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京アニ放火、横たわる容疑者を逮捕・勾留 疑問の声も

 36人が亡くなった京都アニメーション第1スタジオの放火殺人事件で、殺人容疑などで逮捕された青葉真司容疑者(42)は、担架に乗せられたまま大阪拘置所に移送され、ベッドの上で取り調べを受けている。逮捕・勾留は、刑事訴訟法などで逃亡や証拠隠滅の恐れが条件とされる。治療が続く中での逮捕をめぐり、様々な指摘がある。
 「逃亡や罪証隠滅の恐れがあると判断して本日、逮捕した。完治には相当の期間がかかり、その間のリスクを考慮した。記憶が薄れることも懸念された」
 27日午前、京都府警の川瀬敏之・捜査1課長は記者会見で、逮捕理由をこう説明した。京都地裁(鵜飼奈美裁判官)も青葉容疑者から事情を聴いた後、6月5日まで10日間の勾留を決めた。逃亡や証拠隠滅を疑う相当な理由があると判断したとみられる。
 これに対し、刑事手続きに詳しい関西学院大の川崎英明名誉教授は「逮捕は早すぎた。少なくとも車いすに乗り、自分で動ける状態まで回復するのを待つべきだった。勾留で健康が悪化するのではないか」と指摘する。
 勾留の判断をめぐっては、2014年の最高裁判例を踏まえて「罪証隠滅の現実的な可能性」について吟味する傾向にある。日本弁護士連合会刑事弁護センター委員長の西村健弁護士(大阪弁護士会)は「正確な病状は分からない。しかし、自ら動けない状況で本当に逃亡できるのか、罪証隠滅の現実的な可能性があるのか疑問だ」と話す。
 逮捕後、担架に乗せて青葉容疑者を移送した点については「府警史上初めてじゃないか」「刑事を30年間やってきたが初めて」と語る捜査関係者もいた。
 ただ、青葉容疑者の弁護人の遠山大輔弁護士(京都弁護士会)が「勾留の理由や必要性がない」として勾留の取り消しを求めた準抗告は29日、京都地裁(柴山智裁判長)で棄却された。
(2020年5月30日 20時04分 朝日新聞)

京アニ放火「青葉容疑者は証拠隠滅や逃亡の恐れがある」裁判所の判断の全容

 京都アニメーションの放火殺人事件で、逮捕された青葉容疑者の勾留理由を明らかにする手続きが行われました。
 裁判官は勾留の理由について「捜査や供述の状況を考えると証拠隠滅や逃亡の恐れがあるから」と説明しました。
 一方、弁護側は「警察は必要な証拠を保存しており、証拠隠滅はありえない。逮捕勾留する必要はない」と主張しました。
 これまで青葉容疑者の弁護人は、勾留決定の取り消しを求めて準抗告しましたが、京都地方裁判所は棄却していました。
 弁護人は、準抗告を棄却した京都地裁の決定内容を明らかにしました。

 【主文】
 本件準抗告を棄却する。

 【準抗告申立ての趣旨及び理由】
 被疑者には、勾留の理由及び必要性がなく、また、先行する逮捕手続が違法であったのに、被疑者に対する勾留を認めた原裁判は判断を誤った違法・不当なものであるから、これを取り消し、本件勾留請求を却下するとの裁判を求めるというものである。

 【裁判所の判断】
 (1)本件被疑事実の要旨は、被疑者が、
 1.京都市所在のアニメーション制作会社第1スタジオに放火し、同所で稼働する同社社員らを殺害しようと企て、同社の正面出入口から同建物内に侵入し、同建物1階中央フロアで稼働中であった同社社員6名の身体及びその周辺に、殺意をもって、ポリバケツに入れた約8リットルのガソリンを散布の上、「死ね。」と怒号しながら、ガスライターを着火してガソリンに引火させて放火し、よって、同社社員ら70名が現に存在する3階建て鉄筋コンクリート製の建物(床面積約691平方メートル)を全焼させ、同建物内にいた36名を殺害し、また、同建物外へと避難した34名を火災もしくは避難する際にそれぞれ負傷させる等にとどまり、殺害の目的を遂げなかった、
 2.業務その他正当な理由による場合でないのに、柳刃包丁(各刃体の長さ約23.9cm、約24.4cm、約21.5cm、約21.4cm、約24.5cm、約21.5cm)6本を携帯した
というものであるが、一件記録によれば、いずれについても、被疑者が本件の罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があると認められる。
 本件事案の性質・内容、捜査の進捗状況、被疑者の供述状況等からすれば、被疑者が本件の動機や犯行に至る経緯、精神状態等の重要な事実について罪証を隠滅するおそれがあると認められ、また、被疑者が逃亡するおそれも認められる。
 そして、以上からすれば、本件に関し勾留の必要性があると認められる。

 (2)弁護人は、罪証隠滅のおそれについて現実的な可能性がなく、逃亡のおそれについても、被疑者が現在自立歩行ができず、医療施設等にはセキュリティー設備が存在することから逃亡の現実的な可能性がない旨主張する。しかし、一件記録によれば、瀕死の状態にあった被疑者の病状は回復に向かい、部外者の立入りが制限された救急救命センターに入院することが必要な病状ではなくなったことが認められ、このことからすれば、今後は訪問者等の不特定多数の者と接触することも可能な状況にあるといえるから、それらの者を介した罪証隠滅のおそれ及び逃亡のおそれが認められる。
 また、弁護人は、勾留の必要性について、被疑者の生命の危険性等を指摘するが、上記のとおり被疑者の病状が回復に向かったことのほか、大阪拘置所において医療体制が整えられたことも考えると、こうした指摘は勾留の必要性を否定するものではない。大阪拘置所を留置施設とすることについては、医療体制の必要からやむを得ないものであり、京都府からの距離も著しく遠いとまではいえないから、防御権及び弁護権を侵害するともいえない。
 その他、弁護人は、罪証隠滅のおそれも逃亡のおそれもないのになされた逮捕手続に違法がある旨も主張するが、以上によれば弁護人が主張するような違法は認められない。

 (3)したがって、被疑者を勾留した原裁判は違法かつ相当であり、本件準抗告には理由がないから、刑訴法432条、426条1項により、主文のとおり決定する。
(6/9(火) 20:52 関西テレビ)

京アニ事件弁護側 準抗告棄却決定書公表 勾留取り消し求め /京都

 「京都アニメーション」第1スタジオ(京都市伏見区)の放火殺人事件で、殺人などの疑いで逮捕された青葉真司容疑者(42)=鑑定留置中=について、弁護側が勾留取り消しを求めた準抗告に対する京都地裁の棄却決定書を、弁護側が明らかにした。重いやけどを負った青葉容疑者は寝たきりの状態のため、弁護側は「逃亡や証拠隠滅の恐れはない」と主張したが、柴山智裁判長は「部外者を介した証拠隠滅や逃亡のおそれがある」などと棄却の理由を説明。弁護側はその後の勾留理由開示手続きで、勾留の違法性を訴えている。
 青葉容疑者は2019年7月18日の事件直後に身柄を確保されたが、全身の9割に最も重い「3度熱傷」のやけどを負った。大阪府内の大学病院で皮膚の移植手術などの専門的な治療を受け、19年9月ごろには危険な状態を脱した。府警は容体が安定したとして、20年5月27日に青葉容疑者を逮捕・送検。この時も青葉容疑者は寝たきりの状態で介護車両で移送され、京都地裁は同日、10日間の勾留を認めた。
 青葉容疑者の弁護側は同28日、「容疑者は自立歩行できず、医療施設にはセキュリティー施設があるため、逃亡の現実的な可能性はない」などと勾留の取り消しを求めて京都地裁に準抗告したが、同29日に棄却。棄却決定書によると、柴山裁判長は「容疑者は瀕死(ひんし)状態から回復に向かい、部外者の立ち入りが制限された救急救命センターへの入院が必要な病状ではなくなった。今後は訪問者などを介した逃亡のおそれがある」と理由を説明している。
 弁護側は6月3日、第三者の立ち会いなしに弁護人が接見できる「接見交通権」に反しているなどして勾留を取り消すよう最高裁に特別抗告したが、同5日に最高裁第3小法廷が棄却。弁護側は公開の法廷で裁判官が理由を説明する勾留理由開示手続きを請求した。
 勾留理由開示手続きは同9日に京都地裁であり、鵜飼奈美裁判官は「第三者を介するなどして、容疑者が罪証を隠滅したり逃亡したりする恐れがある」と棄却決定書と同様の説明をした。弁護側は「第三者とは青葉容疑者とどのような関係の人なのか」などと問いただしたが、鵜飼裁判官は「捜査上の秘密でもあり回答は控える」との説明を繰り返した。
 現在、青葉容疑者は精神状態を調べる鑑定留置中。捜査関係者によると、容疑者は現在も自力歩行できる状態ではないという。【添島香苗】
 勾留取り消し準抗告棄却決定書(全文)
 令和2年(む)第1309号
 決定 被疑者 青葉真司
 上記の者に対する建造物侵入、現住建造物等放火、殺人、殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反被疑事件につき、令和2年5月27日京都地方裁判所裁判官がした勾留の裁判に対し、同月28日弁護人から準抗告の申立てがあったので、当裁判所は、次のとおり決定する。
 主文
 本件準抗告を棄却する。
 理由
 1申立ての趣旨及び理由
 本件準抗告の趣旨及び理由は、弁護人遠山大輔ら作成の準抗告申立書に記載されたとおりであるが、要するに、被疑者には、勾留の理由及び必要性がなく、また、先行する逮捕手続が違法であったのに、被疑者に対する勾留を認めた原裁判は判断を誤った違法・不当なものであるから、これを取り消し、本件勾留請求を却下するとの裁判を求めるというものである。
 2当裁判所の判断
 (1)本件被疑事実の要旨は、被疑者が、(1)京都市所在のアニメーション制作会社第1スタジオに放火し、同所で稼働する同社社員らを殺害しようと企て、同社の正面出入口から同建物内に侵入し、同建物1階中央フロアで稼働中であった同社社員6名の身体及びその周辺に、殺意をもって、ポリバケツに入れた約8リットルのガソリンを散布の上、「死ね。」と怒号しながら、ガスライターを着火してガソリンに引火させて放火し、よって、同社社員ら70名が現に存在する3階建て鉄筋コンクリート製の建物(床面積約691平方メートル)を全焼させ、同建物内にいた36名を殺害し、また、同建物外へと避難した34名を火災もしくは避難する際にそれぞれ負傷させる等にとどまり、殺害の目的を遂げなかった、(2)業務その他正当な理由による場合でないのに、柳刃包丁(各刃体の長さ約23・9センチメートル、約24・4センチメートル、約21・5センチメートル、約21・4センチメートル、約24・5センチメートル、約21・5センチメートル)6本を携帯したというものであるが、一件記録によれば、いずれについても、被疑者が本件の罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があると認められる。
 本件事案の性質・内容、捜査の進捗(しんちょく)状況、被疑者の供述状況等からすれば、被疑者が本件の動機や犯行に至る経緯、精神状態等の重要な事実について罪証を隠滅するおそれがあると認められ、また、被疑者が逃亡するおそれも認められる。
 そして、以上からすれば、本件に関し勾留の必要性があると認められる。
 (2)弁護人は、罪証隠滅のおそれについて現実的な可能性がなく、逃亡のおそれについても、被疑者が現在自立歩行ができず、医療施設等にはセキュリティー設備が存在することから逃亡の現実的な可能性がない旨主張する。しかし、一件記録によれば、瀕死の状態にあった被疑者の病状は回復に向かい、部外者の立入りが制限された救急救命センターに入院することが必要な病状ではなくなったことが認められ、このことからすれば、今後は訪問者等の不特定多数の者と接触することも可能な状況にあるといえるから、それらの者を介した罪証隠滅のおそれ及び逃亡のおそれが認められる。
 また、弁護人は、勾留の必要性について、被疑者の生命の危険性等を指摘するが、上記のとおり被疑者の病状が回復に向かったことのほか、大阪拘置所において医療体制が整えられたことも考えると、こうした指摘は勾留の必要性を否定するものではない。大阪拘置所を留置施設とすることについては、医療体制の必要からやむを得ないものであり、京都府からの距離も著しく遠いとまではいえないから、防御権及び弁護権を侵害するともいえない。
 その他、弁護人は、罪証隠滅のおそれも逃亡のおそれもないのになされた逮捕手続に違法がある旨も主張するが、以上によれば弁護人が主張するような違法は認められない。
 (3)したがって、被疑者を勾留した原裁判は適法かつ相当であり、本件準抗告には理由がないから、刑訴法432条、426条1項により、主文のとおり決定する。
 令和2年5月29日 京都地方裁判所第3刑事部
 裁判長裁判官 柴山智
 裁判官 内山孝一
 裁判官 山田覚己
(2020年10月26日 毎日新聞)

このページへのコメント

「それらの者を介した罪証隠滅のおそれ」はわかるけど、「それらの者を介した・・逃亡のおそれ」って、どういうこと?
訪問者の手引きを受けたり成りすましたりするとか、第三者の協力や手助けを受けて逃亡するおそれがある、っていうならわかるけど、第三者を「介して」逃亡する、と言われてもイメージが湧かない・・。
もしかして、訪問者に憑依して逃げ出す、っていうこと?

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Posted by ほいほい 2020年06月13日(土) 15:49:03 返信

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