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第2判示第4について
1争点
Bが判示の日時,場所で殺害されたことについては争いがない。
争点は,被告人とAらとの間の共謀が認められるか否かである。
2Aの供述の信用性
Aの供述の要旨
アフィリピンから帰国した平成27年4月12日,被告人から,Bに保険を掛
けてフィリピンで殺害する計画を持ち掛けられ,その話に乗ることにした。
イBを殺害する計画においても,Aがヒットマンの手配を担当し,被告人がB
を被保険者とする保険の加入手続を担当するという役割分担となった。
ウ当時,被告人とBは公正証書を作成することなどに関して仲違いをしていた
が,Bをフィリピンに誘い出すために,被告人とともに,LINEのトークルーム
を利用して,3人でミーティングの機会を持つことを提案するなどした。そして,
被告人とBの関係を修復させるとともに,Bにフィリピンに行くことを承諾させた。
エ同年5月9日から同月24日まで,フィリピンに渡航した(以下,この時の
フィリピン渡航のことを「1度目のフィリピン渡航」という。)が,ヒットマンと
保険の準備が整えば,この渡航中にBの殺害を実行することになっていたので,気
が重かった。もっとも,この時の渡航では,被告人から保険の準備ができていない
ことを伝えられ,殺害は実行しないことになった。
オ同年6月頃,被告人から,BをEの捜索名目でフィリピンに誘い出すために,
Eの居場所が記載されているメモをJから入手してBに10万円で売りつけるとい
う話を聞いた。そして,被告人は,そのメモを10万円でBに売った。
カ同じ頃,被告人から,Bが死亡した後に保険金を請求するために,株式会社
gの取締役になるよう依頼され,これを了承した。被告人は,登記変更に必要な書
類を作成した。
キ同月20日から同年7月2日まで,フィリピンに渡航した(以下,この時の
フィリピン渡航のことを「2度目のフィリピン渡航」という。)が,この時は,K
が遠方にいたために会うことができず,ヒットマンの手配を依頼できなかった。
ク同月11日から同月14日まで,フィリピンに渡航したが,この時は,Bが
パスポートを忘れたと言って渡航せず,殺害計画は実現しなかった。
ケ同年8月,被告人から,Bの保険加入を疑われないようにするために,Aも
生命保険に加入したほうがよいと言われ,被告人の指示どおりに,保険金額300
0万円の生命保険の加入申込みをした。
コ同月22日から同年9月7日まで,フィリピンに渡航した(以下,この時の
フィリピン渡航のことを「4度目のフィリピン渡航」という。)。この時も,Kは
遠方にいて会えなかったが,被告人から,保険の関係は準備が終わっているので,
電話でヒットマンの手配を頼むように指示されたことから,Kに電話してヒットマ
ンの手配を依頼した。Kの仲介により,ヒットマンであるL1と直接会うことにな
り,Bの殺害を引き受けてもらった。
サ同年8月31日の夜,計画どおりにBを犯行現場まで連れ出し,ヒットマン
に殺害させた。
シ同年9月1日の午前,被告人に電話をして,Bの殺害状況を報告した上,ヒ
ットマンの報酬の20万円の送金を依頼した。被告人は,なかなか送金してこなか
ったが,同月4日,メールで送金方法を提示したところ,いわゆる地下銀行を利用
して20万円を送金してきた。
ス同年10月,Bが最後に自分に助けを求めた言葉を聞いていたことと,警察
官から諭されたことなどから,C及びBの殺人のことを自白した。
セ被告人は,Bに掛けていた保険金を請求することや,押収された株式会社g
の印鑑の返還を警察官に依頼すること,株式会社gの登記簿謄本を取ることなどを
求めてきた。
ソ自白後の警察官とのやり取りを通じて,被告人が表に出ていないことに気が
付いたため,被告人との会話を秘密裏に録音することにした。
信用性判断
アAの供述は,被告人にBを保険金目的で殺害することを持ち掛けられてから,
犯行に至り,犯行後に自白して捜査に協力するまでの一連の経緯を具体的かつ詳細
に述べたものである上,その内容も自然かつ合理的である。また,第1で検討した
とおり,Aが自白をした経緯や自白後の行動は,真実を話していると信頼できるも
のであり,Aが虚偽の供述をするような事情も認められない。
イAの供述内容は,証拠により認められる客観的事情とも整合している。
本件の保険金目的殺人において,被告人が保険に関することを担当していた
という供述は,Bを被保険者とする保険金額5000万円の生命保険(以下「本件
生命保険」という。)の復活手続に関する書面や保険料の再請求の通知文書,契約
内容を照会した書面が被告人の自宅や飲食店bから発見されていることや,被告人
が同保険の滞納保険料の支払をしていることと整合する。
被告人とBが仲違いしていたので,Bをフィリピンへ誘い出すためにその関
係を修復しようとしたという供述は,Bが,被告人とAに対して,LINEのトー
クルームにおいて,公正証書の件でだまそうとしているのかと追及するメッセージ
を送信していることや,その後,Aと被告人が3人でミーティングをすることを提
案するなどしても,Bが被告人の電話に出ない状態が続いていたこと,その後に,
Bが金銭関係を解決することを条件に会う旨の返信をするなどし,被告人とBとの
間で通話がされるようになったことと整合する。
1度目のフィリピン渡航時に,被告人から保険の準備ができていないと言われ
てBを殺害する計画が中止となったという供述は,同渡航の際,本件生命保険は失効
していて,復活手続をしようとしている最中であったことと整合する。
被告人が,Jから入手したメモをBに売ったという供述は,同メモを撮影した
画像ファイルが被告人の携帯電話機に保存されていることと整合する。
Aが,被告人から持ち掛けられて,株式会社gの役員になったり生命保険に加
入したりしたという供述は,飲食店bのパソコン内に,Aの役員登記に関するファイ
ルデータが存在することや,被告人の自宅から,Aを被保険者とする生命保険証券
(ただし,保険金額は2000万円に変更されたもの)が発見されていることと整合
する。
被告人にヒットマンの報酬の送金を催促して送金してもらったという供述は,
Aが,被告人に対して,フィリピンへの送金方法を示す内容のメールをし,被告人
が,正規の送金方法ではない方法(ドアtoドアと呼ばれる送金方法)でAに20
万円を送金していることと整合する。
Aが被告人との会話を秘密裏に録音したものには,被告人が,Aに対して,
Bの免許証などを日本に持ち帰って来ないように注意するとともに,Bのパスポー
トなどの遺留品があれば廃棄することを指示する内容や,本件生命保険の保険金を
請求する方法を具体的に説明している内容のやり取りがあるが,これらは,被告人
が証拠の隠滅を指示し,積極的に保険金を請求しようとしている内容のやり取りと
理解できるものであり,本件を被告人が計画して主導していたという供述と整合す
る。
Aは,。嬰挂椶離侫リピン渡航の際,「今回の旅は久しぶりに行きたくね
ぇよ」「不安と生きるか?理想と死ぬか?」と被告人にメッセージを送信し,被告
人から「う〜ん!実に人間らしい!」「俺はすべてをキレイにサッパリしたい。」
と返信されたやり取りについて,被告人に送信したメッセージは,友人であるBを
殺害する可能性のある渡航だったので,気が進まないことを示したものであり,被
告人からのメッセージは,Bを殺害したいことを示した返信であること,■嬰挂
のフィリピン渡航中に,「早く勝負決めよう。短期決戦だ」「1。血判状2。公
正証書3。保険各種4。6月出発手続き」と被告人に送信したことについては,
次の渡航で早くBの殺害を実行したいとの決意表明と,そのための準備内容を送信
したものであること,2度目のフィリピン渡航中に,「どうするか?考えるじゃ
ん!味方が誰もいない中でBOSSの決断で…」と被告人にメッセージを送信し,
被告人から「BOSSはあなたですよ!」と返信されたやり取りについて,被告人
に送信したメッセージは,Kに会えず,他にヒットマンの手配を頼める人もいない
状況で,B殺害の計画を継続するかどうかを首謀者である被告人に伺いを立てたも
のであるのに対して,被告人からの返信は,はぐらかす内容が返って来たものであ
り,その後の電話で,本件に関することをメールに残さないよう注意されたこと,
ぃ甘挂椶離侫リピン渡航中に,「ファイナルアンサーで良いのけ」と被告人にメ
ッセージを送信し,被告人から「ファイルアンサーでお願いします」と返信された
やり取りについては,ヒットマンの手配も完了し,Bの殺害について被告人に最終
的な意思確認を行ったものであることなど,被告人との間の一連のメッセージのや
り取りの意味について,自らの供述内容に沿った合理的な説明をしている。
ウAの供述内容は,後述するGの供述のみならず,被告人にフィリピンのでた
らめな住所を記載したメモを渡したとするJの供述及びAが自白する前後の言動等
に関するMの供述とも整合しており,相互に供述の信用性を高め合っている。
エ以上によれば,Aの供述には,信用性が認められる。
弁護人の主張
アこれに対して,弁護人は,第1で検討した事情に加えて,。舛蓮ぃ賚働金
庫に約15年間勤務しており,保険や公正証書に詳しいはずであるのに,それらが
よく分からないと供述している,▲劵奪肇泪鵑亮蠻曚できないままフィリピンに
渡航するなど,場当たり的に対応しており,保険金目的殺人の準備としてはずさん
である,Bの殺害計画に関係するとAが指摘するメッセージは,文面自体から直
ちに意味を捉えることができないものであったり,被告人とのやり取りがかみ合っ
ていなかったり,意味不明なものを一方的に送り付けたりしたもので,被告人との
意思疎通が図れているとはいえない,ぃ舛龍―劼蓮ぅ瓮發鮑鄒した経緯やメモの
代金の授受等に関するJの供述と整合していない,ィ舛被告人との会話を秘密裏
に録音したものには,被告人がBの殺害に関与したことを直接示すような発言はな
い,Γ舛最初に作成した上申書には,Bを殺害した実行犯はL2であると,公判
廷での供述と異なる内容が記載されている,などと指摘して,Aの供述は信用でき
ないと主張する。
しかしながら,,砲弔い討蓮ぃ舛l労働金庫に約15年間勤務した経験があっ
たとしても,実際に担当した職務内容によっては,保険や公正証書に詳しくないこ
とはあり得る。△砲弔い討蓮ぜ尊櫃縫侫リピンに行ってからでないと,ヒットマ
ンを手配するために行動することが難しい面もあることからすると,計画としてず
さんなものであったとまではいえない。については,Aは,Bを殺害するとは直
接書けないので,隠語みたいなものを使ったが,被告人とは意思疎通が図れていた
と述べている上に,決意表明などはAが一方的に送ったもので,被告人の返信等が
なくても格別不自然とはいえないものである。い砲弔い討蓮ぃ舛硲覆蓮ぅ瓮發亡
して直接やり取りをしていたわけではないから,間に入っている被告人が双方に異
なる話をしていれば,両名がメモの作成経緯やメモの代金授受等に関して異なる供
述をすることはむしろ当然である。イ砲弔い討蓮と鏐霓佑Bの殺害に関与したこ
とを直接示す発言はないものの,Bの遺留品を廃棄することや,保険金請求の具体
的な方法など,本件への関与を前提としなければ発言しないであろう内容が録音さ
れていることからすると,被告人の関与を否定することにはならない。Δ砲弔い
は,Aは,Bの最後が悲惨な死に方だったので,人に聞かせたくなかったからと,
その理由を合理的に説明しているから,供述の信用性を左右する事情とはならない。
イその他弁護人が主張する事情も,Aの供述の信用性を否定する事情とはなら
ない。
3Gの供述の信用性
Gの供述の要旨
ア平成26年6月に加入した,Bを被保険者とする保険金額1億円の生命保険
は,保険料の滞納により同年10月に失効した。被告人は,Bに金を貸している関
係でBに何かあると困るので,復活手続をしてほしいと言っていたが,Bとなかな
か連絡がつかなかったため,手続をすることができなかった。
イ被告人に対して,保険料の支払が難しいのであれば,保険金額を下げて新規
に保険に加入する方法もあると提案したところ,被告人から,保険金額を5000
万円に下げて加入すると言われたため,平成27年1月に,本件生命保険の申込手
続をした。この申込手続の際は,被告人及びBと申込書類や保険料の受け渡しをし
た。被告人から,申込人の住所を飲食店bに近いiの住所にするように言われて訂
正した。また,申込みに必要な特別条件承諾書兼申込内容訂正・変更請求書を飲食
店bに届けて,被告人に株式会社gの印を押してもらった。
ウ本件生命保険も,保険料の滞納により平成27年5月に失効してしまったが,
被告人から,復活手続をしたいと言われた。同月18日,被告人から,Bが来ると
いう話を聞いたので,復活手続に必要な書類を飲食店bに持っていったが,Bは来
なかった。そこで,書類を被告人に渡し,その日の夜か翌日の朝,被告人から書類
を回収した。保険料は,書類を渡したときに被告人から受領した。
エ本件生命保険は,復活手続をした後も保険料が滞納されていたため,被告人
に,同年7月末までに保険料を支払わないと失効してしまうことを伝えた。
オ同月下旬頃,被告人から,Aを被保険者として,Bと同様の保険に入りたい
と言われた。保険金額や保険料の見積りについて被告人とやり取りするなどして,
最終的には保険金額2000万円の保険に加入する手続をした。
カ平成27年5月,被告人から,Bがフィリピンに渡航するに当たり海外旅行
保険に入りたいという連絡を受けたが,急な連絡であったため,対応できないと断
った。
キ同年6月,7月にBとAがフィリピンに渡航した際も,被告人から,両名に
ついて海外旅行保険に加入したいと言われた。被告人は,申込書に株式会社gの印
を押し,保険料を支払った。
ク同年8月にBとAがフィリピンに渡航した際は,Aが,同人とBの海外旅行
保険申込書と保険料をGの事務所に持ってきた。被告人に連絡すると,被告人はこ
のことを知っているようだった。
ケ上記の海外旅行保険の申込書の中には,死亡保険金の受取人が株式会社gと
記載されているものがあったが,被告人とは,以前から,海外旅行保険の死亡保険
金の受取人は法定相続人にするという話をしていたので,それらの記載は削除した。
コBの死亡後,被告人から,本件生命保険の保険金を請求する方法の問い合わ
せを2,3回受けた。同年11月には,被告人が,本件生命保険の内容を確認した
いと言って,AとともにGの事務所を訪れたので,契約内容を印字した紙を見なが
ら説明し,被告人にその紙を渡した。このとき,被告人とAとでは,被告人が7割
くらい話をしていた。その後,被告人から,本件生命保険の保険金請求書を送って
ほしいと言われ,保険会社に連絡をして送付してもらった。
サBが死亡した後,Aから本件生命保険の保険金を請求したいとか,保険金の
請求書類を発送してほしいなどと言われたことはない。
信用性判断
アGの供述は,具体的なものであり,格別不自然,不合理な点は認められない。
第1で検討したとおり,Gが虚偽供述をしなければならない事情も認められない。
イその供述内容は,証拠により認められる客観的事情とも整合している。
すなわち,被告人が株式会社gの保険について中心となってやり取りをしていたと
いう供述は,Gと被告人との間に,保険の見積りや,滞納保険料の支払の確認,待ち
合わせの約束などに関する電話やメールの履歴が多数存在すること,被告人の自宅か
ら,本件生命保険の失効及び復活手続の案内の書面,Aを被保険者とする保険金額2
000万円の生命保険証券及び本件生命保険の契約内容を照会した書面が発見されて
いること,飲食店bから,本件生命保険の保険料を再請求する通知文書が発見されて
いることと整合する。
ウGは,一連の保険契約に関するやり取り及び各保険契約申込書の記載等につい
て合理的な説明をしている。
エGの供述内容は,被告人がBの殺害計画の中で保険を担当する役割を担って
おり,犯行後も保険金の請求に向けて積極的に行動していたというAの供述と整合
しており,相互に信用性を高め合っている。
オ以上によれば,Gの供述には,信用性が認められる。
4被告人の弁解の信用性
被告人の弁解の要旨
被告人は,AにBを殺害する話を持ち掛けたことはない,本件生命保険について
は,Bから頼まれてGに取り次いだだけであるなどと弁解する。
信用性判断
ア被告人の弁解は,不自然で不合理な箇所が随所にみられるものである。
被告人の供述を前提とすると,保険金目的殺人の真犯人は,事件とは無関係
な被告人に,保険金目的殺人にとって重要な保険に関する手続や,Bのフィリピン
への誘い出し,ヒットマンの報酬の送金などをさせていたことになるが,犯行に無
関係な者をわざわざ関与させる必要性は認められないばかりか,無関係な者を巻き
込めば,そのことによってかえって犯行が発覚するおそれが高まるのであるから,
被告人の弁解は不自然,不合理である。
Bを被保険者とする保険金額1億円及び5000万円の各生命保険について,
いずれもBから通院や入院のことを重視して加入すると聞いていたと述べている点
は,被告人質問の際に,死亡時のみの保障となっており,通院や入院は保障の対象
となっていないことを指摘された後も,なぜそのような契約内容になっているかは
分からないとあいまいで不合理な供述をしている。
具体的な事業をしていない株式会社gが高額な保険料を負担してまで保険に
加入することに特に関心は持たなかったと述べている点は,被告人が同社の大株主
であったことからすると,不自然,不合理である。
本件生命保険の滞納保険料に関して,Bから振込書と現金を渡されて支払っ
たと述べている点は,Bが自らコンビニエンスストア等に行って支払うことは容易
であるのに,あえて被告人に依頼したというもので,不自然である。
本件生命保険について取次ぎをしていただけであると述べている点は,被告
人がAに対して保険金請求の具体的な方法を積極的に提案しているやり取りに照ら
すと不自然である上に,信用できるGの供述にも反している。
4度目のフィリピン渡航の際に,ファイナルアンサーでお願いしますとメッ
セージを送ったことについて,被告人がフィリピンに渡航しないことの最終確認で
あったと述べる点は,平成26年10月以降,Aは何度もフィリピンに渡航し,被
告人はフィリピン渡航を断り続けていたのであるから,このタイミングで被告人の
フィリピン渡航の話が蒸し返されるのはそれ自体が不自然である上に,フィリピン
渡航の話であれば隠語を使う必要もないのに,内容を明示しないやり取りをしてい
るのも不合理である。
Aに送金した20万円は,Bの遺体搬送費として送ったと述べている点は,
そもそもそのような費用を被告人が負担しなければならない理由は見出し難い上に,
Bの妻に確認もせずに送金したという点も不合理である。
イ被告人の弁解には,重要な部分について合理的な理由なく変遷がみられる。
本件生命保険を知った時期について,捜査段階では,平成27年12月頃に,
Gの事務所で本件生命保険の契約照会の書面を受け取った時か,その直前にAから
説明を受けた時であると述べていたが,公判廷では,本件生命保険に加入した平成
27年1月頃には知っていたと述べるなど,供述を変遷させている。被告人は,変
遷の理由について,捜査段階では,契約が有効と分かった時期を供述したと述べる
が,供述調書の記載からは到底そのように理解することはできず,結局,変遷の理
由を合理的に説明できていない。
被告人は,Bとの株式譲渡契約書に関連して,区分事件の審理の際には,契
約書は形だけで,実際には株式の譲渡はしていないと述べていたのを,併合事件の
審理では,契約書を作成したので,株式はBに譲渡済みであると,合理的な理由な
く供述を変遷させている。
ウ被告人の弁解は,信用できるA,G及びJの供述に反している。
エ被告人は,供述の不自然さや不合理性を追及されると,分からない,覚えてい
ないと述べるなど,その弁解は具体性を欠いている。
オ以上によれば,被告人の弁解は信用できない。
弁護人の主張
弁護人は,。造箸隆愀犬藁氷イ任△蝓て運佑鮖Τ欧垢詁圧,ない,∨楫錣亙
険金取得に至っていないずさんなもので,被告人とAとの間に意思疎通は図られて
おらず,共謀は認められないなどと主張する。
しかしながら,,砲弔い討蓮と鏐霓佑硲造蓮じ正証書の作成等に関して仲違い
をしていた上に,被告人はかつてBの借金を肩代わりしたことがあったと供述して
おり,被告人にはBに対する遺恨があったことがうかがわれるし,また,そもそも
保険金目的の殺人は,保険を掛けたり保険金を得たりするプロセスを必要としてお
り,そのためには関係が良好な者を標的にすることがあり得るのであるから,弁護
人の主張は当たらない。△砲弔い討蓮と鏐霓佑保険金を取得できなかったのは,
捜査が及んで,株式会社gの印鑑が押収されたり,被告人らが逮捕されたために保
険金の請求ができなかったからであって,そのことが被告人とAとの共謀を否定す
る理由にならないことは明らかである。
5結論
以上によれば,信用できるAの供述等の証拠から,被告人とAらとの間に,保険
金目的でBを殺害することについての共謀があったと認められる。
そして,被告人の弁解は信用できないから,この認定に疑いを容れる事情とはな
らない。
(量刑の理由)
1本件は,被告人が,平成22年に,共犯者と共謀の上,偽装自動車事故に基
づく保険金詐欺を行い(判示第5),平成26年に,共犯者らと共謀の上,偽装自
動車事故に基づく保険金詐欺を行い(判示第6),同年9月及び10月に,共犯者
らと共謀の上,Cに対する300万円及び70万円の各詐欺を行い(判示第1及び
第2),同月に,共犯者らと共謀の上,Cに対する殺人を行い(判示第3),平成
27年1月から3月にかけて,共犯者らと共謀の上,Cの遺族に対する詐欺未遂を
行い(判示第7),平成26年12月から平成27年3月にかけて,共犯者らと共
謀するなどして,電磁的公正証書原本不実記録・同供用(判示第8)及び有印私文
書偽造・同行使(判示第9)を行い,平成27年8月から9月に,共犯者らと共謀
の上,Bに対する殺人を行った(判示第4)という事案である。
2本件で量刑判断の中心となるのは,C及びBに対する各殺人(判示第3及び
第4)である。
本件各殺人は,いずれも被害者らに掛けられた死亡保険金を得る目的で行われて
いる。このような保険金目的殺人は,人の生命を金銭獲得の手段にするもので,人
命軽視の度合いが甚だしく,殺人罪の中でも最も重い類型の一つに位置づけられる。
本件により,2名の尊い命が奪われている。Cは,被告人らと共同事業をすると
信じてフィリピンに渡航し,Bは,Eの所在が判明したと信じてフィリピンに渡航
し,いずれも突然人生を閉ざされることとなったものであり,その無念さは察する
に余りある。Cは,被告人らとともに保険金詐欺を行っていたという事情があり,
Bは,被告人らとともにCに対する殺人等に関与していたという事情があるものの,
そうであるからといって,両名とも殺されなければならない理由はないというべき
である。このように,本件の結果は誠に重大であり,本件の量刑を考える上で,ま
ず重視されるべき事情である。
被告人らは,被害者らに対し,法人を利用して高額の死亡保険を掛けた上,フィ
リピンに誘い出して現地のヒットマンに銃撃させ,殺害している。法人を利用する
ことは,不審に思われずに高額の死亡保険に加入することを可能にし,フィリピン
で殺害することは,日本の警察権が及ばず,犯行を発覚しにくくすることを可能に
し,ヒットマンを雇うことは,自らの手を汚さずに確実に被害者を殺害することを
可能にするもので,各犯行とも結果的には保険金を取得するに至っていないものの,
本件は,非常に巧妙で,計画性の高い犯行である。
本件各殺人の犯行態様についてみると,いずれも至近距離から被害者らの胸部な
どにけん銃で弾丸を数発撃ち込むというもので,被害者らを確実に殺害することの
できる方法である。さらに,Bに対しては,殴打したり,アイスピック様のもので
刺突したりといった執拗な暴行も加えている。このように,いずれの犯行態様も,
極めて冷酷で残虐なものである。
被告人は,各保険金目的殺人について,いずれも計画を立案し,殺害対象を決定
した上,共犯者を言葉巧みに説得して誘い込み,役割分担を決め,共犯者に指示を
して動かすなどしている。このように,被告人は,本件各殺人について,終始主導
的に犯行に関与している。また,被告人は,保険金目的殺人において不法な利益を
得る上で重要な保険に関する手続を自ら中心となって行い,共犯者にさえ,被害者
らに掛けられた保険の全容を明らかにしていなかったものである。さらに,被告人
は,保険の契約者で,保険金の受取人でもある会社を実質的に支配していたほか,
同社の印鑑や預金通帳を管理しており,実際に保険金が振り込まれた際には,これ
を自由に扱うことができる立場にあったものである。このようにみてくると,本件
各殺人は,被告人の発案なしには実現しなかったばかりか,被告人のみが犯行計画
の全貌を把握し,終始主導的に犯行に関与していたのであって,振り込まれた保険
金を自由にできる立場にあったことも併せ考慮すると,被告人は,本件各殺人の首
謀者であったことは明らかである。したがって,その責任は他の共犯者に比して格
段に重いというべきである。
3以上によれば,本件各殺人は,殺人罪の中で最も重い類型である保険金目的
殺人の中でも,特に重い部類に位置づけられるものであり,過去の裁判例の集積か
らみると,被害者の数が2名の保険金目的殺人で,首謀者とされた者に対しては,
死刑が選択されていることからすれば,特段の事情のない限り,本件で死刑を選択
することはやむを得ないというべきである。
4その上で,本件に関するその他の事情を検討する。
各殺人以外の事件の情状についてみる。
判示第1及び第2のCに対する詐欺は,殺害する相手から殺害資金等をだまし取
ったという卑劣なものである上に,判示第7のCの遺族に対する詐欺未遂も,Cを
殺害した後に,その遺族から金をだまし取ろうとしたという卑劣なものである。
判示第8の商業登記簿原本の不実記録・同供用と判示第9の有印私文書偽造・同
行使は,Cの死亡保険金の取得に失敗したことから,Eに保険を掛けて殺害しよう
として行ったもので,動機に同情の余地はない。
被告人は,判示第1及び第2のCに対する詐欺,判示第5及び第6の保険金詐欺,
判示第7のCの遺族に対する詐欺未遂,判示第8の商業登記簿原本の不実記録・同
供用について,いずれも犯行を計画して,共犯者を誘い込むなど,首謀者として犯
行に及んでいる。
その他の情状についてみる。
各殺人の被害者の遺族らは,被告人らによって被害者を殺害され,愛する人を突
如として失わざるを得なくなったことに対する憤りを述べ,被告人に対して,一様
に死刑を望んでいる。
被告人は,本件後,警察の捜査が自らに及んでいることを知った後に至っても,
保険金の請求を画策するなどしている。本件各犯行の動機や態様等も併せ考慮する
と,被告人には,金銭を取得するためには手段を選ばない非道さ,強欲さがあるこ
とを見て取ることができる。
被告人は,公判廷において,不合理な弁解に終始して,責任をAやBに押し付け
ようとしており,反省や悔悟の情は皆無である。
本件は,保険金目的での殺人が2件敢行された事件として,模倣性も高く,社会
に与えた影響も大きい。
他方で,被告人には,前科前歴がないこと,家族がいることなど,酌むことので
きる事情も存在するが,いずれも量刑上大きく考慮することのできない事情といわ
ざるを得ない。
5以上によれば,本件各殺人は,殺人罪の中で最も重い類型である保険金目的
殺人の中でも,特に重い部類に位置づけられるもので,特段の事情のない限り,死
刑を選択することがやむを得ない事案であるところ,その他の事情を考慮しても,
特段の事情は見出し難いといわざるを得ない。そうすると,死刑が人間の生命を永
遠に奪い去る究極の刑罰であり,その適用は慎重に行われなければならないことを
踏まえても,罪刑均衡の見地からも,一般予防の見地からも,被告人に対しては,
死刑をもって臨むことが真にやむを得ないものと判断した。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑−死刑)
平成29年8月25日
甲府地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 丸山哲巳
裁判官 望月千広
裁判官 種村仁志

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