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税務訴訟資料第264号−78(順号12459)
岡山地方裁判所平成●●年(○○)第●●号所得税賦課決定処分取消請求事件
国側当事者・国(西大寺税務署長)
平成26年4月23日棄却・確定
判決
当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
西大寺税務署長が原告に対し平成21年2月6日付けでした次の各処分(ただし、いずれも平成
22年5月26日付けの裁決により一部取り消された後のもの、平成18年分については、更に平
成23年5月26日付けの更正及び変更決定により減額された後のもの。)をいずれも取り消す。
1原告の平成17年分の所得税の更正処分のうち総所得金額180万3980円、納付すべき税
額2万2600円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分
2原告の平成18年分の所得税の更正処分のうち総所得金額197万1715円、納付すべき税
額4万0500円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分
3原告の平成19年分の所得税の更正処分のうち総所得金額184万9201円、納付すべき税
額3900円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分
第2事案の概要
本件は、自動車中古部品の買付代理業を営んでいたと主張する原告が、西大寺税務署長が平成2
1年2月6日付けでした平成17年分、平成18年分及び平成19年分(以下平成17年ないし平
成19年を「本件各係争年」という。)の所得税に係る各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決
定処分(ただし、いずれも平成22年5月26日付けの裁決により一部取り消された後のもの、平
成18年分については、更に平成23年5月26日付けの更正及び変更決定により減額された後の
もの。以下併せて「本件各処分」という。)は、所得税法156条に基づく推計に合理性がないか
ら違法であるとして、本件各処分のうち更正処分については原告が本件各係争年分について行った
確定申告の際の総所得金額及び納付すべき税額を超える部分の取消しを、過少申告加算税賦課決定
処分については全部の取消しを請求する事案である。
1当事者間に争いのない事実等
(1)原告は、「A」の屋号で、解体された自動車のエンジン、その他部品等を扱うことを業とす
る個人事業者である。その業が、買付代理業と評価されるべきか、自動車中古部品卸売業と評
価されるべきかについては、後記のとおり当事者間に争いがある。
(2)原告は、西大寺税務署長に対して、本件各係争年分の所得税(所得内容は事業所得に限る。)
の確定申告を行った。
(3)所得税法156条は、「税務署長は、居住者に係る所得税につき更正又は決定をする場合に
は、その者の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量そ
の他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその者の各年分の各種所得の金額又は損失の
金額を推計して、これをすることができる。」と規定する。
西大寺税務署長は、平成20年8月20日、同署の職員をして、原告に対する税務調査を実
施した(以下この調査を「本件調査」といい、本件調査を担当した職員を「本件調査担当者」
という。)。
本件調査担当者が原告から勘定元帳等の提出を受けたところ、売上げに係る領収証控え、仕
入れ及び必要経費に係る領収証、その他の原資記録の一部しか保管されておらず、また、原告
の総勘定元帳には、原告の記憶による概算の金額が計上されている部分があった。
本件調査担当者は、総勘定元帳に記載された内容の正確性が判断できない、あるいは記載内
容が不正確で信頼性に乏しいとして、原告の売上先を調査するなどして原告の本件各係争年分
の事業所得に係る収入金額を確定し、また原告と業種業態及び事業規模が類似する同業者(以
下、「類似同業者」という。)を抽出してその平均所得率を算出し、上記の原告の収入金額に上
記の類似同業者の平均所得率を乗じる方法により、原告の事業所得金額を推計した。その結果
が原告が確定申告した本件各係争年分の事業所得金額を上回っていたため、本件調査担当者は
原告に対し本件各係争年分の所得税の修正申告を促したが、原告は修正申告を行わなかった。
(4)西大寺税務署長は、平成21年2月6日付けで、原告に対して本件各係争年分の所得税の
各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(本件各処分。ただし、後記の一部取消し及
び減額前のもの。)を行った。
原告は、平成21年4月2日付けで上記各処分を不服として西大寺税務署長に対して異議の
申立てをしたところ、同署長は、同年6月1日付けで、原告の異議申立ての一部を認めて、上
記各処分の一部を取り消した。
原告は、平成21年6月25日付けで、異議決定による一部取消後の各処分を不服とし、同
処分の全部の取消しを求めて国税不服審判所長に対して審査請求をしたところ、同所長は、平
成22年5月26日付けで、原告の審査請求の一部を認めて、上記各処分の一部を取り消した。
以上の課税処分等の経過及びその金額については、別表1「課税処分等経過表」記載のとお
りである。
(5)原告は、国税不服審判所長の判断を不服として、前記の平成22年5月26日付けの裁決
による一部取消後の各処分のうち、更正処分については原告が本件各係争年分について行った
確定申告の際の総所得金額及び納付すべき税額を超える部分の取消しを、過少申告加算税賦課
決定処分については全部の取消しを求める本件訴訟を提起した。
(6)西大寺税務署長は、本件訴訟係属中に原告から申出のあった国民健康保険料の支払を調査
した結果を踏まえ、平成23年5月26日付けで、平成18年分について、所得税及び過少申
告加算税を減額する更正及び変更決定を行った。
2争点及び当事者の主張
原告が提示した帳簿書類等では原告の本件各係争年分の事業所得の金額の実額が把握できず、
その金額を推計する必要があったこと、原告の本件各係争年分の収入金額は被告が主張している
金額であること、推計の方法として、原告の平均所得率を用いる本人比率法ではなく、類似同業
者の平均所得率を用いる同業者比率法を採用することについては、当事者間に争いはない。
本件の争点は、同業者比率法を用いる際の類似同業者の抽出の合理性の有無である。
原告は、本件各係争年当時の業が自動車の中古エンジンを主とする買付代理業であるにもかか
わらず、類似同業者として自動車中古部品卸売業者が抽出されており、そのことに合理性がない
から、その抽出結果による推計を前提とする本件各処分は違法であると主張する。そして、抽出
に合理性がないことは、自動車中古部品卸売業者の大半は自ら自動車を解体してその部品を販売
する業者であり、原告は、これとは業種業態も利得方法も異なる、解体された部品を買い付けて
販売する業者であること、不服審判係属中に主張された類似同業者と本件訴訟係属中に主張され
た類似同業者とを比較すると、業者数が違ったり、同一業者と思われる業者の所得金額等が異な
ったりしていること、類似同業者と主張されている業者の所得率が全くばらばらで「類似」業者
とは考え難いこと、仮に原告を自動車中古部品卸売業者に分類するとしても、本件各係争年頃は
鉄スクラップ等が異常に高騰しており、自ら自動車を解体して鉄・非鉄金属を販売できた業者は
その利益を享受できたが、解体されたエンジン等の買付代理業にすぎない原告はその利益を享受
できなかったなど、原告の本件各係争年頃の営業状態が他の類似同業者の平均値に吸収され得な
いほど格段に悪かったとの特殊事情があるところ、被告の主張する類似同業者の抽出によっては
この特殊事情が反映されないこと、以上によって裏付けられると主張する。
被告は、原告の営む業は自動車中古部品卸売業というべきであるから、同業を営む業者を抽出
して推計を行うことには合理性があり、同推計の結果算出される税額(別表2及び3参照)を下
回る税額である本件各処分には違法性はないと主張する。そして、原告の主張する業種業態の差
異は平均値を求めることによって捨象される、不服審判係属中と本件訴訟係属中とで主張した類
似同業者の数が異なり、また、同一業者と思われる業者の事業所得額等が異なっているのは、本
件訴訟係属中、改めて類似同業者の抽出基準を定めて調査を行った上で、その結果に基づき類似
同業者やその所得金額等を主張したためにすぎず、調査方法及び調査時点のずれによる相違をも
って直ちに推計の合理性が失われるものではない、原告が指摘するような特殊事情はないと主張
する。
第3当裁判所の判断
1所得の推計は、当該事案において得られた資料を基礎として実額に近似する所得を推測する算
出方法であるから、その性質上、絶対的な合理性を要求することはできず、一応の合理性が認め
られれば足りると解される。
2(1)証拠(甲5、甲16、甲22ないし甲24、甲29、乙2の1ないし3、乙88、乙10
6、乙122ないし乙124、乙127、証人乙及び原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、
次の事実が認められる。
ア我が国の統計調査の結果を産業別に表示する場合の統計基準として、昭和24年に「日本
標準産業分類」が制定され、以後改定が重ねられていたが、総務省は、平成14年の改定以
降の情報通信の高度化、経済活動のサービス化の進展、事業経営の多様化に伴う産業構造の
変化に適合するよう全面的な見直しを行い、.平成19年11月付けで12回目の改定を行
った。同改定後の「日本標準産業分類」には、大分類として卸売業・小売業、中分類として
機械器具卸売業、小分類として自動車卸売業、細分類として自動車中古部品卸売業という分
類項目がある。ここにいう自動車中古部品卸売業とは、主として自動車の中古部品を卸売す
る事業所とされ、鉄スクラップを卸売する事業所は別に分類されている。また、自動車解体
業であっても、部品取りを主とするものは、自動車中古部品卸売業に分類することとされて
いる。
平成14年に制定された「使用済自動車の再資源化等に関する法律」が平成15年以降順
次施行されたことにより、自動車解体業の流通経路や営業形態等が大きく変化したとされて
いる。同法施行の影響の程度・時期については不明であるが、本件各係争年頃の自動車解体
業者は、一般に、鉄スクラップ卸売業、中古部品卸売業及び海外輸出業を、いずれを主軸に
するかはともかく、いずれも行っており、また、中古部品卸売業に関しては、自ら解体した
部品のほか同業者が解体した部品を仕入れてそれも売却していた。
イ原告は、解体された自動車の部品を買い付けて販売していたほか、解体業の免許を取得し、
本件各係争年頃には使用済自動車を年間300台(月平均25台)程度扱っていたと、本件
訴訟において陳述あるいは供述している。
また、原告は、本件各係争年分の所得税の確定申告書の職業欄にいずれも「自動車解体・
輸出」と記載し、本件調査担当者から事業内容を問われた際にも、自動車を購入してきて解
体し、エンジン、各種部品、スクラップ等売却可能なものを販売している旨、数度にわたり
回答していた。
原告が本件調査担当者に提示した帳簿書類等や本件調査担当者の調査結果において、前記
の陳述、供述、回答等に齟齬する内容のものが存在することはうかがわれない。
ウ原告の本件各係争年における総勘定元帳には、中古自動車やその部品等の引取りの対価が
「商品仕入高」として、中古自動車部品等の引渡しの対価が「商品売上高」として、それぞ
れ記帳されている。
(2)前記認定事実によれば、原告の事業所得の金額を推計する際の平均所得率を算定するため
に、原告の業種業態を自動車中古部品卸売業とし、同業を営む業者を原告の類似同業者として
抽出することには、合理性が認められる。
(3)これに対して原告は、本件各係争年当時の原告の業は、自動車解体業者が大半を占める自
動車中古部品卸売業ではなく、これとは業種業態も利得方法も異なる買付代理業であるから、
自動車中古部品卸売業者を類似同業者とすることには合理性がないと主張し、その旨の乙の陳
述(甲5)及び証言、丙(甲8)及び丁(甲25)の陳述、原告本人の陳述(甲16、甲26)
及び供述がある。しかしながら、以上の陳述・供述等はいずれも客観的裏付けがなく、原告が
確定申告書に自ら「自動車解体・輸出」業と記載し、会計帳簿上も自らの計算で商品の仕入れ
と販売を行っていたことがうかがわれることと符合しないから、採用できない。
また、原告は、不服審判係属中に主張された類似同業者と本件訴訟係属中に主張された類似
同業者とでは、業者の数や同一業者と思われる業者の事業所得等の金額が異なることをもって、
類似同業者の抽出に合理性がないことの証左とする。しかしながら、課税処分の取消訴訟にお
ける実体上の審判の対象は、当該課税処分によって確定された税額の適否であり、課税処分に
おける税務署長の認定等により確定された税額が総額において租税法規によって客観的に定
まっている税額を上回らなければ、当該課税処分は適法というべきであり、不服審判段階や訴
訟段階での税額算出の根拠事実の主張は単なる攻撃防御の方法にすぎないから、原告の指摘す
る点のみをもって類似同業者の抽出に合理性がないということはできない。
さらに、原告は、抽出された各業者の所得率等に隔たりがあることをもって、「類似」同業
者の抽出に合理性がないことが裏付けられるとも主張する。しかしながら、同業者比率を用い
る推計方法は、各業者の個別事情による数値の乖離をその平均値を求めることによって蓋然的
近似値とする方法であるから、同業者比率を用いて推計することに争いがない以上、抽出され
た各業者の所得率等に隔たりがあることのみをもっては、類似同業者の抽出に合理性がないと
いうことはできない。
加えて原告は、類似同業者の平均値を原告に適用するのが相当とはいえない特殊事情が本件
各係争年当時に存在したと主張するが、本件全証拠によってもそのような事情の存在を認定す
ることは困難である。
3以上のとおりであって、類似同業者の抽出に合理性が認められ、当該類似同業者の抽出により
推計された所得金額に基づく税額(別表2及び3参照)を、本件各処分における税額(別表1参
照)が上回っていない本件においては、本件各処分を違法ということはできない。
よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
岡山地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官古田孝夫
裁判官大霄美?
裁判官木村真琴?は、転補につき署名押印することができない。
裁判長裁判官古田孝夫
別紙当事者目録
原告甲
同訴訟代理人弁護士作花知志
被告国
同代表者法務大臣谷垣禎一
処分行政庁西大寺税務署長
西山和典
同指定代理人黒田香
池永真
赤代道郎
武田大資
森岡裕輔
太田出穂
白川象三
堀靖明
石井和義
以上
別表1
課税処分等経過表
(単位:円)
年分区分
項目
確定申告更正処分等異議申立て異議決定審査請求裁決
年月日H18年3月14日H21年2月6日H21年4月2日H21年6月1日H21年6月25日H22年5月26日
総所得金額
(事業所得の金額)1,803,98011,935,83011,611,0458,617,046
納付すべき税額22,6001,644,5001,547,300871,500
平成17年分
過少申告加算税の額218,000
一部の取消し
203,000
全部の取消し
101,000
年月日H19年3月14日H21年2月6日H21年4月2日H21年6月1日H21年6月25日H22年5月26日
総所得金額
(事業所得の金額)1,971,71520,946,67720,251,76315,966,469
納付すべき税額40,5004,572,6004,315,4002,978,800
平成18年分
過少申告加算税の額654,500
全部の取消し
615,500
全部の取消し
414,500
年月日H20年3月7日H21年2月6日H21年4月2日H21年6月1日H21年6月25日H22年5月26日
総所得金額
(事業所得の金額)1,849,20114,888,15114,296,56911,675,997
納付すべき税額3,9002,792,9002,556,3001,691,400
平成19年分
過少申告加算税の額392,000
一部の取消し
357,500
全部の取消し
227,000
(注)年月について、「平成」を「H」と表示している。
別表2及び別表3省略

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