年が8名,6年が2名であり,スタッフにおいて児童の
体力や水泳能力等の把握もできていなかったことなどを考慮すると,本件川
遊びを実施するに際しては相応の溺水事故防止策を採っておく必要があっ
たことは多言を要しない。そこで,どの程度の溺水事故防止策を採っておく
必要があったかについて検討するに,参加児童が突然予想のつかない行動に
出る蓋然性があったことなどを考慮しても,その年齢などに照らし,予定し
ていた例年どおりの監視態勢が採られ,現場に居合わせた成人スタッフから
監視・救助態勢が整う前に入水しないように注意されたり,入水しようとし
た際に制止されたりすれば,特段の事情がない限り,その制止を振り切って
まで参加児童が入水するとは考え難い。このような事情に照らせば,被告人
らが平成19年度及び同20年度と同様の監視・救助態勢を採る限り,被害
児童が溺水するといった結果が生じる蓋然性は相当程度低くなっていたも
のと考えられる。
先に認定したとおり,本件においては,例年どおりの引率手順と監視・救
助態勢を採ることが予定されていた上,本件協議会側においては溺水防止の
ために浮き輪を準備し,これを川遊びの際に使用するものとしていたのであ
り,これらの措置が滞りなくなされてさえいれば,本件の結果発生は十分防
ぐことができたと考えられる。本件溺水事故が発生した原因は,平成19年
度及び同20年度の川遊びの際に採られていた監視態勢すら採られず,成人
スタッフが児童らを引率して集団行動すべきであるのにこれを分散させた
結果,監視する成人スタッフが誰1人としていない状況下で児童らに川遊び
をさせたことにほぼ尽きると考えるのが相当であり,ライフジャケットの準
備・着用,川遊びの場所の限定,周到な実施計画の策定・周知がなされなか
ったことがそもそもの原因であったとは認め難く,このような高度な結果回
避義務を被告人らに負担させることは相当とはいえない。
上記⑶に係る点について
更に,検察官は,被告人らについて,上記のような周到な実施計画の策定,
周知をしないのであれば,本件川遊びのプログラムの開始前に被告人CはA
らと協議して川遊びの中止を決定すべきであり,被告人D及び被告人Eはそ
の中止を被告人Cに進言すべきであったとも主張する。しかしながら,上記
のとおり,被告人らには上記実施計画の策定・周知の義務があったとはいえ
ず,これを前提とする中止を協議・進言・決定すべき義務が存しないのは当
然である。また,本件キャンプの開始後,本件川遊びのプログラム開始まで
の間に,被告人らが,周到な実施計画が策定・周知されていないことが大き
な問題であることに気付き,本件川遊びプログラムを中止しなければならな
いと判断する契機となるような事情の発生・変更も認められない。検察官の
主張は採用することができない。
5予備的訴因について
本件の予備的訴因は,要旨,被告人らには本件キャンプ当日,成人スタッ
フらと共に児童らに付き添って川遊び予定場所に入水するなどして川遊び中
の児童が溺水しないように監視し,児童が溺水した場合には直ちに救助出来
る態勢を採った上で川遊びをさせるプログラムを開始すべき注意義務があっ
たにもかかわらず,その態勢を採らないまま本件川遊びをさせるプログラム
を開始した過失があったとするものと解される。
主位的訴因を検討した際に言及したとおり,本件川遊び場所の危険性の程
度,参加した児童の年齢や行動傾向,平成19年度及び同20年度の監視・
救助態勢の実情等に照らし,上記予備的訴因の掲げる注意義務の内容は基本
的に妥当なものとして是認することができる。
ところで,被告人らやA及びBは,平成19年度及び同20年度の川遊び
にも参加したか,今回が初めての参加であるかという本件川遊び場所に関す
る経験値,これに伴う本件川遊びの危険性に対する認識の程度などが異なっ
ている上,本件川遊びの企画・立案への関与にも濃淡があることに徴すると,
上記内容の注意義務が被告人らやA及びBの全員に均等に課せられるかにつ
いては,なお慎重に検討する必要があると思われる。
そこで,この過失を誰が課せられるかを検討する前提として,被告人ら,
A及びBが本件川遊びにおける成人スタッフとして果たすことが期待されて
いた役割について検討する。
ア検察官は,本件キャンプは本件協議会と本件倶楽部の「共催」によるも
のであり,弁護人らは,本件キャンプは本件倶楽部が企画立案を行ってお
り,本件協議会は事務的な手続に関与するものにすぎなかったと主張して
いる。
ところで,予備的訴因は,上記のとおり,本件キャンプ当日において参
加児童の監視・救助態勢を採らないまま本件川遊びのプログラムを開始す
るという過失行為に係る注意義務が問題であるところ,本件川遊びの際の
監視・救助態勢の大枠は事前に定められていたものの,成人スタッフ各人
が本件川遊びの当日,現地においてどのような役割を分担して果たすべき
かなどの細目的事項については定められていなかったことに徴すると,現
場においてこれを適宜決定して指示・指導する者がいることが必須であり,
その者の指示・指導の下で状況に即した具体的な監視・救助態勢が整えら
れることが予定されていたというべきである。従って,ここで問題となる
のは,実質的にみて本件キャンプないし本件川遊びの当日の進行を誰が責
任を持って指示・主導していくべき役割を担っていたのかということであ
り,これは,本件協議会と本件倶楽部との形式的な関係や,各成人スタッ
フの各組織における役職等の地位から離れて,実質的に定められなければ
ならない問題である。
このような視点に立って前記認定の事実経過を検討すると,本件キャン
プに関する両組織の関係について以下の事実が重要であると考えられる。
すなわち,)楫鏘羈敝瑤蓮だ瀘当初は独自のイベントの企画運営を行っ
ていたところ,平成12年頃,z市役所からの打診を受け,一緒にイベン
トを行うようになったこと,∧神16年頃から始まったイベント「H2」
については,z市と各地区の受入れ団体とが連携する形で行われ,市の担
当者と受入れ団体との間で協議をしながらイベント内容の企画立案を行う
一方,参加者の募集や申込みの受付などの事務作業についてはz市又は本
件協議会の事務局が行っていたこと,そのイベントの一つである「H1
キャンプ」についても,同様に,z市側又は本件協議会側の担当者である
被告人Eと,本件倶楽部の実質的な副代表であるBとの間で打合せを重ね
ながら,企画立案をしてきたこと,な神22年度の本件キャンプの企画
立案についても,本件倶楽部側はBが担当し,本件協議会側は被告人Eが
行ってきたが,プログラムの内容は,従前からのプログラムを基礎にBの
提案に従って決まっていったこと,ナ神19年度及び同20年度のH1
キャンプは,本件倶楽部の成人スタッフが中心となって進められ,川遊び
についても,本件倶楽部のPが中心となって準備運動などを行い,z市側
から参加した成人スタッフは基本的にその指示に従って監視を行うなど,
本件倶楽部が主体となって行っていたこと,λ楫錺ャンプの2日前には,
上記の様な経緯を前提に,被告人EからBに対して「地元主導でお願いし
ます。」などと伝達がされ,本件キャンプに関しても,本件倶楽部が中心と
なって行っていくことが確認されたことが認められる。以上によれば,本
件キャンプの企画内容は,基本的には現地の状況をよく知る本件倶楽部側
の担当者であるBが提案したものを本件協議会側担当者の被告人Eが受け
入れて作成されたものであり,また,本件キャンプ当日の進行についても,
本件倶楽部の成人スタッフが中心となって進めていくことが予定されてい
たものであるから,本件キャンプの実施については,基本的にはBを中心
とした本件倶楽部側の成人スタッフが主導して行うべき立場にあったもの
と考えられる。もっとも,本件協議会側(本件協議会設立前はz市側)に
おいても,本件以前からH1キャンプの参加募集や申込み等の事務を担当
し,その担当者であった被告人Eにおいて,Bと協議をして本件キャンプ
を含むキャンプの企画立案を行った上,これに2度参加して川遊びも行っ
ていたのであるから,本件協議会が単なる参加者の募集,申込みの受付等
の事務作業だけを行う立場にあったとは解されず,川遊びの危険性を含む
本件キャンプの全体像を把握し,その企画内容や実施状況に問題があれば,
その変更を促すべき立場にあったと考えるのが相当である。
イそして,各組織内における各成人スタッフの地位についてみると,まず,
本件倶楽部内においては,その形式的な代表者はAであったものの,本件
キャンプの企画立案はBが中心となって行っていたものであり,当日の進
行も,基本的にはBが中心となって行われ,Aの指示で進行していた様子
は窺われない。殊に,本件川遊びの開始については,BがAに一切相談す
ることがなかったばかりか,「J」の事務室で居眠りをしていたAの所在を
探そうともしておらず,B1人の判断で男子児童らのみをまず本件川遊び
場所に連れていくことを決定し,他の成人スタッフにその旨の指示を出し,
男子児童らの移動が始まったのであるから,Bが主導的な立場にあり,A
は,Bと並んで本件キャンプを主導すべき立場にあったとまではいえず,
Bを補佐する立場にとどまっていたと考えるのが相当である。
ウこれに対し,z市役所内における各成人スタッフの関係についてみると,
まず,被告人Eについては,本件キャンプの企画立案に携わっただけでな
く,これまでの参加経験から本件川遊びの危険性をも知っていたのである
から,本件川遊びを含む本件キャンプの全体像を把握し,その実施状況な
どに問題が生じた場合には,これに対処すべき本件協議会側の担当者であ
ったと考えるのが相当である。実際にも被告人Eは,男子児童らのみを川
に連れていくことになった際,確認及び指示を求めた被告人D及びUに対
し,男子児童らを先に連れていくよう指示し,被告人Cに対しても本件川
遊び場所への移動を指示しているのであるから,被告人Eは,Bに次いで
本件キャンプを主導すべき立場にあったものと認めるのが相当である。
また,被告人E以外の成人スタッフについてみると,いずれもH1キャ
ンプには初参加であり,参加するに至った経緯も,被告人Eからの手伝い
の要請を受けたり,被告人Cの提案で参加することになったにすぎない。
また,本件キャンプ前日の打合せにおいて,被告人Eから,本件協議会側
からの参加スタッフの本件キャンプへの係り方について,本件倶楽部が主
体となるのでその成人スタッフの指示に従うように説明を受け,本件キャ
ンプ当日も,被告人Eからの指示どおり,本件倶楽部側の成人スタッフの
指示に従って行動した上,本件川遊びの開始に当たっても,Bと被告人E
の指示を受けて移動を始めたものである。このような事情に鑑みれば,被
告人E以外の本件協議会側参加スタッフについては,本件キャンプを主導
すべき立場にあったとはいえない。
被告人Eについて
ア以上を前提として,まず,被告人Eの責任について検討する。
前記認定のとおり,本件キャンプの計画においては,本件川遊びを行う
に当たり,成人スタッフ全員と参加児童ら全員が一緒に本件川遊び場所ま
で移動し,準備運動をした上で,成人スタッフによる監視態勢を整えた上
で,児童らを入水させる予定となっていた(もっとも,被告人Eは別の用
件に従事するため,本件川遊びには移動開始当初からではなく途中から参
加する予定であった。)ところ,本件川遊びのプログラム開始の前に,ア
イスクリームを食べ終わった男子児童らが川遊びに気が向き,水着に着替
えたり,走り回って騒いだりし始めたことなどから,BがPや被告人D,
T及びUに対し,男子児童らを先に連れていくように指示をし,被告人E
においても,被告人Dから,男子児童らを先に連れて行っていいのか尋ね
られたのに対し,男子児童らを先に連れて行き女子児童らを迎えに来るよ
うに指示し,Uから,何故別々に行くのかを尋ねられたのに対しても,女
子児童らは事情があって遅れる旨の説明をして男子児童らを先に連れてい
くよう指示している。これらの指示により,被告人DはTと共に,男子児
童らを本件川遊び場所へ連れて行き,本件川遊び場所で男子児童らを車か
ら降ろした後,Pと共にその場を離れることになり,その場に残ったTと
続いて到着した被告人C及びUについては,本件川遊び場所に移動するよ
う指示されただけであったため,その三者で浮き輪を膨らませる作業を始
め,その結果,被害児童が,成人スタッフが誰も監視していない状況下で
川に入水し,溺水するに至ったものである。以上のような経過からすれ
ば,被害児童が溺水するに至った主要な要因は,Bが全員で移動するとい
う当初の予定を変更して男子児童らのみを本件川遊び場所に連れていくこ
ととした上,被告人Eにおいても,現地に残ることになるTに対し,監視
態勢が整うまで男子児童らを川に入水させないように指示することも,B
に対し本件倶楽部の成人スタッフに男子児童らを監視させるように要請す
ることもないまま,Bによる上記予定の変更を容認し,被告人Dらに対し
て上記移動を指示したことにあると認められる。
そして,被告人Eは,前記のとおり,Bと共に本件川遊びを含む本件キ
ャンプのプログラム全体を把握しており,Bに次いで本件キャンプを主導
すべき立場にあったものである。当初の予定とは異なり,成人スタッフと
児童らの全員で移動するという計画が変更され,男子児童らを先に本件川
遊び場所に移動させることになり,その移動を開始する時点では,自身も
Bも本件川遊び場所に移動せず,被告人Dも男子児童らを川遊び場所に連
れて行った後,「J」に戻るために本件川遊び場所を離れることになってお
り,被告人Cについてはその場におらず,Uも「J」の駐車場にいた上,
本件倶楽部の他の成人スタッフであるA,X,Wについては,その所在や
行動を把握していなかったのであるから,男子児童らを先に本件川遊び場
所へ移動させるに当たっては,現地に向かう成人スタッフに対し,成人ス
タッフが揃うまで男子児童らを川に入水させないように指示しなければ本
件川遊び場所において成人スタッフの監視がない状態が生じ,男子児童ら
が監視,救助態勢のない状態で川に入水する可能性があることは十分に予
見し得たと考えられる。そして,このことは,被告人Eが供述するように,
たとえPが駐車場を出発し,Vもその後から出発したのを見ていたとして
も,同人らが男子児童らを監視することを被告人Eが自ら,あるいは,B
を通じて確認していない以上,自らが果たすべき役割を果たしたとはいえ
ないというべきである。したがって,被告人Eが上記のように被告人D及
びUに指示をして男子児童らのみを移動させて本件川遊びプログラムを開
始するに当たっては,本件川遊び場所に残る成人スタッフに対して男子児
童らが入水しないように監視しておくよう指示したり,あるいは,本件倶
楽部の成人スタッフに対し,男子児童らと共に川遊び場所に移動し,その
場で男子児童らが入水しないように監視しておくよう指示すべき注意義務
があったというべきである。
イこれに対し,被告人Eの弁護人らは,被害児童の溺水は,本件川遊び場
所で男子児童らに付き添っていた成人スタッフ全員が男子児童らから目を
離すという異常な行動によって発生したものであるから,被告人Eの上記
行為と被害児童死亡という結果との間に刑法上の因果関係を認めることは
できない旨主張する。
しかしながら,前記認定のとおり,被告人Eは男子児童らを先に連れて
いくことを前提とする指示をしたものの,被告人Cに対しては,何らその
計画の変更について伝えていない。そのため,被告人Cは,「J」から本件
川遊び場所に移動するに当たり,計画が変更されて男子児童らだけを先に
移動させるということは知らず,男子児童らだけでなく女子児童らを含め
た児童全員が移動したものと考えており,また,「J」では被告人EとUを
除き,他の成人スタッフを見ておらず,既に本件倶楽部の成人スタッフも
一緒に移動したものと考えていたのであり,本件の証拠上も,本件川遊び
場所において一緒に浮き輪を膨らませていたTやUから,男子児童らだけ
が移動したという話や,成人スタッフが現地に着いていないという話を聞
いていたというような事情も窺われない。また,被告人Cは,浮き輪を膨
らませている途中,児童らが気になり,本件川遊び場所を確認するために
一度下流の方に状況を見に行っており,その際,児童らの状況をきちんと
把握せず,元の場所に戻って再び浮き輪を膨らませる作業に入っているが,
上記のとおり,被告人Cは,本件キャンプ当日は,本件倶楽部の成人スタ
ッフの指示を受けるべき立場にあり,その成人スタッフからの指示は一切
なく,むしろ,救助用に用意した浮き輪を早く膨らませないといけないと
考え,それを行っていたのである。被告人Cは被告人Cなりに児童らが溺
水しないようにするための準備行動をしていたとみることも可能であり,
本件倶楽部の成人スタッフの指示がない状況下で率先して男子児童らを監
視すべき義務があったなどということはできない。
同様に,本件倶楽部の成人スタッフの指示を受ける立場にあったT及び
Uについても,そのスタッフからの指示は一切なく,むしろ,本件キャン
プ実施において主導的立場にあるBの指示に従って本件川遊び場所に移動
し,他に本件倶楽部の成人スタッフからの指示を一切受けないまま,被告
人Cと共に,救助用に用意した浮き輪を膨らませていたものであるから,
この両名について率先して男子児童らを監視すべき義務があったというこ
とはできない。
また,VやPについては,男子児童らと行動を共にしていなかったので
あるから,そもそも,男子児童らから目を離すという行動をとったもので
はない。
結局,被告人C,T及びUの行動は,Bや被告人Eの指示によって誘発
されたものにすぎず,本件の被害児童の溺水,死亡という結果はBや被告
人Eの上記行為の危険性が現実化したものと認められるから,上記行為と
結果との間の因果関係は否定されない。被告人Eの弁護人らの上記主張は
採用することはできない。
ウまた,同弁護人らは,女子児童らを監視する被告人Eに男子児童らを監
視することの期待可能性はなかったと主張するが,上記のとおり,川遊び
場所へ移動した成人スタッフに対して監視を指示するなどすれば足りるの
であるから,期待可能性がなかったとはいえない。
なお,被告人Eは,上記のとおり,z市役所の職員として,川遊びとい
う危険性を伴う本件キャンプに継続して関わっていたものであるから,業
務性が認められることは明らかである。
被告人Cについて
次に,被告人Cについて検討する。先に説示したとおり,被告人Cは本件
川遊びを含む本件キャンプを主導すべき立場にあったとはいえず,Bや被告
人Eの具体的な指示に従って児童らを監視することが期待されていたにとど
まる上,事実経過に即してみても,本件キャンプ当日,B及び被告人Eが男
子児童らを本件川遊び場所に向けて「J」から移動させることを決めた時点
では「J」の中にいたものの,男子児童らを先に移動させると決めたBや被
告人Eから何ら相談を受けることもなく,B及び被告人Eのみの判断によっ
て本件川遊びプログラムが開始され,被告人Cが気付いた時点においては,
既に男子児童らは「J」から本件川遊び場所への移動を始めていたものであ
る。このような事実経過に鑑みれば,被告人Cが予備的訴因に掲げられた「本
件川遊びプログラムを開始した」とみることはできない。従って,被告人C
の過失責任を問うことはできない。
被告人Dについて
更に被告人Dについて検討する。上記のとおり,被告人Dは,B及び被告
人Eから,男子児童らを先に本件川遊び場所へ移動させるよう指示を受け,
これに従い,本件川遊びプログラムの開始に関わったことが認められる。し
かしながら,前記のとおり,被告人Dは,本件キャンプの手伝いを依頼され
て本件キャンプに参加するに至ったものであり,被告人Eから,当日は本件
倶楽部の成人スタッフの指示に従って行動するように指示されていたもので
ある。そして,被告人Dは,本件川遊びプログラムの開始に当たり,本件倶
楽部の成人スタッフであり,本件キャンプを主導していたBから,男子児童
らを先に移動させるよう指示を受け,それが当初の予定とは異なっていたこ
とから,Bに次いで本件キャンプの主導的な立場にあった被告人Eに改めて
指示を仰いだ上で,その指示を受けて行動をしたにすぎない。このような本
件キャンプにおける被告人Dの立場を前提とすれば,被告人Dには,自ら監
視態勢の整備を確認したり,その確認ができない場合にはB及び被告人Eの
指示を拒むなどして男子児童らの移動を取りやめさせるまでの役割が期待さ
れていたとは認め難い。従って,被告人Dは,Bや被告人Eが男子児童らを
移動させて本件川遊びが開始された際にこれに追従して本件川遊び場所まで
男子児童らを搬送したにとどまるというべきであり,これをもって被告人D
に本件川遊びをさせるプログラムを開始した過失があったと考えるのは相当
ではない。被告人Dについても過失責任を問うことはできない。
(法令の適用)
罰条平成25年法律第86号附則14条により同法による改
正前の刑法211条1項前段
刑種の選択罰金刑を選択
宣告刑の決定罰金40万円
労役場留置刑法18条
訴訟費用の負担刑事訴訟法181条1項本文
(量刑の理由)
本件は8歳の児童が自然の川の深みで溺れ,その生命を失うに至ったという事
案である。被害児童が受けた恐怖感や肉体的苦痛は甚大なものであったと思料さ
れ,その両親が受けた悲しみも察するに余りあり,本件後7年近くが経過してい
るにも係らず,未だに悲嘆に暮れている。そして,この結果は,Bが行った軽は
ずみな計画の変更を被告人Eが容認したことにより生じたものであって,その過
失が結果発生に与えた影響の程度は小さくない。被告人Eの刑事責任は決して軽
いとはいえないものの,本件事案の性質・内容などに照らし,本件が禁錮刑以上
の刑を選択すべき事案であるとは認め難く,被害児童の父との間では100万円
を支払って示談が成立している上,被告人Eは前科前歴を有しておらず,これま
で一地方公務員として真面目に職務に精励してきた人物であり,本件溺水事故を
招いたこと自体については後悔していることなどの有利な事情を考慮し,主文の
とおりの罰金に処するのが相当と判断した。
(求刑いずれも罰金80万円)
平成29年6月9日
佐賀地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 吉井広幸
裁判官 石黒瑠璃
裁判官中里敦?は,異動のため,署名押印できない。
裁判長裁判官吉井広幸
別紙
1被告人らに対する主位的訴因(平成28年11月28日訴因変更請求書記載の
もの)は,次のとおりである。
「被告人Cは,z市k部L課課長であり,同課に設置され,田植え,収穫,調
理,民泊,川遊び等の公募による住民参加型の各種体験イベントを開催するなど
の業務を行うF協議会事務局の事務局長として,同事務局の事務を統轄し,同事
務局に所属する同課職員を指揮監督する業務に従事していたもの,被告人Dは,
同課副課長兼F1係長であり,同協議会の事務局員として,上司の命を受け,同
事務局に所属する同係職員を指揮監督し,同事務局の事務を掌理する業務に従事
していたもの,被告人Eは,同課F1係員であり,同協議会に関する業務の主査
兼同協議会の事務局員として,同協議会の事務を処理する業務に従事していたも
の,Aは,同協議会の副会長であり,田植え,収穫,調理,民泊,川遊び等の公
募による住民参加型の各種体験イベントの開催等の事業を行うG倶楽部の代表と
して同倶楽部の会務を統括する業務に従事していたもの,Bは,同協議会の幹事
長かつ同倶楽部の監査役であり,実質的に同倶楽部の代表を補佐し,同倶楽部の
会務を掌理する業務に従事していたものであるが,平成22年7月24日及び同
月25日,前記各種イベントの一環である同事務局と同倶楽部の共同開催に係る
「Hキャンプ」と題する体験イベント(以下「本件キャンプ」という。)のプログ
ラムとして,佐賀県伊万里市a町bc番地d所在の「J」南南東約700メート
ル先のj川における川遊びを実施するに当たり,参加児童は本件キャンプへの参
加募集に応じた小学校3年生から6年生までの児童22名であり,参加児童らの
遊泳能力の程度に差がある上,予測困難な行動に出るおそれがあるほか,川遊び
予定場所は同河川への入水予定場所であるスロープからその下流側約90メート
ル以上の範囲に及び,かつ,右に湾曲するなどしているため,前記スロープから
川遊び予定場所全体を見渡すことが困難である上,水深が2メートルを超える場
所があるなどの自然の河川であり,児童らを同所及びその付近で遊ばせるなどす
れば,児童らが水流に流されて深みにはまるなどして溺水する危険があったとこ

第1被告人Cは,本件キャンプ前日に行われた前記L課職員による本件キャン
プの打合せにおいて,被告人Eから,川遊び予定場所は深いところで溺水する
危険がある旨の報告を受けながら,被告人E及び被告人Dから児童らの溺水を
防止するための適切な安全措置を講じた実施計画(以下「前記実施計画」とい
う。)や川遊び予定場所の状況については報告を受けていなかったことなどによ
り,前記実施計画が定められていないおそれがあることを認識し得たのである
から,あらかじめ川遊び予定場所の状況や前記実施計画の策定状況等を把握す
ることはもとより,前記実施計画の内容が適切でない場合は,川遊びの際の危
険性及びその危険を回避するための安全措置に関する情報を収集して,児童ら
及び監視者らに着用させるライフジャケットを準備するとともに,被告人Eを
してA及びBと協議をさせて,川遊びの際には児童ら及び監視者らにライフジ
ャケットを着用させることとし,仮にライフジャケットを着用させない場合に
は,深みのない安全な範囲に川遊び場所を限定することとした上,更に川遊び
をする児童らを監視するための役割分担や人員配置などの監視態勢,児童らに
対する事前の危険指導の方法,児童らを川へ引率して監視態勢下で入水させる
までの手順等も定めさせて前記実施計画を策定させ,これを被告人3名並びに
A及びBを含む川遊びに参加する成人スタッフ全員に周知させ,仮に前記実施
計画の策定及びその周知がなされない場合には,Aらと協議して川遊びの中止
を決定するなど,児童らが溺水するのを未然に防止すべき業務上の注意義務が
あるのにこれを怠り,前記実施計画が策定されているものと軽信し,川遊び予
定場所の状況や前記実施計画の策定状況等を把握することなく,前記実施計画
が定められていないことを看過して漫然と本件キャンプを実施させ,本件キャ
ンプ当日である同月24日,自らも本件キャンプの成人スタッフとして参加し
ながら,川遊びのプログラム開始前に,前同様に川遊び予定場所の状況や前記
実施計画の策定状況等を把握せず,Aらと川遊びの中止について協議すること
もしなかった
第2被告人Dは,前記打合せにおいて,被告人Eから,川遊び予定場所は深い
ところで溺水する危険がある旨の報告を受けながら,被告人Eから前記実施計
画や川遊び予定場所の状況については報告を受けていなかったことなどにより,
前記実施計画が定められていないおそれがあることを認識し得たのであるから,
あらかじめ川遊び予定場所の状況や前記実施計画の策定状況等を把握すること
はもとより,前記実施計画の内容が適切でない場合には,川遊びをする際の危
険性及びその危険を回避するための安全措置に関する情報を収集して,被告人
Cに対し,児童ら及び監視者らに着用させるライフジャケットを準備するよう
進言するとともに,被告人EをしてA及びBと協議をさせて,川遊びの際には
児童ら及び監視者らにライフジャケットを着用させることとし,仮にライフジ
ャケットを着用させない場合には,深みのない安全な範囲に川遊び場所を限定
することとした上,更に川遊びをする児童らを監視するための役割分担や人員
配置などの監視態勢,児童らに対する事前の危険指導の方法,児童らを川へ引
率して監視態勢下で入水させるまでの手順等も定めさせて前記実施計画を策定
させ,これを被告人3名並びにA及びBを含む川遊びに参加する成人スタッフ
全員に周知させ,仮に前記実施計画の策定及びその周知がなされない場合には,
被告人Cに対し川遊びの中止を進言するなど,児童らが溺水するのを未然に防
止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,前記実施計画が策定されて
いるものと軽信し,川遊び予定場所の状況や前記実施計画の策定状況等を把握
することなく,前記実施計画が定められていないことを看過して漫然と本件キ
ャンプを実施させ,本件キャンプ当日である同月24日,自らも本件キャンプ
の成人スタッフとして参加しながら,川遊びのプログラム開始前に,前同様に
川遊び予定場所の状況や前記実施計画の策定状況等を把握せず,被告人Cに対
し川遊びの中止を進言しなかった
第3被告人Eは,川遊び予定場所で以前に実施された同様の体験イベントにお
ける川遊びに成人スタッフとして参加した経験から,同所には水深が深い場所
があり,児童らを同所及びその付近で遊ばせるなどすれば児童らが水流に流さ
れて深みにはまるなどして溺水する危険があることを知っていたのであるから,
A及びBとともに,川遊びをする際の危険性及びその危険を回避するための安
全措置に関する情報を収集して,被告人C及び被告人Dに対し,児童ら及び監
視者らに着用させるライフジャケットを被告人C及び被告人Dに対し,児童ら
及び監視者らに着用させるライフジャケットを準備するよう進言するとともに,
A及びBと協議をして,川遊びの際には児童ら及び監視者らにライフジャケッ
トを着用させることとし,仮にライフジャケットを着用させない場合には,深
みのない安全な範囲に川遊び場所を限定することとした上,更に川遊びをする
児童らを監視するための役割分担や人員配置などの監視態勢,児童らに対する
事前の危険指導の方法,児童らを川へ引率して監視態勢下で入水させるまでの
手順等も定めて前記実施計画を策定し,これを被告人3名並びにA及びBを含
む川遊びに参加する成人スタッフ全員に周知し,仮に前記実施計画の策定及び
その周知をしない場合には,Bらと川遊びの中止を協議し,その旨を被告人C
にも進言して,児童らが溺水するのを未然に防止すべき業務上の注意義務があ
るのにこれを怠り,過去同様の川遊びプログラムにおいて前記実施計画を策定
せずに溺水事故が起きていなかったことから,前記実施計画を策定する必要は
ないものと軽信し,川遊びをする際の危険性及び危険を回避するための安全措
置に関する十分な情報を収集せず,被告人Cらに対し,ライフジャケットを準
備するよう進言することも,Aらとともに前記実施計画を定めることもないま
ま,前記打合せにおいて,本件キャンプの成人スタッフとして参加予定の被告
人C及び被告人Dら前記L課職員4名に対し,川遊びの際には成人スタッフ全
員で児童の監視に就く旨指示したのみで漫然と本件キャンプを実施し,本件キ
ャンプ当日である同月24日,自らも本件キャンプの成人スタッフとして参加
しながら,川遊びのプログラム開始前に,Bらと川遊びの中止について協議す
ることも,その旨を被告人Cに進言することもしなかった
各過失の競合により,本件キャンプ当日である同月24日,被告人Dらをして,
川遊び予定場所を具体的に把握しないまま,参加児童22名のうち男児17名の
みを前記「J」駐車場から川遊び予定場所付近へ引率させた上,上記男児らにラ
イフジャケットを着用させず,事前に適切な危険指導をすることもなく,適切な
監視態勢が整っていない状況下で,上記男児らを前記j川に入水させ,同日午後
3時55分頃,同河川において,同男児らの1人であるI(当時8歳)を溺水さ
せ,よって,同月27日午前9時38分頃,長崎県大村市ef丁目g番地h所在の
i病院において,同人を低酸素性脳症により死亡させたものである。」
2被告人C及び同Dに対する予備的訴因(平成28年11月28日訴因変更請求
書記載のもの)は次のとおりである。
「被告人Cは,z市k部L課課長であり,同課内に設置され,田植え,収穫,
調理,民泊,川遊び等の公募による住民参加型の各種体験イベントを開催するな
どの業務を行うF協議会事務局の事務局長として,被告人Dは,同課副課長兼F
1係長であり,同協議会の事務局員として,被告人Eは,同課F1係員であり,
同協議会に関する業務の主査兼同協議会の事務局員として,Aは,同協議会の副
会長であり,田植え,収穫,調理,民泊,川遊び等の公募による住民参加型の各
種体験イベントの開催等の事業を行うG倶楽部の代表として,Bは,同協議会の
幹事長かつ同倶楽部の監査役であり,実質的な同倶楽部の代表補佐として,それ
ぞれ,平成22年7月24日及び同月25日,前記各種イベントの一環である同
事務局と同倶楽部が協働して開催した小学校3年生から中学校3年生までの児童
を対象とする「Hキャンプ」と題する体験イベント(以下「本件キャンプ」とい
う。)のプログラムとして,佐賀県伊万里市a町bc番地d所在の「J」南南東約
700メートル先のj川における川遊びを実施する企画を含む本件キャンプを催
行する業務に従事していたものであるが,参加児童は本件キャンプへの参加募集
に応じた小学校3年生から6年生までの児童22名であって,参加児童らの遊泳
能力の程度に差がある上,予測困難な行動に出るおそれがあり,川遊び予定場所
は同河川の流れに沿った距離にして90メートルを超え,右に湾曲するなどして
いるため,同河川への入水予定場所であるスロープから川遊び予定場所の下流側
を見渡すことは困難である上,水深が2メートルを超える場所があるなどの自然
の河川であり,児童らを同所及びその付近で遊ばせるなどすれば,児童らが水流
に流されて深みにはまるなどして溺水する危険があったところ,被告人E,A及
びBは,川遊び予定場所で以前に実施された同様の体験イベントにおける川遊び
に成人スタッフとして参加した経験などから,同所には水深が深い場所があり,
児童らを同所及びその付近で遊ばせるなどすれば児童らが水流に流されて深みに
はまるなどして溺水する危険があることを知っており,被告人C及び被告人Dは,
本件キャンプ前日に行われた前記L課職員による本件キャンプの打合せにおいて,
Eから川遊び予定場所は深いところで溺水する危険がある旨の報告を受けたこと
などから,本件キャンプ当日である同月24日,前記川遊び予定場所において,
児童らに川遊びを行わせるに際し,成人スタッフらと共に児童らに付き添って川
遊び予定場所に入水するなどして川遊び中の児童らが溺水しないように監視し,
児童らが溺れるなどした場合には直ちに救助できる態勢を採り,児童らの溺水を
防止すべき業務上の注意義務があるのにそれぞれこれを怠り,いずれの被告人も
成人スタッフらと共に児童らに付き添って川遊び予定場所に入水するなどして川
遊び中の児童らが溺水しないように監視せず,児童らが溺れるなどした場合には
直ちに救助できる態勢を採らないまま児童らを前記j川に入水させて川遊びをさ
せるプログラムを開始した過失により,同日午後3時55分頃,同河川において,
同児童らの1人であるI(当時8歳)を溺水させ,よって,同月27日午前9時
38分頃,長崎県大村市ef丁目g番地h所在のi病院において,同人を低酸素性
脳症により死亡させたものである。」
以上

その後

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